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ヒロインたちの激闘もすでに十度を数え、出番を待つ戦乙女たちは13人にまで減っていた。
 勝者の影に敗者あり。実力で勝ちあがる者あらば、運に見放され、相手を見誤って枕を濡らす。
 果たして次の対戦、勝利の女神はどちらに微笑むのか。女神が女の子に微笑むって百合? 百合かい?

ユリウス 「さあやってきたぞ、第11試合だ!!」

 オオオォォォォォォ……

 オッパイッ! オッパイッ!! オッパイッ!!!

 未だに前の試合で披露された授乳プレイの記憶が残っているらしい、会場は次のヒロイン登場を今かと待ち構える。
 ちなみにスクリーンには母性対決のハイライトが映されていた。アイリーンの授乳シーンが流れるたびに男共の嬌声が沸きあがる。この羞恥プレイに、控え室で拳を握り締める人がいたとかいなかったとか。
 
ユリウス 「次の試合の種目を発表する。テッシン!」
テッシン 「はっ! 次の種目は……“操兵対決”じゃあ!!」

 操兵対決――つまりは機動兵器や操兵を操縦して競う対決だ。究極のヒロインとは何か。可愛さ、美しさ、萌え、様々あろうが、強さも外せない要素だろう。そしてこの勝負に臨む勇者は……!

テッシン 「ガラガラ君が決める選手は……。はぁっ!」

 ガラガラガラガラ……、ポンッ。

テッシン 「さあ一人目。……『如月可那』!!」
ユリウス 「ではこちらも。……ほう、『ベルダ』に決定だ!」

 第11試合――如月可那 VS ベルダ――!




第11話  「戦えヒーロー・ヒロインズ!!   なに、戦いにならないって?」




ユリウス 「では闘士入場!!」

 ユリウスの一声で空間歪曲転移装置が作動、武舞台中央に白煙が巻き起こる。
 煙が晴れた後、その場に立っていたのは可那とベルダの両名。

 ざわ……

可那  「う〜ん、よりによってロボットでの対決だなんて……」
ベルダ 「びっ、びっくりした〜……(あと一分トイレから出るのが遅かったら、うう)」

 ざわ…… ざわ……

 観客の反応が微妙である。如月可那は言わずもがな、機動兵器の操縦などできない。ベルダも一応軍属であり正式な操兵パイロットだが、その腕前はゴニョゴニョだ。
 これで一体どう戦えというのか。

テッシン 「ふむ、こうなりましたが、対決内容をいかがします殿下?」
ユリウス 「可那は兵器を動かすこともままならぬ。ならば、この試合は代役による戦いを認める!」

 ざわ……!!

 代役による模擬戦対決! この場合、不公平が生じぬようにベルダにも代役の指名が許可される。
 この二名が指定する代役、ともなれば観客には概ね予想がつくというものだ。そしてその後の熱きバトルも。

テッシン 「ではこの対決、ヒロインとその指名したパイロットによる“チーム戦”とする!!
      各々、控え室に戻ってパートナーを決めておくように」
ユリウス 「今のうちに便所を済ませておけ者共!!」

  オ ウ ッ !!!!!

 萌えを競う戦いとは一味違った趣向に観客は新たな期待を燃やした。







――選手控え室

 対決に備えて、支給されたパイロットスーツに着替えるベルダ。だが胸のサイズが合わず、もう少しサイズの大きいスーツを持ってくるよう係員に頼み込む。
 その間、彼女を応援するために集まったカスム隊の面々は廊下で作戦会議を行っていた。

ゲイン   「……ふう」
スティング 「いい加減に覚悟を決めろゲイン」
レイナ   「ベルダが指名するのは貴方よ、彼女のために気合入れなさいよ!」

 仲間の叱咤にゲインは顔を上げて答える。

ゲイン   「俺だってベルダのためなら一肌でも二肌でも脱ぐさ。いや、むしろ他の奴には任せられない。
       けどなあ……相手が」
クリス   「ああ、それはなあ……さあ」

 対戦相手の如月可那が選ぶパートナーは全会一致で一人に絞られていた。

クリス   「荒沢シンだな」
スティング 「あの男だろうな」
レイナ   「でしょうねえ……」

 そう、我らがカラクリオー主人公・荒沢シンは可那の幼馴染という名の夫!
 幾度も刃を交えたカスム隊メンバーにとってその圧倒的な戦闘力は忘れようがないのだ。

ゲイン   「何だってよりによってベルダの相手があいつらなんだよー!」
カスム   「他の種目ならまだ望みはあったのにな、残念だ」
レイナ   「残念だって、諦めるの早いですよ!」

