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黒の兄弟 第8話


【メキシコ国境よりやや北にて】

がっしゃん、がっしゃん、がっしゃん。

「今日は初めての特殊任務〜、成功すれば褒められる〜」

アメリカ南部からメキシコへ向け一機の強化人間専用羅甲が山間を移動していた。

「知らない星で一人は不安だけど〜泣いちゃいられない〜」

重要任務だというのにパイロットは自作の歌『初めての特殊任務』を歌いつつとても陽気。

「だって私はもうすぐ三十路〜」
「そこの三十路止まりなさいなのよー!」
「むぅ?」

味方(?)発見。
レーダーに映るのは二機の羅甲と一機の咆牙。
呼び止めるリーダーであろうカマっぽい喋り方の男からの通信に彼女は首をかしげ、

「黒ミューさんへのラブレター着いた〜白ミューさんたら渡さず食べた〜」

がっしゃんがっしゃん。
どこまで歌ったか忘れたので別の歌を初めから歌い直した。

「止まらんかいそこの三十路!」
「とんでもない、私ぁまだ三十路じゃないですよ」
「どっちでもいいのよそういうのは。えーと、アンタがレベンネの運び役で間違いないノヨネ?」
「ん、そのとーりー」

と、彼女は一旦肯定してから、

「…じゃなくって、極秘任務だから違うとしか答えられーん」

バレバレの否定をした。無論相手は確認の為だけに聞いたのであり、
彼女が運び役である事は情報からも、そしてレベンネ弾専用の二連装ライフルを
背負っている事からも既に気がついていた。

「つまりレベンネの運び役よね?アタシはブラッククロス北米方面特殊部隊のボヤッキューなのよ。
全国の女子高生の皆さん、じゃなくってチカーロ様に頼まれて作戦の中止をアナタに伝えに来た訳なのよ〜」
「それは出来ませんの事です。チカーロ中佐本人、あるいは将官以上の方に直接命令された場合を除き
本作戦は中止してはならないと言われています」
「んもう、面倒くさいわね〜。チカーロ様と通信しますよ、あ、ポチッとな」

パスワード入力後、今作戦中限定の直通回線へとつなぐボタンを押す。
だが、ボヤッキューの通信器から流れるのはノイズばかり。

「あら〜、おかしいわね〜。コンジュラー、ドランジョ、アナタたちの通信器貸してくれない?」
「こっちもダメですぜ」
「アタシもだよボヤッキュー」

何度操作しても一向にチカーロと繋がらなず三人は次第に焦り出す。
それをおとなしく見ていたレベンネの運び役は再び移動を再開する。

「じゃ、これで」
「ま、待ちなさいヨ!アンタを止めないとアタシ達何されるかわからないのよ!」
「ンなこと言われてもこっちも命令権の無い人物が止めようとしたら所属に関わらず―」
「関わらず?」

強化人間専用羅甲の武装が三機に照準を合わせる。

「撃破してでも任務を続行しろと言われておりまして」
「チッ!」

舌打ちをしながらボヤッキューは咆牙を横へとジャンプさせ相手の射線から外れる。

「コンジュラー、ドランジョ、やってしまいますよ!」
「え、ええんでっか?」
「レベンネを暴発させずに無力化して捕獲すれば問題無いワヨ!
いくわよ、フォーメーション怒論坊(どろんぼう)!」
「「アーラホイサッサー!!」」

