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超鋼戦機カラクリオー異聞 三話



ヨシアキ=サタケ大佐は戦闘が終わった後、基地の復興に従事しながら富士大隊の被害状況、損傷しや設備に機動兵器群の詳細を纏めていた。
一方で軍の上層部に提出する『別の資料』――既存の旧式機動兵器を近代化する事で延命しただけの武器・装備ではない、新しい機動兵器。
古くは自衛隊から続いている組織、日本と言う国が唯一保有している戦力である日本国防軍が使用し、日本と言う小さな島国を守るだけの機体。
その開発計画に関する草案を纏めた資料を用意し、聞き入れて貰えるまで軍の上層部に掛け合い、妨害があろうとも訴え続ける覚悟だった。

先の戦いで全滅の危機に直面したからこそ、そして直に帝国の強さを感じたからこそ――日本の防衛力を高める事が必要だと考える。

日本で建造されたスーパーロボットも確かに存在し、それを造る事が出来れば非常に心強い……が、莫大なコストに維持費が必要になるだろう。
かと言って既存の量産兵器のアッパーバージョンを造った所で帝国の機動兵器群に対抗できるか、と聞かれれば容易にYESと答えれない。
『十分な性能』と『低コストで数を揃える事が出来る量産性』を兼ね揃えた機体、夢物語も良い所だがそんな理想な兵器を造らねばならない。
……こうしている間にもどこかで日本国防軍の兵士達は敵と交戦し、ある者は戦闘で傷つき、不幸にも倒れてしまう者も居るだろう。
そう言った者達を一人でも減らす為、無事に基地に、強いては家族の下へと帰す為に日本の戦力を整えて敵の攻撃に備えなければならない。


「……問題は山積み、か。」


計画を実行する為にあたり、最大の障害となるのが――政府である。
安定と己の保身、利潤の追求、権力と言う毒水に浸かりきった無能な愚物達、この国の為と謳いながら国を食い物にしている逆賊共。
対立政党に選挙で勝つ事しか頭に無い、愚か極まりない連中のサジ加減一つで国防軍が右往左往するのも変な話だが……事実なので仕方ない。
この愚かな連中の首をどうにかして縦に振らせなければ新型機……強いては次期主力量産機の開発など実現するどころの話ではないのだ。
更に言えば世論の『軍備縮小!』だとか『日本に軍隊は必要無い!』とホザく馬鹿共の所為で――。


「――失礼するよ。」

「は……!、く、クレシマ少将!?」

「あー、楽にしたまえ。別に君を怒りに来たとかではないからの。」


サタケ大佐の思考が良い感じに煮えたぎってきた頃、部屋のドアがノックされたかと思えば、将校クラスの人間のみ着用を許された士官服に
身を包んだ初老の男性、日本国防軍少将・トシアキ=クレシマが現れ、慌てて立ち上がり敬礼するサタケ大佐に楽にする様に指示する。


「クレシマ少将、此方に来られるなら一言ご連絡頂ければと……。」

「ほっほっほ。抜き打ちのチェックこそ、人間のモラルを視る最強の手段だよ。
 まぁ、この富士基地に関してはそんな事をする必要も無い位、規律を守り、行動する模範的な兵しか居なかったがね。」


クレシマ少将は出されたコーヒーを飲み、美味いと呟いた後――サタケ大佐に話を切り出した。


「さて、サタケ君。」

「ハッ。」

「率直に聞く、君は日本国防軍についてどう思うかね?」

「それは……。」

「この部屋には私と君しか居らん。盗聴の心配があるなら筆談でも構わんよ、思ったとおりの言葉を聞かせて貰えんかな。」


先程の柔和な表情、どこにでも居そうな優しげな老人と言った表情から一転、幾多の戦いを経験した生粋の将校の顔になったクレシマ少将。
その表情を見たサタケ大佐はクレシマ少将がただ単に此処に訪れた訳ではないと悟り、用意していた資料をクレシマ少将へと手渡した。
対して資料を渡されたクレシマ少将は真剣に、それこそ紙に穴が開くのではないかと思うぐらい、一言一句逃さないつもりで内容を見る。
先の戦闘による富士大隊の被害状況、敵機動兵器群と日本国防軍が有する機動兵器との彼我戦力差、そして――新型機の開発計画……。
全てに眼を通し、もう一度眼を通した後、資料を机に置いて溜息をついた。


