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Rコロシアム “ファイナル” 〜劉的怪物闘士〜



グ゛ニ゛ャ゛〜〜〜〜〜〜!!!(両者の闘気で空間が歪む!)





グ゛ニ゛ャ゛〜〜〜〜〜〜!!!!(両者の闘気で空間が歪む!!)





グ゛ニ゛ャ゛〜〜〜〜〜〜!!!!!(両者の闘気で空間が歪む!!!)





金網の試(死)合場(オクタゴン)には“もう2名の闘士”しかいないッ!!



               ギ゛ ン゛ ッ゛ !! (睨み合う両雄!!)

                   “ノンクレジット”と…



               ギ゛ ン゛ ッ゛ !! (睨み合う両雄!!)

                  ネメア・タイラーのみであるッ!



「余計な事を…」

“ノンクレジット”はそう不満を述べた。

「『頭突き』をぶつけるか…『肘』で脇を打つか…
 又は、『ローブロー』を喰らわせるか…“いくつかの脱出方法”はあったのだが?」

“ノンクレジット”はそう不服を述べた。



「助けて(カットして)もらって…その言い草か?」

ネメアは睨みつけながらそう述べた。

「グダグダ言ってないで…『早く死合(や)ろう』ではないか。」

ネメアは重心を落としながらそう述べた。

「立って(スタンドで)仕切り直しだ。」

ネメアは“カモン!カモン!”する。



「…。」

“ノンクレジット”は『グラウンド状態』から立ち上がり…。

「実はと言うと…」

“ノンクレジット”は『開手により正中線を守りながら』打撃の態勢を構え(とっ)た。

「一番死合(や)りたかった…

    “妥協を許さぬガチンコ(セメント)レスラー”よ。

 私の『戦闘修屠(バトルシューティング)』がどこまでやれるか…」

“ノンクレジット”は初めて構えを構え(とっ)た。



                   ッ!?(観客達(クレージーども)は)

               ゴクッ………(それが“意味”するモノが理解った。)

                 …………(並々ならぬ『試(死)合』になると…)

          オ゛…(何故“ノンクレジット”が獄闘(バトルロイヤル)を持ち掛けたかを…)

                  オ゛オ゛…(『理解』したのだッ!!!)

                   オ゛オ゛オ゛…!(それ即ち…ッ!)

           オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!(“ノンクレジット”はッッ)

      U゛O゛O゛O゛O゛O゛O゛O゛O゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!(ネメアと死合(や)りたかったのだ!)



「カードを間違えた。」

静かに後悔の弁を述べるは科学者“R”。

「最初から最終試(死)合(ファイナル)は…
 “ノンクレジット”VSネメア・タイラーにすれば良かったのだ。」

冷たく後悔の弁を述べるは科学者“R”。

「プロレス殺法の研究とバトルシューティングの完成を目指し…
 ネメアにセオドアを…“ノンクレジット”にホルヘを…ぶつけるのではなかった。」

無機質に後悔の弁を述べるは科学者“R”。


科学者“R”矢継ぎ早に語る。

「昭和の時代…」

「『最強の格闘技』とは何か…」

「その“ロマン”を語り合い。」

「『一つの答え』を出した。」

「アントニオ猪木を中心とするストロングスタイル(プロレス)だ。」

「昭和の時代(その時)はそれで良かった。」

「だが…」

「時代が進むにつれ…」

「“K−1”が現れ…“グレイシー”が現れ…“総合格闘技(MMA)”が現れ…」

「昭和の幻想(プロレス)は…」

「“雑魚乙w”という結論に変わった。」

「幻想(ファンタジー)は終焉したのだ。」

「だが、それを“一蹴する者達”もいるのは確かだ。」



         その闘士(もののふ)達…即ちッ!!(ドドドドドドドドドドン!!!)

                『地下プロレスラー』達であるッ!!

              その中でも“王者”と言われる絶対的存在!

                       ・
                       ・
                       ・

              我 が 憎 き 好 敵 手 (ライバル) !

                『レスラーの讃歌(プロレス殺法)』

              『耐撃の百文字(ジ・ハンドレッド)』だッ!!!



「彼奴の活躍…」

「その事実を目の当たりにしながらも…」



                   “耐撃のプロレス”…!

               私 は 絶 対 否 定 す る ッ !!!

                  
              『レスラーの讃歌(理に敵わぬプロレス殺法)』を…

               私 は 絶 対 否 定 す る ッ !!!

                       ・
                       ・
                       ・

“ノンクレジット”の格闘キャリアは『カラテ』から始まった。



それ即ち“打撃(Fist)”が中心…プロレス(Twist)とは相反するものだ。

しかし、彼が目指したのは“打・投・極”がある“総合(Mix)”。

“打撃(Fist)”とは相反するモノだった。

“打撃(Fist)”でもない、“組技(Twist)”でもない…

それが“総合(Mix)”だ。

セオドアが言ったまでもなく…

近代において最も『合理的』で『完成された』格闘技。

その“総合”(Mix)の象徴…それが『シューティング』だ。

『シューティング』とは『修斗』…

『修斗』は“斗いを修める(たたかいをおさめる)”という意味がある。

それは“プロレスラーでありながらプロレス(格闘演劇)を否定”した男により始まった。

日出国(ジャパン)プロレス界の伝説的虎仮面(初代タイガーマスク)こと

『佐山聡』が打ち出した“打・投・極”の三位一体とした『格闘技理論』としてだ。

ならば、私もそれに見習い…



            “ノンクレジット”氏と供に『格闘技理論』を打ち出そう。



                 そ の 名 も … !!!!!!



           『 戦 闘 修 屠 (バトルシューティング) 』 … !



   “ 屠 る を 修 め る (ほふるをおさめる) ” と い う 意 味 が あ る !!!

           こ れ を 意 味 す る と こ ろ は ァ !!!

                     科 学 的 で !

                     悪 魔 的 な ! 

                闘 法 (アーツ) で あ る ッ !!!



