動機は何でも良かった。
耐撃の百文字と対峙した鷲鼻のバトゥロはそう感じた。

心の中で濁り蠢いているモノを発露させるかのように、百文字(ジ・ハンドレッド)の前に立ち塞がったバトゥロ(エイグロン)は・・。
それだけで血が沸き。それだけで肉が躍(おど)った。それは心より、この時を待ち侘びたからだ。

『 ど っ ち が 強 い の か ? 』

そのシンプルなテーマに・・・。終生のライバル同士は、熱くも燃えた。


 ゾクリーーーーッ!

 戦慄が疾(はし)るッ!


 ゾクリーーーーッ!

 戦慄が背を疾(はし)るッ!


 ゾクリーーーーッ!

 甘い戦慄が、背を疾(はし)り抜けるッ!


 ゾクリーーーーッ!

 背のうぶ毛が、ゾワゾワと立ち上がり・・・ッ!


 ゾクリーーーーッ!

 甘い戦慄が、背を疾(はし)り抜けるッ!


 ゾクリーーーーッ!

 ゾクリーーーーッ!

 ゾクリーーーーッ!

 ゾクリーーーーッ!


 幾度もッ!幾度もッ!幾度もッ!幾度もッ!


 ゾクリーーーーッ!

 疾(はし)っては抜ける『甘美な戦慄』ッッ!!



 ズッッッッォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!


 衝突が『衝撃波』を生み出す最中(さなか)と言うのにッッ!!


 ゾ ク リ ーー ー ー ッッ!!!

 両者の甘い戦慄は、止まる事を知らなかったッッ!!




「 「 『 『 ちぇりぃぃいいいぁぁぁあああ あ あ あ あ ああああ ーーーー ー ー ー ッ ッ ッ ! ! ! 』 』 」 」


 両者は呼応しッ! 叫んで吠えたッッ!!





・・・・





恐るべき斬手撃だ、耐撃のっ!

畏るべき大拳撃だ、鷲鼻のッ!



だがな、耐撃の百文字っ!

だが、鷲鼻のバトゥロッ!



私は壱歩たりとて、貴殿に譲るつもりはないっ!

ワシは壱歩たりとも、貴様から引くつもりはないッ!



貴殿もそうであろう、耐撃の百文字っ!

貴様もそうであろう、鷲鼻のバトゥロッ!



なぁ、耐撃の・・・っ!

なぁ、鷲鼻の・・・ッ!



憎しみをバネにするのなら、するが良い・・・っ!

哀しみをバネにするのなら、するがいい・・・ッ!



恨みをバネにするのなら、するが良い・・・っ!!

嘆きをバネにするのなら、するがいい・・・ッ!!




   ーーーー  今 ッ !  こ の 瞬 間 (とき) ッ ッ ! !



      燃 や せ る モ ノ が  ッ ッ ! !   ど れ だ け あ る か だ  ッ ッ ッ  ! ! ! !  ーーーー





「 「 『 『 さ ぁ っ ッ !  い よ い よ 決 戦  !   幕 っ ッ ! !  下  ろ  す  時  っっッッ !!!! 』 』 」 」




 ゴッ!

 超技が圧(へ)し合う。



 ゴッ! ゴッ!

 その鈍音(どんおん)。



 グゴ・・・ッッ!!!

 鈍音(おと)が変化(か)わった。





「死ぬ気か、耐撃の・・・ッッ!!」

バトゥロが呻くっ!


「貴様は、相違(ちが)うのか・・・? 鷲鼻のバトゥロッッ!!!」

百文字が吐き捨てるッッ!!




ィィィィ ィ ィ ィ イ イ イ(百文字が『 サイボーグ能力ッ! 』)




  イ イ イ イ イ イ イ イ イ(『 超聴力 』の源ッ! 超振動を伴う『 超 ッ ! 音 ッッ !!  波 ッッッ !!! 』)






ビッッッシィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!! ( 百文字から、破滅の音 が す る ッッ!!! )





強靭な体躯を誇るッ! 『耐撃の百文字』と言えどもッッ!!