 彼らが騒いでる様子をちらちら見ながら、通行人が通り過ぎていく。レイナはその中に何人か見知った顔を見つけ、引きとめた。

レイナ   「男爵家の執事さん! 同じ射撃キャラとしてゲインに何か助言を下さい!!」
執事    「ほう、私でよろしければ」

 レイナは執事に簡単な経緯を説明した。

執事    「ふうむ、荒沢殿ですか……。これから控え室を訪ねて、襲撃するのが最良の策でしょう」
クリス   「この人さらっとすげえこと言った!?」
執事    「おお、これは物騒でした。では買収するのはいかがでしょう?」
レイナ   「あの、正攻法で何か対策はないんですか?」
執事    「……」
クリス   「無いのか? あんたらのとこのパンを勝たせたようなアイテムも無いの?」
執事    「アイテムでしたらこういうものが」

 執事は懐からデリンジャーを取り出して見せた。

スティング  「……あの、暗殺から思考を離してください」
レイナ    「もう……。ニッポンハムさんは何かありませんか?」
オッペンハイム「俺はオッペンハイムだ」
ゲイン    「オーベルハイルの旦那、傭兵ならこういうときどう戦う!?」
オッペンハイム「俺はニッポンハムだ!」

 言ってからオッペンハイムは少し固まった。もう何が何だか分からん、と言いたげに。

オッペンハイム「ったく……。傭兵ならなあ」
ゲイン    「おう!」
オッペンハイム「無駄な戦いはしねえで逃げる」
ゲイン    「いやでもっ、男なら戦わないといけない時があるっしょぉ!?」
オッペンハイム「お前こんなアホな大会に男賭けてるのか……?」
カスム    「それを言ってはならん!!」

 ガチャッ

 彼らの後ろで扉が開き、試合用コスチュームのパイロットスーツに着替えたベルダが姿を見せた。

ベルダ  「準備終わりましたけど……」
レイナ  「ちょっとこれ胸元丸見えじゃないの! 体のラインもきつきつだし……ってここ透けてるぅ!!」

 大会実行委員の下へ文句を言いに行こうとするレイナを制するスティング。
 と、ベルダはゲインの前に立った。

ベルダ  「あの、話聞いてました。相手はあの荒沢さんになると思いますけど……」
ゲイン  「……」
ベルダ  「ゲインさん、私のパートナーお願いできますか?」
ゲイン  「……おう」

 ぐっと拳を握り締め、ゲインは力強く言い放った。


「俺が必ずお前を勝たせてやる!!」




 放送席では二人の解説者を招いて、この試合の見所について意見が交わされていた。

テッシン  「まずは予想されるカードじゃが。如月可那のパートナーはやはりシンか」
レオンハルト「そうだな、カラクリオーの主役と正妻コンビだ。
       相手はかなり苦しい戦いを強いられるだろうよ」
サーガ   「対するベルダ選手はカスム隊の中から選ぶだろう。高確率でゲインが出てくるな。
       射撃タイプと近接タイプ、対照的な戦いになるぞ」
ユリウス  「厳しいな。アラサワの相手は余か、ガミジンクラスでなければ務まらぬぞ。この勝負見えたな」

 あーつまんね、と言いたげにユリウスはトロピカルジュースをズーズー啜る。その姿、暑さのあまりティーシャツ&短パンの庶民スタイルというクールビズ。

サーガ   「だがこの勝負、そう断言できたものではない。何故なら“チーム対決”だからだ」
テッシン  「そう! この対決内容ではヒロインのいる意味が無い……。
       そこで参加者各々に役割を与えたのじゃあ!!」

 その1――オペレーター
 ヒロインは自分の選んだパートナーに状況や指示を伝え、勝利に導く!
 ちなみにパートナーの乗る機体は索敵機能を制限され、有視界戦闘を強いられることとなる。

 その2――援軍システム
 ヒロインは試合中一度だけ、味方を一人戦いに参加させることができる。
 そのパイロットは試合を控える選手以外から選ぶこと。

テッシン  「これがヒロインの役割じゃ。パートナーとの密な連携が勝敗の鍵を握るぞい」
レオンハルト「ちなみに試合は、最初に選ばれたパートナーが倒された時点で決着する。
       だから、早めに援軍を呼んで短期戦を挑むも良し。敵の援軍に相性がいい味方を呼ぶも良し、だ」
テッシン  「そういうことじゃ。ふむ、双方用意ができたようじゃな、選手紹介!!」

 スクリーンにメンバーが表示され、観客からはどよめきの声が漏れる。
 ベルダ選手・パートナーはゲイン。
 如月可那選手・パートナーは…… 大 蛇 勝 美 !!


