サティで学ぶ兵器 1限目 「信頼性って何? 問題編」



聖女サティ。
インドの危機に彗星のごとく現れてガンダーラを機動差せアムステラを撤退させた少女。
彼女は今、空き部屋でテストとにらめっこしていた。

「うう…全然わからんよ。仕方ないね、こうなったら」

チラリ、サティはこっそり横を見る。おい聖女、それでいいのか?

「…」「…」

隣と目が合った。迷彩風バンダナを巻いた青年もまたサティの解答を見ようとし
彼女と同時に視線を向けたのだ。目と目が合う瞬間〜。
二人ともテスト用紙は白紙だ。気まずい、むっちゃ気まずい。

「あ、あのアナンドお兄ちゃん?」
「ごめん、俺もさっぱり分かんね」
「うー」

二人一緒に視線を戻し真っ白な答案に突っ伏す。こんな事してる間にも制限時間は
残り少なくなっていく。





読者置いてきっぱなしなのでそろそろ説明せねばなるまい。
あれはサティがガンダーラに乗ってから数日後、正式に軍属になった日の事。

「サティさん、貴女にはこれから兵としての教育を受けてもらいます」

目の前に現れた白衣の女性。サティは彼女の事を知っていた。

「こないだテレビで自分が本当は男だって告白して多くの人を卒倒させた人だー」
「正解、そして聖女サティ、これから貴女を教育しスーパーロボット乗りとしての
知識を教えるのが私です」
「サティは勉強苦手よ(ジタバタジタバタ)」
「逃げちゃ駄目です、理由は分からないけれど貴女しか戦う事が出来ないからにはね」

元慰安歌手にして兵器研究者の娘(むすこ)であるフェミリアに連れられてやって来たのは
インド軍人の滞在地とされている建物の一室。

「サティさん、これから毎日数時間ここで勉強してもらいます。
そして今後自国及び他国の兵士と合同作業する際に必要な知識を覚えてもらいます」
「それって大変?」
「大丈夫、ロシアには貴女と同じ年で全過程をマスター済みの天才少女がいるらしいわ」
「サティは予備知識0の凡人よー」
「じゃあ理解出来るまでここで頑張りましょうね」

こうして普通の少女だったサティの日常はガンダーラとの出会いにより
目まぐるしく変化した。午前はガンダーラの機動テスト、午後からは兵士としてのお勉強。
いつ他国で戦う必要があっても大丈夫な様にと、かなりのスピードでの詰め込みが
されていく。

「こんにちはサティちゃんー。お友達を連れてきましたよー。
アナンド君、入って来なさい。こら逃げるな」
「俺学校とかゼミとか言う言葉聞くだけで吐き気するんですよ!勘弁してくださいよ!」
「この研修しないと採用取り消しますよー」
「オッス、不肖アナンド精一杯勉強させていただきます!」

お勉強開始からしばらくすると、スガタとかいう丸っこい女性がちっこい青年を
かついできた。年上の仲間が出来た事に対して、これで勉強が楽になるかもと
喜ぶサティだったがその日の内にぬかよろこびだったと知る。
彼もサティと同じぐらい軍事の勉強が出来なかったのだ。


そんなこんなで現在。今日はテストの日。
やはりというかサティもアナンドも問題の意味すら分からないでいた。
フェミリアが部屋の外にいる間にカンニングで解決しようとしてごらんのあり様。

「あ〜くそっ、授業で聞いてた気はするんだよ」
「サティも問題文の単語はフェミリアさんに聞いてるの覚えてるね」

詰め込み型授業についていけず耳から情報がダダ漏れしている生徒の典型的な言い訳を
しながら、二人は無駄とは思いつつ再度問題に目を通す。
今回のテストは問題はたった一問のみ、それゆえにそれが分からない二人はこのままでは
0点確実である。


【問題】
次の人型機動マシンを『信頼性の高い順』に並べ、その理由も答えなさい。
なお、この問題文における時代設定はリヒャルトがサイボーグ化した日とする。
@ガンダーラ
A4型
B6型
Cゴーリキー
Dウインドスラッシャー
Eリヒャルト・クラウス