「見せるのだ聴衆に!」

科学者“R”は叫んだ!

「闘うのだ“ノンクレジット”!」

科学者“R”は咆えた!

「私とミスターとの幻想(ファンタジー)だァァァッ!!!」

科学者“R”は絶叫した!



「了解した。」

…と言ったかは兎も角!
科学者“R”の呼びかけと同時に…

ダ…ッ!

“ノンクレジット”は攻撃を仕掛けたぞーォ!?

ガッ!(“ブルース・リー”ばりの裏拳だ!)
                      ギシッ!(お次は両手の掌による鼓膜打ちだッ!)
パシッ!(おおっと?!相手を引き込んだぞ!)
                        ゴガッ!(膝で鳩尾付近を打った!)
ゴキャ…!(何度も…)
            ドギャ…!モ゛ギャ…!(何度も何度もォッ!)
トッ!(跳び上がった!)
                         ゴキャッ!!(肘で脳天を打った!)

              …そして〜ェ!!

          グギュッイ!!!(トドメの※チンジャブだッ!)

【チンジャブ】
ウィリアム・E・フェアバーンが生み出した軍隊格闘術
『フェアバーン・システム』(またの名を『ディフェンドー』)で使用される
相手の顎を掌で打ち上げながら指で目を突く単純ながら効果的な技のことである。

一連の動作は“迅く”“鮮やか”ながらも…
全てが“急所”に打ち込む『危険な技(デンジャラス・スキル)』であった。

「クックックッ…」

「“カンフーの華麗な手技”…」

「“ムエタイの膝地獄と肘での脳天打ち”…」

「そして、現代の軍隊格闘術の始祖とも言える“フェアバーン・システムのチンジャブ”。」
 
「リアルな闘いで生み出された“打撃”を取り入れたものだ。」

「その全てが急所に打ち込まれた。」


             「『文句のない“バトルシューター”の闘い方だ。』」


「これぞ『戦闘修屠(バトルシューティング)』の打撃(ストライク)…!」

科学者“R”は子供の用に『どうだ!』といった表情で言った。



               グラつくか!?ネメア・タイラーッ!!

               ダウンか…!?ネメア・タイラーッ!!

                     答えは否ッ!!

                     結果は否ッ!!



                「プロレスは『受け身のプロ』…」

                  ネメアはグラつかない…!

                  「こんな打撃なんぞ…ッ」

                   ネメアは倒れない…!

            「 ラ ジ ャ ・ ラ イ オ ン 並 !!! 」

                 プロレスは『強靭』ッ!!!

       「 貴 様 は プ ロ レ ス を 嘗 め 過 ぎ だ ッ !! 」

                シュッ…(後ろに回り込んだッ!!)



                     !!!??



                 ヤ゛ ッ゛ シ゛           ャ゛ ア゛ ア゛
         ア゛ ア゛                  ア゛
                     ア゛
       ァ゛ ァ゛ ァ゛ ッ゛
                             ッ゛
                                    ッ゛ ! ! !



             ガキッ!(両腕でしっかりと胴体を“ロック”したぞ!)

               レオはッ!“アンモナイト”を捉えたッ!!

                      …………

                ア゛ーッ?!これってもしかして〜ッ!



               『ジャーマン・スープレックスゥゥッ?!』



                        グ゛
                        ッ゛
                        ギ゛
                        ガ゛
                        ン゛
                        !

                        ・
                        ・
                        ・
                        ・
                        ・
                        ・

                       ………
                      ……………
                     …………………
                    ………………………

観客達(クレージーども)は沈黙した。
来賓も…
リングアナのロバート・チェンも…
そして…科学者“R”も…

                     “沈黙した。”

そんな中…

「なんと美しい放物線…」

とアメリカ上院議員ミッキー・ホフマンは呟いた。

それは…『美しいブリッジ』であった。
それは…『強烈な投げ技』であった。
それは…『正しくプロレス』であった。



                 “真っ直ぐなプロレスだった。”



                その名もジャーマン・スープレックス。

       レスリングの神様『カール・ゴッチ』がプロレスに取り入れたところから始まる。

                    最も“古典的”で!

                   最も“威力”があり!

                  最も“美しい技”である!

                      またッ!

            名手と言われる者ほど“美しい放物線”を描くと言われ!

             “レスラーの力量をみる基準となる技”と言われる!

                    即ちそれはッ!!



「“モノホンのプロレスラー”だッ!」
「いつの時代も、プロレスが“最強”!」
「“ノンクレジット”弱し!プロレス強し(・ω・)ノシ」

…とプロレスオタクや往年の地下プロレスファンは答えた。

「“プロレス最強”ゥ!」

その一部のディープなプロレス愛好家の言葉であったが…



                 「「“プロレス最強”ゥ!」」
                「「「“プロレス最強”ゥ!」」」
               「「「「“プロレス最強”ゥ!」」」」
              「「「「「“プロレス最強”ゥ!」」」」」



         「「「「「「“ プ ロ レ ス 最 強 ” ゥ !」」」」」」



球場(スタジアム)の観客達(クレージーども)は、そう“コール”した。



            「ウ゛オ゛オ゛オ゛ウ゛ウ゛ウ゛ッ゛ッ゛ッ゛!!!」

ネメアはそんな観客達(クレージーども)の声に応えたのか…“両手を突き上げた”のであった。



そのポーズを見て…



        「「「「「「「“ プ ロ レ ス 最 強 ” ゥ !」」」」」」」



                      
                      プ
                      ロ
                      レ
                      ス
                      最
                      強
                      ゥ
                      !

