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いかり肩の機体であった。一つ眼の機体であった。
二の腕が細く、肘から先が太い。

胸部から腰に掛けて、肉食動物の犬歯(牙)をモチーフとした造形(デザイン)になっている。

大地(ガイア)踏みしめる両の脚が逞(たくま)しい。


 ー その機体の名、 羅 甲 (らこう)


沈むは夕日。
文字通り『黄昏』。

西を目指して羅甲が歩を進めていた。


・・・・


(基地に戻る気は無かった。)

(上官だった男に殺されかけ、汚名まで着せられそうになったのだ。)

(元々煙たがられていた俺達だ。)

(戻ったトコロで、ロクな事はあるまい。)


  ー だからって言ってアテも無く。

  ー 敵星(に)一人で何をしようって言うんだい?


(解りません。)

(解りませんが・・・。)

(トロトロとして、粘着質にとぐろ巻く『脂火(あぶらび)』が、チロチロと俺を駆り立てるのです。)


  ー なんだいソイツァ?


(『怨恨』です。)

(俺は生涯あの巨大な機体とその操者を許しはしないでしょう。)


  ー アイツにゃ命を助けて貰った。


(だけれど、恩師の命を奪った。)


  ー アイツが居るから今こうして。


(だけれど、恨みは骨髄までに。)


  ー それで良いのかい?

  ー お前さんの人生は?


(俺には・・・。)

(『名すら無いのです。』)


(顔も知らぬ母を偲び・・。)

(訳も分からず孤児院から徴兵され・・・。)

(不安と絶望の中『強く生きな』と言ってくれた隊長なんです。)


(そんな隊長を殺したアイツを・・ッ。『許せる訳が無いじゃないですか・・ッッ。』)



  ー 俺は言ったんだぜ?


  ー 母ちゃんを大事にしろってな。



(顔も知らぬ母じゃありませんかっ。)



  ー それでもお前の『たった一人の母親だ。』



(・・・。)



  ー なぁ新兵(ルーキー)。

  ー 忘れちまえ。

  ー 忘れちまえば良い。

  ー 忘れるって事も一つの才能だぜ?


  ー『強く生きる』んだろぅ?


  ー 大切なのは恨みを晴らす事か?

  ー それとも培った経験を育(はぐく)む事かい・・っ?




(・・・・。)


(隊長・・・ッ。)




「でも。」


「『牢獄(その怨恨)から出られなくなってちまった人(ちと)は、どうすれば良いのでちょう?』」


「その怨恨に囚われてちまったからこそ・・、『 逃 げ 出 せ な い の で は 、 な い の で ち ょ う か ? 』 」



(ッッ!!)


新兵(ルーキー)はその歩を止めるッ!!






「 『  バァァァァアア ア ア ア ブ バ ブ バ ブ バブバブバ ブ バ ブ ゥ ゥ ウ ウ ーーーーーーーーー ッッッッ ! ! ! 』 」




キンキンとノイズする『金切り声』が響き渡ったッッ!!


・・・・




○SECRET PENIS ードクトル・ベイベーの陰謀ー

 前編「名無しの新兵(ルーキー)」





・・・・



その姿は実像であった。
その姿はリトルでキューピットのようであった。


固定されてる『無垢な表情(ベイビィ・フェイス)』。メタリックシルバーに彩られた『身体有色(ボディカラー)』。

控え目なペニス(お○んちん)とポッコリした寸胴腹が『西洋彫刻』を連想させる・・・。



『脳移植型改造式鋼鉄赤ん坊(スーパー・メタリック・ベイベー・カスタム・バディ)』。



特異な体と特異な名前を持つ男・・・。
その名は・・・。




「 『 ド ク ト ル ・ ベ イ ベ ー ・・・・・ ッッ 。 』 」


 新兵(ルーキー)は戦慄を覚えた。




(この男。)

(地球生まれでありながら、侵略以前からアムステラ神聖帝国に属し。)

(このアフリカ大陸南部の拠点奪取に置いて、多大なる戦果を挙げた『この区域最大の戦功者』である訳だが・・・。)


(その大物が、立体映像も使わずに直々になんの用だと言うんだ・・・?)