三十秒後、そこには強化人間用羅甲に完膚なきまでにやられ、両手あるいは前足をもぎ取られ
無力化したブラッククロスの機体が3つあった。

「ま、まちなさーい!待ちなさいってバー!」

小さくなっていく強化人間用羅甲の背に力なく説得を続けるしかないボヤッキュー。
その願いが通じたのか、ぴたりと足を止めゆっくりと振り返る。

「や、やった、ヤッターヤッタートマッター…あ?」

任務成功逆転ホームランに喜びかけたボヤッキュー達の顔色は構えられた
レベンネ発射用のライフルを見てみるみる青ざめる。

「そーれ、どっかーん!」

三人の目の前に禁忌の兵器が実にあっさりと発射される。
ズンと音がして白い直径50センチ程の弾頭が地面に突き刺さる。

「続いて一分後に反応剤撃つよー、逃げないと大地と一緒に消えちゃうよー」

陽気に、残酷にパイロットは警告する。
レベンネの発動条件と同時に逃げなきゃダメだということとコイツ説得ムリということを
一度に理解するブラッククロスの三人。

「残り45秒ーヒャア我慢できねえ残り43秒だ!」
「だ、脱出するわよ皆!くっそー、おーぼえーてろ〜〜〜〜〜〜〜〜」

無力化された三機からブラッククロスの使いっぱしりが自転車で脱出し射程から出ていくのを
確認し、彼女は地面から飛び出た弾頭に向かって二射目を放つ。

「もいっちょどっかーん!」

一撃目の白い弾頭に二発目の黒い弾頭が衝突する。
音も衝撃も無くただまばゆい光だけが発生し、それが収まると衝突点を中心に
半径15メートル程の真円部分が綺麗に海と化しており、そこにあった土も草木も
消失し海と地面の境界線には海の部分を堺に右半分だけになった羅甲の残骸が倒れていた。

「任務その3、『任務2の地点から20キロ南でレベンネで半径15メートルの海を作れ』達成。いえーい」

そう彼女は呟きコクピット内でガッツポーズ。
彼女が与えられた任務はメキシコとの国境で最大威力のレベンネを撃つ事であるが、
道中の特定の場所で一定のサイズ毎の威力に調整したレベンネを撃つ事も注文されていたのである。

「にしてもどういう任務なんだろなーこれ。最終任務以外の威力なら特機の必殺技と
威力に大差ないから、レベンネも合法なんだろうけど…対費用的にレベンネの無駄遣いというか
チカーロ中佐の考えてることは凡人の私には分からないでやんす」

もしも東京ドームサイズのホウサン団子が存在したら、それは主婦の扱うものではなく
禁止兵器となるであろう事と同様に戦術レベルに収まるレベンネは少なくとも
アムステラのルールでは禁じられてはいない。
しかし、既に兵器としては完成し他星での実験など必要ないレベンネをわざわざ
段階的に使わせるのはどういう事なのか。

―などと考え込む暇は彼女には存在しなかった。
レーダーに引っ掛かる無数のアムステラ機と地球連合機の識別。

「わお、また来ちゃったであり」

また、である。
特定ポイントに1メートル円、5メートル円、そして今回の15メートル円をレベンネで作る度に
作戦の中止を訴える(ただしチカーロとの通信は出来ていない)ブラッククロスと
事態を調べに来た地球軍と交戦する羽目になっていた。しかも段々と両者の数は増し、
出てくる間隔も短くなっている。
チカーロに事態を報告しようにも彼女もまたチカーロと連絡の取れない一人であり、
仕方なく最初に与えられた任務通り、本人か将官クラスと通信できるまでは移動とレベンネ使用を
続行していた。

「くわばらくわばら、見つかりませんようーーーーーーーーに」

彼女の祈りは通じた。
レベンネの使用を止めに来たブラッククロスと謎の大穴を追跡しにきた米軍が出会い、
双方の潰し合いが始まる。こっそりとその隙を抜け出すことに成功する。

「まー、メキシコに着けば何らかの進展はあると期待しちゃったりみたいなゲロゲロ。
私、この任務が終わったらシンガポール行ってリノア達を連れて帰るんだ…
などと死亡フラグを立てるのでいす、見え見えすぎる死亡フラグは生存の元やっほい」

彼女の名はミュー。この度の作戦における強化人間専用羅甲のパイロットである。

言動からも分かるように立派な強化人間―、
では無く、ただの素の状態とポテンシャルが強化人間のそれと同レベルなだけである。
今乗っているこの機体はマニュアル操作で動かしていた。
強化人間用羅甲を普通に動かして何が悪いと言わんばかりに。

