Rコロシアム 第三試合〜メルカバの突き〜



第二試合の“ミヤビの乱入(奇術)”を終え、凄惨な試合(デスマッチ)はまだまだ続く。
狂気の観客達は次の試合に期待していた。










『GUOOOOOOOOOOONNNッ!!!』










“陰険な雰囲気”の中
リングアナであるロバート・チェンはコールする。

「それではこれより…」

「第三試合を始めますッッッ!!!!!!」



『ウオオオオオオオオ―――――――――ッッッ!!!』



観客達は唸り声を上げる!
試合場には既に2機の“軍用修斗”がいたのである。

一つは、黒を基調としながらも“両腕が迷彩”にカラーリングされた修斗。
腰には“ナイフ”を差している。
パイロットは、『イスラエル軍人』バレン・レザルト少尉。


対する修斗は“全身が迷彩”にカラーリングされ、銃剣(バヨネット)を携えていた。
パイロットは、同じく『イスラエル軍人』ボアエル・オズ少尉。


ロバート・チェンは観客達に“ある事”を説明する為にマイクを手に取った。

「まず観客の皆様方にご説明したい事があります…」

「この試合“特別”として“軍用修斗”を使用が認められます!」






「よって“DTS”機能はなし!!」






『BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!』



観客達はブーイングを浴びせる。
何故ならば、軍用修斗には“DTS”機能がないからである。
その為“ペインセンサー”が搭載されておらず
操者の“痛みによる叫び声(スクリーム)”や“断末魔の叫び声”が聞こえないからである。

ロバート・チェンは更に続ける

「だが“ご安心下さい”!今回の試合は“どちらかが死ぬまで続ける”と言う事が
 “イスラエル国要人”の提案と“両者の希望”により実現されました!」



『IYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』



今度は一転して“狂喜の歓声”が場内を包み込んだ。
“どちらかが死ぬまで続ける”という言葉が出たからであった。


そしてッ!!



ドンッ!!!



和太鼓(ジャパニーズドラム)が試合の開始を合図した!!!











開始の合図の中…





科学者“R”の席に“主賓”として招かれた





“アメリカ政府要人”





“オシリス社の幹部”





“裏社会の首領”





といった面々の中…





イスラエル“保守派思想”のゴルダ・オルメルト議員(49歳)が“それらの面々に語りかける”。





「皆さんにお見せしたい…



 “パレスチナ問題”



 “シロッコの乱”



 “アムステラ戦争”






 これらの“紛争”や“戦争”で培われた…」






ド ド ド ド ド ド ン ッ ! ! !











『“ 真 の 闘 争 を ッ ッ ! ! ! ! ! ! ”』








バ ア ア ア ァ ァ ァ ン ッ ッ ッ ! ! ! !











Rコロシアム 第三試合

バレン・レザルト(イスラエル軍人)
27歳 国籍:イスラエル

VS

ボアエル・オズ(イスラエル軍人)
30歳 国籍:イスラエル





“オシリス社の幹部”の一人である“サングラスの女”はボソリと言った。



「自国の“現役軍人”をRコロシアム(この場)に呼び…

『どちらかが死ぬまで続けさせる』なんて…






“悪趣味”な事。」



悪趣味な議員(オルメルト)はそれを聞いていたか…





冷たく(静か)に答えた。






「我が国の“クラヴ・マガ(軍隊格闘術)の巧者”と“銃剣術の名手”…





どちらが強いか…“純粋に気にならないかい”?





それも“真剣勝負(デスマッチ)”の中で…」





“サングラスの女”は暫く沈黙の後…





答えた。





「“優秀な戦闘人員”が減ることになりますわよ?」





オルメルトは鼻で笑った。

「 接 近 格 闘 な ど 古 臭 い www 」



オルメルトは演説した。

「『ケンゴー』よりも『ピストルを持ったチンピラ』の方が強い。
 私は“そう思っている”。“そう考えている”。」



オルメルトは吐き捨てた。

「 戦争とは“重火器”や“集団戦”が主なものだ。」



オルメルトは『格闘技を否定』した。

「“一個人の戦闘能力”が何になるのかね?」



オルメルトは『傲慢で冷酷』だった。

「どちらが『死』のうと、どうでも良い。」



オルメルトは吐き気がするほどの『悪』だった。

「私はこのような大会を主催すると“アメリカ政府要人”から聞いて
 居ても立ってもいられず“どちらが強いか?”という興味本位で
 あの二人を出場させたのだよ。“R”氏に頼んでね…」



