対決!秘剣vs妖拳〜後日談その3〜



再び、場面は変わって。ここは某所にあるアムステラ前線基地の一室。
その作戦会議室のモニターに、色々な角度から撮られた映像が映し出されて居た。サントスパーダとダイアンサス、そして剣王機との交戦記録である。
ガミジンがその記録映像を一通り見終った処で、隊長が声を掛ける。

「なかなか良い映像が撮れたと思うがな。どうだ?」
「フッ、そうだな・・・だが、貴様との立ち会いが一番参考になったぞ。『百見は一触に如かず』と言うからな」
「・・・んっ? しかし、他にも技があったろう?!」
「まぁな。だが、あれらは機体の性能に頼る部分が大きい。映像で見れば充分だ。技量に関しては、最後に使ったあの剣技に集約されていた」
「そうか。それなら直に奴と渡り合った甲斐があったと言うものだ」
「あぁ。だが、勘違いはするなよ。貴様の物真似も参考にはなったが、シンの奴はもっと強い。貴様のはその目安にしかならん」
「・・・だろうな。しかしお前の認識も訂正させて貰う。我等が奴に『勝つ』事は出来ん。だがな、『倒す』事は出来る・・・手段を選ばなければの話だが」
「・・・シンの奴、まだ甘ちゃんな部分もあるからな。だが、これは覚えておけ! 誰だろうと下劣な手を使った奴は、俺がこの手で潰すっ!!
「ふふっ・・・我等とて、相打ち覚悟で倒す気はせんよ。命令されぬ限りはな」

卑劣な行為を嫌悪するガミジンの発言に対し、苦笑で返す隊長。
このまま話が続くと、危険な雲行きになると判断したのか。突然、テーブルの上にあった平らな包みを手に取ると、ガミジンの前へと滑らせる。

「・・・何だ、これは。土産か・・・ッ?!」

ガサガサと包みを開けるガミジンの手が、ピタリと止まる。それもその筈。中身は絶世の美女の写真集だったのだから。
思わず息を止めたガミジンの口から、低い口笛が漏れる。

「こいつは驚いた・・・どこぞのオトコ女とはえらい違いだ。が、何の関係がある?」
「関係はあるさ。お前も既に知っている筈だ」

今までの話と無関係そうな写真集。怪訝な顔のガミジンに、即答で『関係ある』と応える隊長。しかも『既に知っている』と・・・ガミジンの片眉が跳ね上がる。

「・・・どういう事だ、一体?!」

その問いには答えず、記録映像を巻き戻す隊長。
そして、ダイアンサスが水鋼獣の大玉に特攻する場面が映し出される。

「お前も見覚えはある筈だ、この機体は。以前、片腕を持って行かれたろう?」
「・・・あぁ。まさか、あんな無茶苦茶な自滅野郎とは思わなかったからな」
「だが、まだ生きている。しかもこれは有人の動きだ。過去の記録映像を分析した結果だが、自動操縦では無い。1人のパイロットの動きだと判明した」
「・・・フン。命知らずの馬鹿も居るもんだな。どういう自殺願望野郎だ?!」
「いや。『野郎』では無いぞ」
「女だろうと同じ事だ。どんな奴・・・おいっ、まさかっ?!
「ふふっ・・・やっと、気が付いたか」

ソニアの写真集とダイアンサスを見比べて、呆気に取られた顔をするガミジン。
ニヤリと笑いながら隊長は、ダイアンサスが爆発する寸前で映像を止める。

「ここだ。これを見てみろ」隊長の手が動き、画像に赤いフィルターが掛かる。
「ここに影が見えるな? これが、こう・・・」
「・・・転送か?」
「そうだ。パイロットは、自爆前に脱出していた訳だ」
「なるほどな・・・それで謎が解けた。だが、また一つ謎が増えたな」
「んっ? 何がだ?!」
「何だって、こんな物があるんだ?」

と、ソニアの写真集を掲げるガミジン。
隊長は、どこか面白がっている表情でそれに答える。

「何でも、その写真集を機体の建造費に当てているとか言う話だ」
「なるほどな。あんな無茶な使い方じゃ、機体の消耗も激しいだろうよ・・・ってちょっと待て。それじゃあ何か? この1冊の代金も、建造費の一部か?!」
「まぁ、そうなるな」
「・・・壊してる当人が、再建造の手助けをしている訳か?! やれやれだぜ」
「全くだ」

ガミジンと隊長は顔を見合わせ、どちらからともなく笑い始める。
そしてその笑いは、百の言葉よりも雄弁に互いの事を語り合って居た。


THE END