コマンタレヴ・ラプソティ
第1話「自由(フリー)!解放(フリー!)混沌(フリー!)暴力(フリー!)」
南アフリカ ー レゼルヴェ国(通称・リトルおフランス)
近年独立を果たした1国。アフリカ大陸の1国であるものも、首席(大統領)は白人。
サイボーグ009のピュンマ(008)じゃあなくたって、黒人が脱走を企てそうなぐらい白人優遇な国家である。
物語の舞台はこの『レゼルヴェ国』とする。
・・・・・
此処はレゼルヴェ国スラム街。
アヒィ!だが、ウヒョヒョウ!と言った奇声が響き渡るデンジャーゾーンだ。
其処に居るのは決まって黒人だ。間違っても・・英国紳士が父を救うためにやって来る事はない。
黒人の黒人による黒人の為の聖地(サンクチュアリ)。それがスラム街。此処には俺達を縛る鎖は無い。
自由(フリー)!解放(フリー!)混沌(フリー!)暴力(フリー!)
それで居て・・・黒人(ブラック!)だ。
今日も今日とて、支配(糞ったれな鎖)からの解放(射精感)を味わうべく、
酒(ヤク)と御馳走(ヤク)と薬(ヤク)とで、チャンチキ騒ぎだ。
アヒィ!
ウヒョヒョウ!
ペケペケペケェー!
キルザホワイト!キルザピッグ!
奇声と怒号のハーモニー。声色までもが黒色と感じられる黒密度(ブラックデンシティ)。
その黒い密度の中・・・。
スラムの中心。ヤケに煌びやかな『高層ビル』に向かう男が一人。
異様な男であった。彼が歩く事。
それはモーゼの十戒に似て、人波が彼を避ける。
奇声が静まる。怒号が醒める。
その男だけが、この街の秩序であるかのように街は静寂を取り戻す。
シィン・・・。
誰もが彼を避けた。
そして・・・。
『誰もが彼を 知 ら な か っ た 。 』
・・・・・
それは、黒づくめの男であった。
スーツだって黒いし・・・。靴も黒い。帽子も黒い。手袋も黒い。
色素の薄い肌が、その黒を際立たせ。黒づくめのその姿が、岩を人型にくり抜いたようなその巨体と顔に映える。
猛禽類のような鋭い目をしている。『油臭(ガソリンしゅう)』と『機械音』がする。
人ならざる臭いと音。
そう・・・彼は『サイボーグ』。生きとし生ける者の喜びの全てを捨て去った存在である。
彼は美味しい食べ物を食べても美味しいと感じる事が出来ないし。
いかなるプレイを持ってしても、絶頂に達する事も出来ない。
人が恋しくない。エメラルドグリーンの海に沈む夕日を見て『美しい』と感じる事もない。
幼子が足りない経験でもって、世の中を知っていく過程を見ても『頑張れよ』と言う気持ちも持てない。
この世のありとあらゆる不幸を見ても・・・。彼は平然として無表情で居られるのだろう。
彼には『感動』が無いのだ。
だが、彼は『機械』ではなかった。
彼にも・・・。一つだけ感情があるのだ。一つだからこそ『濃密』な欲望があるのだ。
それは『復讐』。それは『恨みを晴らす事』。それが・・・彼の『存在理由』であった。
・・・・・
ウォオオオオオオオオオオオオ!!!
ノゥ!ノウゥ!ノゥ!ノゥ!!
アンギャッガアアアアアグワガゴワウォオオオオオオオオオ!!!!
喜びと・・・嘆きの声。嘆きが9で喜びが1と言ったトコロか。
大半が嘆きの声である訳だが、喜びの声が聞こえない訳でもない。
AN! AN! AN! AN! AAAAAAAAANNNNNNN!!!
中央では、全裸の美女たちが『ショー』を行っている。
ー ベイビーおフランス
この賭博所(カジノ)・・・。
この国が『リトルおフランス』と称されるのなら・・。このカジノは『ベイビー』。
スラム街の中心でありながら、この国一番のカジノである。
おフランスの『エッフェル塔』に因んで全長324m。
この国の縮図であるかのように、黒人は低い階層。白人は国営ヘリや自家用ヘリで屋上から高い階層で賭博を楽しむ。
ーギシュン。
黒づくめの男は、このカジノに足を踏み入れた。
ーギシュン。
黒づくめの男は、ショーが行われている舞台へと歩を進めた。
ーギシュン。
誰も彼を止めるモノは居なかった。
ーギシュン。
トラブルを対処すべき用心棒(バウンサー)でさえも。
ーギシュン。
象を見て『デカイ』と感じるのと同じように。
ーギシュン。
ライオンを見て『叶わない』と思うのと同じように。
ーギシュン。
誰もが理解をしたからだ。
『 誰も・・・ 彼を、 止 め れ な い 。 』
ーギシュン。
黒づくめの男が舞台の上に立った。
ヤクをキめてる全裸の美女(ショーガール)も彼に見入る。
シィー・・・・・・ンとした。
『 誰もが 彼 を 見 つ め た 。 』
『 誰もが 彼から 目 を 離せなかった 。 』
そして・・・。
彼はその『第一声』を発した。
「我が名は・・・。
『耐撃の百文字(ひゃくもんじ)・・・ッ。』
QX団の名に置いて・・・、このレゼルヴェ国を『 支 配 す る ッッッ!!! 』 」
・・・・
大それた・・・。
何とも大それた『第一声』であった。
この男・・・。耐撃の百文字と言う男は何を言っているのであろうか?
