記憶(おぼ)えている、百文字(ハンドレッド)・・・?
もう40年も昔の事。
日本国。初めて地下プロレスのリングに降り立った貴方を迎えるのは、薄ら笑みを浮かべる対戦相手。
『マスク・ド・サンキスト』
彼は、ルール無用の残虐ファイターと呼ばれる『 覆面レスラー 』であった。
・・・・
○クロガネの賛歌・第3章 ー ギ ガ ン ト 破 壊 指 令 ー
「 記憶(おぼ)えている、百文字(ハンドレッド)・・・? 」
・・・・
「オーレンジ。 オーレンジ。」
マスク・ド・サンキストは、脈絡も無く、1単語を呟くと。
続け様に、百文字に話しかけてきた。
「ボクがね。」
「謎の覆面レスラー『 マスク・ド・サンキスト 』 と言う、
とてもスティッフ(直訳は「堅い」。転じて「妥協の無い」を意味する)な『 地下プロレスラー 』だよ。」
「得意の残虐ファイトでね。」
「君の様な新人(グリーンボーイ)をね。」
「 『 ブッコロ死 』 をするのが、お仕事なんだ。」
・・・ ニ マ ♪ (マスク・ド・サンキストは、微笑みながら、話しかけている。)
「ジ・ハンドレッドと言うそうだね。」
・・・ クィ 。 (マスク・ド・サンキストは、アゴで、観客達を指し示す。)
観客達は、皆、奇声を挙げている。
「「「キル・ザ・ハンド(レッド)!」」」
「「「キル・ザ・ハンド(レッド)!」」」
「「「キル・ザ・ハンド(レッド)!」」」
「「「キル・ザ・ハンド(レッド)!」」」
・・・ ニ マ ァ〜〜ンン ♪ (マスク・ド・サンキストは、満面の笑みを浮かべながら、百文字に語りかける。)
「まるでね♪」
「『100%果汁のオレンジジュース』のような、濃厚な叫び声だろう♪♪」
・・・ キ ス ト ♪ キ ス ト ♪ キィィ〜〜 〜 〜 ス ト ♪ ♪ (マスク・ド・サンキストは、笑い声を挙げる。)
「皆、ボクの残虐ファイトでね!」
「君が『 煮込み過ぎたオーレンジ 』のように、
『 見 る も 無 残 な 姿 』 になる事を望んでいるのだよ!!」
・・・ キィィス キスキス サ ン キ ス ト ッッッ ! ! ! (マスク・ド・サンキストは、馬鹿笑いを続けている!!)
「解るよね!」
「ジ・ハンドレッドくん!!」
「君はね! ボクに『殺される運命』なんだよ!!」
「 ビ ッ ク リ す る く ら い に 、 果 実 的 ( フルーティー )に さ っっっ !!!! 」
「言い残す事がね!」
「あるンだったらね!!」
「聞いて置いてあげちゃうよよよよぉぉ〜 〜 〜 ん ん ん ! ! ! ! ! 」
「 ジ ! ハ ン ド レ ッ ド く く く く ぅぅぅぅうううううう〜〜〜〜〜〜ん ん んん ! ! ! ! 」
「。」
百文字は答えない。
・・・ ピ タ ッ ! ! ( マスク・ド・サンキストは、その笑い声を止めたっっ!! )
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「君ってね・・・。」
「とっても渋いオーレンジの様みたいだね。」
「ボクの心は今ね・・・。」
「オレンジを濃縮還元する時のように『 一度、絞りきってしまいたい気分 』になってしまったようだよ。」
「この絞りきってしまいたい気持ちをね・・・。」
「君と言う渋い果実(ボディ)に、ブツけきった後・・・。」
「『水分を加えて(飲んで)』・・・。」
「濃縮還元が完了し、100%果汁のオレンジジュースになった時のような・・・。」
「『サワヤカ酸味』の、『 フルーティーな気持ち 』になりたいと思っているよ・・・。」
ギ ィ ッ ! ! (マスク・ド・サンキストの、両眼尻がつり上がるっっ!!)