「なるほど、やはり今の国防軍の機体に装備では帝国軍と戦うのは無理、態々死にに行くような物か……。」

「……真に遺憾ながら、その通りだとこの間の戦闘で痛感しました。」

「なるほどの――で、帝国の機動兵器に対抗できる機体の開発が必要、と?」

「その通りです。従来の機動兵器では彼等に対抗できるどころか返り討ちにされるのが殆どです。
 だからこそ、彼等の機動兵器に対抗できる機体を開発し、配備しなければ無駄な死人を、強いては若者を殺す事になります。」

「……ふむ、やはり君に話を聞いて良かったな。」


サタケ大佐の答えに満足したのか、クレシマ少将は持って来ていた鞄の中から厳重な封が施された書類を取り出し、サタケ大佐に渡した。
……手渡された書類が妙に厳重な封印が施されていることから、この書類の重要さが凄まじい、軍内部ならず政治的なレベルにまで達した物。
許可の無い兵士や人間がうっかり見てしまったとなれば、確実に闇の中に葬られるだろう――そんなトップシークレットの書類だと判断。
サタケは慎重に封を解き、中から出てきた書類を見て……驚愕した。


――軍内部、そして政府の承認が成された書類。

――そして『次期主力量産機の開発計画』と銘打たれた書類。


サタケが望む物がそこに、確かに存在していた。


「少将……これは……。」

「見ての通り、次期主力量産機の開発計画――まぁ、儂が責任者と言う事で話が進んどるがの。」

「何故、その様な書類を私に?」

「君を計画に参加させる為に、とでも言えば良いかの?」


願っても無い事ではあるが、タイミング的に事が『出来すぎている』感じは見受けられる。
何故、保身に走ることに右往左往している政治家共の承認が得られたのか、軍上層部の許可が下りたのか、聞くべき事は山ほどあるが……。
サタケは書類に自分の名前を記入し、己の判子などでは無く、血判を、身命賭してでもこの計画を成功に導くと言う覚悟で血判を押す。
政治的利権が絡んでいるだろう事は容易に想像できるが、それ以上に政治家共の気が変わる前に計画を開始させなければならない。

この間見た、あの鋼の『鬼』とまで行かないまでも、帝国と戦えるだけの物は造りたい。



これが後に繋がる第一歩だと信じ、サタケはこの日――次期主力量産機開発計画に携わる事を決意した。



国連軍が所有する施設の一つ―――K・G・Fは勿論、国連軍でも限られた人間しか知らない『隠れ拠点』とも言える場所にソレはあった。
多少の攻撃程度では傷一つ付かない頑健且つ重厚な装甲、重装甲の機体を軽快に動かせるだけの機動性と圧倒的な出力、そして最大級の攻撃力。
当時、軍に勤めていた技術者たちの一部が狂気と執念の果てに造り上げ、完成となった鋼の巨人、漆黒と真紅で彩られた禍々しい鬼――鬼刃。
全開の出撃した際に剣帝・ミカヅキが駆る骸炎と交戦し、国連軍の到着によって何とか生き延びる事が出来たが、その結果として機体はボロボロ。
外装に関する物はまだ良いが、内装面に関しては……酷いと言う言葉を十個並べたとしても足りない位、酷い有様である。

スペアパーツは機体の特性上、存在しない。

存在し無いなら作るしかないが……コレを造り上げた技術者達は牢屋の中。

装甲を被せて終わり、で済まされる状況ではないしオーバーホールをしようにも出来ない、所謂『詰み』の状態にあった。


「こ れ は ひ ど い」


ズタボロになった鬼刃を見て、隠れ拠点に配属されている技術仕官――通称・主任と呼ばれている男は呟いた。
現代の機動兵器技術の一切が通用しない、強いて言えば身内等の限られた場所でのみ通用する様な言語で造られた物がこんな有様になっているのだ。
コレを修理するとなると莫大な時間が掛るだろうし、まだ国連軍の新型機をよこせ!と言った方が建設的では無いだろうかと錯覚させる位である。
されど、上の方からは『この機体を使えるようにしろ』と言う無情すぎる命令が来ている為、無視するわけには行かないし……。