 ドクトル・ベイベーは両腕を広げる。



   ー君(チミ)は迷い子。彷徨(さまよ)うのは見失ってしまったから。




 ドクトル・ベイベーは両の手を開く。



   ー君(チミ)は迷い子。彷徨(さまよ)うのは、手に入れた大切なモノに気付いていないから。





 そして、ドクトル・ベイべーは新兵(ルーキー)に語りかける。



   ー名無しの新兵(ルーキー)。

   ーボクは、君(チミ)に福音を告げにきました。



「逃走を止(や)め、今一度『アムステラが支配』を『享受』するのです・・・。」



とても暖かで。
まるで毛布のようで。

何もかもを包み込む「 妖しさ 」に満ち溢れるその言葉。



「ド・・。」

「ドクトル・ベイベー様・・・・ッ。」


新兵(ルーキー)は、彼(ベイベー)に惹かれる。

惹かれてしまう。



他星間の複合帝国であるアムステラ神聖帝国と言えど、ベイベーの姿は『特異』だ。
怪しいとか。人とは違うとか。そんな言葉では言い尽くせない程の『異様さ』に満ちている。

だが、その『異様さ』をも世間に許容させてしまう『説得力』が彼(ベイベー)にはあった。

巨人症と呼ばれる、規格外(大き過ぎる)背丈を持つ者が居る。
小人症と呼べれる、規格外(小さ過ぎる)背丈を持つ者が居る。

彼等は特異な存在である。
彼等は人とは違い過ぎる存在である。

「同じ人間である」と口では言えるだろう。
しかし、世間が彼等に向ける『その物珍しげな視線』はそうでないで告げている。


そんな彼等が世間に許容されているのは何か?


何ら難しい事ではない。

それは今そこで『明確な意思を持ち、生きている姿』が其処にあるからである。
今そこで我々と同じく『この世の残酷を知りつつも、生き抜いている姿』が其処にあるからであるのだ。



(い・いけない・・・。)

(惹き込まれるな。惹き込まれちゃいけない・・・ッ。)

(沁み渡る言葉。人並外れたその姿。)

(どれもが特異で。活目せずにはいられないが・・・ッ!)


思考渦巻く新兵(ルーキー)に対して。



「何を恐れているでちゅ?」

憐(あわれ)みの一声。



「『理不尽なその死』と『理不尽な上司』。」

「そして『理不尽な奪命者』が、君(チミ)の判断を鈍らしているのでちゅ。」


「でも、迷うのなら『アムステラの膝の元で・・・。』」



「求めなちゃい。」


「アムステラのご加護は求める者にこそある・・・。」


慰(なぐさ)めのその声。




(隊長・・・。)


(俺は・・どうすれば良い・・・ッッ!!?)




 ー 静寂が訪れる。


 ー 互いが沈黙をする。



 ー 雄大な平野。沈む行くは夕陽・・・。


 ー 新兵(ルーキー)は迷い。

 ー 新兵(ルーキー)は苦しみ。


 ー そして新兵(ルーキー)は・・・・。



「『ドクトル・ベイベー。』」



その口を開いた。


・・・・



名前が無かった。
名すら無かった。

便宜上の名前はあった。
法に示す名前はあった。

でも、それは本当の名前じゃない。


「○○くん。」

「君はもう十分大人になった。」

「この置手紙を見せたいと思う。」


そう言って、孤児院長が見せたのは・・。
水にでも浸かったのか、ヨレヨレになったその置手紙。



(・・・・。)

『僕』は、恐る恐るそれを手にした。


大人になった?それは年齢の事か?
人並みに成長をしたこの背格好の事なのか?

それとも世間の歯車の一部として、
『弱者(いじめられっ子)』の立ち位置を、堅持し続けてきたご褒美つもりなのか?


「○○くん。」

孤児院長が急かすように僕の名を呼ぶので・・・。


「は、はい。」

僕はおどおどと、その手紙を開いた。



・・・・。


・・・・。


・・・・。


僕は反応に困った。


字が汚い・・・と言うよりも。

字が滲んでしまって読みようがない。


(どうすれば良いんだ・・・これ?)


これが率直な感想である。

正直・・。
今更、こんなのを見せられたトコロで何になると言うのが本音だ。

僕の精神はズタズタってヤツだ。
心を持たない事。それがこの社会で生き抜く術では無かろうか?

