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金色の宇宙1.1 〜我ら竜騎兵隊〜

シーン3



 その男は、これといった目的があったわけではない。ただ夜食を食べたついでに、夜の散歩をしていただけだ。だが彼は、こんな夜中になっても明かりのついているシミュレーション室が気になり、中を覗いてみた。
 そこは暇をもてあました男たちがたむろしていた。シミュレーターを使っているのはどうやら竜騎兵隊の面々らしく、それを見物に来た奴らだという。

 戦いは新任の隊長一人に対して、竜騎兵隊のパイロットほぼ全員という呆れる状況だった。だが、その隊長というのが曲者だった。静と動の入り混じった巧みな剣術の使い手。その刃が振るわれれば、刹那のうちに勝敗が決する。
 思わず胸が高まった。



 すでに十八人が、彼女一人に倒された。まだ戦っていない者はそれ以上いるが、大勢は思わしくない。残った者は、格闘戦に不向きなものや、腕で劣ると思われるものばかりで、アミ=ナベシマに勝てそうな者といえば、あとは数えるほどしかいないのだ。

『休憩はもういらないぞ。次は誰だ?』

 アミの声が響く。いつの間にか集まったギャラリーも、次を出せとわめきだした。どうもこの試合で賭けをしているらしい。

「どうした、女一人に勝てないのかー!?」
「だらしねえな! 俺が代わりにやってやるぞ」

 彼女の乗る『緋縅』は傷だらけ。刀はもう五本目だ。それでもまだ、倒れない。
 隊員たちはフランチェスコに視線を集めた。ここまで来れば、彼に期待するしかなかった。現在の、隊長を除いた竜騎兵隊では、格闘戦で彼に勝る人物はいない。
 フランチェスコが準備を始めた。といっても、彼は訓練の時、パイロットスーツを着ない。腹が締まって苦しいから、ただそれだけだ。ヘルメットだけは被る。
 その間に一人挑む者がいた。それを受けてアミも迎撃に移る。シミュレーターが投影した期待は――雷殻だった。

「おやおや」

 配備数の少ない雷殻は、当然乗り慣れた者も少ない。ましてや訓練でも使わない。実戦に生きないからだ。この男は新任の生意気な隊長を倒すためだけに雷殻を持ち出した。

「これで終わりだー!」

 雷殻の轟雷砲が緋縅に向けられた。対するアミは、緋縅の両腕を顔の前で交差させ、低い姿勢のまま突進した。その一見無謀な行動にギャラリーはどよめいたが、マッシーモなど一部の者は、その判断に目を見張った。
 パイロットはためらい無く引き金を引く。懐に飛び込まんとする緋縅めがけ、拡散轟雷砲の雨が放たれ、大地を削り取る。だがその攻撃で緋縅が止まることはなかった。
 本来、緋弓爬の特徴である『ピットペネトレータ』は他惑星の機械兵器が持つ力場シールド――すなわちバリアを破るための武器だ。そしてこの緋縅は、緋弓爬系列の中でも逆発想として、ビーム兵器を吸収・拡散する装甲を与えられた。その姿は甲冑、特にセンゴク星の武具に似せて造られている。
 このことを、雷殻のパイロットは知らなかったのだ。結局、緋縅の対ビーム装甲を破壊するには、拡散の轟雷砲では及ばなかった。ギリギリ耐えうる一線を見出し、そこに賭けたアミの度胸が勝った。接近戦に持ち込まれた雷殻はなす術無く刀で切り倒された。外装をボロボロにしながらも、彼女はまた勝利した。