 科学者“R”も続ける。



「私の方こそ感謝する…オルメルト議員。これは“良いサンプル”となる。
“現役軍人の殺し合い”は『バトルシューティング』の完成におけて重要な素材だ。」



“サングラスの女”は言った。



「お好きなこと…」

半ば“呆れた表情”であった。








試(死)合場では、バレンとボアエルが睨み合っていた。
互いに“憎しみ”を持った眼をしていた。



        それほどの睨み合いであった…

      それほどの陰険さが両者に漂っていた…


         もっと言うならば…ッ!



     『並々ならぬ因縁を感じさせている…ッ!!』



       …と言えばお分かりだろうか?



その“陰険な因縁”を持つ両者の容貌と経歴を説明しよう。

           まずは一人目…

髪型はG・I(ジー・アイ)カット…顎鬚を生やし、体格は大きく
“闘犬”のような眼をしているのは
“クラヴ・マガ(軍隊格闘術)の巧者”バレン・レザルト…階級は少尉。
イスラエル軍内でクラヴ・マガの講師をしている。

“両腕が迷彩”にカラーリングされた修斗は、“ナイフ”を腰に差したまま
ファイティングスタンス(攻撃の構え)を取っている。



            さて次は…

“銃剣術の名手”ボアエル・オズ…階級は同じく少尉。
髪型は丸刈り…体格は大きくも小さくもないが“筋肉質”な体付きをしている。
眼は“蛇”のように鋭い。

“全身が迷彩”にカラーリングされた修斗は銃剣(バヨネット)を中段に構えている。



       『クラヴ・マガ(軍隊格闘術)VS銃剣術』

          両者のスタイルは共に…

   『戦争』という闘争の舞台で磨かれた“殺人術(キラーアーツ)”

            これは一種の

          ミリタリーな試(死)合…

              否ッ!



              戦
              争
             (ウォー)
              で
              あ
              ろ
              う
              !

               




……
………
…………
……………
………………
…………………
……………………
………………………
…………………………
……………………………
………………………………
…………………………………
……………………………………




動かない…


……………………………………


両者とも…


……………………………………


動かなかった…


……………………………………


いや…


……………………………………



         『 簡 単 に 動 け な い の で あ る 』





それもそのはず…
バレンは“懐に一気に潜るタイミングを探り”
ボアエルは“ロングレンジからの一突きを入れるタイミングを探っていた”からである。






……
………
…………
……………
………………
…………………
……………………
………………………
…………………………
……………………………
………………………………
…………………………………
……………………………………





観客(ド素人)達は…“この膠着状態”を嫌い…





              『 野 次 を 飛 ば す 』





「早くやれッ!!」

「さっさとしろ〜〜〜!!!」

「クリケットの試合見てるんじゃねぇぞゥ!」

「ユダヤ野郎!ちゃっちゃとせんかい!!」

「殺れ!殺れ!!殺れ!!!」







緊迫(これ)に堪らえられなかったか…





ギィ…





額に汗を滲ませながら
バレンは飛び込もうと『重心を前にかけた』…
攻撃の準備である。





と…







その時である…










ボアエルはそれを見たか…










ダンッ…








“腰を入れ”前に移動しながら…










“ロングレンジから瞬速の突き”をッ!










ズゥ………ッ!!!










繰り出したッ!!






!!
!!!
!!!!
!!!!!
!!!!!!
!!!!!!!
!!!!!!!!
!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!





            「ッ!!!???」

              バレンも…

            「〜〜〜〜ッ!?」

              観客達も…

               「!」

             科学者“R”も…


!!
!!!
!!!!
!!!!!
!!!!!!
!!!!!!!
!!!!!!!!
!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!