苦しい事を苦しいと感じてしまうのは『心があるからだ。』

感動しなければ良い。嬉しいと思わなければ良い。
苦しい事も当たり前なら、仕方ない事って諦めもつく。


(面倒な事になってしまったな・・・。どう言えば院長は満足してくれるんだ?)


感動の無い事だからと言って『特に何とも思いません』と答えると、世の中上手く行かない事が多い。
常套句でも答えて、さっさと退散をしたいのだけれど、意味の解らない物を見せられると返答に困ってしまう。



「そこに書いてあるように『その子の名は・・・』と言うトコロだけは読めるだろう?」


「は・はい。」


不意に尋ねられてしまったので、僕は驚いてしまった。



「けれども、他は滲んでしまって読めたモノではない。そうだね?」


「はい・・。そうです。」


どうやら院長は続けて話しをしたいようだ。
「はい」と言っていれば、この場は済むのかも知れない。



「君の母親が涙を流して書いたから、そうなったのだよ。」


「はぁ・・・。」


僕は生返事をしてしまう。


(ホントかよ・・・。)


そう思ったからだ。

院長は、その場に居たとでも言うのだろうか?
何故、涙を流して書いたって事が解るのか?

そんな証拠どこにあると言うのだろう。

そんな愛情の深い母親なら、何故僕を捨てたのだ。

そんな事ある訳がないじゃないか・・。



「不思議に思うのも無理はない。」

院長が続ける。


「確かに・・・。推測に過ぎない部分は多々にある。」


「だがね、○○くん。」

「あの朝、私は『町中響き渡ったんじゃなかってくらい大きな泣き声』で目が覚めたのだよ。」


「一つは君の泣き声・・・。」

「もう一つは・・・。」


「泣きながら走り去っていく『君の母親の泣き声だ』。」



「母親の泣き声は、いずれ聞こえなくなっていったが。」

「君はずっとずっと泣き続けてね。」

「泣き疲れては眠り。泣き疲れては眠り。延々と君は泣き続けたよ。」

「泣き続ければ、母親が戻って来てくれると信じきっていたのだろうね。」

「それが君の日常。それが君にとって当たり前の事であったのだろう・・。」


「それだけ二人は。深い愛情で結ばれていたのだろうねぇ・・・。」



「・・・〜〜〜ッ。」

言葉が無かった。

と、言うよりも・・・。

一つ一つの言葉が重過ぎて何を言っていいのか、何をどうしたらいいのか訳が解らなかった。


「○○くん。」

「この事はこれ以上語らない。」

「この事柄をどう受け止めるかは、君自身が考えて、そして乗り越えていく問題だ。」


「けどね、○○くん。」

「人生の先輩として、これだけは言わせてもらうが・・・。」


「大人になると言う事。」


「私はそれを『この世の残酷と喜びを知り、受け入れる事』だと思っている。」

「君はどうにも受け入れると言うよりも『逃げてしまう傾向』にあるね。」


「だがね、○○くん。」


「君はもう十分に大人になったのだ。」

「何時までも子供のままでいてはいけない。」

「受け入れなさい。この世は残酷かも知れないが、このように喜びもある。」


「受け止めなさい、○○くん。」


「そして・・・。」



「『大人になるのです。』」














それから、夜まで。

僕は一体何をしていたのかよく覚えていない。


気がついた時、僕は『お母さん』と言う言葉を何度も呟いていた。

そして目の周りが、とても腫れぼったい事に気付いた。




・・・・




「『ドクトル・ベイベー。』」


新兵(ルーキー)はその口を開く。


「ハァイ。」

ベイベーが、続きを促すと・・・。



「俺はアムステラには戻らない。」

新兵(ルーキー)は、力強くそう答えた。



「バブゥー?」

不思議そうに見つめる、ベイベー。



「確かに・・・。憎むべきはあの機体。」

「『ギガント28号』と『百文字(ハンドレッド)』と呼ばれるあの男だ。」


「だが、俺は忘れはしないっ。」



「どんな経緯で『この軍(部隊)に所属(入)れられたのかをッッ!!』」


・・・・




「銃なんか持った事もありません。」

「それでも持つんだよ。」


「操兵に乗るだなんて、とても・・・。」

「それでも乗るんだよ。」


1年前の話である。
それは突然の徴兵であった。

『僕』に会いたい人が居る。


「もしや、お母さんが?」そんな淡い期待を持って行ってみれば・・・。



「有無も言わせない。」

「来い。」


軍服を着た男が、僕の首根っこを掴み上げ。



「うわ!うわわ!?」


ジタバタとする僕を苦にもせず。



  ドッサ・・・・ッッ!!


