超鋼戦機カラクリオー異聞 二話



「ほう――鎧の『鬼』によって無人機部隊が壊滅……か。」


報告を受けたその男――ミカヅキと呼ばれた獣人は不敵で、獰猛な笑みを浮かべ、報告に合った『鬼』とやらに思いを馳せる。
日本と言う島国に派遣した部隊はそれなりの規模に戦力だった、それを一人で戦力の60%を壊滅させ、撤退させるとは……。
機体の性能が良いのか、それとも中の人間の腕が凄まじい、あるはその『両方』であればこれ程戦ってみたい物は無い。
……久しぶりに活きの良い獲物が現れたとミカヅキは思いながら脚を進める。

己の第二の体、そしてまだ見ぬ鋼の『鬼』と死合う為の体へ――。



高機動型格闘戦機体・骸炎。

高い機動力と運動性を発揮出来る機動兵器なのだが……武装らしい武装と言えば一つ、携えた太刀が一本のみ。
射撃武器もその他の武装が本体に内蔵されている訳でも無い、骸炎の唯一の武器、これ以外の武器は存在しないが『逆に必要ない』
ミカヅキの卓越――否、超越した魔技を振るい『剣帝』と畏怖されている身にとって剣以外の武器・武装はただの飾り。
デッドウェイトでしかなく、それによって一瞬、刹那でも反応が遅れる様な事があってはならない、そんな要因は排除すべきである。

そんなミカヅキにとって骸炎は唯一無二の相棒と言って良い。

高機動力を優先するあまり、装甲はやや心許ないかもしれないが――そんな物は瑣末事、攻撃に『当らなければ良い』だけの話。
先程にも述べた通り、骸炎は機動力と運動性はすこぶる高く、そして機体の反応も悪くない、自身の技を遺憾無く繰り出せる。


『剣帝』の魔技、それを十二分発揮出来る機体。


彼等が味方に居れば心強い事極まりないのだが……残念ながら彼は敵の将官だった。
更に彼は強い敵と戦いたいが為に軍に身を寄せ、死合う為に剣を振るう――そんな男が報告にあった『鬼』に目をつけるのは必然だろう。
ミカヅキは下士官達に出撃の旨を伝えつつ、たった一機で全体の60%もの戦力を壊滅させ、鉄機蜘蛛を葬った『鬼』に思いを馳せる。



……嗚呼、出来るならば我等が出向いた場所に来てくれます様に、と。



ミカヅキは骸炎に乗り込みながらそう思った。

名も無き人形は鬼刃を疾らせる。

国連軍の上層部からの命を受け、帝国軍の動きをキャッチしたので彼等が行動を起こす前にこれを攻撃・殲滅せよ――。
そう言う実にシンプル且つ判り易い命令を受けた人形は出撃し、蒼天の空に浮かぶ雲に身を隠しながら目的地へと向かう。
前回の富士大隊救援の時は仕方が無いと言えば言えばそれまでだが、自分と鬼刃はKGF、そして国連軍にも存在しない物。
それ故に出来る限り他者との接触は避けなければならない、影の者が光の下に出る事は許されない、そう言う事である。
鬼刃をオートパイロットモードに切り替え、目的地に着いて互いの存亡を賭けた殺し合いが始まるまでの間、人形は眼を閉じた。
余計な思考は一切不要、この身、この腕、この体を刃と成して敵対する者を斬滅する一振りの剣となる為の儀式。
コクピット内は鬼刃の出力機関と各ブースターの唸る様な轟音が響いているが……人形の耳には届いていないのであろう。