「くそ度胸強い女だな」
「まったくだ……」

 マッシーモは自分ならどうしただろうかと考えた。彼が普段使う操兵は緋弓爬]で、緋縅ではない。緋弓爬]では雷殻への対処法を見出せただろうか。

「運も味方しているな」

 運や偶然。抽象的で思い通りにならないものが、戦場での生死を分けることがある。

『そろそろ出てきたらどうだデブ?』

 通信機越しにアミの声が届いた。若干疲労のこもった声だ。戦闘開始からすでに数時間、一人で戦い抜いたから当然といえば当然だ。

『先ほどは私を戦処女と呼んでくれたな。その言葉が正しかったかどうか、思い知らせてやるぞ』

「そんなことを言ったのか……?」
「ん、ああ……」

 フランチェスコは罰の悪そうに顔を背けた。マッシーモもまだ彼女の戦歴は知らないが、どうやらこの言葉は相当侮辱に値したらしい。

「仕方ねえ、行ってくらあ」
「多分お前で最後になるぞ。勝っても負けても」
「勝つに決まってるけどよ、負けたときはあいつを隊長って認めるわけか?」
「そんな権限は我々に無い」

 そもそも、認めるか否かで戦っているのではない。これは儀式だ。彼女の実力を計るための、そして、竜騎兵隊の今後を占う儀式なのだ。

「だが、負けるなよ」
「任せろ」

 フランチェスコがシミュレーターのボックスに入る。

『セットアップ。緋弓爬]、破砕球を持たせろ』
『分かりました、いつも通りですね』

 モニター室の職員と交信しながら準備を整える。やがて、緋縅の佇む仮想戦場に、新たな機影が投影された。
 互いに緋弓爬の改造機。そして、部隊内屈指の格闘者同士の戦いとなる。コロシアムと化したシミュレーション室は一気にボルテージが上がっていった。



 ボックス内の明かりが一度消えて、機械の駆動音が耳に聞こえる。
 フランチェスコはここ最近のストレスを発散するため、あの女と戦う。勝敗が関係ないならばただ暴れるだけだ。今か今かと待ち構え、遂にスクリーンが、広々とした平原を映した。

(敵は……?)

 視界には見当たらない。すぐにレーダーで敵の位置を確認する。だが、奇妙なことが起きていた。彼の乗る緋弓爬]の真後ろに、いた。

『あのう、フランチェスコさん……』

 職員の気弱な声が異常を伝える。……というよりは懺悔した。

『配置場所を間違えました。相手はあなたのすぐ背後です……』

 コンソールの操作ミスで緋弓爬]は、緋縅の眼前に、無防備な背中をさらして降り立ったのだった。

『おい……。待てよおい……』

 状況を理解したフランチェスコは深い困惑の海で溺れた。言いたいことはいくつもある。職員を怒鳴りたい。冷笑する奴がいれば、殴りたい。生意気な新隊長を制止するのが先か。色々な考えが脳裏を埋め尽くす。だがその思考を、沈黙が洗い流した。
 アミの緋縅が襲ってこない。

『……どうしたんだ? 今なら一発だぜ?』

 フランチェスコの疑問にアミは短く答えた。

『背中は斬らない』

 振り返る時間をやる。真っ向から戦おう。アミがそう告げた。
 だがこれは、何も相手を気遣うばかりではない。彼女は今日、竜騎兵隊を視察する間、フランチェスコが何度も怒る場面を見てきた。その感想から、彼が今恥をかいた上に余裕を見せ付けられれば。
 ――激発するだろう。人間そうなれば、その後の行動も読みやすくなるものだ。
 フランチェスコの回答はなかった。僅かな間沈黙し、そして、

『調子に乗るなアマァッッッ!』

 振り返り様の大剣一閃。これを読んでいた、そして期待していたアミは、刀で今までと同じように受け流そうとした。しかし、威力、重量や角度、それら全てが、今まで倒してきた連中のそれを上回っていた。結果、剣は弾いたものの大勢が崩れた。フランチェスコはすかさずもう片方の手に持った破砕球を、振り上げ、緋縅の横っ面に叩き込む。
 その瞬間、緋縅はしゃがんで攻撃をかわした。破砕球は鎖で操る武器で、また重いため、打ち込みが遅れた。だからこそ間に合った。アミはすかさず刀を突き上げて緋弓爬]の喉元を抉る。スクリーンが直ちに暗転して、フランチェスコは戦う途を断たれた。
 悔しさに歯噛みし、コンソールにヘルメットの額を打ち付けるフランチェスコ。勝負は決していた。