「さすがにロイヤルナイツ機と比べると劣るけれど、存在隠蔽の為レーダーに映りにくいってのは
ソロプレイには便利べーんりー」

というのが乗ってみたミューの感想である。


◇◇◇


【同刻、メキシコ国境付近】

「段々数が減ってきたから今日あたりで完全決着だと思っていたんだが…」

メキシコ陸軍の特機、エル・マリアッチとそのパイロットであるラエル・ジャンは
米軍のパイロット達が持たないある重要な特性を持っていた。

「俺達がコツコツと叩いてきた努力が泡と消えてるじゃねえか!
何でブラッククロス残党の数が倍に増えてんだ!」

バババババババ!
サボテンが破裂するかのようにミサイルからトゲが発射され羅道を損傷させる。

「しかも知らねえ機体ばっかだぜクソがー!!」

ザシュ!
ギター型の近接武器・ソニックブレードを振り下ろし、包囲する羅道の一機をまっぷたつにする。

メキシコのエース、ラエルの持つアメリカには無い強さ、それは『ツッコミ』。
…ではなく、接近戦における戦闘力である。

え?スパロボいっぱい所持してる米軍ならエル・マリアッチ以上の接近戦用はあるはずだって?
いやいや、そんな事は無い。

ブライアン「砲戦大好き赤レンジャイ!」
ジョー「出撃前提が厳しい黄レンジャイ!」
ドリス「スーパーロボットっていうより強化スーツです全裸!」
レイ「僕近距離戦だけど並みの指揮官には扱い難しい赤レンジャイ!」
アリス「ドリスよりはずっとマシだけど火力が物足りない黄レンジャイ!」

アメリカネームド5人「五人揃って米国戦隊ゴレンジャイ!」
ラエル「なんで赤が2人黄色が2人おるねん!」
ドリス「私は?」
ラエル「アンタは赤でいいだろ、つーかツッコミたくもねえ」

という訳で、安心して最前列に出せるスーパーロボットは実は割とレアな存在であり
及第点を満たしつつ特に弱点も無く完成されたマリアッチは地味どころか敵からしてみれば
倒す手段が地道に強い機体をぶつけるぐらいしかなく決して目を離せない存在となっている。

「ダ・ガー、アイス、早く全員を下がらせろ。羅道じゃ無理だ、こいつは私がやる!」

話に聞いていた以上のエル・マリアッチに強さにたまらず羅道部隊は全力退避する。
そして、正面からネオ・ペルセポネーがエル・マリアッチとぶつかり合う。

「てめえが援軍の親玉か」
「それは別に居るよ。まあ、私が一番強いのは間違いないけどさ」

数回に渡るソニックブレードとショートスピアでの斬り合い。
メキシコ軍もブラッククロスも量産機はとても間に割って入ることは出来なかった。
斬り合いの中グーチェは一年前、オードリー・スガタとの戦闘を思い出す。
目の前の相手はあの時の女に戦い方が似ている、そしてあの時の女よりも強い。
技量では自分の方が上だが、止めを刺すまで気を抜けないレベルの相手だと認識する。

グーチェが視界を狭め、エル・マリアッチのみを捉える事に専念したその時だった。
このタイミングを見計らう様に横槍が入ったのは。

「…やるねあんた。そういう戦い方好きだよ。じゃあ、そろそろ本気で―」
「グーチェ、左よ!避けて!」
「何っ!」

先に気づいたリノアの咄嗟の叫び。
だが、グーチェはその攻撃を反射的に防御してしまった。
体に染み付いていたロイヤルナイツ機における防御法。
だが、ネオ・ペルセポネーの耐久力ではそれは悪手だと気づいたその時には
左腕を完全に叩き折られていた。

「ミンチクラァァッァシュ!!!!」

グーチェの思考がエル・マリアッチ攻略の一点に集中したと同時に
飛び出し、叫びと共に奇襲を成功させた白い機体。
ラエルはその正体を一度見ていた。
それは間違いなく、先程『鉄騎蜘蛛は倒したから後は任せた』とメキシコ陸軍に言って
逃げていった飛鮫騎士団の中にいた白いグラニ系の機体。

「あんた、さっき飛鮫の…」
「否ッッッッッッ!!!!」

ラエルの言葉をレクサンは全力で否定する。

「我が名はアレクサンダー・シュタインドルフ三世。通りすがりのロシアの兵士である。
そしてコイツはリーパ。ロシアで作られし新型だ。
フランス軍の中に私に似たものがいたとしてもそれは他人のボルシチ煮。
そう、フランスとロシアの間に機体を譲り渡す密約なんて無い!!」
「そんな事聞いてねえ、味方って事でいいんだな?」
「くっくっく、会いたかったぞ『死霊の騎士』」
「おい、ちゃんと返事しろよ」