「――――!」


センサーに反応。
戦いの前の儀式、自分に赦された約束の時間は終わりを告げ――己が刃を以って敵を斬り散らす時間がやってきた。
オートパイロットモードからマニュアル操作に切り替え、蒼天の空から大地に向かって一気に急降下して強襲をかける。
蒼天を切り裂き、雲を貫き、大地が見えた――と思えば展開していた敵軍、帝国軍から熱烈な対空砲火が開始された。
砲戦型・羅甲を初めとする各機体は突如として現れた鬼刃に戸惑っていたが、敵性体が『ただ一機』のみと知ってから
直ぐに撃滅してやると言わんばかりに、そして軽い気分で砲撃を開始するのだが――その気分は次の瞬間、絶望へと変貌する。
砲戦型・羅甲の火砲による一撃は侮れない、重装甲を誇る鬼刃でも直撃を受ければ損傷は免れないのは明らかだ。
しかし、火砲は強力である物の速射性に関して言えば高くは無く、次々に飛来してくる砲撃に『穴』――言い換えればリロード
が行われる際の隙を狙い、一気に接近し、懐に潜り込んでしまえば火砲は使えないし、近接戦を想定して携帯している小火器では
鬼刃の装甲を貫通する事は無いだろう、避ける必要は無い。
狙撃型の羅甲の姿も確認できるが、こちらも砲撃型と同様、遠距離に徹していれば分が悪いが接近してしまえば何も出来ない。
そして備えているスナイパーライフル、弾速に貫通力、破壊力に優れる優秀な武装ではある物の、発射サイクルがやや遅いのだ。
火砲に混じって飛来してくる高速徹甲弾は厄介極まりないが、鬼刃の機動性を生かせば回避ないし攻撃が届かない所へ避けるのも容易。
それに先程から此方を撃墜せんが為にドカドカと撃ち続けているんだ、いつかは弾切れに陥ってリロードする時が来るはずである。
その時まで回避に専念すれば良い、どこかでリロードが行われて対空砲火に穴が出来た所から斬り崩す――それだけだと人形は思案。
機体のセンサーを走らせ、砲撃が途切れた所を探りつつ強力な火砲による対空砲火を回避していた所、鬼刃のセンサーは発見した。
眼下に展開する部隊の内――左斜め前方に位置する砲戦型達が火砲を撃ち尽くし、リロードタイムに入ったのを。


「この瞬間を――」


瞬時にアポジ・モーターを作動させて体勢を整え、脚部バーニア、肩部バーニアスラスター、廃部ブースターの出力を解放。
凄まじい、戦闘機を自由自在に駆るトップガンですら意識を失うだろう急激な加速と共に鬼刃はリロード中の敵に向かう。
音速の壁を易々と突破し、鬼刃自体を一種の質量弾に見立て、豪速で砲戦型へと突っ込み――刀を構える事無く、そのまま……。


「――待っていた!」


突撃した。
敵機をクッション代わりにすると言う余りに乱暴すぎる落着を行い、一機の敵をスクラップにしながら殺人的な速度を殺す。
鬼刃のコクピット内にもその振動と衝撃が来るのだが、人形は歯を食いしばって耐え、操縦可能な程度に揺れと衝撃が
収まったと同時に再びアポジ・モーターを作動して機敏に起き上がりながら――右肩の可動式ウェポンラッチに取り付けられた刃。
斬機刀・斬滅を抜き放ち、混乱している敵機の掃討に移行する。
如何に強力な火砲と言えど、懐に潜り込んでしまえば撃つ事は出来ない、まして味方がいるなら尚更に―――。







「――判断力十分、操縦技術も有る、そして機体の武器が刀一本のみ……ってのが良いねぇ。」


愉快そうに笑いながらセンサーの望遠モードで――思う存分暴れている『鬼』を眺めつつ、ミカヅキは言った。
正体不明の『鬼』の存在を報告で受けてから死合いたいとは思ったが……まさか、こんなに早くその機会が訪れるとは。
偶然か、それとも鬼と同じく『刀一本』で戦う者同士が引き合ったのか、それは判らないが……とにかく、念願の相手が居る。
その事実だけあれば十分だと言わんばかりにミカヅキは望遠モードを解除し、機体――骸炎を通常モードから戦闘モードへ。
己が軍に居る理由は『強い奴と戦い、死合いたい』と言うその一点のみ。
強い奴と戦い、剣を交える事こそが剣士の誉れであり、その前には国の栄誉や軍の規律など瑣末な問題に過ぎない。