この稲妻(瞬撃)に驚かされていた。




            「よし!よし!」



その中で一人だけ『叫んだ』者がいた…





            「出たぞッ!!」





    「 “ メ ル カ バ の 突 き ” ッ !!! 」



イスラエル“保守派思想”のゴルダ・オルメルト議員(49歳)であった。








 ビ ッ … ! !



機体の腹を狙う“メルカバの突き”ッ!!!



 サ ッ … ! !



バレンは体捌きでなんとか躱すものの…



ビリッ…



わずかに左脇腹をかすめ…



ジジッ…



短絡(ショート)した。



「 外 れ た か … ッ !!」

そう叫ぶはゴルダ・オルメルト議員!



「“メルカバ”…」



「イスラエルが開発した主力戦車。」



「メルカバとはヘブライ語で騎馬戦車(Chariot)を意味する…」



「なるほど…“ニックネーム”通りの“砲撃(鋭い突き)”だ。」



「『単純(シンプル)』にして『必殺の威力(スペシャルホールド)』…!」



「更に彼は『正確にコクピットを見定め、貫ける』と聞く…」



「宛ら“ニュータイプ”といったところ…」

科学者“R”はボソリと冷たく呟き…

「さぁ…どうする!レザルト少尉…!?
 どう対処する(闘る)!?『クラヴ・マガ(イスラエル軍隊格闘技』』…ッ!!」

…と続けた。



【クラヴ・マガ】
20世紀前半、イスラエルで考案された近接格闘術。
“マガ”は『接近』『接触』“クラヴ”は『戦闘』を意味する。
イスラエル保安部隊に採用され、世界中の軍・警察関係者や一般市民にも広まっている。
最大の特徴の一つといえるのが“『実戦』を徹底的に意識していること”である。

即ち“ナイフや拳銃などの凶器を保持しているケースも想定”し
また“複数の相手も想定”して、トレーニングを行っている。

そして、クラヴ・マガでは“人間の本能的な条件反射”を
動作として取り入れているため、咄嗟の状況でも対処できるよう体系付けられている。



             ニ”ィ”……!!

        ボアエルは笑みを浮かべ再び構え直す。



             一方…バレンは…



             『悟っていた』



          『あるカラテマンが言っていた…』



       『長い得物を学んでいる者が立ち会う場合…』



   『前者は、後者よりも三倍の段に相当する実力がなければ勝てない…』



           『これが“剣道三倍段”か…』



           『ふふっ…“悲しい”が…』



  『自分の格技(クラヴ・マガ)のレベルでは、この男の銃剣術には敵いそうにない…』



            『それが…“現実”…』



    『然らばッ!“勝てなくとも…負けなければよいッ!!”』と…



        『 “ 奥 の 手 ” ッ !!! 』



              そして…



        “腰に差したナイフを取り出した”





        !!!!!!!!!!!!!!!!





       !?!?!?!?!?!?!?!?!?





         E〜〜〜〜〜〜ッ!!!???





          ざわ…ざわ…ざわ…ざわ…





スタジアムは『その行為と驚き』に騒めき出す…ッ!!!

観客(ド素人)達はバレンに野次を飛ばす。

「ここで武器を使いますかァ――ッ!?」

「素手でやれよォッ!!!」

「“光モン”のタイミング早すぎ…」

「てめぇの流儀(スタイル)は武器を持ってるヤツにも対処出来るんだろ?!」

「クラヴ・マガのテクニック見せたれェェェ―――ッ!!」








選手控室では……

「これは“野球(ベースボール)”でも…
 “籠球(バスケットボール)”でもない“現代のコロッセオ(Rコロシアム)”と言うのに…
 平和ボケした無責任(呑気)な観客どもだ。」

そう呟くは最終の第八試合で戦う“闘士”…



その名は… “ ノ ン ク レ ジ ッ ト ”



そして、もう一人呟いた。





「あの男……」

「私と同じように“対戦相手に憎悪を抱いている”…」

一回戦で勝利したレオポルド・ジェランである。



そして… 
更 に ジェラン は 続 け る … ッ !!