 ざわ…… ざわ…… ざわ…… ざわ……


ユリウス  「なにそれ?」
サーガ   「さ、さあ……。どういうことだ?」
レオンハルト「そういえば……、前の試合の前後からシンの姿を見ていないんだが」
ユリウス  「………………」
テッシン  「殿下……あのう……」
ユリウス  「試合開始!!」
レオン&サーガ「えええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?」


可那   「お願い、かつみん! 同じ日本代表として一緒に戦って!!」
かつみん 「おっしゃぁぁぁぁ! 出番がありゃ何でもいいんだよっ!」

 同刻、控え室の一つで、発見された金髪の赤ん坊を好奇の手でいじりまわす女の群れがいた、らしい……。



ユリウス  「さあ両チーム、舞台中央へ!」
サーガ   「いいのか、本当に荒沢のことはいいのか……」

 促されて選手たちが歩を進める。その姿はすでにパイロットスーツ。
 可那の無駄が無いボディにスーツが張り付き、豊かなラインを導き出す。
 胸のサイズも申し分なく、生地に絞られた姿態からプルンと突き出してその存在を自己主張している。
 それだけではない。生地が薄いためピンクスポットに突起物による膨らみがあり、見る者は口中に涎を貯める。
 対してベルダのバストはそれを上回る戦闘力。
 はち切れんばかりに盛り上がった双丘と、それに不釣合いな童顔が醸し出すハーモニーは、その道の心得を持つものにシャッターチャンス。
 胸元はオープンリーチで千尋の谷が深みを覗かせる。ここに突き落とされた者はその多くが帰ってこれないと言われる。
 だが上ばかり見るものではない。視線を下ろせばそこには、生地に反発する下腹部と、そこから伸びる脚線美。
 突き出されたお尻は生地が光を反射してテカり、本人の意思に関わり無く見るものを誘う。
 正面に構えるは流麗なラインが浮かび上がらせるゴールデントライアングル。さながら清流が形作る三角州のよう。清流なのに見ているとムラムラしてしまう。
 何故人間は、肉体とラバースーツ、生物と無機物というギャップのある組み合わせにこうも感情を燃やせるのか。

ティナ  「ジロジロ見すぎよエロ宰相」
レイナ  「最低ね」
クリス  「さっ、最低だな(見てた)」

 批難の声を物ともせずユリウスはオペラグラスで選手を凝視し続けていた。

ユリウス 「よいではないか。試合が始まったら見れないのだから」
テッシン 「しかし話が進みません。そろそろ始めましょうぞ」
ユリウス 「もうちょっと、もうちょっとだけ!」

 実行委員が機能不全に陥っている間、かつみんはゲイン相手に口を開く。

かつみん 「よお、あんたが戦うんだな」
ゲイン  「何だ、何かおかしいか?」
かつみん 「いや別に。ただ、思うことがあってなあ。私たちは代理人で、負けても失うものは無いだろ」
ゲイン  「まあそうだな」
かつみん 「それじゃ燃えないから何か賭けようぜ?」

 ざわ……

レオンハルト「ほう、あいつ挑発してるな」
サーガ   「一度負けた者は思い切りがあっていいな」

ゲイン   「いいだろう、何を賭ける? 罰ゲームとかにするか?」
かつみん  「そうだなあ……どうする」
ゲイン   「(考えてなかったのか)じゃあベタだけど、負けたら裸で会場一周!!」
かつみん  「なっんだと!」
可那    「ちょっとー、それはきついでしょ!」

 ざわ……

ベルダ   「ゲインさんいいんですか、そんなこと言っちゃって!?」
ゲイン   「いいってことよ(女なら乗れずにビビるさ!)」
ユリウス  「ダメだ。貴様が負ければ男の裸ではないか、見たくも無いわ!」

 このお題は宰相権限であっさりと退けられた。

テッシン  「だが賭け自体は面白そうじゃ。何か良いテーマは無いか?」
レオンハルト「そうだなあ……互いの人生を一部賭けるっていうのはどうだ?」
ゲイン   「んなっ!?」

 外野の勝手な物言いにゲインが唸る。

かつみん  「それいいじゃんか。なら私が勝ったら、お前は『大蛇流』に入門だ!」
ゲイン   「お、大蛇流だぁ!?」

毒砲    「カッカッカッ、そりゃグローバルいいな!!」

 大声で賛成を述べたのは、客席の最前列に陣取っていた男、大蛇流空手の総帥・大蛇毒砲である!