QX団?聞いた事も無い団体だ。
そもそも・・・。我々は黒人(ブラック)だ。
この国を支配する者は・・・。白人(ホワイト)。
支配権を論ずるのならば、国会にでも行けば良いのでは無いだろうか?
疑問と恐れとが飛び交う中。
耐撃の百文字は第二声を続ける。
・・・・
「黒き人々よ。」
「ワシはこの国を三日三晩をかけて見て回った。」
耐撃の百文字の第二声である。
「目に余る貧富!」
「東洋に『衣食住足りて礼節を知る』と言う言葉があるが。
その言葉の通り・・・白き人々は礼節を重んじ。黒き人々は礼節を知らない。」
黒き人々は皆、項垂(うなだ)れた。
叱りつけられているような気持ちになったからだ。
ちゃぶ台でもひっくり返すような『頑固な父親』から、
人生そんなに甘くは無いんだぞ!とでも言われるような『気マズい気持ち』。
全くの初対面であるこの男から。
黒き人々は・・・。
「だが黒き人々よ。」
耐撃の百文字は第三声を発する。
・・・・
「だが黒き人々よ。」
「お前達こそ。『選ばれし 民 だ 。 』」
黒き人々は皆、頭を上げる。
「礼節。秩序と言う名の『束縛の鎖』から解き放たれた存在だからだ。」
黒き人々は皆、次の言葉を待っている。
「『人様に迷惑だけは掛けずに』。」
「罪を悔いろ。懺悔をするのだ。『懺悔』。良い響きだ。第一耳心地が良い。」
「だが・・・。その実。その中身は『衰退』に等しい。」
黒き人々は皆、ゴクリと息を飲んだ。
「生物が生きる事とはッ! 『他の生き物を 殺 す 事 で あ る ッ ッ ! ! 』」
「生物が生きる事とはッ! 『本能赴くままに 他 を 食 ら い 尽 く す 事 で あ る ッ ッ ! ! 』 」
「 『 黒 き 人 々 よ ッ ッ ! ! ! 』 」
黒き人々は皆、息を止めた。
「 お 前 達 こ そ 。 」
「 世 界 を 統 べ る に 相 応 し い ・・・・・ ッ ッ ! ! ! 」
黒き人々は皆・・・・。
「アヘラ」と笑みを浮かべる・・ッ!
「もう一度言おうッ!」
「我が名は『耐撃の百文字ッッ!!』
QX団の名に置いてぇぇぇええええーーーーッ!
こ の レ ゼ ル ヴ ェ 国 を 、 『 支 配 し て く れ る ッ ッ ッ ! ! ! 』 」
パ チン!
百文字は、その『指』を鳴らしたッ!
「来いィーッ!」
「 『 ギ ガ ン ト 2 8 号 ゥ ゥ ウウウウーーーーッ ッ ! ! 』 」
ド ズ ン !
ド ズ ン ! ド ズ ン ! !
ド ズ ン ! ド ズ ン ! ! ド ズ ン !
ド ズ ン ! ド ズ ン ! ! ド ズ ン ! ド ズ ン ! !
ド ズ ン ! ド ズ ン ! ! ド ズ ン ! ド ズ ン ! ! ド ズ ン !
ド ズ ン ! ド ズ ン ! ! ド ズ ン ! ド ズ ン ! ! ド ズ ン ! ド ズ ン ! !
鳴り響くは地鳴り。
その地鳴りに合わせて。
黒き人々は皆、『唱和』をした。
自由(フリー)!
自由(フリー)! 解放(フリー!)
自由(フリー)! 解放(フリー!) 混沌(フリー!)
自由(フリー)! 解放(フリー!) 混沌(フリー!) 暴力(フリー!)
ー それで居て・・・ッッ!!
ー 黒 人 ( ブ ラ ッ ク ! )だぁぁぁあああ ああ あ あ あ ー ー ー ー っっ っ ! ! !
それは『奇声と怒号のハーモニー。』
声色までもが黒色と感じられる黒密度(ブラックデンシティ)であった。
ーーーーーー
・・・続く。