「 “ あ の 男 は 死 ぬ 気 ” だ ……… ッ 」








― イスラエル・エルサレム

ここはエルサレム内の『墓地』…
厳かに“葬儀”が行われていた。

喪服を着た人々…
ある者は泣き崩れ…ある者は無言で涙を流していた…



死者の名は“ヤエル・ファレス”…



イスラエル陸軍の軍人で、バレンの『婚約者』であった。

戦闘による“戦死”である。






そう…イスラエルは極端に“ 治 安 が 悪 か っ た ”

二年前に起きた『シロッコの乱』

半世紀以上も続くパレスチナ問題

そして、アムステラの地球侵攻…



どんな“紛争”“戦争”が起きようと軍人である限り“いつ戦死してもおかしくない”のである。
だが…ヤエルは“少し事情”が違っていた。



参列者の老人が語る。

「なんで“軍法会議”にかけられんのだ…!
 『オズ』は…あいつは味方を殺したんだぞ…ッ!?」

その息子と思わしき男が答えた。

「向こうの敵将を討ち果たしたから…
 “罪には問われん”とさ……」








― 某イスラエル陸軍基地

イスラエル陸軍は基地を落とそうとするアムステラとの部隊と交戦していた。



アムステラは少数の部隊とはいえ、圧倒的な火力で押している。





この時の様子を新米兵(ルーキー)のモシェ・キャッツは語る。

「あれは凄かったですよ…アムステラ(あちらさん)の遠隔からの砲撃の嵐で
 砂煙が舞う中、イスラエル陸軍(こちら)の機体はどんどん撃ち落されてね。
 気づいたら隣の同僚が“ 消 し 飛 ん で い ま し た よ ”」





そんな中、“ 数 機 の 4 型 が 突 撃 (特攻) ”をかけた。





キャッツは続ける。

「もうこっちの負け確実ですわ…俺っちもね“死”を覚悟しましたよ。ええ。」

「そんな時ですよ。
 何をトチ狂ったのか何機かの4型が白兵戦用の武器を取り出して“突撃”を仕掛けに行ってね。」





その中に、ヤエル・ファレスとボアエル・オズの姿があった。
アムステラの砲戦型羅甲で構成された部隊に、次々と撃ち落される中
ヤエルとボアエルだけが接近戦に持ち込めたのである。

インファイトでは分が悪い砲戦型羅甲は2人に次々と撃破されていく。








「ええーい!何をやっとるかッ!!」

咆えるはアムステラの将校。丁髷を付けた“ワオキツネザル型の獣人”である。
恐らくはセンゴク星出身であろう。

「“砲戦型はインファイトに弱い”ので
 後方支援機として少数でいいと言ったのに…
 上はまるで兵法というものを分かっておらぬ…」

次々に2機の4型に落とされる状況に陥りながらも冷静な口調ぶりは
“余裕”の表れであろう。負けるはずがないと…
現に戦況は圧倒的にアムステラ軍の優位であった。



「地球軍もそのような“兵器(玩具)”でよくやるわ…

 だが…ッ!!!!!!

 このヒートソードで叩き斬ってくれるッッ!!!」



指揮官機と思わしき羅甲は、白刃に煌めくヒートソードを抜き放ち
両手で上段の構えから振り下ろすッ!!!



「 源 当 流 の 一 撃 を 受 け ィ ィ ッ !!!」





ガギィッ!!!








斬撃(源当流の一撃)を受け止めるはファレスの4型。
シールドでの防御である。





「盾とな…ッ?!」





ワオキツネザル型の獣人指揮官は冷や汗を流す…





スッ…





ファレスは、このまま右手に手にした高周波ナイフで羅甲を突こうとした。








しかし……








ズッ……!








〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!?????








冷たく輝く銃剣の一閃……








ファレスの4型を貫き
敵指揮官の羅甲を鮮やかに刺すボアエルの姿がそこにあった。



新米兵(ルーキー)のキャッツは語る。

「何が何だか分かりませんでしたが、向こうの通信が聞こえまくりでしたわ。
 スイッチか何か間違ったんでしょうかね?