僕をジープに『積み込んだ』。



「うわぁあああああああああああああああああああ!!!」


必死に叫ぶ僕に。



「んごごごぐっごごごごご!!!?」


猿轡(さるぐつわ)をかませて。



  ブロロロロロロロロロ!!!


当たり前のように、ジープが発車した。



この星はアムステラの属惑星。
立場が強いか弱いかで言えば、弱いとしか言えない。

でも平等と言えば平等な星だし、何をして生きるかと言う自由ぐらいはある故郷(くに)だ。

僕は一方的に『ソレ』を剥ぎ取られた。


屈辱(くや)しくて、悲観(かな)しくて、涙が止まらなかった・・。



・・・・



「君(チミ)の言い分は良く解りまちた。」

ベイベーは納得をする。


「無作為に選んだ訳ではありまちぇぬ。」

「望んで君(チミ)を、僕(ボク)が編成をしたこの部隊に入隊(入)れた訳でちゅが・・・。」


「物事、行き違いも多々ありまちゅ。そんな無礼もあったのでちょう。」




「それだけじゃない!」

新兵(ルーキー)は声を荒げる。



「味噌っかすの下級階層と言われ続け、何度煮え湯を飲まされ続けて来た事かっ。」

「そして先の『仲間殺し』っ。」


「お前達は何時だって『俺達を軽んじて来たっ!』」


「戻る意義はあるかも知れないが、戻れない訳があるっっ!!」


「其処をどけ、『ドクトル・ベイベーっ!!』」


「侵略をしているこの星だが、俺は俺の力この星で生き抜きッ!」


「そして『 ギガント28号を打ち倒すッッ!! 』 」



猛りに猛る新兵(ルーキー)に呼応し。




「 『  バァァァァアア ア ア ア ブ バ ブ バ ブ バブバブバ ブ バ ブ ゥ ゥ ウ ウ ーーーーーーーーー ッッッッ ! ! ! 』 」




 あのキンキンとノイズする 金切り声が響き渡るっ。



「・・・〜〜〜ッッ!!」

新兵(ルーキー)は言葉を詰まらせたっ。




「打ち倒す。」

ドクトル・ベイベーは語り続ける。


「ギガント28号を。」




「『 素 敵 な 言 葉 で ち ゅ 、 ハ ァ イ ♪  』 」




「良いでちょう。」

「見逃ちてあげまちゅ。」



  ー ただし・・・。



「君(チミ)がその羅甲で持って・・・。」



「この『僕(ボク)ちんを倒す事が出来たのなら・・・・ッッ!!! 』 」



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



「ハァイ。」

「もう一度聞きまちょう。」


「逃走を止(や)め・・・。」

「今一度『アムステラが支配』を『享受』するのです・・・っ。」



「 『 バ ブ ゥ ? 』 」


ベイベーの問いかけに対し・・・




「・・・ッ。」

新兵(ルーキー)は・・・。



(苗字無し(ななし)で名無し?)

(スットロイな君ィー。)


「・・・・ッ。」


(何でお前此処に居るの?場違いだろ常考。)

(お前ミスだよ。間違いで此処に居られたんだって。)


「・・・・ッッ。」


(弔い合戦って、何ですか?)

(苗字すら持たぬ死んだ犬ッコロなんかの為に、戦おうとしてるんじゃあない。)


「・・・〜〜〜ッッ。」


(国より大切な母など居るか。)

(内通疑わしきは『その母も同じく』とします。そう後処理しますけど、構いませんね?)