 竜騎兵隊の腕自慢二十人をことごとく倒した。アミはその結果に満足した。事実上、これで彼女の実力に勝るものは、同部隊にいないと証明できたのだ。隊長代理を務めていたマッシーモという男がいた。彼がまだ戦っていないが、性格上ムキになって挑んでくる確率は低いと、彼女は踏んでいる。
 激しい一日目が終わった。儀式が、終わった。彼女は戦闘開始以来、ようやく体中の力を抜くことができた。

「ふうぅぅぅ……」

 パイロットスーツは汗と熱で酷く蒸れている。ヘルメットも、被っている感覚を忘れて一時間経った。手足の筋肉がようやく弛緩し、酷使の反動で痛みだした。だが満足だ。彼女が国教騎士団に入隊してすでに十五年。これほどの激しい戦いはかつて無かったが、鍛錬の日々が、彼女を勝利に導いた。この歳月は間違っていなかったのだ。
 もう名乗り出る者はいない。そう判断して、アミはシミュレーターを終了させようとした。その時。彼女の緋縅に異変が起きた。戦闘で蓄積されたダメージがリセットされ、刀も未使用のデータに更新されたのだ。

「リカバリー……? もう終わったのではないのか?」

 モニター室と回線をつないで尋ねた。

「まだ戦うのか? まさか、あのマッシーモという男か?」
『いいえ、違います。竜騎兵隊のパイロットではないのですが、是非戦いたいと言うので……』
『隊長、マッシーモです。私が許可しました。この男と戦っていただきたい』
「うん……? それは誰だ?」

 よく分からない状況に困惑しているアミに、警報アラームが危険を告げる。『ロックオンされました。ロックオンされました』ハッとしてレーダーを確認すると、すでに高速で移動する物体がある。
 機動兵器の速度ではない。

「対艦ミサイルだと!?」

 咄嗟に身をかわすとミサイルはすぐ側で着弾・爆発した。各種センサーが一時的に標的を見失う。アミの緋縅は土煙に撒かれながら、気を落ち着かせるので精一杯だった。
 衝撃からたて直る。緩んでいた神経が、体が、瞬く間に戦闘モードに切り替わる。その頃には煙も薄れて――


 敵がいた。ミサイルの一撃を利用して、すでに至近距離。現れたのは、

「逢魔……!?」

 緋縅を一回り超える異形。圧迫感のある、重厚なその存在感。操兵逢魔。両手には二本のビームトマホークが握られていて、すでに戦闘は始まっていた。

「……!」

 振り下ろされたトマホークを、片方は刀で受け止めた。だがもう一方は異なる軌道を描き、そのまま緋縅の横腹を直撃した。……はずだったが、ビームトマホークもビーム兵器である。斧を形成するビームが、緋縅の対ビーム装甲に阻まれて、致命傷にはならなかった。
 それを見て取った敵は、僅かに驚いているように見えた。その隙にアミは前蹴りを見舞って、一旦、相手から離れる。

「してやられた……」

 この私が、容易に奇襲を許すとは。あれが実剣ならば勝敗は決していた。
 逢魔に乗る男が出てきたことには驚かされた。この操兵は生産数が少ない上に、通常の部隊には僅かしか配備されていない。というのも、操作性やコストパフォーマンスが悪いことに留まらない。逢魔の最大の特徴とされる『自動殲滅システム』、認識した敵を無差別に攻撃する特殊なシステムから、よほどの札付きが乗せられるという噂だ。
 だがそのことがアミに、相手の名を教えていた。すでに触れたが、普段乗らない機体は訓練でも乗らない。この相手は逢魔の正規パイロットだ。そして先ほどの格闘戦のキレ。アミはその名を呼んだ。

「"狂戦士"のシアンか!」
『あり、ばれたか』
「なぜ貴公がこんなところにいる?」
『たまたまだよ。偶然同じ基地にいて、何か楽しそうなことしてるから。混じりたくなってよ』