更なる超音波を発生させッ! 過度の『超振動』を受け続ければ・・・ッ!



   崩れ落ちる事ッ! これ 必 然 ッ ッ ! !



百文字が咆哮(ほえ)るッッ!!!



「ワシは何としても貴様を倒しッ!」


「不倶戴天はアムステラッ!」



「そしてドクトル・ベイベーを『 討 ち 滅 ぼ し て く れ る ぞ ッ !  鷲 鼻 の バ ト ゥ ロ  ッ ッ ッ ッ ッ ! ! ! 』 」





ビキィ! ビキィ! ビキィ!(徐々に・・・ッ!)


ビキィ! ビキィ! ビキィ!(それでも確実にッッ!!)


ビキィ! ビキィ! ビキィ!(崩れ落ちてゆく『 耐撃の百文字 』 ッッ !!! )



バトゥロが咆哮(こたえ)るッッ!!!



「ならば、耐撃の・・・っ!」


「私も己の身を顧みず・・・っ。超加速を行うとしよう・・・・っっ!!」



「 『 加 速 装 ォ ォ オオ オ 置 ッ ッ ! ! ! ! !  』  」






 ーーードォ ン ! !



  ーーそれは・・・っ!

  ーーー正に、錯交した時機(タイミング)であったっっ!!







   グ ッ ッ ッ  ツツ ツツツ ツツ ツ ツ




             ギャア アア ア ア  ア ア ア ー ー ー ァ ァ ァ ァ ァ





     ァンアンアンアンアンァンアン ァ ン ァ ン ァ ンア ン ア ン アンァンアンアンァ





              ゴッッッッガァァアアァァァァアアアア ア ア ア ア ア ア ア アーーー ー ッ ッ ! ! ! !







轟音鳴り響くっ!!


両者、共に、吹きて、飛ばされるっっ!!!




「ぬかった・・・ッ!」

百文字は認めた。


「体駆内に超音波を発している以上・・ッ! 超聴力は死んでいたのだ・・・ッッ!!」

己のミスを。




「下げる頭(こうべ)は、幾らでもあるが・・・っ!」

バトゥロは認めている。


「果たして貴公に許してもらえるか・・っっ!!」

己の過(あやま)ちを。






ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ






さも天空から、振り降ろされたかの如くの・・・。




 ーーー  大  鈍  器  ッッ !!!!!




全長45m。


体重460t。



三日の後。


その深夜。



マドモワゼル平原にて、23の刻(23時)ギガントを待ち受けると果たし状に記述(しる)された・・・っっ!!!




   失 わ れ た 命 の 尊 厳 を 守 る 者 ッッッ !!!!!





ド ド ド ド ド ドドドド ドドド ドド ド ド ド ド ド ド ド ド





「無粋は承知している・・っ。」



「だがっ!」



「俺には、お前に与えなければならない『 報 い 』があるっっ!!!!」



「Mr.ハンドレッド っっ !!!! 」


「お前の相手は・・・っっ!!」



「この俺と、そして、この『 ク ル イ ・ ケ ン ・ キ ャ ク 』 だ っ っ っ ! ! ! !  」




 クルイ・ケン・キャクがその拳ッッ!!!

 大地に叩きつけッ! 両者を吹き飛ばしたッッ!!!




 そして、その操者こそ・・・ッッ!!





        ーーー 「名無しの新兵(ルーキー)」 ーーー





「勝負は三日の後だ、ハンドレッドっ!!」


「白か黒か・・っ! マドモワゼル平原にて、ハッキリとつけてやるっっ!!」




クルイ・ケン・キャクは、転がっている『鷲鼻のバトゥロ』を拾い上げると・・・・。





  ズッッドォォオオ オ オ オ ー ー ー ゥ ゥゥゥ ! ! ! (跳躍っ! 轟音と共に、去りて消えた・・・・っっ。)