レクサンはラエルとの会話を勝手に終わらせ、グーチェに語りかける。

「大破したゴーリキーのカメラに映された、じーじの最後の戦いの記録映像。
そこには二機の傷だらけの騎士型が映されていた。先程の斬り合いで確信した。
お前がその二機の内強かった方のパイロットだ」
「この嫌な感覚…あの時のロシアの大将と同じ…ッ」
「さあ、殺して(愛して)やろう!!ずっと、ずっと会いたかったぞ!
貴様に出会えた喜びから母乳が止まらぬわ!」
「俺の事を無視してんじゃねーぞクソがー!」

こちらの攻撃を恐れず懐に飛び込んで連打を放つリーパ、
半歩下がり確実に隙を付き防御の薄い箇所を狙ってくるエル・マリアッチ。
片腕で凌ぎながらもショートスピアは歪み亀裂が走り、こちらは
反撃のタイミングすら掴めない。
さっきまではミスをせずに時間を掛けてでも倒し勝利するはずだった戦いだったそれは、
このままでは相手にダメージすら与えられずいずれ負ける戦いへと変化していた。

「まっずいわね…こんなとこで死ぬ訳にもいかないし、アレを使うしか無いかな」

数分後に迫る自分の負けの確定を悟ったグーチェは使いたくなかった新兵器のスイッチをオンにする。

「頼むから自爆せずにちゃんと発動してよね。
メテオメタル・グリーンエナジー起動、パワーをメテオに!」
(いいですとも!)

エクスダーが吹き込んだ承認音声が響いた直後、
ネオ・ペルセポネーの右手と両足が淡く緑色に輝く。


◇◇◇


「グーチェ、今助けに行くから!」
「させるか!ここは突破させん。ハングキャノン撃てーっ!」

リーパの奇襲で片腕を失い1対2になったネオ・ペルセポネーを救助しようとする
リノアだったがメキシコ陸軍の砲撃によって中々戦場中央にたどり着けないでいた。

エル・マリアッチによる中央突破が基本戦術であるメキシコ軍は量産機では7型の配分を
多くすることにより支援砲火の層を厚くしており、これがブラッククロスにとっては相性が悪かった。

アズマ率いるニコイチ補修羅甲もシンガポールから連れてきた羅道部隊も
小型あるいは中型の銃を中心とした兵装で纏められており、お互いの位置が割れている戦場では
メキシコ陸軍の7型部隊に一方的に撃たれ続ける事になる。
かと言って7型を近接武器で倒そうと近づけばエル・マリアッチの犠牲になるだけだ。

結果として、リノアの乗る銀虎がビームシールドで砲撃を止めつつ、
一機ずつビームライフルで潰していくしか手は無かった。
そう、今までの銀虎だったならそうするしかなかった。

「このままのペースじゃグーチェの救助に間に合わない、一気に行かせてもらうわ」

銀虎の背中が裂け―

「メテオメタル・ブルーウイング起動、パワーをメテオに!」
(いいですとも!)

エクスダーの吹き込んだ承認音声が響くと共に4枚の青い翼が出現した!!


◇◇◇

「メキシコ軍と戦っているブラッククロスの機体か!?今すぐ戦いを止めるんだ!
この場所はアムステラの兵器に狙われている!!」
「…ふーん」

フェニックスのパイロット、レイ。
彼の発言の内容、僅か二行の言葉から二ラーシャは様々な事を理解する。
レベンネの事が少なくともアメリカ軍には漏れておりその兵器の詳細も知られている事。
ここから少し北のアメリカの方では激しい戦闘が行われていおり、
フェニックスだけがそこを突破してここに来たという事。
そして、この二点が意味する事と、出撃前のリノアの発言から感じた違和感が合わさり、
二ラーシャはこの時に全ての真実にたどり着いた。