「ゴングを待とうか。ジ・ハンドレッドくん。」
「もうすぐ君は、ボクに『ブッコロ死』される・・・!!」
そう言うと、マスク・ド・サンキストは。
ゴク。 ゴク。 ゴク。 (コーナポストに置いてある、『100%果汁のオレンジジュース』を、飲み干して。)
シィン・・・・。(静かにゴングが鳴るのを待った。)
そして、程無くして。
カァァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア アア ア ア ン ン ン ンン ! ! ! ! ! ! ( ゴングが打ち鳴らされた!!! )
・・・・
いきなりだ!
いきなりの事であった!!
マスク・ド・サンキストの口から『何か』が迸(ほとばし)る!!
ブッッシャァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! ( オレンジ色の液体ッ! 『100%果汁のオレンジジュース』だッッ!! )
マスク・ド・サンキストが、死合前に飲んでいたモノだ!
マスク・ド・サンキストは、オレンジジュースを飲み干したと見せかけて、全てを飲み込まずに口の中に残しておいたのだ!!
ソイツを、口中から、百文字の顔目掛けて噴射をするッッッ!!!!
言うまでも無く『 オレンジジュースは、 酸 性 の 液 体 ッ ! ! 』
一粒でも眼球内に入り込めばッ!
染みては、荒れ狂う、酸の所業ッッ!!
『 瞼(まぶた) は 、 固くも 閉 じ ら れ る ゥゥゥーー ー ー ッッッ ! ! ! 』
(キィィス キスキス サ ン キ ス ト ッッッ ! ! !)
(ゴングが鳴り響くと同時に、この奇襲攻撃ッッ!!)
(これから君はねッ!)
(丸ごとミキサーに掛けられるオーレンジが、容器の中の刃によってねッ!!)
(粉砕して混ぜる時に発生する『 けたたましい 混合重音(ミクシーサウンズ) 』のような、酷い声をだねッッ!!)
(吠えてねッ!)
(叫んでねッ!)
(泣きベソをかきながら、この『マスク・ド・サンキスト』の恐ろしさを『 思い知って行く事 』になるンだよよよぉぉぉぉおん!!!)
( ジ ! ハ ン ド レ ッ ド く く く く ぅぅぅぅうううううう〜〜〜〜〜〜ん ん んん ! ! ! ! )
(『ブッコロ死』を、させちゃうからねねねねぇぇぇぇえええええんん!!)
(こぉぉぉぉれが、ルール無用の残虐ファイトがウリのぉぉぉおおおおッッ!!)
(謎の覆面レスラーッ! スティッフの『 マ ス ク ・ ド ・ サ ン キ ス ト 』の荒技の数々ぅぅぅうう う う う ううう ! ! ! ! )
「 う ッ ッ ! ! ! ? 」
これが、マスク・ド・サンキストの最後の一声となった。
・・・・
ブッッシャァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!! ( オレンジジュースが、噴き出されるよりも速くッッ!! )
ド ッ ッ ゥゥ ゥ ウウ ウ ン ッ ッ ! ! ! ( 高くも跳ぶは、ジ・ハンドレッドッッ!!! )
ー グ ゥ ・・ ・ ン ッ !
空中で横転ッ! 加るるにッ!!
ー ズ バ ァ ァアアアーー ン ン ッ ッ ! !
捻り、それ即ち、『 踵 、 廻 脚 (えんきゃく) 』と化すッッッ!!!!!
「 『 レ ス ラ ー へ の 賛 歌 そ の 1 ッ ッ ッ ! ! ! 』 」
「『 前田独特の軌道を描くッ! ニ ィ イイ ル ・ キ ッ ク ゥ ー ッ ! !