「(俺は・・・ッツ!!!)」




「ドクトル・ベイベー・・・っ。」


 ー 新兵(ルーキー)は構えるッ。



「俺の答えは先の通り『NO』だっ!」


 ー 羅甲を操り、その銃(マシンガン)をッ。



「其処を、どくんだ・・・・っっ!!!」

 ー 狙い。そして定めたその先は・・・。




「『 ドォォォォクトル・ベイッッベェェェエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!! 』 」

 とても奇妙な『鋼鉄の赤ん坊』っ。





今まさにっ。

引き金を引かんとす、その刹那っ。



「・・・・ッ!!」


新兵(ルーキー)は戦慄を覚えるっ。



(何だ・・・っ。)

時間(とき)が流れるその様が。



(この感覚は・・・っ。)


とても『緩やか』に感じられ。



(俺が引き金を引くよりも早く。)


後、ほんの少しで引けるハズの引き金よりも早く。



(ベイベーの両の手が。)


ベイベーの挙動の、その一つ一つが・・・。



(股間のソレを覆い隠す。)


視認出来た・・・。




 ー そして、新兵(ルーキー)は耳にした。





「 『 其決闘受諾的戦意思表示 ( シ ー ク レ ッ ト ・ ペ ニ ス ) 』にて ご ざ い ま ち ゅ ッ ッ ! ! 」




 キンキンと響き渡る金切り声と『 共 に 、 響 き 渡 る ッ ッ ! ! 』




  ー カ シ ュ ン




 乗機(羅甲)が動力(エンジン)、『 停 止 音 』ッッ!!




「な・何ィッ!!?」

動かなくなった羅甲は『鋼鉄の棺(ひつぎ)』と化したっ!


「動けッ!動くんだ、羅甲ッッ!!?」

暗闇の中、錯乱をする新兵(ルーキー)っっ!!



「QX団の全動力をハイジャックした際は、下準備に5年を要しまちたが・・・。」

ベイベーは語る。

「出撃した羅甲5機を、前もって僕(ボク)の『動力的支配(シークレットペニス)』と連動ちゅるようにして置くぐらい、そう難しい事ではありまちぇん。」

ベイベーは言い放つ。


「説明は以上でちゅ。」


そしてベイベーは新兵(ルーキー)に告げるっ。



「さぁ、戦いまちょう。『新兵(ルーキー)くん。』」


戦闘開始とその意思をっ。


「 『  バァァァァアア ア ア ア ブ バ ブ バ ブ バブバブバ ブ バ ブ ゥ ゥ ウ ウ ーーーーーーーーー ッッッッ ! ! ! 』 」




 再びあのキンキンとノイズする 金切り声が響き渡った。



・・・・



(動かないっ。)

(羅甲がっ。)


(クソッ!!)


(どうすれば良いんだよ!)

(一体、どうすれば良いンだーッッ!!?)



 ー焦りっ。 ー焦燥っ。 ー消耗っ。 ー諦めっ。



(隊長ゥ。)


  パシィッ!


万策尽きて、瞼(まぶた)閉じる新兵(ルーキー)。



ー終わりだっ!

ー終わりだっ!

ー終わりだっ!


ーあの金切り声のみが響き渡るっ!!


ーもうどうしようもないっ!!



 グググ・・・ッ!!


強く・・っ。固く・・っ。
閉じ尽くす「瞼(まぶた)。」



「おいっ。」


(ああ・・聞こえる。)


「目を閉じるんじゃあねぇっ。」


(隊長の声が・・・。)


「何故、目を閉じるっ。」


(もう『僕』は死ぬのか・・?)


「股ァ開けって言ってんじゃあねぇだろぅ〜?」


(ああ・・・あの時も。)


「何をそんなにビビってやがるんだぁーっっ!!」


(『僕は、隊長にどやされていたっけ・・・。』)