 『隊長がやられた…!』『ぐ、軍曹…退きますか?』
 『バカ退いてどうする!戦況はこっちの圧倒的優位だ!!このまま押し切れッ!!』

 とかなんとか…完全に向こうは“ 混 乱 ”してました。」

「そんな時にいいタイミングで援軍が来て“形勢逆転”…
 こちらの勝利に終わりましたよ。」





                た だ ね ……








 ファレスさんが“ あ ん な こ と に な る ”だなんてね…
 オズ少尉は『敵指揮官機を倒すことに集中して……』とか言ってましたけど…








 あの時の表情と目を見る限り…



 自分は思うんですが








         “ 故 意 ”にやったんじゃないでしょうかね…?








 いや…まぁ自分の勝手な想像ですけどね…
 


 すみません忘れて下さい。
 あの事件のことは“上”がうるさいですかね。
 なんせオズ少尉は『准将の甥』ですから…」








後方にいた男に老人が歩み寄る。

「バレン…お前はこのままで
“ い い の か ”…!?“ 良 い の か ”ッッ?!」

…………………

葬儀に参列した
バレンは直立したまま黙っていた。

老人は詰め寄る。

「敵軍と交戦し死んだのならば納得もいく…だがッ…!」

…………………

「何か言わぬか…ッ!!
 ワシの娘が…ヤエルが……」

男が間に入る。

「やめろよオヤジ!義兄さんを責めてもしょうがないだろ?!」

…………………

バレン・レザルトは沈黙を守ったままであった。








― M州D市 某球場


GUUUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOッッッ!!!!!!





             騒めき立つスタジアム…!



           バレンにブーイングを飛ばす観客!



DANッ!DANッ!!DANッ!!!DDDDDDAAAAAANNNNッッッ!!!!!!



              地団駄を踏む観客!!



UONッ!GONッ!!DONッ!!!GGYAAAAAOOOONNNNッッッ!!!!!!



         発狂猛獣(ビースト)の如く叫びあげる観客!!!








科学者“R”はその様子を…






            “ 冷 た く 見 守 る ”



ググッ…!

バレンの修斗はナイフを腰だめにし…



そして…ッ





                ダッ!!!





         “両腕が迷彩”にカラーリングされた修斗はッッッ

     “全身が迷彩”にカラーリングされた修斗に走り寄るッッッッッッ!!!






 “銃剣術の名手”ボアエル・オズは“ 蛇 の よ う な 目 を 見 開 か せ ”!



             繰り出したるはッッッ!!!



         必殺の『メルカバの突き』ッッッッ!!!!!!








             無 論 狙 う は … !!










 “ 両 腕 が 迷 彩 ” に カ ラ ー リ ン グ さ れ た 修 斗 の コ ク ピ ッ ト で あ る ッ !



蛇(ボアエル)は迫りくる闘犬(バレン)を凝視するッ!!!





突きィッ!
突きィッ!!
突きィッ!!!
突きィッ!!!!
突きィッ!!!!!





その単純(シンプル)にして、強力(パワフル)な技(テクニック)…ッ!





来い…!
来い…!!
来い…!!!
来い…!!!!
来い…!!!!!




狙いを定め…





突くッ!!!




たったこれだけで良いのだ…
今度こそ外さねェ…ッ!!
俺様は、この刺突一本に“絶対の自信を持っている”!!!




負けるはずがない!





串刺しだ……





刺し殺してやるッ!!












― 某イスラエル陸軍基地

時はアムステラの地球侵攻の1年前。
基地の司令室に相対する二人の軍人がいた。
ボアエル・オズとその叔父であるユフダ・オズ准将であった。



ユフダは“銃剣(バヨネット)”を手に取りこう述べた。

「軍内でも格技の成績がトップクラスのお前を見込んで“頼みたいことがある”…」



ユフダがボアエルの蛇のような眼を凝視しながら続ける。



「“銃剣術を磨き研究せよ”」



                ?



