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ウルトラマサイ 第4話


【アフリカ、アムステラ基地】

「ハイッ、ハイッ、ハイッ、チェストー!」

仮想ギガントの攻撃を紙一重でかわしながらグーチェの乗るロイヤルナイツ羅甲の
ランスが相手の四肢に穴を開けていく。

「これでトドメさ!アムステラ銛術最終奥義―、『釣果漁乱(ちょうかりょうらん)』!」

ガガガガガガガガガ!!!!!!

ロイヤルナイツ機の限界速度でランスの連撃が叩き込まれ、仮想ギガントのボディは完全に沈黙し―

「いい加減、くたばれぇぇぇぇ!!!!!」

ズンッ!

相手の反応速度が落ちたのを確認するや否や、躊躇なく防御を捨て全体重をあずけた一撃を
喉に叩き込む。

「―――グガッ」

短い悲鳴と共に仮想ギガントの目から光が消える。
シミュレートバトル開始から30分以上の時間を経てついにそれは沈黙した。
ミッション終了の告知文を確認したグーチェはコックピットから降りると、そのまま横になった。

「ハーっハーっハーっ」

流れ出る汗がたちまち水溜まりを作る。
シミュレートルームを汚してはいけないと思いつつも体が悲鳴を上げ立ち上がる事も出来ない。
と、いうか今動けば確実にゲボる。床が更なる大惨事になることが確定してしまう事が直感で理解できる。

「あー、運良く誰か通りかかってタオルと冷たい水プレゼントしてくれないかなー」
「使うか?タオル」
「サンキュ…え?なんだ『お前』か」

いつの間にか、気づかぬ間に人がそこに居た。接近に気づけなかったのは疲労のせいだけではない。
グーチェはこの人物の本名は知らないが、この基地で会った誰もこの男勝りな女性サイボーグの本名を
語らなかったし本人も名乗ってないので向こうが名乗ってくるまでは『お前』でいいやと思っていた。

「ここで会うの5度目だっけ?会うたびに気配消すの上手くなってない?ついに気づけなくなった」
「アンタはいつもここでこうやってぶっ倒れてるよな」
「ナハハ、ごめんね。『お前』がサイボーグ用のトレーニング室からこっち来る前に終わらせたかったけど、
今日も30分もかかっちゃったよ。強いね、君らが倒そうとしているギガントは」
「ああ、今アンタが戦った仮想のよりももっとだ。ここにあるのはギガント28号の形だけの別物だ」
「そりゃそうだ」

ここのシミュレーターで戦える仮想ギガントは耐久力・破壊力こそ本物に近いが、
行動パターンや運動性能は実物よりも遥かに劣る。
なんせギガントの運動機構もパイロットの百文字が使う戦術も他とは比較できぬ独特のモノなのである。
そもそも、今回グーチェが倒した仮想ギガントならばあの羅根トリオでも勝利してただろう。
ロイヤルナイツの槍と同等以上の重火砲を仮想ギガントのリーチの外から延々と後退しながら撃ち続ければ
それでハメ殺しが可能。

シミュレーターの仮想ギガントにはいくつかあるが、グーチェが戦ったのはボギヂオ・クラケットがプログラミングした
『とりあえず、サイズを一致させたハリボテに最高値のアタックと耐久設定した後、近接用AIをセットしただけ』
というシロモノである。見た目も識別信号も機体ナンバーも超適当、ボギチオが何も考えずにこうなったのか、
それとも考えた末にこうなったのか、見た目はブラックミーミージャンボで台詞はデストラクション、
機体識別するとゴーリキーと出る有様だった。

とにかく、これに勝てるからと言ってそのまま本家ギガントに挑んでも何の参考にもならないブツである。
見た目はいじればどうにでもなったが、距離を取るとたちまちボロが見えてしまう。
グーチェは得意の長距離投擲を使用すればこうして30分かけて汗だくになることも無く勝利出来たのだが、
そう出来ない訳があった。

「上に送る映像は取り終わったのか?」
「ああ、今日ので終わりさ。ようやくこの茶番も終わり。
『ボギヂオ大佐は相手を研究し本物に近いシミュレーターを作りました』
『アフリカ侵攻は停滞気味ですがボギヂオ大佐ならば近い内にギガントを攻略し結果を出すから続投させるべきです』
そう思わせる映像は無事完成。後はサスーケ様とリノアを通してこの記録を上層部に送れば、
よっぽどの事がない限り後一ヶ月はこの基地の方針が変わることは無いはずだよ。
アフリカ侵攻に新たな構成が組まれるとしても少なくとも『お前』の出撃後になるかな」