かつみん  「親父、いつからそこに!?」
末堂    「俺たちもいるぜー!」
カロ藤   「負けんじゃねーぞぉ!」

毒砲    「兄ちゃんよ、あんたが負けたら、アムステラ人初の大蛇流門下生になってもらうぜ。
       そうさなあ、地下闘技場で一勝できるぐらいにはなってもらおうか」
ベルダ   「ダメですゲインさん!」
ゲイン   「いや……受けよう」

 ここで退けば男が廃る。脂汗を浮かべながらも踏みとどまった。

ゲイン   「そっちの条件はそれでいいんだな? 次はこっちの番だ!」

 気迫負けしないよう、相手が嫌がる話を考えるゲイン。ふと、かつみんたちの胴着に書かれた“大蛇流”の文字に目が留まる。

ゲイン   「その道場……もらっちゃうか」
ベルダ   「…………そうですね、もらっちゃいましょう!」
毒砲    「なぬっ!?」

 意外な返しにさすがの毒砲も隻眼をひんむいた。

ゲイン   「俺たちが勝ったら、俺とベルダが大蛇流の総帥だ」
ベルダ   「マークはこれにしちゃいましょう」

 その場で紙に描いて示したものは、毒砲が中国で三人ぐらいを食い殺した人食い虎を退治する図柄に代わる新エンブレム。
 ――なのだが、ゲインとベルダが小さな虎と戯れるファンシーな絵がそこにあった。

カロ藤   「……あ、あんなもん掲げたら大蛇流の名折れだ」
かつみん  「それ、期限は何時まで?」
ゲイン   「潰れるまででいいんじゃね?」

 ここにきてかつみんにも危機感が迫ってきた。負ければ一日に二度負けた女になるだけでなく、大蛇流までもが危険に晒される。

テッシン  「決まったようだな」
毒砲    「負けたら承知しねえぞ勝美!!」

可那    「ああ〜シンだったら安心してこんなにハラハラしないのに……」
かつみん  「それ地味に傷つく……」



 かくして戦い前の儀式は終わり、空間歪曲転移装置で対戦者たちをマシンのコックピットにそれぞれ転送した。
 それから更に、マシンを戦闘の舞台に転送する。

サーガ   「戦いは何処でやるんだ?」
テッシン  「周りへの被害を考えて、無人の惑星イ・ネーヨ・ダレモ星で行う」
レオンハルト「宇宙の彼方の星まで転送できるのか、そいつはすごいな」
テッシン  「いや、それはまだ試してないのじゃ」
サーガ   「そうなのか」
テッシン  「そうじゃ」
クリス   「待て待て待て」

 ゲインの雷獅子、かつみんのリベンジャーが転送準備に入る。チームリーダーのベルダと可那は、残って専用オペレータールームに入った。

ユリウス  「チームリーダーは席に着け」
可那    「あのー、この座席、バイクみたいな形で座りにくいんですけど」
ユリウス  「跨るのだ、前かがみに」
可那    「こ、こうですか……?」
テッシン  「ナイスアングル!!」

 やりたい放題の主催陣を尻目に準備完了。マシンの転送が始まった。

テッシン  「さて試合が始まるが、解説のサーガよ、この試合をどう見る?」
サーガ   「二人とも機体が羅甲じゃない。だから機体性能については割愛するとして」
ユリウス  「いやそこは省略するなよ」
サーガ   「む……ゲインの機体はいわば重装型羅甲、砲撃戦に特化した機体だ。対するかつみんは」
レオン   「何故羅甲に例える……」
テッシン  「もうレオン一人でええわ」




 薄霧に包まれた荒涼とした大地。そこは無人の惑星イ・ネーヨ・ダレモ。
 銀河の遥か彼方に存在する寂れた星は、交通の危険さから誰も入植しようとしない場所だった。
 そこに複数の機動兵器が突如降り立つ。