                      "



観客達(クレージーども)のボルテージは騰がりに騰がり…



                ブ゛ワ゛ァ゛〜〜〜〜〜〜………



球場(スタジアム)全体が“闘気”のようなもので包まれたのであった。



「…。」

科学者“R”はその光景を凝視する。

「クックック…。」

そして、冷たく哂い…

                  『ネメア・タイラー』

「その“豪壮なリングネーム”は※『ネメアの獅子』から拝借しただけはある。」

【ネメアの獅子】
ギリシャ神話に登場する人喰いライオン。星座の一つ『獅子座』の元ネタ。
ネメアの谷に住み着き、人や家畜を襲っていたが“英雄ヘラクレス”に退治された。
その皮は分厚く、さらにその皮膚の下に筋肉が変化して出来た甲羅があり
ヘラクレスが“矢で撃っても”“棍棒で打っても”毛皮には傷一つ付かず
最後は、3日間締め上げられ続けやっと倒されたと言う。

パチパチ…と。

「“平省三”よ。」

乾いた拍手をした。

「『“美(見)事”なプロレス』…

 『“本物のプロレスラー”』…

 そう賛辞を送っておこう。

 だが、その“強靭なタフネス”は“プロレスラーだから”ではない。

 私が君の衰えつつある躰に『薬物の投与(ドーピング)』や

 『インドライオンの神経を移植する』など“肉体改造を施した超人”だからだ。」

科学者“R”は狂気の笑みをニヤリと浮かべ…



                    ヌゥ………

                     あっ…

                   立ち上がった!

                アンモナイト修斗が立った!

               “ノンクレジット”が立った!

          あの“強烈なプロレス(ジャーマン)”から立ち上がったのだ!



「だが、ネメア(君)も人間を超えた『超人』ならば…」

“ノンクレジット”の目付きが変わった…!

「“ノンクレジット”は『超人を超えた超人』ッ!!」

“ノンクレジット”の体付きが変わった…!

「何故ならば…」

“ノンクレジット”の容貌が変わった…!

「選ばれた人材(素材)で改造を施した…」

それは宛ら“人間の体躯”ではなく…



      ″ 『 劉 ク リ ー チ ャ ー 』 な の だ か ら ッ !!! ″



                と“R”は叫んだのだったッ!!



                  その体躯は人に非ずッ!



              “古代種である三葉虫”の体躯をした…!



               『"怪物(クリーチャー)"であった。』



Rコロシアム 特別試合(バトルロイヤル・デスマッチ)

現在状況

死亡:大廣 憲幸(“無頼”空手)

生存:ネメア・タイラー(プロレスリング)

再起不能:セオドア・"フィッシャーキャッツ"・ヒル(MMA)

死亡:ホルヘ・ラーモス(ラーモス柔術)

生存:“ノンクレジット”(バトルシューティング)





                    『劉クリーチャー』

       人と動物の細胞を組み合わせて出来た“云わいる『改造人間』の事”である。

                 無論…動物の肉体であるからして…

           "人間のときよりも身体能力が上がることはいうまでもなく…″

                   …唯一つ欠点があるならば

                “適合”する肉体で無ければならない。

                     それは謂うならば…

              動物の細胞と適合する“『健全』なる肉体”とッ!

         改造に耐えうる“『強い』精神力”を持ち合わさなければならないッ!



「クックッ…!
 そして…“ノンクレジット”は、三葉虫という『古代種の細胞』を媒体とした
 初めての『劉クリーチャー』…ッ!!」

科学者“R”は嗤った。
“R”は自ら作り出した『作品』に絶対の自信を持ち合わせている。

故に……

「さぁ闘るのだッ!“ノンクレジット”!!」

「…否。」

強かに笑いながら“R”はこう叫んだのだッ!



                 「“RC−15”ッッ!!!」



                   ザ゛ キ゛ ッ゛ !!



繰り出したる技は“前蹴り”である。
しかし、その“前蹴り”の尖端は“固く足指は握り込まれ”…
その威力『鉄槍』に近く…正に『強烈』。
そして、深々と腹部に刺さった“前蹴り”(『鉄槍』)により
ネメア修斗の腹部は“陥没”に至ったのあった。



                      故に…



                  「……〜〜〜ッッ!!」

                   悶絶したのであった。



前のめりに崩れるはネメア修斗…だが“攻撃はこれで終わらない”。
次にアンモナイト修斗は、無慈悲にもネメアの頭部を『ガッチリ』と右脇に挟み込み…



                    『ドカリッ』

…と床に叩き落としたのであった。



それはプロレスで言うところの“DDT”であった。

「プロレスラーに“プロレス技”か。酔狂な事をするものよ。」

科学者“R”はその光景を見て淡々と語った。



                   ………………………

その刻…数秒の“静寂”が辺りを包んだ。時間が凝縮された“沈黙”であった。
球場(スタジアム)全体が静寂に包まれたのだ。
両雄だけでなく、この光景を見た観客達(クレージー)どもは沈黙したのだ。

「クックックッ…決着か…案外早いものだったな。
 “RC−15”はまだ30%の実力しか出してはいないのだが…
 耐撃の百文字(ジ・ハンドレッド)の実力には届かぬものの…
 “アストロ・ダンディ”クラスの肉体改造レベルに上げたのだがな。」

科学者“R”は独り冷たく呟いたのであった。

                  そして…『確信』したのだ。

古代種を元にした『劉クリーチャー』は完成に至ったと…

                    “後は………”








― 日本・南辰館空手本部道場

「強いな…キミィ。」

ここは、南辰館空手の本部道場。
実戦派空手の中では、大蛇流に続いて位置する巨大勢力である。
日本よりもむしろ海外に主眼を置き、アメリカ各地やヨーロッパに支部が多く点在する。

そして、この絶賛する一人の男は空手界の重鎮であり、南辰館館長“松泰達(まつ やすたつ)”である。

「“黒帯”を与えなさい。」

『飛び段宣言』である。
この日は“昇段・昇給試験”だった。
3級である緑帯の試験を受けていたのは『平 省三』…若干18歳の若者である。
昇給試験の際、黒帯相手の組手となり圧倒的な力で倒した故であった。