「「わかんねー!!」」

二人揃って床に寝そべりゴロンゴロンする事数分。
腕時計で時間を確認しつつフェミリアが教室に戻ってくる。

「何やってるのよ二人とも」
「ふぇみりあせんせー、ひんとバクシーシ!」
「私なにもわからないよ(ツンツン)」
「アナンド君、もうすぐハタチの男の子が嘘泣きはみっともないぞ。
サティさん、私の股間を指でつつくのはやめなさい」
「ヒントくれるまでやるよ(ツンツンツンツン)」
「俺も協力するぜ(ツンツンツンツン)」

二人の手がスカートをまくり、下着に直に触れてくる。

「ちょ、ちょっと二人ともやめなさい」
「ひーんーとー(プニプニプニプニ)」「ひーんーとー(プニプニプニプニ)」

フェミリアの股間、その中央にある小指ほどの柔らかな部分をサティとアナンドがなぞる。

「あれれー、元アイドルのパンツの中に何かあるよ(プニプニプニ)」
「うおっ、ちいさっ。そんで柔らかっ(プニプニプニプニ)」
「二人ともいいかげんに―」

襲う快感に耐えつつ、フェミリアは胸ポケットから小型のボトルを取り出し
中身を口に含む。

「パパウッ!」

フェミリアの歯のスキマから高圧で押し出された水が二人の額に直撃し、
サティとアナンドは突然の衝撃を受け気を失った。

「ふうっ、習っててよかった護身術」



10分後、額に絆創膏を貼られた二人はまずは頭を下げ謝罪する。

「ごめんね、フェミリアさんがかわいいから調子に乗り過ぎたよ」
「本来俺が止めなきゃならねーのにサティちゃんに釣られたっす」
「あなたたち本当に反省してる?まあいいわ、このままじゃ勉強が進まない
だろうしヒントを出します」

【ヒントが付いたよやったねサティちゃん!】
@ガンダーラ(突如機動した1000年前のスーパーロボット)
A4型(型落ちの量産機)
B6型(最新量産機)
Cゴーリキー(旧型スーパーロボット)
Dウインドスラッシャー(割と最新の技術が使われた高速戦闘可変機体)
Eリヒャルト・クラウス(オーストリアの超科学が産み出したサイボーグ)

「これで後は『信頼性』の意味が分かれば正解できるはずよ。
間違っててもいいから解答を埋めてみなさい」
「「はーい」」

そして数分後、

「できたよー」
「俺もー」
「はい、それじゃあ確認しますね」

【サティの答え】(上にあるもの程信頼性の高いものになります)
@ガンダーラ(サティの願いに応えてくれたガンダーラ、サティはこれを一番信じるよ)
Cゴーリキー(ゴーリキーの中の子ってサティと同じ年なんだよね?凄い!)
Dウインドスラッシャー(確か、イギリスの方でいっぱい活躍してるって信頼できそうね)
B6型(4型よりは活躍しているんだよね?じゃあこっちが上よ)
A4型(消去法ね)
Eリヒャルト・クラウス(問題文にあるこの人の顔むっちゃ悪い人、信頼しちゃだめ)

【アナンドの答え】
B6型(エリートさんは信頼使えた気がするから)
A4型(4型乗る人はエリートではないと思うけどもしかしたらベテランかもしれない)
Cゴーリキー(パイロット知らないけれど女の子らしいしひょっとしたら信頼使えるかも)
Dウインドスラッシャー(多分信頼は使えないと思うぜ。集中とか熱血はありそう)
@ガンダーラ(たしかサティちゃんは信頼もってなかった)
Eリヒャルト・クラウス(この顔は信頼持ってない。激怒とか使う顔だぜ)


「二人とも違います。いい?信頼性っていうのは『自分が信じる相手』でも
『精神コマンドに信頼が存在する人』でもないわ。
そう、二人とも私の授業覚えてなかったって事ね」

呆れつつもフェミリアは二人に正しい答えを教える。

「いい?一度教えた事だけど『信頼性』というのは―」

2限目『信頼性って何?解答編』に続く