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インド英雄伝説2 中 『ありえない動き』


【7:00騎士団員説明台詞と共にインド到着】

インドの空軍基地、毎日の様に他国の軍人が救援・給油等の目的で訪れる場所。
今日はフランスより3機のグラニMが演習の為に着陸した。

中から出て来たのは金髪の若い男女。顔つきが似ているのは兄妹だからである。
その後、残りのグラニMから年配の男が出てくる。
顔中に付いた古傷が歴戦の戦士である事を想像させる。

「はあ〜、異国の地でたった4人で戦う事になるなんて。飛鮫騎士団に入れば
ロボットに乗ってるだけでトントン拍子で出世できると思いましたのに」
「たまにはこういうのもいいじゃんね?ダイエットにもいいかもよ」
「んもう、お兄ったら!」
「二人とも、おしゃべりはほどほどにしろ。我々はアンドレ様に選ばれし精鋭、
ゆえに我らの言動はすなわち騎士団全体の評価へと繋がる。不用意な発言は減棒や降格の
フラグになりうるぞ」

緊張感の足りない若い男女を一回りは年上の男が注意する。

「インドでの演習試合、部隊としては小規模なPG隊に対して我らが全員で
出向いてはとても勝負にはならない。
それに騎士団がフランスを留守にする訳にも行かない。だからアンドレ様は
少人数での勝負をPG隊に挑み我ら三人だけをインドに呼びつけた。
いいか、お前達は私と違いまだまだ実績が不足している。この度の演習はアンドレ様に
顔と名を売り、より高い地位へと登りつめるフラグでもあるのだぞ」
「別っつに〜、いっすよ。俺ら中尉と違って親が貴族だから頑張らなくても出世出来ますし」
「命がけで頑張ったり、宴会芸でモノマネを披露したり、おべっか使ったりと
叩き上げは何かと大変ですわよねー。うふふふ」

ぎりりと胃が痛む音が聞こえた。インドに到着するまで苦労知らずの二人の言葉で
中尉のハートは傷だらけである。

(相手はこちらと同じ数の低予算機、装甲車と同等かそれ以下のスペックと言われるPGだ。まず負けはしない…そのはずだがこいつらを見ていると負けフラグがぷんぷんと臭って来る)

「中尉、演習終わったらお祭り行って来ていい?今ガンダーラ千年祭りってのが
やってるんだってそこの広告で見たんだけど」
「お兄、私ジャガバターが食べたいな」
「移動中も勤務時間、だから黙って歩け。頼むから」

痛む胃を押さえながら中尉はアンドレを呪う。これと言うのも部下の顔と名前を
把握しきれていないアンドレが適当に家柄の良い団員を今回のメンバーに指定したせいだ。
しかも、アンドレの性格から言ってこいつらが問題起こしたら絶対に自分の責任に
させられる。それを知るからこそますます胃痛は激しくなる。
そして、それを知らないバカ兄妹は軽いノリで話を続けてくる。黙る気さらさら無し。

「中尉、黙ってないで答えてくださいよー。祭り行っていいですよね?
何でお腹押さえてるんですかぁ?」
「バカね、中尉はジャガバター嫌いなのよ」
「なるほど、頭いいなお前」

(帰国まで持て俺の胃袋!この程度のフラグでへこたれるな!)


【9:00ルール確認】

「アンドレ、彼らが今回あなたが呼んだ騎士団のメンバーでいいのね?」

PG隊基地の応接室にやって来た三人のフランス人を見てフェミリアは問う。

「ジュスト(その通り)、紹介しましょう。こちらはレックス・バガーノ少尉と
レナス・バガーノ少尉」

アンドレの紹介に続きまずはレックス、アンドレほどではないが長い金髪の男が
席を立ち挨拶を始める。立ちあがると軍服のシワが目立ち軍人らしからぬ
だらしなさが目立つ男と言う印象をフェミリアは受けた。

「ども、レックスです。俺達の父はバガーノ男爵ですから俺らもかーなーり強いですよ」
「お兄のバカ、爵位を持たないショミンにいきなりそんな説明しても分からないでしょ。
コホン、私が改めて自己紹介兼説明致します。フランス空軍の英雄でありここに
おられるアンドレ様のお父様であるヴァルル・ボンヴジュターヌ様と同じチームで
戦っていたのがバガーノ男爵。その血を引く私達はいわば生まれながらにして英雄。
演習とはいえ勝負出来る事を光栄におもいなさい、今日の負けは決して恥では
ありませんことよ」
「…」
「どうしましたぁ?彼らの自己紹介は終わりましたよぉ?」
「あ、はい。私はフェミリア・ハーゼンです。元PG隊ですがこの勝負の言いだしっぺと
して今日だけはPG隊に復帰した扱いで他三名と共にやらせてもらいます」