            ・
            ・
            ・
            ・

            ・

            ・


            ・





・・・・




○クロガネの賛歌・第4章


 ー ギ ガ ン ト 破 壊 指 令  ー  爆 熱 ! 巨 大 ロ ボ ッ ト 編



 第7話「 そ の 名 は ! そ の 名 は ! そ の 名 は ! そ の 名 は ! ! 」





・・・・







・レゼルヴェ国 無人の廃工場より86km『 マドモワゼル平原 』 時刻・21:26




ズ シィ ン ( 月の無い夜、闇の夜空・・。 )


ズ シィ ン ( 歩み進むは『クルイ・ケン・キャク』。 )


ズ シィ ン ( 緩やかな・・・。 )


ズ シィ ン ( 緩やかな『歩み』であった。 )


ズ シィ ン ( それは慈愛に満ちた『歩み』であった。 )


ズ シィ ン ( 乳母車を押して進めるかのような・・。労りと・・『慈しみ』で持って・・。 )





  ズ シィィイ ン ン ( その手の平の『 鷲鼻のバトゥロ 』を運びて、歩み進んでいた。 )







・・・・







緩やかな振動。

揺り籠(ゆりかご)と評すには、ちょいと震度が高いと言う話ではあるが・・・。


労りと・・・。

慈しみの中・・・。


バトゥロは、目を覚まし。

まず思うた事は『揺り籠』からの目覚めであった。


遠き日。

4つ足歩行。「はいはい」すらままならぬ幼児の時分。


安堵を覚え。深い眠りへと誘われる、あの心安・・・。

ポカポカとする毛布の中。

揺りて動くのが『揺り籠』だ。


懐かしくも・・・。愛しさを覚える、あの安心感。


バトゥロは、目を覚まし。


まず、それを思うた。


目を開き・・。

その場が。

クルイ・ケン・キャクの手の平である事を知る。


P@P@(QXコレクトが響き渡る。)


「目覚めたかい?バトゥロさん。」


バトゥロ。

「・・・。ああ。今しがたな。」


名無しのルーキー。

「そうか。それは良かった。」


バトゥロ。

「・・・。なぁ。」


名無しのルーキー。

「なんだい、バトゥ・・?」


バトゥロ。

「君は憎まぬのか。この私を・・・。」


名無しのルーキー。

「そうして欲しいのかい?バトゥロさん・・。」


バトゥロ。

「いいや・・。」

「そう言う訳ではない。」


名無しのルーキー。

「なら良いじゃないか。そうだろう・・?」


バトゥロ。

「・・・。」

「そうだな。」


名無しのルーキー。

「そうさ。今更言っても始まらない。」

「起こった事は起こった事として受け止めるだけさ。」


バトゥロ。

「そうだな・・。」


畑違いも良い理由で百文字と決闘をして。
何も言及されぬと言う事・・。

文句の一つや二つは覚悟していたと言うのに。


名無しのルーキーがこう言う。

「なぁ。バトゥロさん。」

「“親父”って呼んでも良いかい?」


バトゥロは驚く。

「どう言う風の吹きまわしだ?」


名無しのルーキーはこう言う。

「期間こそ短いけど。そう呼べる間柄だと思っている。」


バトゥロは・・・。

「親としたら酷い親だな。君をサイボーグ化し、毎日キツイ訓練を施した。」

と言う。


名無しのルーキーはこう続ける。

「だが一日たりとも俺を見捨てなかった。」

「ドッグメェン隊長とはまた違った情を感じたよ。」

「そんなバトゥを、俺は“親父”と呼びたい。」


バトゥロ。

「好きにしろ、フランソワ。」


名無しのルーキー。

「フランソワ?」


バトゥロ。

「失礼した(エクスキュゼ ムワ)。」


名無しのルーキー。

「いいよ、別に。」

「それより、フランソワって誰なのさ?」


バトゥロ。

「・・・。私の娘だ。死んでしまったがな。」


名無しのルーキー。

「・・そっか。嫌な事聞いちゃったかな。」


バトゥロ。

「構わぬ。言ったのは私だ。」

「それに私もまた君を娘のように思っていた。」


名無しのルーキー。

「・・・。嬉しいよ。親父。」


バトゥロ。

「私もだ、娘よ。」


しばしの間。

流るるは蜜月の時・・・。


 そ

 の

 時

 で

 あ

 っ

 た

 !




