それは40年と数年昔のお話。
北海道は大雪山にて山に籠り・・鍛練に打ち込んでいる親子が居ました。
親の名は『巴二十八(ともえ にじゅうはち)』、子の名は『百文字 豪介(ひゃくもんじ ごうすけ)』。
名が示す通り、血の繋がりは無い2人。本当の親子では無い2人だけれど・・・。
本当の親子の様に、気兼ねなく。本当の親子の様に厳しくも温かな家庭を築いていました。
そんな2人が山籠り。理由は一つ『強くなりたいから』。それは親の願いでもあり。また子の願いでもありました。
子はメキメキと強くなっていきました。そんなある日の事でした。
それはもう何も教える事は無い。下山をし、お前が信じる道を進むのだ。と、父が勧めたあの日あの時。
片眉を剃り上げた若者が二人の前に現れます。その男の名は『大蛇毒砲』。
大蛇毒砲はこう言う。
「『柔道界のドカ男』が此処に居るって聞いてよぅ。」
巴二十八が答える。
「へへ。おいらと勝負って訳かい、片眉のあんちゃん!」
大蛇毒砲は嬉々として。
「話が早くて嬉しいねぇ〜。なぁおい。楽しく、闘(ヤ)ろうぜ!!」
結果……。
巴二十八は死にました。享年60歳。尋常なるは死合の結果でありました。
子は激怒します。今ぞ仇討ちッ!しかし・・恐るべしは大蛇が瞳。
何者をも射抜くその瞳にて、その子は。百文字は射抜かれました。
そして気が付いたら・・・。『百文字は“土下座”をしていたのです。』
憎い仇はこう言い放つ。
「故郷(くに)に、帰(けぇ)んな。」
「お前ぇさん、『こっちの世界』じゃあ生きちゃいけねぇぜ。」
そう言い残すと、仇はその場を去っていきました。
結果、百文字は傷一つ負わずに済みました。
しかし、それは・・・。
自分が持ってる失ってはならない、『 大 切 な 何 か 』と引き替えに。
百文字は、失意の中。あてもなく山中を彷徨い続けました。
そんなある日。
百文字は、出会うのです。
そう。
それは・・・。
その『出会い』こそが・・・!
・・・・
滅び行く、母星(ほし)を後にして。
それから・・・。
どの位の時が経ったのであろう・・・?
流れ着いた星の名は。
ーー ー 『 地 球 』 。
母星(ほし)とよく似た、青くて美しい地球(ほし)だった。
緑溢るる青い地球(ほし)。
けれど。それは、決して自分にとって優しい地球(ほし)では無かった。
遅れた文明。同種すら差別をし合うその社会。
どちらも自分にとって、厳しい環境であると言わざる得なかった。
そんな自分を救ってくれたのが・・・。
『 百文字(ハンドレッド)であった。 』
モノを言わぬ。
感情すら無いと思われる、鈍感な彼(ハンドレッド)であったが・・・。
必死に自分から学ぼうとする彼(ハンドレッド)を見ていると・・。
己が不幸を、嘆き悲しみ。何もせず生きていく事が、『 罪 悪 』であると思えてならなかった。
だから私は・・・。
この地球で『生きて行く』と決めたのだ。
姿も。形も。寿命すらも違う人間。
けれど、私は・・・。
『 生 き て 行 く 』と決めたのだ。
そして私達には夢があった。
それは『子を育む事』。しかし悲しきは別種族。どうやっても懐妊する事が出来なかった。
そんなある日の事。1人の老人と邂逅する事となる。
その老人の名は・・・『柳生月心斎』。
・・・・
それは奇妙な老人であった。
158cm。47kg。寝むそうな顔に、語尾は『よん』付け。
何処からどう見ても、強そうに見えないのに・・・。
針で突き刺すような研磨をされたオーラを持った老人。
その老人こそが『柳生月心斎』。日本防衛軍空軍長官。
月心斎は雅号であり、本名は「十蔵」と言うとの事。