「……おお、やりよるな……あの鬼殿は。」


己が第二の体、戦場で戦う為の鋼の装甲に覆われた機体――剣帝と呼ばれるミカヅキだけが操れる、蒼い剣士『骸炎』
とにかくモニター越しに暴れている鬼と死合いたい、その一心で様々な起動プロセスをすっ飛ばし緊急モードで起動を行う。
最低限の機能が立ち上がると同時にミカヅキはレーダーを起動、友軍を示すマーカーが少なくなっている事に心が躍る。

あの鬼は本物だ――と。

これ以上、部隊を損壊させれば上から小言を言われるのは目に見えているし、なにより自分が鬼と戦いたい。
骸炎を起動させたミカヅキは後退を示す信号弾を放った後、機体に備わった唯一の武器である太刀『弧月丸』を構えて躍り出る。
後退の信号弾を見て、慌しく後方に下がっていく友軍機には眼もくれず、ただひたすらこの先に居るであろう鬼の下へ――。
……レーダー上に印されている赤いマーカー、唯一の敵にして圧倒的な力を持っている鬼との彼我距離は近くなっていく。


―――接触まで1km弱

うっすらとだが『鬼』の姿が見えてきた。


―――接触まで700m

相手も骸炎に気づいたのだろう、刀を構えている……そうでなくては!


―――接触まで400m

もうすぐ、もうすぐだ……もうすぐ鬼と死合える……!


―――接触まで100m

待たせたな、鬼殿……さぁ―――



「――死合おうではないかッ!!!!」


元々、高機動格闘戦機として開発・建造された骸炎のトップスピードは凄まじく、旋風・突風と呼ぶに相応しい。
ソコにミカヅキの剣の腕、骸炎の弧月丸が加われば旋風は竜巻に、突風は鎌鼬へと変貌し、敵対者を斬り捨てるに至る。
様子見等と相手に対して無礼な事はしない、初めから殺る気で、全力を込めた絶殺の刃を叩き込む!
轟、と言う音すら聞こえない一撃、剣の軌跡が見えない――例えるなら『閃』としか言い様がない、一撃必殺の刃。

『剣帝』と呼ばれた儂の一撃、どう避ける?どう耐えてみせる?

多少、腕に覚えがある程度では斬られた事すら気づかないだろう、鮮やかで強力無比な抜刀。
相手――すなわち、鬼の出方を伺いながらミカヅキは逸る気持ちを抑えつつ、鬼の反応を待つ。


ギャリィイイィィイィイイィィンッ!!!


刹那、耳の鼓膜を破壊しそうな程、不愉快極まりない金切り音がブチ撒かれ、鮮烈な火花が散る。



「……止めた。」

骸炎のトップスピードと自重を乗せた抜刀が。


「……儂の一撃を止めおった……!」

剣帝と呼ばれた儂の剣を、天狼一刀流の刃を!


「……は、ハハハハハハ……ハ――――ッハッハッハ!!!!!
 最高!最高だよ鬼殿!貴殿は噂に違わぬ強さだったと言う訳だ!!!」





―――冗談じゃない、何が『止めおった!』だ、何が『最高だよ鬼殿』だ!

全神経を集中させ、片腕が無くなる程度で済めば御の字位の覚悟で刃を受け止めたんだ!
幸い、咄嗟に突き出した斬滅が敵の剣を真正面から受け止めてくれたからこそ、こうやって無事で済んでいる。
こっちに単機で向かってくるのを捉えた時から嫌な予感はしていたが……まさか、こんな化物がこの戦場に居たとは……。
此方に損傷や消耗は殆ど無い、限りなく完璧な状態だとしても――目の前の敵、蒼い剣士は倒せるかどうか解らない。