「館長…ッ」

一人の支部長らしき男が「平に黒帯は早すぎます!」との戒めの言葉を述べようとしたが…



           「 “ 黒 帯 ” は 強 者 の 証 ッ !! 」



          「それに相応しい男がいるということだ!?キミィッ!!!」

松は怒鳴った。
本部道場にその怒声が木霊し、ビリビリと空気を震わせていた。



                  「お…押忍ッ!!!」



支部長らしき男は納得するより他なかった。
平省三…この日より黒帯に昇段したのであった。





― 日本・ライジングプロレス道場

「弱いね…君は。」

リング中央で血達磨になりながら平は倒れていた。

「君は“プロレス”を甘く見ていた。“プロレス”はねぇ…強いんだよ?」

血達磨にした男は“大男(巨人)”であった。
男の名は“ゴリアテ威場”。
身長208p体重136kgの恵まれた体格を持つ、日本マット界のビッグネームである。

この日、平はライジングプロレスに『道場破り』を仕掛けた。
ライジングプロレスはマット界でも“受けの美学”を重んじ
相手の技を全て受け、なおかつ勝つという主義主張を提唱する『昔ながらのプロレス』であった。
故に実戦性に乏しいとして乗り込み、威場を倒せると踏んだのだが…

平の重い打撃を受けても、涼しい顔で受けきり
その後、平を投げ飛ばし…関節で腕を折り…顔面に蹴りを見舞った。
それでも向かってくる平に、巨体に似つかわしい素早い“プロレス風味”の打撃を
次々に打ち込みダウンを奪ったのだ。

                    (俺は…南辰館全日本選手権重量級の覇者なのに…)

         (プロレスは八百長……)

                      (デカイだけ…)
    (空手(打撃)って…子供騙し?)

“空手家の誇りと驕り(今までの全て)が水の泡”となったことで
泪を流す平に…威場は汗をタオルで拭いながら言葉をかけた。

「それよりも良い打撃だ。それにその体格…空手家のままでは惜しい。」



                   「どうかね?」

              「プロレスラーになってみては…?」



              「………………。」(平は沈黙の後…)



              「押忍…」(…と小さく返事をした。)

              プロレスラー『平省三』の誕生である。

            それは…“二度と泪しない道”の選択であった。



       「海外武者修行(向こう)じゃあカンフー使いってギミックで受けそうだ。」

            その返答に威場は嬉しそうな笑顔を浮かべた。





― 日本・ライジングプロレス社長室

「真剣(セメント)は困る。」

社長室で威場と平は対峙していた。
どっかりと椅子に座る威場は大きく、椅子が芥子粒に見えるほどであった。

「うちのモットーは“明るく・楽しく・激しい”プロレスなんだ。
 もっとお客さん達に感動させられるようなものではなくては困る。」

威場はプカプカと葉巻を吸っていた。
その表情からは怒りが見られないが、声にはドスがきいて怒気が帯びていた。
平は一方的な試合で勝ったのだ。それは、僅か30秒で決めてしまうほどのものであるほどに。

「“魔獣伯爵”の仇名を持つ野郎の実力を知りたかったんスよォ…」

ソファーに座る平はボソリと言った。

「バカ野郎ッ!ガービンにいくらのファイトマネー支払ったと思ってんだッ!!」

その言葉を聞き威場は怒声を発した。その声はビリリと社長室を震わせた。

「お言葉ですがね…社長。俺はもう我慢出来ないんですよ。
 これじゃあプロレスは『ショー』じゃあないですか『サーカス』じゃあないですか。
 プロレスは『格闘技』じゃあないんですかいッ?『強い』ンじゃあなかったんですかいッ?!」

平は立ち上がって反論の弁を述べた。
俺の空手家としてのプライドをズタズタにしたのはプロレスだ。
そのプロレスが格闘技性を排してのショー性の偏重に怒りと不満を募らせているのだ。
プロレスは筋書きのある格闘演劇と理解しつつも、格闘技としてのプロレスを否定したくなかったからだ。
それを否定することは、懸命に取り組んでいた『空手家だった頃の自分』…
『格闘家としての自分』を否定することだったからだッ!



             「“プロレスは格闘技を超えたものがある…”」



威場は静かに切り返した。

「ですが…ッ」

平も言葉を返そうとする刹那…

「そうかい…」

ぬぅ…と威場は巨体を立ち上がらせ…
窓まで行き空にある雲を見ながら悲しそうに呟いた。



                 「残念だが“クビ”だ。」










― M州D市 某球場

                    カ゛ッ゛!!

                「プロレスは強いんだぜェッ!!」

            ネメアは意識を取り戻したッ!即座に立ち上がったッ!

                    ゴク……ッ

            その光景を見て球場内の全ての人々は息を呑んだッ!

                   「オラオラッ!」

                  ガ゛ッガ゛ッガ゛ッ!

               力道山よろしくの空手チョップの嵐だッ!

                  オオ…(観客の歓声ッ!)

              「なんでも取り入れるのがプロレスゥッ!」

                 「セ゛イ゛リ゛ヤ゛ッ!!」

                   ド ド ッ !!

          急所が点在する正中線への南辰館仕込みの正拳突き5連打だッ!

                オオオオ…ッ(観客の歓声ッ!!)

                  「プロレス最強ゥッ!」

                 「デエエエエエエッッ!!」

                  ド゛ ガ゛ ッ !!!

            トドメとばかりに放った技は『ドロップキック』!

               古典的で基本的なプロレス技だッ!!

             オオオオオオオオ…ッッ(観客の歓声ッ!!!)

              “ノンクレジット”のアンモナイト修斗は…

              吹゛っ゛飛゛ば゛さ゛れ゛た゛ァ゛ッ゛!!!

                 「ヨッシャーッ!!」

             ネメアは右腕を突き上げガッツポーズを取る。



   オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”ッ”ッ”ッ”!!!!!!