アフリカ基地のメンバーとは直接の関係の無い第三者であり、ロイヤルナイツとしての泊を持つ
リノア隊からの好意的な状況報告。これがあれば、ボギヂオとかバトゥロとかアクートとかそれぞれ
別の意味で暴走しそうな不安バツグンのアフリカ南部チームに対する上層部の懸念もいくらか和らぐだろう。
『表』の人事責任者達に対する時間稼ぎとしては十分な効果である。

グーチェの話を聞く女性サイボーグにはアフリカ基地人事における表と裏の存在等は分からないが、
シュポシュポ言ってるオッサンがダメなトップであり、かつ、そのダメトップの首が切られると
連鎖的に自分の戦場に立つ機会も無くなる可能性が高い事は想像でき、
グーチェひいてはリノア隊がこっちに来た大きな目的の一つについては理解を示していた。

「ん?シミュレーター使わないのか?」
「…」

女性サイボーグはいつもとは違い、タオルで汗を拭くグーチェをじっと見て何か言いたげにしている。
後ろに回した手に何か持っているのが見えた。二枚目のタオル、ではない。

「おい、さっき見えたのって―」
「ア、アンタさ、相当の槍使いなんだろ。ギガントとやりあう前に異種格闘のコツをつかみたいんだ」

彼女の手には軽量型のパワードスーツ。これを着て組手してくれと言っているらしい。
サイボーグとしての力を手に入れて日が浅い故にその力を師匠以外の相手で試して
客観的力量を把握したいといったところだろうか。
だが、それはグーチェ側からしたら無茶な話である。

「無理言うなって!そのパワードスーツ着ても私と『お前』のパワー差は歴然だから!
受けそこねたら、その箇所が折れるから!つーか、パワードスーツ着て武術の動きなんて無理だから!」
「リミッター外したからその点は問題無い」
「んなことしたら高速で動いた箇所全部が良くて脱臼だ!『お前』自分のやろうとしている事の
無茶さが分かってないだろ!はーなーせー、無理やり着せようとするなー」

まだ疲労の残る体を無理やり動かしジタバタし、顔を動かすと開いたままの入口で顔を半分だけのぞかせた
バトゥロと目が会った。「娘を助けてやってください」的な眼差しでじっとこっちを見ている。

(うわー、やめろ、そーゆー目で見られると断れないだろが!)
「チカーロ中佐は出来るらしいから、グーチェもいけるだろってバトゥロが言ってた」
「ええーい、やってやろうじゃん!!」

バトゥロの視線に耐えられず、そしてこの手の挑発には弱いグーチェはホイホイと乗ってしまい、
結局全治三日の怪我を負うのだった。

◇◇◇

【一方その頃レゼルヴェでは】

「パワードスーツ?」
「ああ、俺の一族、マサイの戦士に代々伝わっていたこの槍は世間ではパワードスーツと呼ばれるモノらしい」

なんとか無事に容疑から逃れ、パイロット試験を受けられる事になったムチャウは、
一度全員に自分の持っている力の説明をしたほうがいいと思い、黙っていた事実を口にする。

「この槍を掲げマサイと叫ぶと槍が分解され変形する。それから肉体の上から強固な毛皮に
覆われ力と防御力が格段に増加する。だが、それ以上の事は何も分からない。今まではそれでよかったが事情が変わった」
「事情?」

ムチャウはブブラカ達に自分の見てきた事を伝える。
ムチャウの生まれた故郷より南の森にはメハメハコンマという部族があり、そこにも不思議な力が存在し、
それはムチャウの持っている槍よりも遥かに強大なものだった。
だが、ある日、メハメハコンマの持つその力はアムステラに打ち破られる。
この時になって初めて彼らは外の世界にも数多くの不思議な力が存在する事、そして自分達は何も知らないことに気づいた。

「俺の使うこの槍、これはアフリカの大地を荒らすハンターや人攫い達には有効だったがアムステラ相手には
歯が立たないだろう。だが、メハメハコンマ族の持っていたモノの力と同等だとするなら
これにはまだ眠っている力があるかもしれない。俺はレゼルヴェに自分の力を示す、
そして国の頭のいい人にこの槍の可能性を研究してもらう為にここまできた。
パイロットに選ばれれば、きっとこの槍の事を見てもらえるはずだ」
「…くあぁーーー!!!!いいねえ、仲間を救う力を得るために伝説の武器を解析してもらうってか!
この俺、獅子鼻のバッドローそういう話にはとことん弱いんだよぉお!!!!」