「おい!聞いてんのかぁー!新兵(ルーキー)!!」


「は・はいっ!すいませんっっ!!」


銃撃の訓練であった。

僕は『この訓練も苦手だった。』


そもそも得意な訓練だなんて無かった。


僕には、とても悪い『癖』があった。



「何故、目を瞑(つむ)っちまうんだ・・っ?」



それは『目を瞑(つむ)ってしまう癖』。


引き金を引く瞬間だとか、緊張がピークに達する瞬間。
どうしても僕は『目を瞑(つむ)ってしまう。』


あの日。


孤児院長から、お母さんの事を聞かされ以降・・・。


僕は僕なりにではあるけれど、困難に立ち向かえる人間になった。


でも、いつもロクは事は無かった。


緊張すると、どうしても目を瞑(つむ)ってしまうのだ。
恐怖を感じると、どうしても瞼(まぶた)を閉ざしてしまうのだ。


『心を持たなければ良い。』


そう思って来たこの僕だ。
困難から逃げ続けてきたこの僕だ。


沁み付いた心根は、そうやすやすと改善できない。


どんなに頭で解っていても、体が言う事を聞かなかった。
極度に昂ると『目を瞑(つむ)ってしまう』と言う癖が、僕にはついていた。

それは・・。何をするにしても『致命的な悪癖』であった。



「なぁ。新兵(ルーキー)・・・。」

「目を瞑(つむ)ってた方が、感じ易いってぇ事もある。」

「それに人間でも何でも。イってるときゃあ、片目なり両目なり瞑(つむ)るモンだ。」

「目を瞑(つむ)るって事ァ、とてもらしい事かも知れねぇ。」


「だがなぁー、新兵(ルーキー)。」


「『イきっぱなしの毎日じゃあ。』」

「『本当に一番気持ちの良い事が、解らねぇままなんだぜぇ・・っ?』」




「・・・。」

俯(うつむ)き。

黙り込んでしまう僕。


励まして貰っているのに・・・。
期待に応えられないのが苦しくて・・・。

俯(うつむ)いてしまう。



  ポン・・・。 (隊長が僕の肩を叩く。)



  ザッ。

  ザッ。

  ザッ。

  ザッ。


隊長が射撃のマトに向かって歩き出し。


  クルッ。


振り返り、僕の方を向いた。


「なぁ、新兵(ルーキー)。」


そして、こう言った。



「『俺を撃て・・・っっ。』」


パシィッ!!


 極度の緊張が僕を襲った。

 僕は思わず『目を瞑(つむ)る。』


「ゆっくりで良い。」

「目を開くんだ、新兵(ルーキー)っ。」


 ・・・・ッ。


 グッ。

 グググ・・・ッ。


僕は、力を込めて目を見開いた。


「俺はお前ぇの『隊長』だ。」

「何ら怖ぇ事は無ぇ。」


「そうだろう?」



 ・・・・。

 緊張で声が出ない。


 コク・・・ッ。

 だから僕は、頷(うなず)く事で返事した。



「そんな隊長に向かって、引き金を引く。」

「当てたかぁ無ぇーよなぁー?」


 コク・・・ッッ。

 僕はさっきよりも強く頷(うなず)いた。


「『狙いは外せ。』」

「『その為には、何をしなきゃあいけねぇ・・か。』」


「『解るな?新兵(ルーキー)・・・?』」



 コクッ。

 僕は強く頷(うなず)いた。



「良し。『撃て。』」



 ・・・〜〜〜っっ。

 震える体に逆らう様に。


 コ ッッ ク ン ッ !

 僕は頭突きでもかますかのように『強く頷(うなず)いた。』




〜〜〜ッ!

見るんだっ。


〜〜〜ッ!

隊長を見るんだっ。


〜〜〜ッ!

下品でっ。


〜〜〜ッ!

説教臭くってっ。


〜〜〜ッ!

そのクセ、とても面倒見の良い隊長だっ。


訳も解らず徴兵されっ。
不安で絶望して仕方なかったこの僕にっ。


『強く生きな』と言ってくれた隊長だっ。



  ー そんな隊長だから『良く見て狙えっ!』


  ー 良く見て狙って・・・っ、『 狙 い を 外 せ ・・・ ッ ッ ! ! ! 』



 ギリ・・ッ!

 目を瞑(つむ)ってしまうのならっ!


 ギリリ・・・ッッ!!

 それ以上に強い力で『歯を食いしばれば良いッッ!!!』




  ドクン!(撃つぞ!)


  ドクン!(撃つぞッ!)



  ドクン!(撃つぞッッ!!)





 ガァァァァアアア ア ア ア ア ア ア ア ア アアアアアア ア ン !!! (撃ったァー!!)





  ビシュッッ!!




銃弾が、隊長の右頬を掠(かす)める。



「ヒィ!!?」(後悔っ!後悔っ!後悔っ!後悔っ!)