と、ここで主任に天啓が舞い降りた。





――――神は言っている


――――修理できないなら、造り直せば良いと





……そうだ、何を迷う事があったのだ。
昔の技術で造られた機動兵器が、こちらの技術力を遥かに超えている帝国の機体を部隊範囲で叩きのめす事が出来たんだ。
敵の強い奴にブチ当って機体が壊された、修理が不可能と言うなら、今の技術で造り替えてやれば良いし、それを出来る技術があると自負している。
上層部の言質は既に取ってある『この機体を使えるようにしろ』と言う言質を(※勿論、後でとやかく言われても良い様にレコーダーにも記録済み)
幸い、この隠れ拠点は国連軍にとってのスラム街、吹き溜まり、厄介物が最後に辿り着く場所であるから……厳密な調査等も来ないだろう。
此処の上層部にしたってあの機体、鬼刃が『バカみたいに金が掛るが、それ相応の戦果を約束する機体』としか見て無い。
更には鬼刃が上げた戦果を根こそぎ持って行き、自分の手柄にして地位と発言権を高めている事はここにいる誰もが周知の事実。

どうせやるなら徹底的に、鮮やかに、大胆に、優雅に、華麗に、苛烈に……。

電撃的天啓を授かった後の主任は脳内で鬼刃の魔改造……失礼、改修計画を構築していく。
だが、元の鬼刃自体が『完成しきった機動兵器』であるからして、大幅な強化にはならないし、下手にイジると返って弱体化しかねない。
……昔の偉人達はこれまたエラい機体を造ってくれたもんだと奇才――機動兵器の開発技術に関して類稀な能力を持ちながら、あまりにも極端過ぎる
設計しか行わず、最高の欠陥機を次々に作り出しては研究・開発費を無駄にして来て、その結果、この隠れ拠点に左遷された経緯を持つ男は思う。
本体性能や武器の能力には文句の付け様が無い、ならば――機体の反応速度を挙げつつ、旧式パーツで構成された内部を近代化する。
そうすれば整備班を涙目に追い込むほど劣悪な整備性も少しは良くなるだろうし、反応速度向上で今までより追従性が上がるはず。


「――あの。」

「……んァ?」


『主任のチキチキ鬼刃改修計画!』とか名付けられ、鬼刃の構造(※日々の整備によって判明した物を漏れなく網羅した)が描かれた紙を広げ
つつ、どこから手を付けていこうかと思案していた所、背後から声を投げかけられたのでそちらに頭を向けてみると――青年が立っている。
色素の無い真っ白な髪、特に何をしている訳でも無いのに引き締まり、鍛え上げられた体躯を黒い野戦服で包んだ20代の青年……。
名前も無い、鬼刃を操る事だけを許され、敵と戦うことでのみ生きる事を許された青年の姿がそこにあった。


「おう、何ぞ用か?おっさん、今から目の前でズタボロんなってる機体の改修案考えっから、用件は手短に。
 俺が持ってる無修正エロ動画が欲しいなら勝手に持っていけ、ゲームも同様だが借りパクしたら闇討ちすっぞ。」

「いや、そうじゃなくて……。」

「何だ?俺に告白か?悪いが俺は13歳から25歳までの女の子からしか受け付けんし『やらないか?』は歌って踊れるが、ノンケだ。」

「それも違うんですが……。」

「んじゃ何だ!?さっさと用件言わないと、お前の鬼刃を先○者に変えるぞ!!」

「…………。」

「さて、ウィットに富んだジョークはここまでにして……本題を聞こう、何?」



何時の時代でも、卓越して優秀な『何か』を持つ人間と言うのはドコかのネジがすっ飛んでいる、と良く言うが――目の前の男はその例かもしれない。
滅茶苦茶に整備性に難がある鬼刃をズタボロにしてしまい、修理に時間が掛ると直属の上司からネチネチと文句を言われたので謝りに来たが……。
ズタボロにした事に対する文句を受けるのは仕方ない、敵が規格外だったと言うのもあるだろうが……最後は己の力量が不足していたと思っている。
まさか、予想の斜め上どころか360度反転して更にもう一度周ったかの様な先制攻撃、と言うか絨毯爆撃で完膚なきまで叩き潰された。
発しようとした言葉は男の奇天烈かつ破天荒な言動によって消えてしまい、言葉に詰まっている。