ボアエルは理解できなかった。
訓練教科である格技の成績はトップクラスの実力があったが
火器や集団戦において“そのようなものが役立つ”とは思わなかったからだ。

ユフダは甥の心中を察してか…言葉を続ける。

「お前も覚えておろう…“シロッコの乱”
 テロリストどもの中に“中東の槍術家”がおってな…



 機体が持つ武装は“槍と僅かばかりのポテトマッシャーだけ”
 我々も最初はその貧弱な武装を見て“嘗めておった”





 だが…なかなかどうして。





 その“貧弱な武装”…いや“豪壮なる槍捌き”で悉く
 我が軍の兵がやられていった。




 乱は鎮圧したものの、未だ残党やテロリストどもがおる我が国おいて
 イスラム槍術に長けたものが多く隠れているやもしれぬ…



 テロリストの槍術を封じるのは、イスラエル軍人の務めである。



 磨 く の だ ! 研 鑽 を 積 む の だ !」



ボアエルはそれ以来“銃剣術”に没頭するようになった。
来る日も…来る日も…突き続けた。



いかに迅く…! いかに最小限で…! いかに強力に…!



日本の槍術家を招集してアドバイスを受けた。



アメリカ海兵隊・銃剣術の講師にもアドバイスを受けた。



Gladiatorのチャンプからもアドバイスを受けた。



回りの同僚からバカにされても…



回りの上官から叱責を受けようとも…



狂人呼ばわりされようとも…



来る日も…来る日も…突き続けた。



そして…



気づいたときには…



“メルカバの突き”と言われるほどの銃剣術の名手になっていた。



“メルカバの突き”の最初の犠牲者は“テロリスト”ではなく
アムステラの“羅甲”と呼ばれる機体であった。

銃剣を軽く握りしめ… 体幹を使い… 深く踏み込む…ッ!

これで何機もの“羅甲”を葬っていった。
“爽快”で“快感”であった。努力が報われたような気がした。



そんな時だ。ある作戦で“一人の女性”と出会った。
女性の名はヤエル・ファレス。



『美貌の女軍人であった。』



ボアエルは一目惚れした。



だが、彼女には“婚約者”がいた。





“ヤエル・ファレス!”

“ああ…!彼女を俺のモノだけにしたいッ!!”

“好きだ…!最愛(好きだ)…!抱きしめたい(好きなんだ)…!”

“婚約者がいるだろうと関係ない!”

“無理矢理にでも…”

“…………”

“でも…待てよ…?”

“彼女は軍人だ…いつ死んでもおかしくない…”

“それに俺もだ……”

“だいたい、この戦争いつ終わるんだ…?”

“…………”

“ああ!そうだッ!!”

“彼女は殺させねェ!”

“彼女は誰のものにもさせねェ!”

“よしッ!!”

“彼女を殺してェ〜!!!”






“ 永 遠 に 俺 だ け の モ ノ に さ せ る ゥ !! ”






ボアエルは“常人とは違った思考の持ち主(サイコ)だった”
チャンスを待った。言い訳の効きやすい状況で彼女を殺すタイミングを…!
幸い叔父は陸軍の准将!なんとかうやむやで終わらしてくれるハズだァ〜!!





そして、やっと…ォ!





そのチャンスがやってきましたよォ〜ッ!!!





………………






彼女を刺した瞬間…

なんとも言えない幸福感(エクスタシー)が全身を駆け巡った…

“ああ…これで彼女は俺だけのモノだ…”








― M州D市 某球場

汚職まみれの議員(オルメルト)のヤツが
なんでこんな試合させるかわかんねーけどよォ!

相手が“バレン・レザルト”だってェー?!





上等じゃねぇか!

殺してやらァ!!





ヤエル(彼女)と結ばれるのは俺のハズだったのにィ!!

先に予約(婚約)とかふざけやがってよオオオォォォッ!!!





気に入らねェ!

マジ気に入らねェ!!


刺!

刺ッ!!

刺ッ!!!






刺!刺!刺!刺!刺!刺!
刺!!刺!!刺!!刺!!刺!!刺!!
刺!!!刺!!!刺!!!刺!!!刺!!!刺!!!



来たッ!
来たッ!!来たッ!!来たッ!!
来たッ!!!来たッ!!!来たッ!!!



このタイミング! コクピットを狙ってェ―――!!!








