対決!秘剣vs妖拳〜後日談その2〜



突然だが、場面は変わる。
元々は殺風景だったのだろう機能的な部屋。しかし、機能性重視な内装ではあるがその中にも、どこか華やかさのあるこの居室。
そして今、居室の主は壁のモニターの隅にあるキーを叩いている。

RuRuRuRuRu ・・・カチャ

「はい、こちらサルディーニ・・・おやっ? 一体どうされました?!」

モニターはTV電話の画面も兼ねて居るらしい。映し出されたのは、ヴァチカンの誇る最強の聖堂騎士・フェルディナンド=サルディーニ神父の姿。
そして居室の主は、ソニア=アリストン大尉。彼女も優秀なロボットパイロットであるが、今日は両者とも非番の日らしく、普段着である。

「・・・神父さん。ちょっとお聞きしたいんですけど、宜しいかしら?」

何か押し殺した様な低い声音。パイロットとしての腕だけで無く、美貌に関しても人並み外れたソニアが、その美声で凄みを効かせるだけで背筋に寒気が走る。
・・・一体、神父が何をしたと言うのだ?!
神父も、その険悪な気配に気付かない筈が無いのだが、それを軽く受け流す。

「他人行儀ですねぇ。『フェルディナンド』と呼んで頂いて結構ですよ」
「・・・神父さん。コレは一体、何かしら?!」

神父の軽口をあっさり聞き流したソニアの手には、開封したプレゼントとおぼしき箱が掲げられていた。中には純白の綺麗な布製品・・・これは、もしかして?!

「ささやかな贈り物ですが? あ、もしやデザインがお気に召さなかったとか?!」
「そうじゃなくて! それが何で下着なのよっ?!」

羞恥心で顔を真っ赤に染めてソニアが怒鳴る。下手な受け答えをすれば、たとえTV電話越しにでも、神父の首を絞めてやるといった風情である。
ところが、意外な答えを神父は返した。

「実はあの後、おたくのダイアンサス開発部に話を聞いたんですよ」
「・・・?」
「あの転送装置は『有機物』しか転送出来ないそうですからね。ですからシルク製なんですよ、それは」
「???」
「シルクも『有機物』ですから。それが転送される様なら、貴女のお役に立てると思いましてね。もちろん、上質の品ですから普段使って頂いても結構ですし」
「・・・取りあえず、ありがとうと言わせて貰うわ。でも、そういう事は直接私に言って貰えば、それで良いですから!

怒りの矛先を向ける場所を無くして、TV電話を切ろうとするソニア・・・だが。
その手がピタリと止まり、先程以上の冷気を放つ口調で会話を続ける。

「・・・神父さん。もう一つ聞いても宜しいかしら?」
「えぇ、なんなりとどうぞ」
「何故・・・私の3サイズをご存じなのかしら?!」

それはそうだ。身に着ける物だから、サイズが違っては話にならない。つまりは、サイズを知らなければ贈れない。では、どうやってサイズを知ったのか?
だが、返答次第で瞬時に修羅場と化しそうなその問いに、神父はあっさり答える。

「あぁ、これですよ」そう言いつつ、神父が取りだしたのはグラビア本?
「ッ!・・・それは」
「えぇ、そういう事です・・・ダイアンサスの建造費の足しになれば良いな、と」

そう。神父が手にしているのは、ソニア自身の写真集。
ソニアが搭乗するダイアンサス自体は量産機であり、重要なのはその槍と盾・・・そして、ソニア自身である。
裏を返すと、ダイアンサス本体が幾ら被害を受けようとも、替えを用意すれば良いだけの話なのである。
だが、替えの本体と言っても建造費は馬鹿にならない。それを捻出する策の一つとして、ソニアの写真集も販売されている訳である。

もっとも、ここで嬉しい誤算が発生している。
才色兼備で下手なモデルをも上回る美貌の持ち主であるソニアの人気は、地球を護るために闘うという立場も相まってうなぎのぼりに上昇しているという事である。
お陰で、ソニアの写真集などの売れ行きも爆発的な記録を誇っている。

「・・・次・・・ッ?! じゃなくて! 何かする時は事前に連絡して下さいっ!」

ガチャン。
赤面したソニアの顔を映しだしたモニターが、神父の目の前で突然暗転する。
それを見た神父は、苦笑しつつ写真集に目を向け、ぼそっととんでもない科白を漏らす。

「まぁ・・・この写真集で確認するまでも無く、3サイズ位は見て取れましたけどね」

だが、神父が写真集を見ているその頃に。別の手もその写真集を開いていた。
或る意味では彼らと関わりがある。しかし、彼らが予想だにしないその人物は・・・


戻る  TO BE CONTINUED・・・