ゲイン   「ここがダレモ星か!」
かつみん  「ちゃんと転送されたみたいだな」

テッシン  「始まったぞい!(失敗しなくてよかったわい)」
レオン   「この戦いは有視界戦闘になる。各チームのリーダーは、与えられた無人偵察機をコントロールし、味方と敵の位置を見つけろ!
       そして指示を出し勝利に導け!」
テッシン  「解説というか説明乙!!」

可那    「コントロールって言っても……」

 練習も無しに状況に放り込まれ困惑する可那。一方ベルダは、軍で体験したシミュレーターに似ていたことからやや早く操作を把握した。

ベルダ   「あっ、ゲインさん見つけましたよ!」
ゲイン   「おうっベルダ! さあ敵を見つけてくれよ!」

レオン   「この視界の悪さでは先に敵を見つけたほうが有利となる。それも射程の長いほうは特にな」


 かつみんは霧の中を彷徨っていた。岩ばかりで足場も悪く、敵に見られているのでは……そんな恐怖感が差し迫って来る。

かつみん  「へっ、へへ。こいつはいい修行になるってもんさ。可那、今どこだ?」

 通信機は何も返答を放たない。それは可那の無人偵察機が、かつみんのリベンジャーをレーダー圏内に入れていないということである。
 ――音。何かが上空を通過した、と思ったその時、かつみん目掛けて飛来する物が!

 ドワッ  ズガンッ!

 突如至近弾を受けたリベンジャー。すでにゲインに発見されていたようだ。
 慌ててかつみんはその場を飛び退き、敵の位置を探る。次の攻撃は来ない。

レオン   「敵の見えない側にとって、飛来物の来た方向が敵の位置を知らせることとなる。
       だがゲインはそれを分かっているため、無駄な射撃を控えているんだ。
       今頃は元の位置を離れて次の攻撃に備えているだろう」

 レオンの推測どおり、当初の狙撃点を離れたゲインは、ベルダと交信しつつ次の狙撃点を目指している。

ベルダ   「前のほうに山があります」
ゲイン   「よし、そこに向かうぜ!」

 移動後、敵の位置を確認。かつみんは身を隠す場所を探して移動していたが、ゲインからは見え見えである。
 今――リベンジャーへ向けて雷獅子のホーミングミサイルが放たれた。

かつみん  「――!」

 寸前のところで跳躍したかつみんだが、爆風に煽られて転倒、地面にキスする。
 続くキャノン砲での攻撃はわずかに逸れ、命拾いした。

ゲイン   「ちっ、もうちょっと霧が晴れれば!」
ベルダ   「ゲインさんちょっと」
ゲイン   「どうした?」
ベルダ   「弾ってどこで補充したらいいんでしょ?」
ゲイン   「あ……」

 そのことを(主催側も)忘れていた。実弾兵装のみの雷獅子は弾を撃ち尽くしたら攻撃できなくなる。
 よって長期戦になれば不利になる。
 ならばどうするか。少ないチャンスを確実に物にすべき。ではどう立ち回るか。慎重に狙いをつけるか。否。

ゲイン   「姿が見える今のうちに叩くぜ! ベルダ周りの地形は!?」
ベルダ   「地形は……山です!」

サーガ   「ほう、攻めるようだな」
ユリウス  「いいな。胸ばかり見てたが尻もいいじゃないか」
サーガ   「どこ見てるんだ!?」



 ゲインの攻勢が強まった。なけなしの広域殲滅型マルチミサイルポッド『雷雨』で一気に決着を狙う!
 ピンチに陥ったかつみん。だが可那の通信が飛ぶ。

可那    「かつみん、3時の方向に谷があるわ!」
かつみん  「――分かった!」

 リベンジャーの両腕に装備した『インターセプター』のジェット推進で谷間に向けて飛び込むかつみん。谷間って書くと別の(略
 逃すまいとトレースしつつ、引き金を引くゲイン。
 放たれたミサイルの雨はリベンジャーに容赦なく降り注いだが、半ばは敵機のスピードを捉えきれず地面に着弾。
 残りは谷間に逃れた敵を追いきれず、岸壁を破壊するに留まった。