「あー、ひょっとしてお前さん、機体ぶっ壊したから謝りに来たとか?」

「あ……あぁ、その通り……です。申し訳ありませんでした、ご迷惑おかけします。」

「別に構わんよ、むしろ俺は感謝したいがね。お前さんに。」

「――へ?」

「いやさ、だってお前さんが鬼刃をぶっ壊してくれたお陰で、あの機体を思う存分いじくれ……おっと、改修できるから。」


……不穏当な発言が聞こえたが聞かなかった事にしよう、人形はそう思った。


「しかし、あの機体とお前さんとガチでやり合ってここまでぶっ壊してくれるたぁ……相手は何モンだ?
 機体性能が良いぐらいじゃお前さんとアレ……鬼刃がここまでボロカスにやられるとは思えんぞ。」

「…………。」


思い出されるミカヅキ、そして骸炎との戦い。
自分に油断があったわけではない、むしろ一分の油断も無かったからこそこうやって生きているのだと自負できる。
ミカヅキが、そして骸炎が繰り出してくる幾多無数、乱気流の如く繰り出されてきた攻撃、一撃一撃が必殺の刃。
そんな攻撃を全神経を集中し、魂が削られていく感覚すら感じつつ鬼刃の剣を突き出し、致命傷を避けていただけに過ぎない。
前回は偶々、国連軍による横槍が入ったから命を繋ぐ事が出来たが……あのまま斬り合っていたら、何時かこっちが斬られていただろう。

その事が容易く想像できるから、背筋が凍り付きそうになる。


「まぁ、良いや。とりあえず、内装イジって反応速度上げて、お前さんがやりあった化物に追従出来る様にしとくわ。」

「宜しくお願いします、お手数お掛けします。」

「気にせんでえぇよ。こっちゃ、年中暇してる不良技術仕官だからな――偶には働かないと、司令殿から小言言われっからな。」


改修には数ヶ月単位で掛かるから、お前さんもゆっくりしていってね!と、謎の口調でそんな事をのたまいつつ主任は去る。
……恐らくは許されたのだろうと思うが、ドコか釈然としないのは何故だろうと思いつつも人形は思考を切り替えた。
快く(?)鬼刃を修理して貰えるらしいからこちらに関しては問題無い。
ただ、修理に数ヶ月掛かると言われた時は少々困ったが、その期間を剣の修行に費やし、本物の剣を身に付けよう。
今時のスポーツとしての剣では無い、古来より伝えられる合戦での業を、敵を屠る為の剣業を……。
遺伝子情報として刻まれている剣では身についたとは言えない、所詮はロジックの一つとして存在しているだけ。

――丁度良い事に、日本国防軍には『日本軍刀術』と言う古式剣術が伝えられている。

この剣術を身に付ける事ができればミカヅキに届くだろうか?より鬼刃を動かせるようになるだろうか?
それは判らないし、身に付けたところであの常軌を逸脱した剣の使い手に届かない、無駄に終わるかもしれない。
だが、遺伝子に刻まれた剣をなぞるだけ、ロジックだけで動かしている『今』よりは強くなれる筈だ。
これからを生き延びるため、そして各地で激化している戦いに介入し、英雄達の影となるために強く――更に強く!


その一歩を踏み出す為、人形は総司令が居る部屋へと向かった。


数ヶ月という限られたリミット、傷ついた鬼刃が体を休めている間に己は新たな力を手に入れる。


『今』より上の強さを手に入れる為、人形は総司令の部屋へと脚を進めた………。










超鋼戦機カラクリオー・異聞  第三話  了



続く