今日この日。百文字こと、ジ・ハンドレッドとレディ・ミィラは柳生宅に来訪をしていた。
現状の報告と。遂に『赤胴鈴之進(あかどう すずのしん)』と戦う日が来た事を告げる為に。
柳生月心斎が話かける。
「いよいよ、鈴之進ちゃんとの死合のようだねん。」
ハンドレッドが答える。
「ああ。柳生の爺さんから見れば裏切り者を始末する事になる。」
柳生。
「それはちょっと違うよん。ワシが頼んだのは『鈴之進ちゃんの息子が脳死』になる前だからね。」
「鈴之進ちゃんは息子に自分の修行に付き合わせて、結果、脳死の重傷負わせてしまったのよん。」
「それを苦に武人よりも、1人の親として正しい選択を選んだんだろうね。」
「文句はあれど責める気はないよん。」
ハンドレッド。
「その親としての責務もワシが奪う事になるな。」
柳生。
「百ちゃんが勝てたらだけどね。鈴之進ちゃんは強いよん。」
ハンドレッド。
「慢心するつもりは無い。だが我々の。」
レディ・ミィラ。
「そう。私達の夢の為には・・・。」
柳生。
「乗り越えなければならぬ道・・か。良いね、若いって言う事わ。」
ハンドレッド。
「若さを隠遁生活で曇らせる事無く、例え暗闇の暗黒道だとて、進むべき道を勧めてくれた柳生の爺さんのおかげです。」
レディ。
「宇宙船を修復させ、他種族間の性交を可能とする星を見つけ出す事。」
柳生。
「だが、その道には罪が伴う。もっとも、そんな道を勧めたワシが一番の悪党かも知れないねん。」
ハンドレッド。
「柳生の爺さん。ワシ等は我武者羅に突き進むのみだ。ワシ等はどちらも引く事の出来ぬ性分。」
「柳生の爺さんが勧めずとも何時か・・・、似たような道を選んで居たであろう。」
レディ。
「そして大恩ある、お爺の役に。日本防衛軍に蔓延る影を消し落とすが出来るなら・・・。それはせめてモノ救い。そう思っているわ。」
柳生。
「ふぉっふぉっふぉ。おだてても何も出ないよん?」
ハンドレッド。
「ではそろそろ。死合があります故。」
レディ。
「行きましょうか、この外道。私達が望む『夢』の為に。」
そうして、2人は去って行った。
・
・
・
・
・
柳生は呟く。
「鈴之進ちゃん・・・。因果なモノだね。」
「君もあの夫婦も誰よりも『子を愛するが故』に外道を歩まなくてはならない。」
「どちらも死んで欲しくないね。ワシは哀しいよ。長く生き続けると言う事は『幾多の哀しみ』を見届ける事に似る。」
「だがワシはまだ死ねぬよ。終わらぬ紛争。幾度となく若き血が流れ続ける中、おちおち死んでなんて居られんからのぅ。」
「どれ、一眠りでもするかの。」
ゴロン。
拳聖(柳生)はゴロリと横になった。
・・・・
「勝てるんだろうな。勝てるんだろうな、赤胴鈴之進(あかどう すずのしん)ッ!!」
そう言うは現チャンプのブラックゴールド。本名は「蔵金 馬黒(くらがね ばぐろ)」。
汚職の疑惑が常に付きまとう『国会議員』であり。事実汚職塗れの『秘密結社ブラッククロスの“幹部”』である。
大きな体をブルブルと震わせながら、ブラックゴールドは赤胴鈴之進にそう問うた。
「ご心配召されるな、ブラックゴールド殿。」
「剣を持っては日本一。そして銃刀法の中生き抜いた・・・。」
「“赤胴流”が必殺技ッ!『赤胴真空切り』を冴えをご覧いただきましょうぞッ!!」
無精ひげに無精ハゲ。ちょんまげを結った独特の髪型。
太い眉、暗黒世界に似つかわない、キラリと光る大きな瞳。
当年45歳。身長170cm80kgの小柄のマッチョ。赤胴姿のその男。
赤胴鈴之進はそう答えた。
ブラックゴールドが歓喜する。
「そうか!そうか〜!そうだよな!そうだよな!な!な!な!!」
赤胴鈴之進は淡々と。
「委細合切任せる事よろしきかと。」