大 車 輪 キ ッ ク で あ る ッ ッ ッ ! ! ! ! 』 」
ゴ ッ ッ ッ バァ アアア アア ア ア ア ア(レスラーへの賛歌その1ッ! 必殺の『 大車輪キック 』をォーッッ!! )
ー「 当 た り 前 田 の ォ ー ッ ! ! 」
アアア ア ア ン ア ァ ァ ア ア ア ア ア ( 得意満面の『マスク・ド・サンキスト』の前頭部、目掛けてッッ!!! )
「 『 ク ラ ッ カ ァ アアア ア ア ア ア ア ア ア ア ー ー ーーー ッッ ッ ! ! ! 』
ア ア ン ア ァ ァ ア ア ン ッ ッ ッ ! ! !( 叩 き 落 と し た ァ ァ ア ア ーーー ! ! )
・
・
・
ゴ ッ ッ ッッッ ( 鈍くも。 )
・
・
ズッッ ォ オ オ オオ オオオ・・・・・・ ッッッ!!! ( 重 音 鳴り響く 。 )
鈍器を。
額の上部に、殴り打ち据えたかのような。
『 頭 蓋 骨 の 陥 没 。 』
マスク・ド・サンキストは即死した。
マスク・ド・サンキストが・・。
残虐ファイトとして、どのような手口を考えていたか解らないが・・。
そのほとんどを出させずにして・・。
『 百 文 字 は、 勝 っ て の け た の で あ る ッッ !!! 』
ー マスク・ド・サンキスト 男 年齢(謎の覆面レスラーの為、不詳。)
必殺技 対戦相手を『ブッコロ死』
・・・ ・ ・ ・ ・ 『 死 亡 。 』
・・・・
観客達は皆、驚愕をした。
呆れかえる程の強い、その男(ジ・ハンドレッド)に・・・!
そして。
程無くして。
ウォォォォオオオオオ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オオ オ オオ オ オオオ オ オ オオオ オ オ オ オ オ ! ! ! ! !
大歓声が巻き起こるッ!!!
「「「 ジッ! ハンドッ! レッドッッ!!! 」」」
「「「 ジッ! ハンドッ! レッドッッ!!! 」」」
「「「 ジッ! ハンドッ! レッドッッ!!! 」」」
「「「 ジッ! ハンドッ! レッドッッ!!! 」」」
「「「 ジッ! ハンドッ! レッドッッ!!! 」」」
「「「 ジッ! ハンドッ! レッドッッ!!! 」」」
「「「 ジッ! ハンドッ! レッドッッ!!! 」」」
「「「 ジッ! ハンドッ! レッドッッ!!! 」」」
「「「 ジッ! ハンドッ! レッドッッ!!! 」」」
カァン カァン カァン カァン カァン カァァ ァ ア ア ア ア ア ア ア ン ン ン ! ! ! ( 死合終了を知らせる、ゴングが、鳴り響き・・・。)
スゥ・・ッ(百文字は悠然と、リングを降りる。)
ト・・ッ(緩やかな速度で、闊歩をする。)
ト・・ッ(百文字こと、ジ・ハンドレッドに・・。)
ワァァア ア ア ア ア ア ア ! ! ! (観客達は群がっていく。)
「ハンドレッド最強ォォォオオオオオオオオオオオオ!!!」
ペタ。(百文字の体に、万札を貼り付ける。)
「プロレス最強ォー! 久っっさびっっさに、オーソドックスなプロレス殺法を見たぜぇー!!」
ペタ。(他の観客も、百文字の体に、万札を貼り付ける。)
「藤波に大車輪キックをブチかました、前田日明みてぇーだったぜぇー!!」
ト・・・ッ(そんな事など、もろともせずに。)
「キックの千手観音ってかぁー? 次は、キャプチュードやってくれよ!キャプチュード!!」
ト・・・ッ(闊歩をするは、百文字 豪介。)
ト・・・ッ(そして、その向う先には。)
浅黒い肌をしている・・。
『 黒髪の女性 』が一人佇む・・。
黒髪の女性が、百文字に語りかける。
「上出来よ、ハンドレッド。」
百文字は・・・。
「。」
答えない。
「行くわよ、ハンドレッド。」
「この世は残酷かも知れない。」
「けれども。暗闇の荒野に進むべき道を切り開いていく『覚悟』を持つなら・・・。」
「いつの日か。辿りつける『真実』へと向かっていけるのかも知れない。」
そして二人は、共に会場を後にした。
・・・・
記憶(おぼ)えている、百文字(ハンドレッド)・・・?