可那    「そのまま進んで、曲がる辺りでジャンプして。山を登っていけば相手より高い場所に行けるわ」

 続く指示に従ったかつみんは、山頂から雷獅子を見下ろす格好になった。

レオン   「驚いたな。元々肝は据わってるから判断が早い。操作感に慣れちまえば名オペレーターだぜ」


 ゲインがかつみんの居場所に気づいたとき、リベンジャーの兵装が一斉に火を噴いていた。
 虚を疲れたゲインは回避するも、脚部のミサイルを破壊されてしまった。

ゲイン   「くそっ、ここじゃ撃ち合いに不利だ。ベルダ、どっちに逃げればいい!?」
ベルダ   「ちょ、ちょっと待ってください!」
かつみん  「逃がすかよぉ!!」

 再びジェットを噴かして急進。雷獅子の懐まで近づいたかつみん。
 雷獅子のマシンキャノンでの牽制を物ともせず、ビームバヨネットで突きかかった!
 ビームの刃が装甲を掠めていく。

ゲイン   「負けられるか! 荒沢シンがいねえってことは、この試合に勝てっていう神(筆者)の啓示に違いねえんだ!!」
ベルダ   「でもその人、ひねくれてますよ」
ゲイン   「いいから指示だしてくれ!」

 距離を取って射撃を試みるゲインだが、リベンジャーの機動性がそれを許さない。
 かと言ってベルダが打開の指示を出せないため、ベルダ陣営はジリ貧になり始めた。


レオン   「だがまだ試合の行方は分からない。この試合は団体戦、ヒロインは“援軍”を呼ぶことができる」
サーガ   「そう、相手の特性に合わせた味方を呼ぶことで状況は一変する」
ユリウス  「ガミジンあたりを呼べば特性もクソも無いがな」
レオン   「あんたつまんなそうだな……」


 援軍を呼べることは分かっている。だが彼女たちは、その援軍をどのタイミングで呼べばいいのか、判断しかねていた。
 ここで誰かを呼んだとしても、その援軍と相性のいい援軍を、敵も呼ぶかもしれない。
 敵が先に援軍を呼べば、後出しで援軍を選べる。そこに選択の妙があった。

ベルダ   (呼ぶとしたら……やっぱりクリスさんかレイナさん、ティナさん。だけど今呼んだ方がいいのかな? どうなのかな?)
可那    「かつみんが頑張ってる今、援軍を呼べば……かつみん!」
かつみん  「まだだ、まだ呼ぶな!」

 かつみんの意外な発言。

かつみん  「こいつは私だけでやれる! 援軍は温存しておけぇ!」


かつみんの奮闘に会場は沸き立つ。とても第2試合で瞬殺された女とは思えない気迫だ。

ユリウス  「いや、瞬殺されたからここで目立とうっていう魂胆だろう」
テッシン  「殿下、意地が悪いですぞ」
サーガ   「ところで可那陣営が援軍を呼ぶとしたら誰になる?」
レオン   「あの娘の人脈から言うとK.G.Fの人間がまず思い浮かぶが、槙絵は二回戦に進出しているから呼べない。
       俺も解説があるから出れない。そしてシンは行方不明……」
テッシン  「完全に戦略で選ぶことになるのう」



 下がるゲイン。追うかつみん。手に汗握るオペレーター。だが次第に、ゲインは山腹に追い詰められていた。
 このままでは逃げ道を失う。痺れを切らしたベルダがゲインに呼びかける。

ベルダ   「ゲインさん、クリスさんを呼びます!」
ゲイン   「くっ、仕方ねえ。敵が援軍呼ばねえのに黙ってても無駄だからな、頼むぜ!」
ベルダ   「はい!」

 ざわ……!

 ついに援軍が呼ばれる。援軍は試合を控えていない全キャラから選択可能。乗機も即転送できるよう準備されている。
 ベルダの目の前に立体タッチパネルが現れ、呼び出し可能な人物名簿が表示された。

ベルダ   「クリスさんお願いします!」
クリス   「よし、任せろ!」

 ボタンを押して転送開始。ゲインとかつみんの対決する間近に、その影は現れた……!

 がっしりとした体格

 鋭い爪

 青いボディ!