だが、この身は敵を滅ぼす為だけに存在が赦されている。

この身は敵の掃討ないし撃退する事でしか存在を赦されない。

まして――敵を目の前に撤退する事など、赦されるはずが無い。



ならば―――答えは一つ、身命を賭して戦うまで



先程の一撃で乱された思考を切り替え、眼前で刃を掲げる敵を倒すことにだけ集中する。
目の前の敵は凄まじいと言う言葉を軽く通り越した存在、一瞬でも気を抜けば此方がアッサリと狩られてしまうだろう。
今まで戦ってきたどの敵とも違う、そしてどの敵よりも『ヤバイ』相手であることは先刻の一撃を見るに明らかだ。
あんな一撃を何度も受け切れる訳が無い、さっきの一撃を受け止めれたのは全くの『幸運』であり、言うなればマグレ当たり。
攻撃させないよう、攻め続けると言うのも手段の一つだろうが、相手は無防備に見えて全く隙が存在しないのだ。
迂闊に攻め入れば此方が瞬時に斬られ、滅ぼされる。
しかし、このままだと状況は好転しない、援軍を求める権利などは初めから存在しない。
そして何より、数だけの援軍など目の前の敵機、そのパイロットには意味が無いだろうこと位、容易に理解できる。

―――どう攻める?

―――どう斬り崩す?

答えは見つからない。
相手と自分の技量の差は明らかであり、埋め様が無いほど離れている。


『――どうした、鬼殿?来ないなら、儂から行かせて貰うぞ?』


通信機から入ってくる声、そしてモニター上から残像の如く霧散する敵機。


「―――ッ!?」


無意識に斬滅を右へと突き出し、骸炎が振るう弧月丸を払った。
だが、骸炎の攻撃は暴風雨……いや、嵐のように繰り出され、四方八方から次々に閃光の疾さで襲い掛かってくる。
振るわれる剣による一撃、斬り裂かれた空気が鎌鼬となって鬼刃に襲い掛かり、迫り来る幾多無数の剣戟に刃に自身の剣をぶつけた。
一撃一撃を払う毎に魂と精神が削り取られていく感覚を味わいながら、人形は必死にミカヅキの放つ剣を払い、鎌鼬を切り裂く。
しかし完全に攻撃を打ち払う事は出来ず、肩部装甲を初め、徐々に装甲に刻まれる傷跡が目立ち始めていた。

――このままでは殺られる

人形は意を決して骸炎の一刀を打ち払い、相手が再び攻撃に転ずる……その一瞬、その刹那に斬滅を突き出した。







「うぉ……っ!」


弧月丸を払われ、崩れた体勢を立て直しつつ攻撃に転ずる――この刹那を狙って攻撃してくるとは……!

これ程までに嬉しい敵と今まで出合ったことは無い!

この鬼と!そしてこのパイロットは儂の敵だ!

攻守が逆転し、大地を、大気を、空間をも断ち斬らん勢いで振るわれる刃を受け止め、いなしながらミカヅキは歓喜する。
数多の剣の使い手と死合い、数多の敵を斬ってきたが、ここまで渡り合えた敵は何人居ただろうか……と!
振るわれる刃、剣と剣がぶつかり合い、鋭くも鈍い金属音が支配する世界でミカヅキはこの敵と出会った事を感謝した。

―――しかし、出会った以上は斬り合うのが必定。

―――だから互いに禍根が残らぬよう、誠心誠意を込めて全身全霊で斬り合うのみ!

―――己が望む敵が現れてもそれは変わらない。



「――鬼殿。」

『――――何だ。』

「儂はミカヅキと言う。貴殿の名を聞いておきたい。」

『――――――』

「どうした?儂は先に名乗ったぞ?」

『―――俺に名前など無い。』

「……何?」

『俺には名前など無い、ただこの『鬼刃』を動かして敵を倒す為だけに生かされている人形だ。』

「――何と!」


ここまで剣を打ち合った事に敬意を表し、名を聞いておこうと思ったが……よもや、名前が無いとは。
規格外の機体、凄まじい強さ、更にこの期に及んで度肝まで抜いてくるとは――やはりこの鬼は面白い!
響く金属音をBGMに互いに剣戟を繰り出し、そして両者共に強く刃を打ち合い、鍔競り合いの形となった。
……刃と刃が触れ合う部分から火花が散り、機体の全身が、得物を持つ腕がギシギシと音を立てて軋む。
さて、次はどう攻撃を仕掛けるか――とミカヅキは愉快そうに口を歪め、思案していた所――。


