対決!秘剣vs妖拳〜その3〜



夕陽を背に、紅に染まる剣王機。その視線の先に見えるものは・・・人形の様に立ちつくす白銀の2機と、少し離れてべたりと地に伏した首無し機。
そして、その3機を遠巻きにして半円形の陣形を取る10数機。

全てが紅く染まる中、7機だけは影を・・・いや、闇を切り取ったかの様に黒い。
同じ『黒』でも、黒竜角が輝く黒『漆黒』とすれば、彼らは光る事無き『闇色』と言った処か。その7機の内、腕長の1機がさりげなく横へと動き、
夕陽を避けつつ核ミサイルを背にして、剣王機と対峙する。

「・・・待たせたな。お前らが呼び出したかったのは、俺だろ?!」
「そうだ」
「それで? お前ら全員、倒せば良いのか?!」
「ふふ・・・それには及ばんよ。その前に貴様を倒せば良いだけなのでな」

そう言うなり、妖爪鬼が左半身の構えを取る。
体の前で肘を立てた左腕。その手刀が、袈裟斬りを放つのか?
それとも、槍の如く後ろに引かれた右腕。それで電光石火の突きを放つのか?!

「ハッ! 笑わせるな。悪い冗談だぜ!!」
「ほほぉ?! ・・・ならば受けてみよっ!

ガギャッ!  「!」「!!」

妖爪鬼の右腕が閃く! だが、後ろ殴り?! その爪は、背後の核ミサイルを抉る!
皆が驚愕の余り、無音の叫びを上げた瞬間!

ギィンッ!

・・・剣王機は、妖爪鬼の一撃を弾き返して居た。妖爪鬼の右腕はそのまま背を回って左脇の下から伸び、剣王機に突きを放ったのである。
どういう構造なのか、伸縮自在の腕だからこそ可能な異様な攻撃!
そして間髪入れず放たれる、横薙ぎの左手刀っ!
だがこれも、肘から先が『下に』折れ曲がり、剣王機の胸部では無く、太腿を狙う攻撃と化す・・・が、これも返す剣で弾き返される!

妖爪鬼の猛攻。それは、緩急織り交ぜた踏み込みから放たれる変幻自在の攻撃!
だが、剣王機も一歩も退かず、その攻撃をことごとく弾き返す!!


〜KGF基地〜

「・・・ふぅっ。賭けに勝ったな」
「賭け? あれが核ミサイルじゃ無かったって事がですか?!」
「いや、そうじゃない。シンが剣王機と『同調(シンクロ)』してる事が、さ」
「『同調(シンクロ)』・・・と、言うと?!」
「貴史。お前も知っての通り、剣王機にはブラックボックスが搭載されているな」
「えぇ。雀王機が搭載している精神感応式の操縦系統に匹敵する効果、だとか? ・・・その機能ですか?!」
「あぁ。例えばレオンは、銃王機を自分の手足の様に扱える。だが、己を銃王機と『同調』する事は出来ない。それを人為的に強制すると、どこかに無理が来る」
「・・・雀王機や霊猴の様に、ですね」
「その通りだ」

雀王機のリミッター解除。槙絵の意志が雀王機に直結、絶大な戦闘力を生み出すがその分、操縦者と機体の双方への負担も甚大なものとなる。
霊猴のDTS。白鳳の動きを忠実に再現するが、それ故に機体への負担が大きい。
前者の問題は、槙絵と雀王機の強制同調によって、双方への負担が増す事。
後者の問題は、格闘技専用の機体である霊猴の性能ですら、白鳳の動きを完全には再現しきれない処である。
そこで開発されたのが、操縦者の思うままに対応出来る『器』、すなはち剣王機。
そして剣王機を動かすに足る『素材』として選ばれたのが、荒川シンなのである。

「それで恭子、剣王機の状態はどうだ?」
「・・・凄い。こちらからのサポートが殆ど必要ありませんっ!シン君、こんなに操縦が上手くなってたんだ・・・」
「いや、違うな。『操縦』じゃあない。今のシンは・・・『剣王機』だ!」
「・・・えっ?! どういう事です、博士」
「今まで積んだ闘いの経験 ─ 特にあの『悪魔』との闘い ─ が、シンを剣王機と『同調』・・・いや、むしろ『一体化』させてるのさ。
今のシンは、まさに・・・『機我一体』の境地!
「機我一体・・・」


〜サントスパーダとダイアンサス〜

「こ、これは凄い・・・あの攻撃を全て見切ってますよ、シン君は」
「でも、防戦一方みたいね・・・大丈夫かしら?!」
「それは違いますね。あの黒いのは『攻撃するしかない』んです」
「・・・えっ?!」
「少しでも攻撃の手が緩めば、シン君の反撃が待ってますからね・・・来たっ!」


幾十度目になろうか。妖爪鬼が放つ突きから切り替わる斬撃。そこに隙が生じた。
その斬撃を弾いて踏み込みかけた剣王機だが、行く手を遮る赤銅色の影!
剣王機の刃は、水鋼獣の胴体に深々とめり込む。しかし、刃の厚みだけ食い込んでそこで止まった。
高出力のエネルギーブレードですら、液状金属の対流でその威力を削がれる様だ。

「ふふ・・・小手調べは終わりだ。我等のこの構え、未だ破った者は居らんっ!」

そう言うなり、水鋼獣の背後に妖爪鬼が陣取る。水鋼獣を盾にして、妖爪鬼の長い腕が攻撃してくる訳である。もちろん、その隙に水鋼獣の拳も飛ぶだろう。

「・・・へぇ、そうかい?! でも悪いな。俺も全く負ける気がしないんでね!」

再び、剣を構え直す剣王機。必殺の意志を示すかの様に、その剣が強く輝く。
剣王機にも、何か秘策・秘剣があるのか?!

『静』から『動』、そして再び『静』に戻った闘い。次に『動』へと転じる時は、一体どの様な闘いとなるのだろうか・・・。


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