       “ メ ル カ バ の 突 き ”





『そこ』ッ!!!





ズッ……!!





やったァ―――!!





『刺した』!『刺さりました』よォ〜ん!!!





俺の勝利…




俺ってば!マジ『ニュータイプ』ゥ♪




!!!!!!!!!!!!!!!???????????????





お…





お、おい!




バ、バカかァ?!



こいつ“イカれてるのか”!?





わ、わざと“突かれやがった”ッ!!!




わ、わざと“貫かせやがった”ッ!!!





           こ…





こ゛っ゛
     ち゛
        へ゛
           来゛る゛
                な゛ァ゛
―ァ゛…
       ――???!!!

















スタジアムは決着の光景を表す“静寂”に包まれる。





“両腕が迷彩”にカラーリングされた修斗は…
そのコクピットを貫かれながらも…
“全身が迷彩”にカラーリングされた修斗をナイフで





           下から上へと…
       『深々と腹部を刺していた…』





          そして…両機は……




           “爆散”した。




……
………
…………
……………
………………
…………………
……………………
………………………
…………………………
……………………………
………………………………
…………………………………
……………………………………

球場(スタジアム)は“興醒め”ていた…
“殺人芸(キラーアーツ)”を見たかったのだ。
軍人同士の“戦争(ウォー)”が見たかったのだ。



    結果は、バレンの『特攻』により“両者相討ち(ダブルKO)”…



観客達(クレージーども)は“仇討ち”が最高のギミック(試(死)合の味付け)としても
『捨て身戦法』が見たかったわけではないのだ。


……
………
…………
……………
………………
…………………
……………………
………………………
…………………………
……………………………
………………………………
…………………………………
……………………………………

試(死)合終了から1分が経過…
未だ球場(スタジアム)は“興醒め”ていた…



「 何 だ よ こ り ゃ 〜〜〜 ?! 」

来賓席で『キレる』者がいた…ゴルダ・オルメルトである。



ゴルダ・オルメルト議員は叫ぶッ!

「アホゥ!バレンのヤツめィ!!
“塩死合”しおって!!確実に仕留める捨て身の戦法しやがってェ―――ッ!!!」



ゴルダ・オルメルト議員は叫ぶッ!!

「お塩だよ!ビッグお塩だよ!!ソルト!!!ソルトゥッ!!!」



ゴルダ・オルメルト議員は叫ぶッ!!!

「興奮出来ねえよ!こんなクソ死合ッ!!」



ゴルダ・オルメルト議員は叫ぶッ!!!!

「マジ!イスラエルの恥ッ!!」



“主賓”の面々はその光景を見て…



ある者は頷き ある者は苦笑いを浮かべ ある者は無表情で見ていた



“オシリス社の幹部”の一人である“サングラスの女”は…

「…。」

侮蔑の目でオルメルトを見据えていた。



ゴルダ・オルメルト議員は叫ぶッ!!!!!

「クソッタレ〜〜〜!“機体の残骸(ゴミ)”をさっさと……」






            P”A”N”…ッ!





            乾いた音がした。





             銃声だった。





ゴルダ・オルメルト議員は横から頭を撃たれ、その場に崩れ落ちた。
銃を撃ったのは、科学者“R”である。



「“クソ”は貴様だ。“この美しい光景”を見て感動をせんのだからな。
 貴様のような“美的感覚”がない“ただのクレージー”を来賓として招いたのは失敗だった。」

科学者“R”はオルメルトの躯を冷たく見て続ける。

「品のない下衆は嫌いだ。」

科学者“R”はオルメルトの躯を『汚物』を見るような眼で見つめていた。
そんな科学者“R”であったが…



          「ただ一つ誉めてやろう…」



        「“良き闘士”を連れてきたとな。」



      …と呼び寄せた来賓に『一応の敬意』を示した。





Rコロシアム 第三試合

バレン・レザルト(イスラエル軍人)
27歳 国籍:イスラエル

VS

ボアエル・オズ(イスラエル軍人)
30歳 国籍:イスラエル

“両者相討ち(ダブルKO)”



― 続く