【プロローグ】

EXワールド…
それは地球軍とアムステラ軍の戦争が行われている我々の世界から外れた数多の並行世界を指す。

ある世界では両陣営の主力メンバーが高校生として青春を更衣室の覗きに捧げ、
ある世界では覇権を握った帝王が欲望の赴くままに美女にトーナメントをやらせ、
ある世界ではまたもや皆で覗きに挑戦し主人公のみが美味しい思いをしたり。

そして今回の並行世界は―、かなり元の世界から遠い世界だった。

『近い世界』

・銃の章
・De Natura Strife
・詰めカラクリオー
・温泉編
・戦国マリアンヌ
・最萌えトーナメント
・麻雀物語
・一体さん

『遠い世界』

本作は麻雀物語と最萌えトーの中間ぐらいの遠い世界と言える。
最初に言っておこう、『スーパーロボットなんて最終回まで出ねえ』。
その上怪傑ミルット以外の主要人物は全員が名前以外別物である。
本当にごめんなさい。外伝とかなんでも書けやぁとはんぺらさんが言ってたのを見て
挑戦した結果がこれだよ!しかし物語は始まるのだった。


*****


「う〜、お昼お昼」

休日の真昼間、商店街を小走りで行く女性はごく普通のデコトラ乗り。
しいて普通じゃない事を上げるとすればピンクが大好きなとこカナー。
名前はオードリー・スガタ。
そんな訳で彼女は外食が出来る場所を探していると、風変わりな喫茶店を見つけた。

『喫茶店チカーロ』という名のその店は見るものをドン引きさせるドピンクの外観、
そして扉には鞭を持った馬男のイラストが書かれておりSっ気と狂気が半端なく
にじみ出てきている。喫茶店と書かれて無ければアダルトショップにしか見えない、
いや、ひょっとしたらここは喫茶店風のアダルトショップなのかもしれない。

「うわあ、こんな素敵な喫茶店スガタ初めて見ましたよー。こんにちはー、今やってますかー?」

おおっとスガタ選手全く躊躇せずに扉に手を掛け一気に入店だー!!
信じられない事だが彼女のセンス的にこの店はアリだったようである。
扉に鍵は掛っておらずスガタは難なく店内にインする。
外観を全く裏切らず内部もドピンク&サドマゾ成分十分。ここまではスガタの
理想通りの喫茶店である。だが―、

「い、いらしゃんせ〜」

スガタを出迎えるウェイトレス、シグルった息子に絞殺されそうなおっかさん的
スマイルでやって来た女を見て一気に白けてしまった。

「な、何名様でひょうか〜」
「オニガワラ!」
「そげぶっ!」

必殺のダブルアッパーでウェイトレスの顎を打ち、踵を帰し他の店に行くスガタ。
ウェイトレスが起きあがる頃、彼女に遅れようやく店のマスターであるチカーロと
シェフのアクートが入り口に到着した。
胸元を開けたピンクのシャツのみで己のセクシーな胸毛を見せつけ、
髪型は綿毛のごとく真っ白なアフロのマスター。
他人を蹴落とす事しか考えていない濁った眼光、中央にハートマークがプリントされた
エプロン以外何も身につけていない悪のコック。
スガタが店に入って最初にあったのがこの男達だったならば怒って帰るどころか
常連になっていただろう。

「ようこそ我が屋敷に。歓迎するわよ…ってあら?サーメット、お客様は?」
「帰ってしまいました」

サーメットが再度飛ぶ。チカーロ愛用の大口径拳銃型ライターで頬を張り飛ばされた
からだ。

「いひゃいれすちきゃーろしゃま(痛いですチカーロ様、もっとぶって)」
「サーメット、あなたが接客してお客様が帰ったのはこれで何回目かしら?
ただでさえ不況のせいでお客様が全然来ないしこのままじゃあクビにするわよ」
「ミルちゃんよぉ、せめて席にまでは連れて来いよなぁ。俺の料理で客が卒倒する
所が見れないじゃねえかヒャッハァ!」

無論喫茶店に客が来ないのは不況のせいではないしサーメット一人が悪いのでもない。
この喫茶店のマスター・チカーロの美的センスがハイレベル過ぎて普通の喫茶店と
しての需要が満たせていない事、及びアクート特製悪意たっぷりのメニューが
客を遠ざけているのが主な原因だ。
(例を一つ挙げると、カエルの卵をパンに挟んだモノを『春の目覚めサンドウィッチ』
と名付けている)
おかげで喫茶店はいつもガラガラ、スガタの様な物好きな客と残飯を漁るG以外は
誰も来ない日が続く。そして、そのしわ寄せは一番下っ端のサーメットに行きつくのだ。

その夜サーメットは不安で寝付けなかった。
このまま上司二人の悪趣味が続き自分の上がり症が克服出来ないならば本当にクビも
有りうる。それだけは嫌だった。職を失う事は怖くは無いがチカーロと一緒に仕事を
出来なくなるのは耐えられない。

(力が、力が欲しい。何でもいいから喫茶店が正常運転するだけの力が欲しい)

彼女は祈り、そしてそれは叶えられた。夜空に舞う破廉恥痴女、彼女こそが怪傑ミルット。
サーメットと同じ愛称を持つこの怪人が何者か、彼女がサーメットを助ける理由、
いずれも今はまだ判明しない。ただ、これだけは教えよう。
ミルことサーメットともう一人のミルの華麗にて波乱で万丈な日常が始まったのは
この日からだという事だ。

「月は東に日は西に!喫茶店チカーロを救うのは身長は大体170センチから5メートル、
髪は茶色でオッパイムチムチナイスボディなこの私怪傑ミルット!
来週からはあらゆる問題ミルッと解決しちゃうわよ!」


『次回予告』

「なるほど、大したドライビングテクニック。でもそのテクは日本じゃあ二番目ね」
ミルットは不敵に笑う。

「そうかい、だったら一番は誰なんだ?」
ミルットはチッチッチッと指を振り、親指で自分を指す。

「ふん、だったらレースで勝負といこうじゃねえか」
???はミルットの挑発に乗り日本一を決めるレースが始まった。だがしかし、

「たった一つのシンプルな答えだ。てめーは俺を怒らせた」
最初の勝負にしてまさかの劣勢に立たされるミルット、果たして勝利し
日本一を名乗ることは出来るのか?
そしてこの勝負が喫茶店の繁盛と何の関係があるのか?

次回 怪傑ミルット第一話「峠のイナヅマ」ご期待ください!