『み、ミカヅキ様!国連軍と思われる部隊がこちらに向かって進軍中!!』

「……むぅ、無粋な連中よの――こっちの数も心許ないし、此処は撤退するしかあるまいよ。」

『では、全軍撤退で?』

「うむ、そう命令を出して――あぁ、今、儂と刃を交えとる鬼は儂の獲物だからの。
 ……手ぇ出したら、友軍と言えども容赦せんぞ?」

『りょ、了解しました!全軍に通達します!』


下士官との通信を切り、鍔競り合っている鬼刃の剣を跳ね飛ばしながらミカヅキは骸炎を後方へと跳躍させた。
本来ならば心行くまで今しがた対峙していた鬼と斬り合いたいが、手駒を無闇に消耗してしまうと後で小言を言われる。
……将官とは全く面倒臭い物だと不機嫌な表情で思いつつ、手にしていた弧月丸を鞘に収め、佇んでいる鬼に告げた。


「名無し殿!今日は非常に楽しかったぞ!出来る事ならばまたこうして死合いたい物だ!!」







そう言い残した後、骸炎は撤退していく敵機と共に自身も撤退した。
……数分前まで、一歩間違えれば即座に死に繋がる、一瞬の気の緩みも許されない壮絶な斬り合いを行っていたとは思えない
静寂が訪れ、ただ一人戦場に残された鬼刃は念の為に周辺をサーチして、残存している敵機が居ない事を確認した後、刃を収める。

――名無し殿!今日は非常に楽しかったぞ!出来る事ならばまたこうして死合いたい物だ!!

反芻される、ミカヅキの言葉。


「……冗談じゃない、お前みたいな規格外と戦ってたまるか……俺と鬼刃が何体あっても足りゃしない……。」


装甲損傷度24%、腕部アクチュエーター稼働率32%まで低下、左脚部損傷率19%……。
機体の診断プログラムを走らせ、モニターに表示されていく損傷具合を見ながらため息をつく人形。
この機体、鬼刃は凄まじい性能を持つ反面、整備性に多大な欠陥を抱えており……替えパーツ等も流通している訳ではない。
多大な損傷があった場合はその都度、新造して損傷した部分と交換しなければならないし、スペアの機体等は当然、無い。


「――今より強くならないと……あいつは倒せない、か。」


狂気の果てに産み落とされた鋼の鎧、鬼刃。
比類なき能力を持っている、それは判っているのに――今回、ミカヅキと名乗った男と戦った際、手も足も出なかった。
奴が放つ攻撃全てを全神経を集中させて受け止め、ホンの僅かな隙に攻撃をねじ込んで体勢を崩さなければ……負けていた。
奴と戦うたびに精神力と魂をすり減らす戦いをしていては保たない、今回はミカヅキ一人だけだったから良かったが――。
敵が一人だけとは限らないし、ミカヅキの様に真正面から正々堂々と戦いを挑んでくる訳でもないだろう。

機体と言うハード面が十分なら、パイロットと言うソフト面を強くするしかない。

この身を構成する遺伝子に刻まれた剣――鬼刃のフルスペックを発揮出来る、只それだけでは次にミカヅキと戦った時に勝てるか解らない。
『鬼刃のフルスペックを発揮出来る』と言うのは絶対条件だが、それ『+α』があって、ようやく奴に、ミカヅキと渡り合えるだろう。
機体の操縦技術と共に遺伝子に刻まれた剣の情報、それを己の力で超えなければ……どうあがいても、あの男には届かない。


「―――強く……ならないと、な。」


人形は呟き、拳を握り込む。





機体が強い、機体の全性能を発揮出来る――それだけでは通用しない敵が居る事を知った。


己の限界を知り、己の限界を超える事を決意した。


今よりも高く、そしてミカヅキと同じ所まで……いや、ミカヅキを超える事を決意する。


「とにかく、まずは行動……だな。」


人形は行動を、ミカヅキと戦う為の行動を起こす為、一刻も早く帰還せんと鬼刃の推力機関を解放し――飛び去った。











超鋼戦機カラクリオー・異聞  第二話  了



続く