ブラックゴールドは嬉々として。
「そ・そうこなくっちゃあいけないぜぇ〜クヒヒ!!」
「鈴之進。息子の事は任せておけ!必ず目を覚ます!!」
「医学の粋を結集させて、必ず甦らせてやる!!」
赤胴鈴之進は万感込めて。
「有難き幸せ・・!拙者、その言葉万感の思いにて噛みしめ“勝利への活路”を見出してみせましょうぞ!!」
「では、行って参りますッ!!」
・
・
・
・
・
1人残ったブラックゴールドがこう呟く。
「クヒ!クヒヒ!!ああは言ってるが・・・。」
「良くて五分だな。技では勝ろうが、体格差があり過ぎる。」
更に呟く。
「柔よく剛を制すとは良く言ったモノだ。『出来ねぇから“幻想”持つ』んだよ・・なぁ?」
「鈴之進の鋭利な爪の手刀から放たれる『10cm先の物を刻みつける“真空切り”』。聞こえは良い、実際強い。」
「だがよぉ〜う、やっぱ体格差があり過ぎるぜぇ〜え。オマケにハンドレッドは、木偶の棒じゃあないんだぜぇ〜ええ?」
そして怯えながら・・・。
「・・・ああ、怖い。恐ろしい。恐怖を覚える。」
「あんな!あんな化け物どうやって倒すんだよぉぉぉおおおおお!!クヒィ!!無理!絶対!無理だぁぁぁぁぁぁ!!」
「クゥゥゥゥゥヒィィィィィィイイイイイイ! イ ・ イ ・ イ ・ イ ィ ィ ィ ィィ ィ ィ ! ! ! ! 」
奇声を挙げたその“刹那”ッ!!
ドゴォ!ドゴォ!ドゴォ! (叩く叩く叩く!!)
ドォゴ!ドォゴ!ドォゴ! (床を床を床を!!)
ゴバァ!ゴバァ!ゴバァ! (崩れる崩れる崩れる!!)
ゴォバ!ゴォバ!ゴォバ! (床が床が床が床がァーッ!!)
異常なまでの恐怖。恐怖から生まれる破壊力。
そして、彼の力とは・・・。
こ ん な モ ノ で は 無 か っ た ッ ! !
・・・・
まばゆい照明と血香るマット。ワイヤーロープに囲まれた『四角いジャングル』。
そう。これが今夜も。そう。これが今日も『敗者の墓場』となる『地下プロレスのリング』であるッ!!
ジ・ハンドレッド!赤胴鈴之進!!共に入場完了ッ!!
ッ
ッ
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
赤胴鈴之進、こう言い放つッ!!
「拙者、赤胴流継承者『赤胴鈴之進』なるもので候(そうろう)」
「百なる人、今日(こんにち)この場で、死する者なりッ!!」
ジ・ハンドレッド、こうと答えるッ!!
「フッフフ。柔らのような体術と。」
「抜剣が如き『赤胴真空切り』を得意とすると聞くが・・・。」
「ワシもまた『プロレスリングの申し子』。そうそうと倒せるモノではない。」
「あべこべに死するは赤胴鈴之進・・・!貴様の方であるッッ!!!」
再び赤胴鈴之進、こう言い放つッ!!
「残念だが拙者には死ねぬ訳がある!『力付く』でも“生”は譲れんな!!」
ならば、ジ・ハンドレッド、こうと答えるッ!!
「奇遇だな。ワシ等も“そうである”ッ!!」
程
無
く
カァァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア アア ア ア ン ン ン ンン ! ! ! ! ! ! ( ゴングが打ち鳴らされたぁぁああああ!!! )
・・・・
○超鋼戦機カラクリオー外伝
クロガネの賛歌・番外 ー 響 鐘 ゥ ! 地 下 プ ロ レ ス 編 ! ! ー
「 赤 胴 真 空 切 り ッ ! ! 」
・・・・
両者共、手を開いたまま。腕をやや前に突き出し。そして静止画像の如く止まっていた。
両者、共に見えるのだ。無数の突きと、無数の掴みが・・・。
何処をどうすれば良いのか・・?最善の一手は何か?