               球場内を観客達の歓声で包み込んだ。

        それは血生臭さを求めての“クレージー”でも“ビースト”でもなかった。

                 素直な“感動”だった。

             初めて見せた“人間的な部分”であった。



「観客の“質”を…『変えた』だと?」

科学者“R”は不満そうに述べ…

「不愉快だ。」

「牙を抜かれよって…」

「リアルではないッ!」

「プロレスなどというクソカスなぞッ!!」

次から次へと愚痴をこぼした。

それに対し『キグナス』は囁いた。

「あれは“現実(リアル)”ですわよ?」

ドンッ!

科学者“R”は机を叩きつけた。
それは静かな怒りであり…この状況への不満であった。

「私は認めんッ!」

“R”の不服に対し『キグナス』は…

「まるで贔屓のフットボールチームが劣性になって怒る…休日の父親みたいね。」

そう微笑みながら言った。



                  『その時である…』

                    ビシ…ッ!

                     ?!

               ネメアも球場内の観客達も驚愕した。

           横一文字にネメア修斗の胴体を切り裂いていたからである。

                    そして…

      静かにアンモナイト修斗…“ノンクレジット(RC−15)”は立ち上がっていた。

          「そのタフネスに賞賛を送りたいが…所詮は『遊戯』だな。」

             “ノンクレジット(RC−15)”は言った。

             「プロレス故に“残虐性”が足りない。」

            “ノンクレジット(RC−15)”は構えた。

      「そろそろ“解禁”しよう…本当の殺人技(バトルシューティング)を。」

         “ノンクレジット(RC−15)”は間合いを詰めてきた。

          ネメアはペインセンサーからの伝わる痛みに耐えながら…

                  「バケモノか。」

                   …と呟いた。

         “ノンクレジット(RC−15)”は、その言葉を聞き…

                「それは…お前もだろ。」

                  …と切り返した。



Rコロシアム 特別試合(バトルロイヤル・デスマッチ)

現在状況

死亡:大廣 憲幸(“無頼”空手)

生存:ネメア・タイラー(プロレスリング)

再起不能:セオドア・"フィッシャーキャッツ"・ヒル(MMA)

死亡:ホルヘ・ラーモス(ラーモス柔術)

生存:“ノンクレジット”(バトルシューティング)





「…………。」

紅髪の男ゼダは腕を組んでいた。
花岡を“バトルシューティング研究チーム”に送り出した後、静かに試(死)合の経緯を見ていた。
表情には出さないが“熱い気”を滾らせている。言葉に出さないとはいえ興奮しているのだ。

「見えたか…?」

傭兵デーニッツが後ろから静かに声をかける。
ゼダは小さく一瞬ビクリと反応しながらも、直ぐに平時の状態に戻りこう答えた。

「あの蹴りで吹っ飛ばされる瞬間に“足刀を横一文字に入れた”。」

デーニッツはニヤリとした…あの蹴りは刃物のような鋭さを持つものであると。
表情には出さないが、それを見抜くゼダ(この男)は相当な手練れであると。
それを解ってさらに質問する。

「どう思う?」

「何がだ…」

ゼダは鬱陶しそうに返した。
それに対しデーニッツは冷や汗を掻きながら続けた。

「先程から“動きが違う”…身体能力が異常に上がったかのように…」





「へっ…面白くなってきやがった。」

ネメアはそう言いながら手をポキポキと鳴らした。

「こっからがプロレスだぜ。」

大きく広く両腕を突き上げて構えた“プロレス構え”を取りながらの…

「Show Time(かかってこいやァ)ッ!!」

挑発だッ!!

科学者“R”は吐き捨てた。

「愚かな……」

“ノンクレジット(RC−15)”は無造作にゆるりと間合いを詰め…
アンモナイト修斗の右拳が『シュッ』と消えた。そう…繰り出したる危険技は…



                 貫手による『地獄突き』であるッ!!

                     ジ゛ャ゛ク゛ッ!!

               鍛えることの出来ない喉仏へ急所攻撃だッ!!

               また付け加えるとそれは機体へ“間接部”ッ!

               僅かに短絡(ショート)するネメア修斗の喉元!

             その『地獄突き』は刃物に匹敵する威力であったのだ!

                どうなる平省三(ネメア・タイラー)ッ!?

                「“ブッチャー”みてぇじゃねェか…」

                 効 い て い な か っ た 。

           パシリとネメア修斗はアンモナイト修斗を両腕で胴体を捕えた。

                    「ウ゛オ゛ラ゛ッ!!」

                  万力の如く力を込め締め上げたッ!

                   グ”ギ”ッ”グ”ギ”ギ”

                 ベ ア ハ ッ グ で あ る !!

                      「…?」

               一瞬“異変”に気付いたネメアであるが…

                   ギ”ッ”ギ”グ”ギ”ギ”

                    構わず絞め続けた。

                “ノンクレジット(RC−15)”は…

                   “絶体絶命”ッ!!!

                     ド゛カ゛ッ゛!

                       否…

                 強烈な肘を頭頂部に落とした。

             『それ』により…ネメアの万力の如き両腕は外れた。



「痛ェな…おい。“威力”がさっきと大違いだぜ。」

ネメアは頭を摩りながら言い…
次に南辰館空手の構え(アップライト)に構えこう言い放った。

「まっ『褒めてやる』よ。
 俺のベアハッグ外したのはあんたが初めてだからな。
 だからよォ思いっきり使わせてもらうぜ…」

                     「“空手”!」

ネメア修斗は言うや否や『ド゛ン゛ッ゛!!』とアンモナイト修斗のローを蹴りつける!
それは重い(ヘビーな)…重い(ヘビーな)蹴りである。
その一撃によりくの字に折り曲る“ノンクレジット(RC−15)”。

その時、来賓席で暗黒街の『首領(ドン)』
“ハッピー・アバチーノ”は口をあんぐりと開けながら述べた。

「体制崩れましたで…」

また同じく観客席で、地下プロレスのオールドファンである
“ミヒール・ジマーマン”は両拳を握り締めながら評論した。

「セオドアのローが“子供(チャイルド)”ならば…
 ネメアのローは“大人(アダルト)”というワケか。」

「オ゛オ゛ス゛ッ゛!!」

もう一度ネメアはローを蹴りつけた。
その重い(ヘビーな)一撃で完全にアンモナイト修斗の体制が崩れたのである。

「チ゛ェ゛ス゛ト゛ーッ゛!!」

そこへ顔面への重い(ヘビーな)正拳突きである。
ネメアは、このコンビネーションで試合や喧嘩問わず幾つもの勝利を重ねてきた。
空手家時代…即ち南辰館空手家時代の平省三の勝利の方程式である。

                 直撃…?KO…?『否ッ!!』

                  “手首を獲っていたッ!”