ダ ッッ ギ ィィイイ ーー ュ ゥ ッッ !!! ( 跳 ぶ ッ ! )


ダ ッッ ギ ィィイイ ーー ュ ゥ ッッ !!! ( 跳 ぶ ッ !! )


ダ ッッ ギ ィィイイ ーー ュ ゥ ッッ !!! ( 跳 ぶ ッッ !! )


ダ ッッ ギ ィィイイ ーー ュ ゥ ッッ !!! ( 跳 ぶ ッッッ !!! )






グゥゥゥウ ウ ウ ウ ォ オオオ オ オ オ オ オ オー ー ーー ゥ ゥ ゥ ウウ ウ ッ ッ ッ ! ! !


ー ギ ガ ン ト 2 8 号 の『 並 行 跳 躍 ( ス プ リ ン グ ・ ズ ゥ ー ム ) で あ る ッ ッ ! ! 』






繰り返すのだッ!並行跳躍をッ!!



繰り返すのだッ!バネ仕掛けから生み出させる、その加速力ッッ!!






 そ の 名 も 『 連続的跳躍故似爆走 ( オ ー ヴ ァ ・ ズ ゥ ー ム ・ ス プ リ ン ガ ー )ァァアア ア ー ーー ッ ッ ! ! 』


   ッ


   ッ


   !


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


名無しのルーキーに緊張が走る。

「近付いて来ている!猛烈な速度で“ギガント28号”が!!」



バトゥロにもまた緊張が走る。

「振り切れるか?」



名無しのルーキー。

「無理そうだ・・。データにある速度を遥かに超えている・・。」

「それに、来るなら・・・討つ!その為に俺は・・ッ!!」



バトゥロ!

「良し、ならば迎え撃とう・・!!」


スッ・・。 (クルイ・ケン・キャクそっと鷲鼻のバトゥロを地に下ろす。)


名無しのルーキー。

「行ってくるぜ・・!親父・・ッ!!」


バトゥロ。

「行け・・!我が愛娘よッ!!」


・・・!! (クルイ・ケン・キャクは拳を構える・・!!)


そう。“拳”だ!!

D・F・S(ダイレクト・フット・システム)を搭載するその狂剣客(クルイ・ケン・キャク)は、

その訓練内容により、拳で攻撃する事を旨とした機体へと改造をされたッ!!

  す

  な

  わ

  ち

  !

『 狂 拳 客 (クルイ・ケン・キャク) 』 の 誕 生 で あ る ! !


そしてその顔は、鷲蘆鋼人(シュウロコウジン)との訓練最中変形をし!!

意味じくも『犬』の顔を形どって居た!!

  す

  な

  わ

  ち

  !

『 狂 犬 客 (クルイ・ケン・キャク) 』 の 誕 生 で あ る ! !



ダ ッッ ギ ィィイイ ーー ュ ゥ ッッ !!! (そしてギガント28号が到着をする!!)


名無しのルーキーは、狂犬客の音声を外部へと変え!!

ギガント28号の右肩に乗る、耐撃の百文字に対し、こう言い放つ!!


「隊長はアンタに殺された!!」

「そんな隊長の無念をアンタの国の言葉に宿し!!」


「俺の名とする事を決めたッ!!」


  そ

  の

  名

  も

  !


「 『 マ ド モ ワ ゼ ル ゥゥゥゥゥゥ!  シ  エ  ン  ヌ  ゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!! 』 」


直訳するならば“麗しきは淑女、犬の名を持ちて!!”

その名も高き“マドモワゼル・シエンヌ”は!

“耐撃の百文字”との一戦を始まる!!

  そ

  し

  て

  !

ギラァ・・!! (シエンヌの体は“銀密”に光り輝いた!!)







ーーーーーー





 ・・・続く。