「「「殺せぇー!殺せぇー!!」」」「「「ハンドレッド!その老いぼれを、身に付けている赤胴見てぇに血塗れにしてくれぇーー!!」」」
「「「待ちに待ったこのカード!燃えるゥ〜!!」」」「「「今の時代はハンドレッド!古武術使いなんか目じゃないね!!」」」
「「「仮に負けても出血多量とかそーゆう話なるモンな!どっちに転んでも美味しいぃー!!」」」「「「早く動けよ。さぁッッ!!」」」
ッ
ッ
30秒が経過をし・・・。
ジリ・・・ッ! (ハンドレッドがにじり寄る。)
スゥ・・・ッ! (鈴之進が後方へ下がる。)
ジリ・・・ッ! (ハンドレッドがにじり寄る。)
スゥ・・・ッ! (鈴之進が後方へ下がる。)
故に距離は縮まない。
鈴之進!
「(凄まじきは圧力なり。)」
「(しかし、その懐に飛び込まねば、勝利は遠くになりにけり!)」
ハンドレッド!
「(歩みの軽い男であるな。)」
「(ならば、こうする・・・!!)」
其処でハンドレットは寄る方向を変えた。
真正面ではなく・・・。『コーナーポストに追い詰める様に!』
ジリ・・・ッ! ジリ・・・ッ! ジリ・・・ッ! ジリ・・・ッ! (追い詰めるハンドレッド。)
スゥ・・・ッ! スゥ・・・ッ! スゥ・・・ッ! スゥ・・・ッ! (追い詰められる赤胴鈴之進。)
ピタッ!(遂に追い詰めたハンドレッド!! 遂に追い詰められた鈴之進!!)
ッ
ッ
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
鈴之進!!
「(来るが良し。こうとなれば、手段は狭められる。読みとる事難しきに非ずッ!!)」
「(拳ならば手首を!頭突きならば目玉を!蹴りならばアキレス腱を『真空切る』ッ!!)
ハンドレッド!!
「(真空切りで狙われてならぬのは『鍛えようがない急所、及び腱』である。)」
「(岩をも切り裂くと言われる『赤胴真空切り』ならば容易にそれらを切り裂くであろう。)」
「(故に答えは一つであるッッ!!!)」
ッ
ッ
ズッッ ッ オ オオ オ ォ ォ ォ ォォ ォ ォ ォ ォ オオ オ オ オ オ オ 〜〜〜 〜 〜 〜 〜 ッ ッ ! ! !
膝蹴りであったッ!ジ・ハンドレッドのッ!!
40cm差がある両者!体格に勝るハンドレッドの膝蹴りはッ!
只、膝を上げるだけで『鈴之進の顔面』を捉えたッ!!
後方はコーナーポストであるッ!まともに受ければ『重の傷』は必死ッ!!
どうする赤胴鈴之進ッッ!!
ッ
ッ
ド ド ド ド ド ドドドド ドドド ドド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
それは、予想外の動きであったッ!!
ズォオ オ オ オ !(赤胴鈴之進は手を使ったのだッ!!)
ブ ラ ァ 〜 ン !(その手でもって、膝蹴りに“ぶら下がる”ッッ!!)
「拙者こう見えても“大道芸”が得意で候(そうろぅ)ーッ!!」
ハンドレッド!!
「ならば“大道芸”を続けてもらうとしようッ!」
「『ヌゥうゥぉおおおぉぉォおおおおオ雄(オ) ーーーー ー ー ー ッ ッ ッ ! ! ! 』 」
グォオオオ!! (後方だァーッ!!)
ォォォオオ!! (後方宙返りだァー!!)
ォォォォォ!! (ただぶら下がっただけの鈴之進!!)
オオオオオオ!!(そのまま後方にふっ飛ばされるゥーッ!!)
ッ
ッ
鈴之進!!
「赤胴流月面宙返りをお見せするで候(そうろう)!!」
「拙者ッ!身軽なる事『猿の如し』ィーッ!!」
ギャルルル!! (ムーンサルト!!)
ギャルルル!! (ムーンサルトォ!!)
ギャルルル!! (ムーンサルトをしたァー!!)
ギッシュン!! (着地それと共にッ!!)
ドッキューン!!(良く弾む地下プロリングの特性を利用し、百文字に特攻ッ!!)
鈴之進!!
