影の死闘・暁の戦闘〜その4〜



羅甲カスタム・黎明が、手にした巨大鉄棒・金剛を水平に構え、その筒先がキリイ機に向けられる。そこから迸るのは高出力ビーム・九龍!
この一撃を難なく避けたキリイ機だが、手にした大盾の端を見て慄然とする。九龍の掠めた痕が抉れていたのだ。盾で受けられぬ程の高威力!!

「今のはほんの挨拶代わりだ。俺の強さは・・・泣けるぜ!」
「・・・泣かねぇよ」

レンヤの科白に、ライナーはそう呟き返しつつ徹甲銃の狙いを付ける。

ズガガッガガガガッ!!

同時に、ロルフ機のマシンガンの銃撃が黎明に叩き込まれる。だが、防御姿勢を取った黎明の強化装甲には殆ど効果が無い!

「この黎明・・・本気で防げば、銃弾に耐える事なぞ簡単だ」
「それじゃ、これはどうよ?!」

ライナー機の十字スコープが、黎明の頭部を捉える。如何に黎明の装甲が厚いとは言え、この徹甲弾を防げる程の厚さでは無い。

「その不細工な面(つら)をブッ飛ばしてやる!」

ライナー機の徹甲銃が吼える。そして、ロルフ機のマシンガン攻撃に耐えている黎明には、それを回避する余裕が無い。
しかし、黎明には盾となりうる存在−金剛−があった。

ギャリッッ!!

黎明が右腕で掲げた金剛に徹甲弾がめり込み・・・止まる。

「・・・『簡単だ』と言ったはずだ・・・むっ?!」

黎明の右側、掲げた金剛の影になる方向から、盾を捨てたキリイ機が大鉈を振るう!

「右の死角からか! こいつ、戦い慣れてやがる!」

危うい処で鉈を金棒で防ぎ、応戦の構えを取る。キリイ機と接近戦になれば、ライナー機からの狙撃は難しい。
では、ロルフ機は?

「あんまし舐めてんじゃないよ。もう、棒の間合いだ」

ロルフ機の左側面に近寄った羅甲−ルルミー機。その繰り出した棒はロルフ機が向けた左手のマシンガンを弾き飛ばし、踏み込みつつも右腕を引いて
左腕を振り上げ、その棒の先端が弧を描いてロルフ機の下腹を抉る様に繰り出される。
只者では無い動きだが、対するロルフもまた、只者では無い。
棒が弧を描き切る前にルルミー機の懐に飛び込み、左逆手で腰から抜いた高周波振動ナイフを、そのまま殴り抜ける様に繰り出す。

ガッッ!

ナイフが棒に食い止められる。しかし、マシンガンを握ったロルフ機の右手がルルミー機の鼻先に突きつけられる。

ガッ! ズガガッッ!!

ロルフ機が零距離で放った銃撃を、ルルミー機は左手の甲で払い除ける。そして棒を手放した右腕で、ロルフ機の頭部を狙ってストレートを放つ。
だが、ロルフ機もその右ストレートに合わせて絡める様に左パンチを放つ。クロスカウンターかっ?!

「甘いっ!」

ルルミー機が更に放つ左の直突き。体勢が少し崩れ、右手に銃を持ったままのロルフ機では、その最速の拳に合わせる事は出来な・・・いや、違う!
体勢が崩れたのでは無い。身を屈めて居たのだ。上向きに構えたマシンガンを、ルルミー機の顎(?)を撃ち抜く様な角度で連射。

ズガガガッ!!

「ま、まさかそこでアッパーとはね・・・」

頭部を粉砕されたルルミー機が、よろけて立ちすくむ。


一方、キリイ機と交戦中の黎明も・・・

ゴボッッ!!

思い切り振り下ろされた金剛が地にめり込む。その隙に、大上段から振り下ろされたキリイ機の大鉈が黎明の頭部を唐竹割りに!

ギシャッ!!

・・・いや。大鉈は金棒で食い止められた。しかも両手で上から力を掛けた有利な姿勢にも関わらず、キリイ機の大鉈はじりじりと持ち上げられる。

「このレンヤ、貴様らの腕を認めよう! この黎明を倒す事は出来なかったが、取った行動にミスは無ぇ」

黎明は、重量挙げを行う様な格好で大鉈ごと金剛を持ち上げて居る。キリイ機が少しでも力を緩めたら、大鉈を振り払って叩き潰すだろう。だが!

「撃てっ、ライナー!」
「何っ?!」

キリイの叫びに戸惑うレンヤ。それもそのはず。今の鍔迫り合いは、ライナー機と黎明の間にキリイ機を挟んだ状態だ。
これで撃ったらキリイ機にも当たるのだが・・・エイジアン隊は、自分達の搭乗する機体の構造を知悉していた。

バシュウッ!!

ライナー機の放った徹甲弾は、キリイ機を撃ち抜く。だが、装甲の薄い8型を撃ち抜いた位では、この徹甲弾の威力は落ちない!
・・・キリイ機を貫通した弾丸は、黎明の頭部を見事に打ち砕いた。

「・・・良い一戦を見せて貰った。では、そろそろ引き上げるとしようか」

『強敵を倒した』という虚を衝く様に掛けられた謎の声。エイジアン隊に緊張が走る。
エイジアン隊の前に現れたのは、闇色をした痩身・腕長の機体。影狼隊隊長の『妖爪鬼』である。

しかし、視界を失った黎明とルルミー機を連れて、この場を脱出できる秘策があると言うのか・・・?!

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