 ギャラリーが再び盛り上がってきた。最後の勝負、最後の賭けに。最後の宴に。「賭け金取り返すぜ!」、「女隊長、そいつもやっちまえ!」、「シアン、お前に賭けたぞ!」熱狂に後押しされるわけではないが、シアンは会話を切って襲い掛かった。彼の本能が、彼に流れる戦士の血が沸き立っていた。

「むしろ、光栄だ! 勝負させていただこう!」

 アミも身を奮い立たせて挑んだ。
 勝算はある。ここまで少しでも勝率が高まるよう知恵をめぐらせてきたアミだ、最後の戦いでも思考は止まない。逢魔の武器はビーム兵器ばかりのため、緋縅は相性バツグンである。先ほどのビームトマホークのようになるだろう。
 そしてシアンは格闘戦を好むと知っている。不利な条件であろうと、そうするだろう。今までの戦いを見てきたなら、竜騎兵隊が剣で勝とうとしていたことは理解しているはずだ。かれも騎士団の一人、その考えに縛られる。
 その考えは半分ほど正しかった。事実、シアンは格闘戦を挑んできたから。だが、根底では間違っていた。
 シアンは突如、トマホークを投げつけてきた。咄嗟に刀で弾くも、逢魔はフルブーストで接近。そのまま体重に任せて体当たりした。緋縅は耐え切れず、逢魔に馬乗りに乗られ、立て続けに拳を見舞われた。一発。二発。
 この戦い方にアミは虚を突かれた。傍目には多少荒っぽいファイト。だが彼女には粗野で、およそ騎士らしくないその戦い方が衝撃だった。

「貴様、それでも騎士か!?」





『優しいダンスがよかったか、お嬢さんよう!』

 かまわず叩き込まれる拳。だが緋縅の硬い装甲を殴り続けて、両手が間もなく砕けた。元々打撃用に造られたものではないため当然の結果である。諦めたシアンは、またもアミの想像しない行動に出た。ジャンプして、そのまま踏みつける。激しい振動をシミュレートして、コンピューターが、アミの椅子に制御された震動を与えた。
 緋縅の両脚が踏みつけられ、ひしゃげそうになる。この日、アミは"狂戦士"と彼が呼ばれる意味を知った。

 だが、諦めない。シアンは同じ攻撃をもう一度する気だと見て取るや、アミは身構えた。逢魔が跳ぶ。スラスターを吹かし、手足を賢明に動かして、降りかかる鉄塊から逃れる。
 起き上がったアミは相手を見て、背筋に冷たいものを感じた。着地すると思われた逢魔だが、僅かに浮いているように見えた。ホバリングだ。動きを読まれていた。逢魔の赤い目が緋縅に、アミに向けられる。
 すかさず、来た。逢魔が来た。読まれるのならば、先を、もっと先を読むしかない。素早く刀を構え、逢魔の肩口、装甲の隙間に突きこんだ。対してシアンは接触の瞬間に機体を捻った。その結果、逢魔の装甲が一部削ぎ取られた代わりに、刀も折れた。だがアミは一顧だにしない。
 刀が無くなったのならば、残されたのは両腕の“鎧通し”しかない。固定式ビームソードとも言える鎧通し、その短い刃が形成されると同時に、シアンは右腕を振る。緋縅をなぎ払おうとするその腕は、肘から下を鎧通しに切断された。それでもかまわず左腕で、もう一発。

「もう無駄だ!」

 一閃。左腕も払った。こうなればもう逢魔に攻撃手段は――格闘する術は無い。そう思ったアミの体が揺れた。
 反応できなかった。理解するまでに、三秒かかった。腕を破壊されながらも、逢魔は緋縅に密着して、四本の隠し腕を伸ばしていたのだ。腰のスカートに隠れた二本を、緋縅の股の間に。まだ残っている左腕を脇に刺し込み、両肩の隠し腕が、緋縅の肩を固定していた。
 そしてそのまま、全速、前進。
 緋縅を抱えたまま逢魔は駆けた。スラスターを全力で吹かしつつ、目指した。平原に佇む岸壁めがけて。
 高速度で正面からぶつかれば、間に挟まれた緋縅は間違いなく破壊される。シアンの意図を知ったアミは拘束を解こうともがく。