「今こそ赤胴流が“最終奥義”ッ!!」
「剣を持ったら日本一だッ!銃刀法施行されしこの世の中で“赤胴流を存続させる”にはッ!!」
「己が“爪”を刃と化しッ!薙ぎ払いの要領で『“真空の刃”』を創り出す事にあったッ!!」
「名付けき事『 赤 胴 真 空 切 り 』ッ! その首貰った、 百 な る 人 よ ォォォオオ オ オ オ オ オ オ ! ! ! 」
ッ
ッ
ハンドレッド!!
「首か、ならば試すが良いッ!!」
「我が師にして、我が父『巴二十八』に徹底的に鍛えに抜かれた『人間橋(ブリッジ)』の数々ッ!!」
「その修練により、培われた『鋼鉄が如き、我が首筋(しゅきん)』ッ!!」
「『ヌゥうゥぉおおおぉぉォおおおおオ雄(オ) ーーーー ー ー ー ッ ッ ッ ! ! ! 』 」
ッ
ッ
シ ュ パ ァ ア ア ン ! ! (切れたッ!!)
ザ・・・ッ クリィ・・・・ッッ!! (真空切りが入ったッ!!)
ブシュァアア!ボトボトボトボト・・。(鮮血が飛び散る中ッ!!)
ゾクゥ・・ッ!! (『赤胴鈴之進』は“戦慄”を覚えるッ!!)
ッ
ッ
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ガシィ!! (ベアハッグッ!)
ガチィ!! (掴まれたッ!赤胴鈴之進がッ!!)
ガキィ!! (その首“筋肉の鎧”にて出血こそ派手だが『 軽 傷 』で済んだのだッ!)
ギチィ!! (連戦連勝の怪物ッ!無敗の『 ジ・ハンドレッド 』が攻めに転ずるゥーッ!!)
ジ・ハンドレッドォー!!
「レスラーへの賛歌 その14ッ!!」
「ワシは捧ぐるッ!
『人間発電所』と呼ばれた、ブルーノ・サンマルチノへと、
こ の 『 B E A R H U G 』を ォ ー ッ ッ ! ! ! 」
・『BEAR・HUG(ベア・ハッグ)』
立位対面からのクリンチ状態より、両腕で相手の胴回りを抱き込み、
絞り込むように締め付ける事で、相手の背骨から肋骨にかけてを圧迫する。
その際に相手を持ち上げる事で、相手体重が加わり、より強いダメージとなる。
ただし相手との体格差によっては、これが困難な場合もある。
また締め付けだけで相手にダメージを与えるには、強い腕力が必要であり、
相手を持ち上げる際にも、足腰の安定も重要となる。
つまり、体格差、筋力差があればある程・・・ッ! 効 果 は 絶 大 ッ ! !
ッ
ッ
鈴之進!!
「グム!グムムム!!!?」
じたばたと足掻く赤胴鈴之進ッ!!
体格差は明らかであり!最早これは・・・!!
背骨を折られるのを待つばかり・・・ッ!!
否
ァ
!
ブシャァァァアアアアアアアアアアア!!! (瞬間ッ!切れたァー!!)
ー ジ・ハンドレッドの額が確かにも切れたッ!!
ギュォオオオオオオ!! (その隙、鈴之進見逃さず、見事にベアハッグを脱出ッ!!)
鈴之進!!
「真空切りを行う為、拙者の爪は日本刀の如き鋭さを持つッ!!」
「目を狙ったが回避するとは中々のツワモノよのぅ、百なる人よ・・・!!」
ハンドレッド!!
「貴様程の男が『見苦しい』と思ったからだ赤胴。」
「じたばたと足掻くにしては、余りに不器用だったのでな。」
鈴之進!!
「ホッホッホ。拙者大道芸は行えれど、芸の無い人間でな。」
「だからこうして『武芸』で稼いでいる。」
ハンドレッド!!
「フッフフ。ワシもまた芸の無い人間でな。」
「こうやって『プロレスリング』でしか伸し上がれない男である。」
鈴之進!!
「似た者同士ッ!」
ハンドレッド!!
「故に殺し合うッ!!」
鈴之進!!
「では再びッ!!」
ハンドレッド!!
「参るぞ、赤胴鈴之進!!」
ダッギュォオオオオオオオオオーーーーーーッッ!! (突進したァー!ハンドレッドの“突進”ッ!!)
ー 鈴之進の背骨のダメージ軽く無しと見取りッ!!