自分達が負ける事などかけらも考えていない態度、人との会話は基本自分が接待
されているものだという心構えがにじみ出ている。
貴族達への対応に慣れたフェミリアが一瞬眩暈を覚えるほどに筋金入りの貴族様だった。
演習の準備でアナンド達がここにいなくて良かったと心から思う。
彼らならきっとバガーノ兄妹の態度をツッコミ待ちだと考え反応し大惨事を引き起こし
ていたに違いない。
そして、まだ一人だけ紹介を受けてない男がいる事にフェミリアは気付く。

「アンドレ、そちらの方は?」
「ああ忘れてました、ドゥー(お前)名前は?」
「えっ、…はっ、自分はデッド・フラグマン、階級は中尉であります!」

一人だけアンドレに名前を覚えられていない中年の男が自分で名乗る。
名前すら覚えてもらえなかったショックからか顔色が悪い。

「デッド・フラグマンとは我が団員ながら気味の悪い名前ですねえ。いつからいたんです?」
「自分は騎士団設立時からずっといました!この機会に覚えてください!」
「だがプロブレム(めんどくさい)。このアンドレ、こんな不景気な顔と名前の男は
覚える気はさらさらありまっせぇ〜ん。まあ、今日の演習が終わるまでは覚えておいて
あげますよ」

この紹介でフェミリアは確信する、この三人は特に理由無く選ばれ連れてこられた
という事だ。ツイている。もし、騎士団のトップ3を連れてこられたりしたら
僅かな勝ち目すら無くなっていただろう。最もこの時点ではPG隊に勝ち目があると
思っているのはフェミリアだけだが。

「前々から部下の事を把握してないと思っていたけど、まさかここまでとはね」
「フェミリア、何かいいましたかぁ?」
「いえ、独り言よ。さて、そちらのメンバーも揃った事だし今回の演習ルールの
確認をしましょうか」

戦場におけるPG隊の役割は6型を中心とした正規軍の立て直しまでの、
あるいはガンダーラの到着までの時間稼ぎである。
故に今回の演習もPG隊の役割に沿ったルールが設定されたが、アンドレは昨日までの
時点で少人数戦にする事への希望など自分の意見を通しており、フランスから来た三人も
文書により既にルールを確認し納得しているので誰からも異議は無く予定通り演習は
行われる事となった。

『演習ルール』
@10:00より演習開始、11:00に演習終了とする。
A飛鮫騎士団の4名は飛行形態で湖を越え、対岸にあるゴールに一人でも到着するか
PG隊の4名を全滅させれば勝ちとする。
BPG隊は演習終了までの間全滅しないか、騎士団のリーダーであるアンドレを落とせば
勝ちとする。
C今回の舞台設定は海岸線から攻めて来た航空部隊にPG隊が立ち向かい
陸側に出払っている正規軍とガンダーラが戻るまでの間、街を守る為に戦うという
ストーリーで行くものとする。


【10:00勝負開始、そして出撃】

ルール確認と飛鮫騎士団メンバーの顔合わせを終えたフェミリアは愛機へと乗り込み
PG隊のスタート地点へと向かう。

「あ、フェミリアさん到着ですねー」
「って事はいよいよ勝負っすか。やばっ、緊張してきた」
「ヒヒヒ、マダマダアオイナ」

フェミリアよりも先に自分達の機体に乗り込み準備を終えていた三人、
スガタとマニとアナンドが出迎える。今回の勝負の名目がPG隊の実力を見てもらう
という事である為、フェミリア以外の三人は平均値を見られるように現隊長・
ベテラン・新人の組み合わせで行く事になった。

「ルール確認は終わったんですかー?」
「ええ、向こうから文句は出なかったわ。じゃあ、ここの守備お願いね」
「いってらっしゃーい、スガタも頑張りますよー」

対岸からも見えるように開始の合図の信号弾を撃つ、しばらくするとアンドレ側からも
空に向かって信号弾が上がった。それを確認した後フェミリアは水際へと足を
踏み出していく。