「腕は切ったんだ……。この程度なら脱出できるはず……!」

 しかしこう密着されては、腕が回らない。そもそも、アミには逢魔の隠し腕がどう絡みついているか、それが把握できていない。

「間に合わない!? いや、これなら……!」

 咄嗟に緋縅の両肩を胴体から切り離した。破損したパーツを強制排除するためのシステムを利用したのだ。これで上半身の拘束は解けて、緋縅の体は逢魔から離れた。その代わり、高速で走る車から投げ出されるかのように、緋縅は激しく地面に叩きつけられた。
 どちらが悲惨かと言えばシアンである。敵が逃れたため、彼は一人で岸壁に衝突した。逢魔の顔の、胸の、そこらじゅうの装甲が弾け飛んだ。これが実機でのことなら、想像を絶する衝撃が彼を襲ったことだろう。だがシミュレーターでは、安全上パイロットが気を失うような、過剰な震動は伝えられない。そのためシアンはまだ意識を保っていたが、最後の駆け引きに精も根も尽き果てていた。

『……。疲れた……』
「く……。あぅ……」

 緋縅と逢魔、そのどちらも動かなくなり、コンピューターは双方戦闘不能と判断、熱い夜に終止符が打たれることとなった。




「今日は……つき合わせて悪かった。解散とする。詳細は明日からだ」

 アミが隊員に告げた。まだ一部の者はとがった態度のままだが、多くの隊員は、彼女を見る目を改めていた。

「お疲れ様でした。今夜のうちにやっておくことがあれば、このマッシーモに言い付けください」
「ありがたいことだが、特に無い。休ませてもらう……」

 よほど疲れていると見えるアミ。着替えた服も多少乱れた状態で、フラフラとシミュレーション室を後にした。隊員もそれぞれに今夜の出来事を話しながら自室に引き取っていった。
 あとには数人が残っていた。マッシーモ、フランチェスコ、アキナケス、そしてシアンが。

「余計な真似だったか?」
「いや、シアン。いい勝負だったぞ」

 シアンとアミの戦いは引き分けと判定されたが、見方は様々である。シアンは最初のミサイル以外、火砲の類は使わず、肉弾戦に徹した。アミはそれ以前に二十人との戦いを経ていた。どちらも万全とは言えなかったのだ。

「……けど、あれが新しい隊長かよ。随分若いのが来たんだな」
「まあそうだな。今の部隊規模からいえば妥当とも言えるが」

 フランチェスコは醜態を見せたことでふて腐れていた。アキナケスは、シアンたちの激しい戦いを、まだ脳裏に焼き付け、押し黙っている。また、二人とも、シアンと会うのは『ベヌウ紛争』の最後に、敵として戦って以来の再会なため、気まずい雰囲気がある。

「歳はこの際関係無い。我々竜騎兵隊は、あの女とともに這い上がらなければならない。あの腕前は願ったりだ」
「……。竜騎兵隊がまずい境遇になったことは、その、何だ……」
「言うなシアン。お前たちのせいじゃない」

 マッシーモは一つの確信を得ていた。

「竜騎兵隊が衰退したのは自らの驕りのせいだ。バーネル殿の一件が無くとも、遠からず同じことになっていただろう。それが今夜はっきりと分かった」

 何しろエリート、精鋭部隊と言われ続けた男たちが、女騎士一人を倒せなかったのだから。この事実は真摯に受け止めなければならない。
 今夜、この日が、彼ら竜騎兵隊の再スタートなる。それはけして楽な道ではなく、失われた名誉を回復できるかどうかも分からない。だが、彼らは一歩、前に歩んだ。それだけは事実だった。




続く