                    「捕獲完了……」

             “ノンクレジット(RC−15)”はボソリと言うと…

                      フッ…!

             “合気道で言うところの『小手返し』をかけたッ!!”

                      ゴガッ…

                     「!゛?゛」

                  “地面に強く叩きつけ…”

                    ゴガ…ッ!!

               “冷酷にも顔面を踏みつけたのである!”








― 12年前…ドイツ・シェーネフェルト国際空港

平省三…否、ネメア・タイラーは解雇された後、アメリカのインディーズ団体を中心に活動していた。
だが、その妥協を許さぬガチ(セメント)プロレスにより負傷者を何人も出してしまい
各団体のレスラーやプロモーターから嫌われ、完全に『干される』形となってしまい転々としていた。
だが“ある人物”の誘いにより、平(ネメア)はプロレス不毛の土地である“ドイツ”へと渡ることとなった。
そして、空港にて一人の男と出会うこととなった。

「お待ちしていた。ショーゾー・タイラ。」

男の名は“ヤン・クローバー”(本名 ヤン・シュミット)28歳。
若くして新興プロレス団体『ハイブリッド・レスリング(別名HW)』の代表であり、ランカシャーレスリングの名手でもある。
ヤンは平(ネメア)の噂を聞きつけ呼び寄せたのであった。

「俺を呼ぶなんてどうかしてるぜ。
 俺はプロレスが出来ない(台本通りに動けない)プロレスラーなんだぜ?」

平(ネメア)は自虐気味に自身をそう評した。
だが、ヤンは笑ってこう告げた。

「プロレスが出来ない(台本通りに動けない)…それで結構。
 私がやりたいのは『シュートプロレスリング』ッ!」

「真剣(シュート)だァ…?」

「そう“真剣(シュート)”だ。だが、最初の内は『肉弾戦』で。
 何時かは『ロボット同士の格闘技戦』にしてみようと思っている。」

「ロボット同士…?!」

「そうロボット同士。」

「“ロボットプロレス”ってか…?」

「斬新だろ?」

平(ネメア)は驚いていた。シュートレスリングならまだしも『ロボット同士の格闘技戦』だからである。
この時代は2足歩行の機体が完成していない時であり、ヤンの言葉に疑問が残った。
車でさえロクに動かしていない自分に「そのような芸当が出来るのであろうか…?」と。「そんな夢みたいな話は実現出来るのか?」と。
そんな平(ネメア)の心中を察してか、ヤンはこう答えた。

「ダイレクト・トレース・システム…つまりは『DTS』を知っているかね?
 これをある研究チームが開発中でね。
 『搭乗者の動きをトレースし、そのまま機体に伝えることで生身の動きを再現出来る』らしくてね。
 複雑な操縦方法を訓練せずに、機体を動かすことが出来る。私はこれに注目しているんだ。」

「…?」

「つまりは『2足歩行の機体』さえ完成すれば『ロボット同士の格闘技戦が可能』ということだよ。」

「おいおい…」

「ヤンの言っていることは夢物語だ。」平(ネメア)はそう決めつけた。
DTSという機能がまだ完成至っておらず、2足歩行の機体さえ誕生していない。
それに資金は…?そのような条件が山積みになっているのに『ロボット同士の格闘技戦』など出来るのか?と。

「あんた言っていることはお伽話だぜ。バカじゃなきゃそんな事は言えねェ。」

ネメアはつい口に出してしまった。

「ああ“お伽話”さ“バカ”さ。
 でも、私はプロレスに“夢”を取り戻させたいんだ。」

「“夢”…?」

「そう“夢”。今はプロレスは他の格闘技に押され“夢”が失われつつある。
 私は取り戻したいのだよ。プロレスの素晴らしさを…
 かの東洋の偉大なる巨人(ジャイアント)ゴリアテ威場の発言した…」



              『“プロレスは格闘技を超えたものがある!”』



「それを実現させる為に!『ロボット同士の格闘技戦』という形でねッ!!」

「何もロボット使わなくても…」

平(ネメア)はすかさず返すも…ヤンは熱を帯びた声でこう述べた。

「『ロボット同士の格闘技戦』…“夢”があるとは思わないかい?
 巨大なマシン同士が火花を散らし“受けの美学”でガッチリと組み合い突き蹴りあう!
 既在のプロレス団体を超えた“ダイナミックプロレス”になるよッッ!これはッッッ!!!」

ヤンの熱の籠った弁論は矢継ぎ早に続く。

「これは、ロマン溢れる“異種格闘技戦”をも再現することが可能ッ!
 考えても見給え『異種格闘技戦の本場はプロレス』だろ?」

「力道山VS木村政彦!」

「アントニオ猪木VSモハメド・アリ!」

「これら伝説の一戦は全て“プロレスのリング”だった!」

「そうッ!!『プロレスは全ての格闘技を包み込む“許容”と“暖かさ”』があるッ!!
 全てを包み込むことで“格闘技”を“プロレス”というものに変貌させるのさッ!それを『機械格闘』で表現してさッ!!」

ヤンは両腕の拳を固く握り締めながらこう言った。

               「私は…人々に“夢”を与えたいッ!!」

平(ネメア)は興奮していた。この男の言っていることは“夢物語”だが
久々にワクワクするような気分だった。童心に返るような気持だった。
平(ネメア)は、興奮により体を震わせながらこう言った。