ー 現状『真空切り』は繰り出せないと踏んだからであるッ!!
事
実
!
鈴之進!!
「(今の拙者に出来得る事は、この爪の刃にて急所を狙う事のみ。)」
「(ならば、この瞬間に『全てを賭けようッ!』)」
「(狙いは目。武道を信じよ。悟られず。読まれずに。平常心にて・・・ッ!!)」
「 何 ィ ッ ッ ! ! 」
その時、赤胴鈴之進が見たモノとはッ!!?
・・・・
それは。異形の戦闘術であった。
正にプロレスが故の攻撃方法と言えた。
突進して。ジャンプをする。
そのまま落下し、落下速度も加味した一撃を放つ。
其処までは良い。其処までは良くある話だ。
だが、顔面の前に『腕を“十字”。「X」に組むだなんて・・・!!』
これにより顔面の急所漏れなく固められたッ!
それもジ・ハンドレッドの丸太の様な腕(かいな)でだッ!!
これでは手の出し用が無いッッ!!
ー そう!これぞ!!
これぞ、レスラーへの賛歌 15ッ!!
ー『千の顔を持つ男』と呼ばれるミル・マスカラスに捧げるッ!
フ ラ イ ン グ ・ ク ロ ス ・ チ ョ ッ プ で あ ぁ ぁ ぁ ぁぁ ぁる る ! ! !
ドッッッッ!!!
ギュァァァァァアアアアアア
ァァァァァアアアアアアアアアンン!!!
ズドォォォォオオオオオオオウ!!! (仰向けに倒さるるは赤胴鈴之進。)
ダァッ! (間髪いれずッ!!)
ガチィ! (組みつきッ!!)
グギィリ!(そして“首”をへし折った!!)
ー それは余りにも無慈悲で。
余りにも残酷な“現実”・・・。
そうだ“現実”を突き付けた。
何故なら勝敗を分けたのはやはり『体格差』であるからだ。
ー 膝蹴り。ベアハッグ。フライングクロスチョップ。
これらすべて『体格差』により、有利に繋がり。
『体格差』により“勝利”を収めた“結果”へと結び付いたからである・・・。
ー 最後に・・・。
最後に“赤胴鈴之進”はこう呟いた。
「進一・・・。音を挙げるお前を。無理に稽古に付き合わせてスマヌなァ・・・。」
「進一を脳死(殺した)のは拙者だ。拙者は子殺しの罪を背負って・・・。」
「拙・・者は・・・。地・・獄へ・・と・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
そして“赤胴鈴之進”は死に絶えた・・・。
・
・
・
・
・
ー 赤胴鈴之進 男 年齢 45歳
必殺技 赤胴流最終奥義・赤胴真空切り
・・・ ・ ・ ・ ・ 『 死 亡 。 』
・・・・
“赤胴鈴之進”の『控室』にて。
その様を見て居た『ブラックゴールド』は。
トチ狂ったように、嗤い転がっていた。
「クヒヒヒヒヒヒ!クァーハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
「負けた!負けたぞ!話にもならねぇーや、クヒヒ!クヒヒヒヒィィィイイイーーーッッ!!」
クヒヒ! (嗤う!)
クヒイ!! (嗤う!!)
クヒヒヒィ!!(嗤い転がるッ!!)
P@ (ブラックゴールドは携帯を取り出し。)
トゥルルルル!トゥルルルルルルルルル!!(電話をかける。)
プツ。(相手が出たようだ。)
ブラックゴールドがこう言う。
「おう、俺だ!赤胴の息子を臓器売買に流すんだ!!」
「親1人に子1人・・。親が死んで、子が脳死とか“お家断絶”じゃ〜ん!」
「骨の皮まで剥いで、売れるモンは全部売っちまいな!」
「適当に死因でっち上げてよぉ〜。一儲けしようぜって言ってるんだ、クッハッハッハッハァ〜♪」
異常!狂気!人でなし!!