 その名は 『 蒼水魚!!!!!!!! 』





ユリウス  「何で?」
サーガ   「ほらここ、パイロットのグラナは名簿がクリスの隣で」
ユリウス  「押し間違えか!」


グラナ   「いやーワイを呼んでくれるなんて、あんたら目が高いやんかー」
ゲイン   「何 で 出 て き や が っ たぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ベルダ   「ごめんなさい…本当にごめんなさい…すいませぇん……」
グラナ   「な、なんや! ワイかて出たいんや、それをなんや邪魔者みたいに!!」

 地団駄を踏む蒼水魚。

サーガ   「これはまずいな。蒼水魚は陸で動けても火力が数段落ちる」

 そう、蒼水魚は水中でこそ攻撃力と防御力が活きる機体だが、陸上では動きが鈍り、自慢の水中戦法が活用できない。


かつみん  「人のこと忘れんなよ!」

 かつみんの連続攻撃がゲインを捉える。両肩の雷雨を盾にして防いだが、おかげで雷雨は破壊された。
 そこにグラナの蒼水魚が割って入る!

 ガッシャ ガッシャ ガッシャ

ゲイン   「遅せぇ!!」
グラナ   「これでも急いでんのや!」

 かつみんに敵を迎え撃つ暇は十分であった。しっかり狙いを定めて蒼水魚にミサイルを撃つ。

グラナ   「なめんな! それ震音衝!!」

 突如、蒼水魚の両手から高周波の振動波が発せられ、襲い来るミサイルを空中で塵に変えてしまった。

ベルダ   「す、すごい!」
グラナ   「どや見たか!」

 蒼水魚を前進させるグラナ。かつみんはやむなく接近戦を挑むが、体格が違う。

 ガシンッ!

 蒼水魚の体当たりでリベンジャーは弾き飛ばされ、追い討ちのミサイルの直撃を受けた!

かつみん  「うおおおおおおお!?」
可那    「かつみーーーん!!」

 死ぬか 死ぬか勝美!?







「構えィッ!」
「そりゃこいッ!」

 かつみんの耳に聞こえてきたのは、会場で応援する仲間たちの声。

末堂   「こんな事やったって強くなんかなれねェだろうけどよォ」
カロ藤  「とりあえず正拳上段突きィッ!」
「ケイッ」
「ウリャッ」
「ケイッ」
「ウリャッ」
「ケイッ」
「セリャッ」
「ケイッ」
「セリャッ」
毒砲   「勝美ィ!! まだ諦めるなぁ!」

かつみん 「みんな……」

 ボロボロになったリベンジャーを立たせて、かつみんは再びファイティングポーズを取る。

かつみん 「強くなれるさ……絶対に強くなる…………こ ん な ふ う に!!!」


 腕に装備したインターセプターを強制排除。リベンジャー格闘形態!!

グラナ   「なっ……!?」

 突然の変化に一瞬戸惑ったグラナ。
 次の瞬間、進み出たリベンジャーは、蒼水魚へ蹴り込んだ水月を踏み台に肩へ駆け上がって膝蹴り!
 DTS搭載機の限界に挑むようなコンボで蒼水魚をダウンさせた。

 ――しかし
 狙い済ました一撃。雷獅子の猛御雷が突き抜け、リベンジャーの右腕を粉砕してしまった。

 ワッ!!!!!!!!!

毒砲    「勝美ッ!?」

 リベンジャーの損傷は尋常ならぬ物となった。対してベルダ陣営は、傷こそあれど今のリベンジャー程ではない。
 援軍を呼ばなければ可那陣営は負けてしまう!

可那    「もう無理よ、援軍を呼ぶわ!」

 可那の前にもリストが現れる。本来なら選ぶことなど無い。可那はある者の名を目で捉え、ボタンを――

可那    (押したい)

 だが彼は来てくれるのか? 来ることができるのか?

レオン   (呼ぶのか? だがあいつが戦えないなら援軍として無効になる。
       最悪、戦えない状態で呼び出されて、新たな援軍は呼べない。リスクが高過ぎるぞ!)

 ボタンを押そうとする指を離し、別のボタンに焦点を合わせる。

可那    (シンがライバルだって言っていた人……ガミジンさんなら!)
ガミジン  「呼んじまえよ、アイツを」



 その声の主は、実況席に乱入していたガミジンの物だった。

ガミジン  「呼びたいのはシンの奴だろ。呼んじまえよ」
可那    「でも…シンは」
ガミジン  「ツレのピンチも救えねえようならアイツにヒーローの資格はねえ。
       なあに、来るさ。呼んでさっさとこんな試合終わらせちまえ」
ユリウス  「おいお前、ギャグだと出番が少ないからってhだじおd」