私達には『夢』があった。
記憶(おぼ)えている・・、百文字(ハンドレッド)・・・?
それを掴む為には『お金』が必要だった。
今となっては、もうどうでも良い事かも知れない。
けれども、あの時。
私達は毎日が我武者羅(がむしゃら)だった。
・・・自由を手にする、 た だ そ の 為 に ・・・・・ ! ! !
永遠とも思える、年月を積み重ね・・・。
20数年前のあの日。
『 大蛇 毒砲 (おろち どっぽ) 』との、 『 Fist or Twist ( 拳 か、関節技 か・・?) 』
記憶(おぼ)えているかしら。百文字(ハンドレッド)・・・?
虎すらも素手で屠りさる世紀の空手家。
記憶(おぼ)えている・・、百文字(ハンドレッド)・・・?
『肉体の外部と内部の同時破壊』を特徴とする『 大蛇流 』の継承者・・・。
『 人 喰 い 大 蛇 の 大 蛇 毒 砲 ・・・・ っ 。 』
知っているかしら。百文字(ハンドレッド)・・・?
その娘は、相手を見下してかかると言う、悪癖があるモノも・・。
『空手界の最終兵器』『空手を終わらせた女』等、数々の異名を持つ天才として、空手界に名を馳せているそうよ。
・『 空手を終わらせた女 ・ 大蛇 勝美 』
そして、20数年前のあの時。
地下プロレス界に『絶対王者あり』と耳にした、『大蛇毒砲』は、貴方に死合を挑んできた。
柳生月心斎の立ち会いの元。
闇夜の中、毒砲と、血で血で洗う血戦を繰り広げる貴方。
私はじっと待ち続けた。
誰に言われた訳でもない。
誰に頼まれた訳でもない。
「敗北が許されないのは、私とて同(おんな)じ事。」
「貴方が死す時は、この私も死す時よ。」
「この私に腹を掻っ捌く真似をさせたら、死んでも恨んで嫌味を言い続けてやるわ。 百文字(ハンドレッド)。」
私は、じっと待ち続けた・・・。
永遠とも思える・・・。
静寂の瞬間(とき)を・・・。
幾度も幾度も、繰り返しながら・・・・。
私は、じっと待ち続けた・・・。
・・・・・(待ち続けるは、一室。)
ギィ・・・(開かれるは、その扉。)
帰還をした貴方は、鮮血に塗れていた。
貴方は、毒砲の右目を抉(えぐ)り潰すと同時に、脳に損傷を与えた。
毒砲は、必殺の六波返し(ろっぱがえし)にて、百文字の頭蓋骨の縫合を外した。
共に脳が損傷(こわ)れ・・・。
ただ肉体(にく)のみが、敵者を欲し。
餓えた狼の如く、互いを壊し合った。
・・・だが、勝負は付かなかった。
しかし、こうして『私』のトコロへと帰ってきた。
そこに言葉は要らなかった。
パチ・・。 パチ・・。 パチ・・。 パチ・・・。 (生ぬるい速度で、行われる手拍子。)
「クックックッ・・・・。」
抑揚が無く、気味の悪い、薄ら笑みの声が響き渡る・・。
・・・・ッ!! (私は、視線をドアに向けた。)
ド ド ド ド ド ドドドド ドドド ドド ド ド ド ド ド ド ド ド
「『人喰い大蛇』と戦い、生きて帰って来れるとはな。」
「だが、その傷。」
「もう元のような動きは出来まい。」
「大蛇のように『帰れる場所』が無い君達にとって、『それが何を意味するか』解らぬ訳ではあるまいね?」
レディは返答(こた)える。
「その通りだわ。」
「のっぴきがならない位に、耳が痛いお話。」
「けれどね。」
「『無礼』と言う行為に、値するんじゃあなくて?」
「人様の部屋に、ノックもせずに入り込むだなんてね・・・。」
ー 悪魔の頭脳を持つ科学者・・・。
『 D r . 劉 』 ・・ ・ ・ ・ っ !
・『 悪魔の頭脳を持つ科学者 ・ Dr.劉 』
ーーーーーー
・・・続く。