  (百の言葉を持ってして。 謝ってしまいたいと思う『ゴメンナサイ』と感じる気持ちっ。)


  (だけど。)


  (掠(かす)めた事が、『見えた』と言う事は・・・っ。)



  ー 『俺』は、目を瞑(つむら)なかった。



「た・隊長!お・俺!!!」

だけれど、後悔先立たずだ。


「スンマセン!スンマセン!!隊長ッッ!!」

謝りながら駆け寄る『僕』。



  ポンッ。 (隊長が、僕の肩を叩く。)


「その感覚だぜぇ〜?」


「忘れるんじゃあねぇーぞ、『新兵(ルーキー)!!』」


  ドンッ! (隊長は力強く、僕の両肩を叩いた。)


「『はいっっっ!!!!』」


『俺』は、叫んで返事したっ。











 ギンッ!!


『俺』は目を見開いたっ!!


目を開いたトコロで・・っ。
真っ暗で・・っ。

何も見えないったらありゃしない・・っ。


 ー だけれどだっ。

 ー 目を開くって事っ! 


 それは『この世の残酷と喜びを受け入れる事だっ!』

 一人の大人として『逞(たくま)しく生きていく事だっ!』




     ー そ う っ ! !



「 『 俺 は 、 強  く  生  き  る  ン だ っっっ !!!! 』 」





 あるっ!

 一か八かだがっ!


 ドクトル・ベイベーを倒す方法が『一つだけあるっっ!!』




コクピット内。

右。

収納ケースがある。

その中に入っているレーション(保存食)とかペットボトルとか・・。


 ガサ。(これだ。)


俺はペットボトルを手に取ったっ。



羅甲はマシンガンの引き金を引く瞬間であった。

あとほんの少し『羅甲の人差し指動かす事が出来れば良い。』


狙いは既に『定めてある。』


暗闇になってから、どれくらい経った?

暗闇になる直前。俺は時間(とき)が緩やかになるのを感じた。


死ぬ間際の『集中力』ってヤツなのだろうか?

あのままの速度で時間(とき)が流れているのなら、まだ俺にも好機(チャンス)があるハズだっ。



 ー 今、引き金を引く事が出来れば、十二分にドクトル・ベイベーを倒せる好機(チャンス)があるっっ!!



「そして羅甲の指を動かす事は『可能』。」


羅甲の動力が、切断(カット)された以上・・・。

もう動力を、羅甲の指に送る事はできない。



だが。


動力とは言ってしまえば『電力』だ。

羅甲の四肢に張り巡らせている『電力の通路』を通る事により動いている。


そして電力の通路には『帯電している電力』が残っているっ。


今一度『コクピット内から、電力を送り込み。』


正しい通り道を『通らせる事が出来るなら、指を動かす事も 可 能 っ っ 。 』



  カチャ。

  新兵(ルーキー)は、羅甲が『引き金を引く操作』をするっ。


  ドボドボドボドボドボ・・・ッ。

  と、同時にペッドボトルの水を『装置にたれ流すっ。』



  ビッビビビビッッビキキイイイイ!!!

  装置は水によって、『ショート』を起こしたっ。



「装置がショートをするっ。」

「それは即ち、帯電をしていた電力が『 流 れ る 事 』を現すっっ!!」



○ショート

直訳は『短絡』。
本来の回路に対して『近道で逃げる』と言う事を指す。

電気抵抗が小さくなる為、大きく電流が流れる。
電気側から見れば、『たくさんの電気』を使っている事になる。




  グィ・・ッッ!!

  必然的に、羅甲は『引き金を引いた・・・っ!!』







   ド ッ ッ ッ  パァ アアア アア ア ア




             アアア アア ア ア  ア ア ア ー ー ー ッ ッ ! ! !





     ズキギャギャギャギャギャギャ ギ ャ ギ ャ ャ キャ キ ャ キ ャキャキャキャキャ





              ギャキャキィィイヤァァァァァアアアア ア ア ア ア ア ア ア アアアン ン ン ン ! ! ! !






     幾重にも重なった『 銃 音 』が 響 き 渡 っ た ッ ッ ! ! !



・・・・




ピピアン・クラケットは・・・。

良い『操者』でちた。


裏打ちされた操兵技術と実績。

決して家柄ばかりが良いと言う『昼行燈(ひるあんどん)』ではありまちぇん。


でも。勝てる実力を持っていながら、ピピアンボーイは見るも無残に敗れ去りまちた。


何故か・・?