                 「その“夢”叶えられるかい?」

ヤンは、この言葉にこう答えた。

                 「もちろんさ“当てはある”。」





― ドイツ・フランクフルト

HW(ハイブリッド・レスリング)の第一回興業は、ここドイツ・フランクフルトの小さなサッカー場で開催された。
参加選手はヤン率いるシュートレスラー達と、特別に招集した選手が4名。

アメリカからは空手家『ミック・ルーファウス』と総合格闘家『ダン・ブライ』。
豪州からはキックボクサー『スタン・ド・マン』。
日本からは総合空手覇道塾の『町原山樹』が参加した。

平(ネメア)はこれらの選手を見て、ヤンに感心しながらこう言った。

「よくこれだけの選手を集めたもんだな。どいつも“一級品”だぜ。」

「言っただろ?『プロレスは全ての格闘技を包み込む』ってね。
 “友人”の紹介で異種格闘の選手を集めることが出来た。レスラー同士の試合だけじゃあ面白くないからね。」

「なかなかの“プロモーター(やり手)”だ。だが…一つ不満があるならば“お客”がねェ。」

平(ネメア)は、そう言って辺りをきょろきょろと見回した。
観客が思ったよりも少なく、加えてアルコール臭漂う質の悪そうな客が多かったからである。
ヤンはそんな状況でも問題なくこう答えた。

「最初はこんなものさ。ドイツはプロレス不毛の土地だからね。
 プロレスファンも何人か観戦しに来ているが
 このハイブリッド・レスリングをただの総合格闘技と勘違いした人が多いのだろう。」

ヤンの言葉に平(ネメア)は、半ば呆れながら言った。

「そんなトコロで団体旗揚げしちまってよかったのかい?」

「“故郷で錦を飾る”ってのが筋ってモンだろ?
 まずはドイツ(故郷)でハイブリッド・レスリングを…プロレスの素晴らしさを広めたいのさ。」





それは幻想(ファンタジー)であった。
レスラー達が織りなす“受けの美学”と“レスリングテクニック”の数々…
異種格闘技戦においては“真っ直ぐなプロレス”を通して、プロレスの強さを四角いジャングルで表現していった。
無論『作りなし』である。

「すっげ…あのルーファウスを『コブラツイストでギブアップ』させちまいやがったよ。」

「ルーファウスってプロ空手のチャンプだろ?攻撃を避けずに受け切ってそれを…」

「コブラツイストって見せかけの技じゃなかったのかよ!?」

「ねぇ…レスリングじゃないの?総合(MMA)じゃないの?」

「レスリングでも総合(MMA)でもない!あれは『プロレス』ってやつだ!!」

「うおおおッ!あのネメアってレスラーすげぇ…ッ
 ラリアットでスタン・ド・マンをKOしちまったぜ…?!」

「“プロレス最強ゥッ!”」

………………

― 12年後…アメリカ・ニューヨーク

平(ネメア)は夢から覚めた。
夢(ハイブリッド・レスリング)は、僅か数ヶ月で終焉(終わった)のだ。
草の根で広まっていき、一時は国内で一大ムーヴメントが巻き起こり
スポンサーも多く付き始め、各ヨーロッパ諸国でもTV放送が始まった。
この時、ヤンはどこからか入手したか分からないが機体の設計図を見せてくれた。
それは無骨ながらも確かに“人型の形”をしていたのだ。ヤンはこう語った。

「今度、実験としてエキシビジョンマッチで試作機2体を出したいと思っているんだ。
 操縦者には幾人か候補に挙がっている。もちろん君もね。」



                       “夢”は近づきつつあった。

                  しかし…『ある事件』で終焉を迎えることとなる。



ドイツで起きた異星人襲撃事件である。無慈悲にも、興行中に巻き込まれたのだ。
その中で所属する選手のほとんどをなくし、代表であるヤンも行方不明となってしまった。

現在、平省三(ネメア・タイラー)は、ニューヨークにある小さなプロレス団体に所属していた。

「俺がやりてぇのは“ショー”じゃねぇ…“プロレス”なんだよ。」

独りボロアパートの一室でぶつくさと呟き、脳裏には様々な想いが駆け巡っていた。

(HW(ハイブリッド・レスリング)が順調に行っていけば…)
(ヤンの言っていた“夢”は『ORGOGLIO』に別の形で再現させられてしまった…)
(ダンの野郎め…ヤンの構想をパクリやがってよ。)
(年齢的にも下り坂だぜ…これからどうすればいいんだ?)
(思う存分“真剣(シュート)”がしてぇ…)
(ヤン…お前が言っていた“当て”ってのは…)

そんな時である。

「失礼する。」

「誰だ!?」

その男はまるで“死神”であった。何時の間にやら部屋に侵入していたのだ。

「私の名は“R”…ヤン・シュミット氏とは旧知の中でね。
 彼は私に“DTSを搭載した人型マシンの開発”を依頼してくれていた。」

「ヤンと…!?」

死神(男)は“R”と名乗った。話から察するにヤンとは知り合いであり
尚且つ、科学者であるようだった。それもかなりの科学力を持つ……

「何の用だい?」

ネメアは即座に疑問をぶつけた。それに対し“R”は静かに答えた。

「君にある試合に出場してもらいたい。」

「試合…総合(MMA)かい?
 それなら『お断り』だ。俺はプロレスラーだぜ。」

「クックックッ…総合(MMA)と言えば総合(MMA)。
 だが、君が出場するのは“デスマッチ”だ。」

「“デスマッチ”…だと?」

「そう“デスマッチ”だ。『地下プロレス』のようなね。」

「ッ!!」

『地下プロレス』…
平(ネメア)はアメリカでの武者修行時代、話だけは聞いたことがあった。
闇社会(アンダーグラウンド)で行われる非合法の試合…
対戦者の“再起不能”…又は“死”によって決着がつくその試合は凄惨なものであるという。