 背中を押され、可那はもう一度あのボタンを見据える。『荒沢シン』

可那    「信じてるから、シン!」

 カチッ


 ヒュゥ……


荒野を風が吹きぬけ、僅かに霧が晴れた。そこに立つのは青い騎士。

シン    「待たせてすまねえな!」
可那    「シン!!」
シン    「かつみんも待たせなた」
かつみん  「ついでみたいに言うな」



テッシン  「これはっ、どういうことじゃ!? シンは前の試合で殿下の手に掛かりベビー化しておったはず!!?」
ミンファン 「説明しよう!」
ユリウス  「お前はっ、絶壁女!!」
ミンファン 「とうっ!」 バキィッ

 ガミジンに続き実況席に乱入したるはミンファンとキム。

サーガ   「キム、そういえばお前もベビー化していたはず?」
ミンファン 「そう、キムを元に戻したくて、ザイドリッツさんを呼んできたの!」
キム    「目には目を、トンデモ科学にはトンデモ科学を、だそうです」
ミンファン 「そしたら都合よく成長促進剤『オトナノカイダンノボル』を試作してたから、それを彼にも分けてあげたのよ!」
サーガ   「そうだったのか!!」


 かくして元の姿に戻ったシン。可那チームの逆襲開始である。

ゲイン   「来ちまった……剣王機が来ちまった」

 相手は主役オーラ全開のシンだ。その強さは推して測るべし。

グラナ   「あかんなーアレは、実質空手のじょーちゃんは離脱としても、アレはきついで。
       けど、こっから二人でアラサワ倒したらカッコエエと思わんか?」
ゲイン   「できるのか?」
グラナ   「ワイの震音衝を見ぃや、これなら剣王機の剣なんか一撃粉砕やで。そこをアンタの猛御雷ぶちこんだれば」
ゲイン   「へっへっ、そうだな、まだ諦めるには早いよなあ、ベルダのためにも!」
ベルダ   「二人とも、頑張って!!」


「「よっしゃあーーーー!」」

 二人は敵に――剣王機に向かっていった。そして……







 【勝者:可那・勝美・シンチーム】   奇跡など無い!







可那    「シン!」

 試合を終えてようやく再会できた可那とシン。緊張が解けた可那はシンの胸に飛び込む。

かつみん  「私も頑張ったんだけどなあ……」
シン    「わ、分かってるって。あんたが敵を消耗させて無いと、あんな風に勝たせてはもらえなかったからな」

 試合は、グラナが奮戦する中、隙を突こうとしたゲインがシンの攻撃を受け、戦闘不能に陥ったことで決着した。

ガミジン  「そうじゃねえとな。倒し甲斐がねえさ」
シン    「ガミジン……」
可那    「さっきはありがとうございました」
ガミジン  「フン、シンのツレなんざ助ける気は無かったからな」


ゲイン   「すまねえみんな……」
ベルダ   「もういいですって、ゲインさんのおかげで戦えたんですから」
ゲイン   「いや、本当にすまねえ。せっかくグラナさん粘ってくれてたのに」
グラナ   「しゃーないって、惜しい勝負やったろ」

 ぽんっとゲインの肩を叩く者が。

毒砲    「そうさぁ、いい試合だったぜ」
ゲイン   「あんた、大蛇さん!」
毒砲    「あんたらは出来ることやり切った。何も恥じることはねえ」
ゲイン   「ううっ、すまねえ……。ん、何この白いの、服か?」
末堂    「お前の道着だ」
カロ藤   「ガンガン扱いてやるからな」
ゲイン   「あ、あの話マジなの? やっぱり入門しなきゃダメ?」
毒砲    「じゃ、行こうか」
ベルダ   「ゲインさぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」




ザイドリッツ「やあ、君がシン君かい?」
シン    「あん、あんたは?」
ザイドリッツ「私がザイドリッツだ。キムも聞いてほしいんだが」
キム    「何ですか?」

 控え室ではオトナノカイダンノボルをベビー化被害者たちに投与しようとしていた。

ザイドリッツ「この薬だが、実はまだ効果が持続しているのだ」
シン    「は? それってつまり……」
キム    「子供から大人に。その先は……」
シン    「……」
ザイドリッツ「科学の進歩に犠牲は付き物、ということで」
シン    「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」






ユリウス  「長くなったがこれで11試合は終わりだ!」
テッシン  「次の試合へ、チェリァッ!!!!!」


続く