【10:07なんぞこれ】

開始の合図と共に飛行形態でゴールに向かい飛ぶ飛鮫騎士団。
妨害が無ければ10分あればPG隊のいる所まで到着できるはず。
そう、飛べるはずだった。今、PG隊側のリーダーフェミリアが目の前にいた。
しかし、当初の予定と違う点が二つ。一つはこの場所が対岸にあるゴール前からかなり
離れている事。ここはアンドレ達が予想していたPG隊と遭遇する場所とスタート地点の
の間、まだ下は陸地ではない。
もう一つはフェミリアの乗っている機体。水上で腕を組んでグラニMを待ち構えていた
機体が色とサイズ以外カタログで見たピンクガネーシャと比べ細部にわたり全くの別物
だったという事。

「さあっ、ここは通さないわよ」
「いやいやいやいやいやいや、おかしいでしょ」

右手を顔の前でブンブンと振る金色のアンドレ仕様グラニ。

「ドゥー(君)、何だそれは」
「よくぞ聞いてくれました!これこそガンダーラの守備範囲外である水上戦に特化した
機体、ラクシュミーΩ!他国に存在を発表するのはこれが初めての事になるわね」
「それも大変な事だがそうじゃねぇぇぇぇー!!!!!!!それのどこがPG隊だっ!」
「何か知らんがそーだそーだ!」
「良くわかんないけどアンドレ様が正しいですわ!」

明らかなルール違反と思われる行為に当然のごとく怒り心頭でブルジョアな言葉使いも
忘れ文句を言うアンドレ&状況を飲み込めないながらも追随するバカ兄妹。

「言って無かったけ、今日だけ私はPG隊所属。だから私の専用機であるコレも
今日付けでPG隊の機体って事になるわ。もっとも明日にはインド軍の指揮下に戻るけどね」
「お前はトミー・カービンか!」
「それにねアンドレ、このラクシュミーΩはピンクガネーシャをヒントに製造された
のよ。だからPG隊の成果であるこれはこの演習に出るだけの理由があるとは―」

ぱららららと銃の音。ラクシュミーΩが立っていた場所にマシンガンの弾が降り注ぎ
フェミリアの言葉は最後までアンドレに届く事は無かった。

「理由があるかないかは関係無い。お前の勝ちフラグはこれで終わりだ」

アンドレの右後方、ラクシュミーΩ参加の是非を問う口論に参加せずにいた
フラグマンのグラニMが銃声の発生源だった。機銃から上がる硝煙がついさっき
そこから弾丸が発射された事を証明している。

「これで後三人、残りもピンクガネーシャかどうか怪しいフラグが立ってますが
文句を言うのは全滅させてからでも遅くはないと思います。団長、急ぎましょう」
「フラグマン、上ですっ!」
「は?」

銃声に振り返ったアンドレは気付いたが遅かった。マシンガンで撃たれたはずの
ラクシュミーΩがいつの間にかフラグマン機の真上にいた。そして、両手から水柱を
吹き出しながら反転し急降下と共に濁流のごとき剣となった水柱がフラグマン機の
両翼を撃ち抜く!

「何だっ!何のフラグだこれはー!」

パイロットが状況を理解出来ないまま飛行能力を失ったグラニMは湖に沈んでいき、
ラクシュミーΩは再び水面に二本の足で立つ。

「これで後三人、そちらの中尉が先に仕掛けてきちゃったし文句は演習が終わってから
聞く事にするわ」

アンドレは状況を一つずつゆっくりと噛みしめる。
自分や父を見て育ってきたフェミリアが姑息な手を使わないはずが無かった。
恐らく彼女の乗る機体はガンダーラに総合力では及ばないもののこちらとの相性は
抜群なのだろう。気になるのはその能力だ。今やっている水面に立つ行為、
そして一瞬で上空まで飛び水圧で斬りつけるという技、どちらもアンドレ達にとっては
未知の技術だった。
早いうちに相手の動きの正体をつかみ対策を立てなければ、全員水没もありうる。

(何とかしてあのミステッリ(不可解)な動きを攻略しなければ行けませんねぇ。
チッ、それにしても1ミリも役に立ちませんでしたね、フラグマン中尉は。
まあ、取りあえずは装甲は薄そうだから―)

「全軍、ティラー(撃て)」

アンドレは残った二人に一斉射撃を命じる。当たればそれで良し、かわされたのならば
今度こそはその動きを見切ろうと考えながら自身もまた飛行形態の主武器である機銃の
発射ボタンを押す。


イン英伝2・下『決着の時』に続く