 ギィン! ギィン! ギィン! ギィン! ギィン! ギィン! ギィン! ギィン! ギィン!



(弾丸が弾かれる音がするッ!)

(それ程までに、ドクトル・ベイベーの皮膚は硬いのか!!?)


(いや、硬いと言うよりも・・・。)


(この音は。)



(1mかそこらのモノを当たっている音じゃあなく・・・。)


(もっと。)



(『巨大な物体に対して・・・・ッッ!!!』)





それは『精神のお話。』

手に入れた『経験(エクスペリエンス)』に、安堵ちゅる事無く・・・。

この世の残酷の受け入れ・・・。困難に立ち向かう、気概を無くさず・・・っ。


 ー 乗り越えていこうとする『 意 思 』を持ち続ける事っ!!





(ベイベーが機体に乗り込む程、時間を与えてしまったのか!?)

(いや・・っ。響き渡っていたのは『あの金切り声』のみだったっ。)

(それにこの辺り一帯は『平原』。ベイベーしか居なかったし、機体を隠す場所なんて無かったっ。)





君(チミ)には、その素質があったっ。

僕(ボク)は、この部隊を編成するにあたって・・。所謂『落ちこぼれ』と言われる人達を、「複数人数」入れて置きまちた。


 理由は二つ。


 どんな優秀な人達が集まったとしても、必ず『落ちこぼれ』が出てきまちゅ。

 しかし作為的に落ちこぼれを入れてちまえば、『優秀な人達が落ちこぼれない』と言う事。


 ちょちて、もう一つ・・・っ。


『 落ちこぼれと言われる人達は 総じてっ。 』


『 本当の力 を 見 出 せ な い ま ま で居ると言う事っっ!!! 』







(考えられる事は・・・。一つ。)


(非現実的な事かも知れない。だが『あのドクトル・ベイベーなら』と考えるなら合点が行く事・・っ。)






  ー 新兵(ルーキー)くんっ!


  ー 君(チミ)には、その『 素 質 』があったのでちゅっっ!!



 ー 『 女 の 身 でありながら、良くぞ此処までの 高 み に達ちましたっっ!!! 』







(考えられる事は、一 つ だ・・っ!!)


(ドクトル・ベイベーがっ!『 巨 大 化 』した・・ぁっっ!!?)



ー『 君(チミ)なら、勝てまちゅっっ!! 』



 ー『 あの、百文字(ジ・ハンドレッド)にっっ!! 』



ー『 あのっ!! ギ  ガ  ン  ト  2  8  号  に っっ ! ! ! !  』








  ゾクゥ・・・・!! (俺は悪寒を覚えた。)


 アムステラ神聖帝国。



  ゾワ・・・ッ!! (汗が逆さまに滴(したた)り落ちる。)



 外銀河全域を支配する、超巨大国家。



  ゾ”ゾ”ゾ”ゾ”・・・ッ!! (来るッ!!)



 数々の属惑星と数々の文化。数々の常識を内包し。



  ゾ”ゾ”ゾ”ゾ”・・・ッ!! (とてつもないッ!!)



 その属惑星の一つに。男女の口調と、男女を指し示す一人称や三人称に。



  ゾ”ゾ”ゾ”ゾ”・・・ッ!! (とてつもない何がッ!!)



 一切の違いの無い星もあると言う。







    ゴ ッ ッ  ッッ バッ ッ ッ ッ ッ ! ! ! !




    ー 鈍い音を立てて。






ヒュォォォオオオ オ オ オ オ オ オ オ オ オ  オ オオオオオオオオオオオオーーーーーーー〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!




 ー 羅甲が空中(ちゅう)を舞う。






「・・ ・ ・ ・ 〜 〜 〜 〜〜〜ッ ッ ッ ! ! ! 」


 新兵(ルーキー)と呼ばれる『名無しの女』は。






 ドッッッ・・・ッ!


 地に叩き伏せられる羅甲の中。




 サ・・・ァ・・・ッッッッ!!


 鈍い衝撃に打ち据えられて、『 気を失った。 』





ーーーーーー



 ・・・続く。