「お前が言ってるのはレベンネの事か?」

確認の為、二ラーシャはレイからの通信に答える。

「分かっているんならすぐにここから退避するんだ!」

この言葉で、レベンネの事はアメリカに既に知られている、その事実の確認は済んだ。
二ラーシャは幻狼の高度を調整し、フェニックスに接近する。

「レベンネが危険な事は分かっている。だが、この戦闘をやめさせるわけにはいかないし
お前をスルーさせてさっきの言葉をメキシコ軍に届けさせる事もさせれないのよね。そういう任務なのよ」
「何で話を聞いてくれないんだ!ここ一帯が犠牲になってからじゃあ遅いんだよ!」
「悪いね、俺って悪党だから人命やメキシコの大地なんかよりもその機体返してもらいたい
気分の方が大きいんだわ。そうだ、お前フェニックスごとブラッククロスに帰って―うおっっと」

フェニックスの攻撃を最小限の動きでかわす。

「あんたは状況がわかってるというのに自分の事しか考えられないのか!」
「どうした?時間が無いんだろ?さあ俺を倒して皆を説得しに行けよ。ほいほいっと」

フェニックスには搭乗者の動きを人工筋肉によってトレースするシステムが積まれており、
これによって通常機体より格段に早く精密な格闘を可能としている。
一方、開発時にDr劉の助力を得ることが出来なかった幻狼はそのシステムは採用されておらず
重力制御装置の搭載のみにとどまっており、開発時期が近いにも関わらず両機の戦闘力には
大きな開きがあった。
さらに言えばフェニックスを完璧に操縦するためだけに作られたレイに対し格闘家といえども
多少腕が立つ人間でしかない二ラーシャ。パイロットの面でも差は埋まるどころかさらなる
開きが存在する。

だが、それだけの差などないかの様に幻狼はフェニックスの高速かつトリッキーな攻撃を
全てかわし、さらにはその内の3割ほどの攻撃にカウンターを当ててくる。

自分より強いのでも自分と相性がいいのでも無い、まるでこちらの戦い方を
全部知っているかの様な相手。
今までに会ったことの無い強敵にレイは次第に不可解な恐怖を感じる。

「くそっ、くそっ、何で一発も当たらない!バリアー系兵器でも精神感応兵器でも無い、
何が起こってるんだ?」
「さあ、何でだろうねえ。お前のその技術を俺は何で読み切れるんだろうねえ」

レイ、そしてフェニックスを開発した人物Dr劉。
彼は優れた科学者ではあるがパイロットでも格闘家でも無い。
レイが生まれながらに持つ近接格闘のセンスは劉一人によって生み出されたものだったのだろうか。

ブラッククロスには地球軍の主なエースと交流があり自身も格闘の才能を持つ、
そう、ホムンクルスの近接戦闘におけるデータ監修においてうってつけの人物が一人いた。

『Pkahanta Maletype‐00』が生まれた年代も型番も違い直接の交流も無かった『Homunculus Model-06』を
心の中で弟と呼んでいたのはこれに起因する。

(姉さん達がレベンネを運ぶ機体を見つけられるとは限らない…、こいつを早く仕留めないと!!)

フェニックスの様子が変化していく。駆動音が高くなり、各部位からエネルギーブレードが飛び出す。

「リミッターを外したな。つまり後62秒でゲームオーバーって事だ」
「…!?」
「なあ、何で俺がお前の事をこんなに知っているか知りたくは無いか?」
「今はそんなことはどうでもいい!お前が僕の何を知っていようが、
フェニックスの全てが知られていようが僕はお前を落とす!」
「おー怖い怖い、まっ、凌がせて貰いますがねっ」

フェニックスのリミッター解除による変化が反映されるのとほぼ同時、
幻狼もその性質を新たにしていた。
羅甲系特有の単眼が赤く変色し二つに割れたかと思うと、瞬く間に増殖しカメラアイの
可動域全体に複眼が広がる。
変化はそれだけではなく幻狼の顔にもそこら中に筋が走り次々と目が開いていく。

「メテオメタル・レッドアイズ発動。パワーをメテオに!」
(いいですとも!)

エクスダーの承認音声を合図とし、五十近い数赤い目が周囲を見渡すように
一斉にぎょろぎょろと動き出した。


(続く)