プツ。(ブラックゴールドはそう伝えると電話を切る。)
そして、こう呟く。
「ああ・・・怖い。だがァ〜愉快だ!」
「怖くて!愉快だ!!愉快で!怖い!!」
「クァッハッハッハ!!クィヒッヒッヒッヒ!!」
ギョロォ!! (ギョロ目を剥いて、こう言い放つ。)
「クヒィー!もう駄目ェ〜。チョメチョメ、俺ちゃんイっちゃいましたァ〜!!」
「何かもどうでも良い!これからあんなのとヤるんだから・・・なッ!!俺ェエ様ァァァアアア〜〜〜〜〜ッ!!」
ッ
ッ
「もう止まらないッス!もう止められないッス!! マジ見せてあげますよ、マジッスよ俺ェ〜!!」
「俺が地下プロチャンプ! 俺が噂の“ブラックゴールド様”だァ〜ッ!!」
「クヒ♪クヒヒン♪♪ こぉ〜の俺、地下プロレスチャンプの“ブラックゴールド”様がッ!」
「『 ジ ・ ハ ン ド レ ッ ド 』ッ ! テ メ ェ を ・ ・ ・ “ ブ ッ 殺 す ” ッ ! ! 」
ギョロロォ!! (目線を鋼鉄製の扉へと向けッ!)
「偉そうに突っ立つな、扉風情がァー!!」
「カチンとキタ!俺を閉じ込めるな扉ァァァァアアアアアー!!!!」
「ダァァァァアアアアッシャァァァァァアアアアアアアアアアアーーーーーーッッ!!!」
ドッッグゥォオオオオオオオオオオオオオ!!! (ショルダータックルで“破壊”するゥー!!)
ッ
ッ
ガラァン!ゴトォン!! (弾き壊された扉が、鈍くも高鳴る)
ッ
ッ
運悪く目撃した清掃員が・・・!!
ッ
ッ
「〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!?」(声にもならない悲鳴を挙げる。)
ッ
ッ
キョロォ〜? (ブラックゴールドがその様を見やる。)
ッ
ッ
「ん?君、清掃員かぁ〜い?」
「丁度良いトコロに来た。あのドアは君が壊した事にしてくれたまえ。」
ッ
ッ
「地下プロレスの暗黙の了解だ。『俺は“狂人”』なんでね。」
「だから称賛こそすれど、俺が泣こうが喚こうが『無視(シカト)』か『肩代わり』をブッコくのが懸命だって事さぁ〜!!」
ッ
ッ
「だから解るね?あれは君が壊した事にすれば良い。そうして地下プロは回っていられるんだ。チャンピオンとの口約束だゾ♪」
ッ
ッ
清掃員!!
「(コクコクコクコクコクコクコクコクコク!!)」(応えるように、高速で頷く!!)
ブラックゴールド!
「おいおい、愛想ってモンが無ぇな〜? こーゆう時は『返事』だろぉーう??」
清掃員!!
「ハ!ハヒィィ〜〜〜〜!!!」
ッ
ッ
ニコォン〜! (清らかな笑顔を浮かべる、ブラックゴールド)
「良い〜子だ!良いぃぃ〜〜子だァアア〜〜〜!!」
ナデナデナデェ〜ン (怯える清掃員の。)
ナデナデナデェ〜ン (頭を撫で子撫で子して。)
ッ
ッ
ゴッッキィィィィ!!(そして、そのまま首をへし折った。)
ッ
ッ
「クイヒイッヒッヒッヒッヒ!クィヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ!!」
ッ
ッ
P@ (ブラックゴールドは携帯を取り出し。)
トゥルルルル!トゥルルルルルルルルル!!(また電話をかける。)
「俺だよ。俺!俺俺詐欺ッスよ、俺〜!!」
「清掃員(奴隷)1人ブッ殺ちまった!後は頼むぜェ〜?」
プツ。 (電話を切り)
ブラックゴールドはこう嗤い放つッ!!
ッ
ッ
「クヒヒヒヒヒヒ!クァーハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」
「やるぞ!やったる!ジ・ハンドレェ〜ッド♪ クヒヒ!クヒヒヒヒィィィイイイーーーッッ!!」
ッ
ッ
「『 ク ゥ イ ッ ヒ ッ ヒ ッ ヒ ッ ヒ ハ ハ ハ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! ! 』 」
狂人にして地下プロチャンプ!
ブラックゴールドの恐ろしさは・・・!!
こ ん な モ ノ で は 無 い ッ ! !
ーーーーーー
・・・続く。