ムチャウの話を一通り聞いたバッドは大きな鼻から鼻水を大量に流し、ブブラカが
取り出したハンカチで鼻をかみなおも泣き続けた。

「あ、俺のハンカチ…」
「よし決めたっ!今後『俺達』はお前がパイロットになるために協力する事を誓うぜっ!」
「お、俺もパイロット、なりたいんだけど」

バッドの勝手な決定にブブラカは文句を言う。当然の事だが他人の為にパイロットを諦めること等
冷やかし以外の目的でこの試験を受ける者なら誰もいやしない。

「無論っこれは俺達がパイロットになることを諦めるということじゃねえ!
試験内容によっては皆で団結する事を誓うんだよ!試験内容が団体競技なら俺達でチームを組み、
学術試験なら事前に知識を教え合う、そういう事よぉ!」
「バッド、ブブラカ…悪いな二人とも」
「なーに、俺達だって試験内容によってはお前のような奴の協力がぜひ欲しい事だしな」
「…そういう事なら、俺も、文句無い」
「ヨッシャ、手を出せお前ら!」

バッドが右手を出しその上にブブラカとムチャウの手が重ね合わされる。

「今から俺達三人は…『チーム:MBB』だ。いくぞ、チ〜〜〜ムMBBっ」
「ファイト」
「オー!」

第一次選考場所、面接順番待ちの廊下に三人の黒人の声が響きわたった。

「お前らさっきから五月蝿い!」
「「「ごめんなさい」」」

集団面接の一緒の組で待っているジュダに怒られた。

「受験番号461番から465番入って下さい、廊下ではお静かに」
「「「ごめんなさい」」」

面接官にも怒られた。

「ったく…これだから黒人は…、いいかっ、元々ここの兵士だった私が合格するのは
当たり前だが、くれぐれも足を引っ張るなよ」

ムチャウ達に文句を言いながらジュダは扉をノックし面接試験の為入室する。

「受験番号461番ジュダ・ミョンウェー入ります…ああーっ!!!」

ジュダは気づいてしまった。正面には5人の面接官がおり、その内4人はジュダが知る元同僚達だったが
右端の若い男はレゼルヴェの人間ではなかった。だが、ジュダはその男を知っている。
今やその男は一部の業界では名物と言っていい存在だから。
ジュダはその男が本人であると確信したと同時にひとっ飛びで面接官の机の上に立ち、
そのまま机の上を滑りながらレゼルヴェ外部から来た試験官に飛びかかる。

「ガメラ&アルーガ携帯バトルゲームのラズボスのマルー・ロディムですね!
魔女同盟ベルンシュガーのスーパーレア下さい!」
「え?」

先日、アメリカで行われた修斗大会で配信開始されたガメラ&アルーガの育成RPG。
売上は好評であり様々なイベントが追加された。
その一つがラスボス役のマルーにあったら好きなスーパーレア一つダウンロードできるキャンペーン。
薬中状態から回復するまでの期間にこのゲームにハマったジュダは反射的にこういう行動に出てしまった
という訳である。最早、パイロット試験などどうでもいいとばかりにマルーの首根っこを掴み
ガクンガクンとシェイクしながら何度も何度もお願いを繰り返す。

「第二弾でガシャに追加された魔女同盟ベルンシュガーのスーパーレア下さい!
ベルン・スガタがまだ入ってないのに何故か先に作られた魔女同盟ベルンシュガーのスーパーレア下さい!」
「あばばばばばば」
「魔女同盟ベルンシュガーのスーパーレア下さい!魔女同盟ベルンシュガーのスーパーレア下さい!
魔女同盟ベルンシュガーのスーパーレア下さい!魔女同盟ベルンシュガーのスーパーレア下さい!
泣きながらダブルラリアットしている照英に川越シェフがヨガフレイムしている画像下さい!
魔女同盟ベルンシュガーのスーパーレア下さい!魔女同盟ベルンシュガーのスーパーレア下さい!
魔女同盟ベルンシュガーのスーパーレア下さい!魔女同盟ベルンシュガーのスーパーレアーーーー」
「後にしろやぁ!!」

お前ら足引っ張るなよと行ってそばからこんな事じてるジュダにムチャウの怒りの槍投擲。
面接用長机に四つん這いになってマルーの首根っこ捕まえてる姿勢のジュダのお尻の割れ目に槍の先端が綺麗にインした。

「みょ!!!!ま…魔女同盟…ベルン」
「「まだ言うかオドレはぁぁ!!!!」

ビッグボンバーズがはぐれ悪魔に向かった時のごとくダブルドロップキックでバッドとブブラカが追撃を行う。
二人の足裏は見事、槍のグリップに命中し、穂先が尻の割れ目に埋まっていく。

「みょおおおおおおおおおん!!!!!!!!!!!」


マサイの青年ムチャウ・ザイネン24歳、二人の仲間とのゆゆ友情パパワーによって
最初の障害を退けた彼の目的はついに明かされた。槍にはまだ隠された力があるのか?
その力があればアフリカを守ることが出来るのか?
闇に光を灯せ、アフリカの日差しは暑い。

(続く)