「是非とも、Mr・タイラ(ネメア)にはデスマッチという舞台で
 “プロレス”をしてもらいたい。“ショー”ではなく“プロレス”をね。」

『“ショー”ではなく“プロレス”』…この言葉にネメアは昔の様な興奮を覚えた。

「ふっふっふっ…」

ネメアは哂った。やっと自分のしたい“真のプロレス”が出来ると。
かつて、HW(ハイブリッド・レスリング)に所属していた時のような充実感を得られるのだと。

「…いいぜ!その話に乗ったッ!!」

ネメアは“R”にOKのサインを出したのだ。
その言葉を聞いて“R”は敬意のポーズ(お辞儀)をしながらこう言った。

「流石はプロだ!流石はシューターだ!そんな君に“プレゼント”しよう…ッ!!」



           「全盛期の…いや『それ以上の力を発揮出来る』ようにッ!!」










― M州D市 某球場

                      パ゛シ゛ッ゛!!

                 踏みつけられたと同時にその足を捕り…

                      ド゛ン゛…ッ゛ッ゛

                絡め取り倒したのだ(テイクダウンさせた)!

「バカな…あの踏み付け(ストンピング)を…」

ゼダは呆気にとられながら呟いた。
踏み付け(ストンピング)は地味ながらも強烈な技だ。
それを受けながらも、足を捕りテイクダウンさせたのだ。
恐るべしネメア…恐るべしタフネス…恐るべしパワー…恐るべしプロレス。

                「咆゛咆゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ゛!!!」

                   ライオンの様な雄叫びを出し…

                仕掛けた技は足関節(ヒールホールド)であったッ!!

                      「ネメアッ!」

                    一人の観客が声援を送る。

                     「「ネメアッ!!」」

                   もう一人の観客が声援を送る。

                    「「「ネメアッ!!!」」」

                  更にもう一人の観客が声援を送り…

                  「「「「ネメアッ!!!!」」」」

           いつしか球場(スタジアム)全体が“ネメアコール”に包まれたのだ。

                さぁこれで、膝関節破壊ッ!?靱帯断裂ッ!?

                      答えは“NO”!

               「…ッ???!!!」(ネメアは異変に気が付いた。)

               (こいつの修斗…異様に“関節部が柔らかい”ぞッ?!)

                 (関節(サブミッション)が効かねェッ!!)

          (待てよ…今思い返せば…こいつのボディは“ゴムのように柔らかかった”!)

                    疑問が次々と出た時である。

                        トン…ッ

         “ノンクレジット(RC−15)”は、ネメア修斗の足の間接部に手を置き…

                     ゾ゛ブ゛ … ッ゛!!

                   握り込み“抉り取った”のだッ!!

                 機体の足からコードや部品が飛び出した…

「おわッ???!!」

ペインセンサーから伝わる激痛に、ネメアは思わず技を解いてしまった。
観客達は皆冷や汗を掻き口々にする。

「えげつねぇ…」

「単純だが効果的だ。」

「なんちゅう握力…」

その時である。

ピ゛…ッ゛!!

アンモナイト修斗はすかさず手刀により、ネメア修斗の目に当たる位置を横に薙いだ。
即ちメインカメラ部を破壊してのけたのだ。

「ぐぅッ!!」

ネメアは反射的にその手刀を出した腕を捕るが…

ド゛オ゛ン゛ッ゛!!!

空いた手で繰り出した“強烈な喉輪”で押しのけられ…
そのままカチ上げられ頭部を再び床に叩きつけられたのであった。
“喉輪落とし”である。大の字でネメア修斗は倒れ込んだ。
そして“ノンクレジット(RC−15)”は、静かに立ち上がり後ろを向いた。
『勝利を確信したから』である。



                       「待てよ…おい。」

                         「!?」



信じられないことが起きた。ダウンしたかと思ったネメアは立ち上がったのだ。
この光景に…観客も科学者“R”も皆沈黙した。

                 「出来レースしやがってよ。不公平じゃねェかよ。」

                「“ギミック”がてんこ盛りじゃねェかよ。なァおい?」

観客達はネメアの言っていることは分からなかった…だが只々呆然とするしかなかった。
そう…科学者“R”と“ノンクレジット(RC−15)”を除いては…



               ネメアは“マイクパフォーマンス”かのように言い始める。

                    「足が思うように動かねェ…」

                「メインカメラ(両目)が破壊されよく見えねェ…」

                        「だがな…」

                 「手負いこそ危険…!手負いこそが最強…!」

                     「目覚めちまったぜ…!」

                 「俺の“獣性(レスラー魂)”がよォッ!!」

                      「喰らいやがれッ!」

              「渾身の“ネメアファング(ラリアットのこと)”を……ッ」

                     ゴ゛ガ゛ン゛ッ!!!!!!

               ネメアは、崩拳(中段突き)により腹部を貫かれていた。

                     一瞬の出来事であった。

                         パシ…

               その時、弱々しくアンモナイト修斗の頭部を掴み…

                         コッ…

                     軽く頭突きを見舞いながら…

                         ドン…

                      斃れたのであった……



          『妥協を許さぬガチンコ(セメント)レスラー』ネメア・タイラー…『死亡』ッ!



“ノンクレジット(RC−15)”は静かに腕を突き上げ勝利を宣言するも…
拍手するものは一人としていなかった…しかし“そうではない者”がいた。



                 「時間は掛かったものの…よくぞ斃した。」



                  そう…科学者“R”を一人を除いて…



Rコロシアム 特別試合(バトルロイヤル・デスマッチ)

全試合終了…!

死亡:大廣 憲幸(“無頼”空手)

死亡:ネメア・タイラー(プロレスリング)

再起不能:セオドア・"フィッシャーキャッツ"・ヒル(MMA)

死亡:ホルヘ・ラーモス(ラーモス柔術)

勝者:“ノンクレジット”(バトルシューティング)



― 続く