対決!秘剣vs妖拳〜その2〜



〜KGF基地〜

剣王機が出撃してしばらく経つ・・・が、KGFの司令官である榊原貴史は、未だに渋面のまま、モニターを睨み付けている。

「・・・貴史、お前の考えてる事を当ててやろうか? 『本当に、剣王機を行かせて良かったのだろうか』だろう?!」

黙って頷く榊原司令。岩倉博士はオペレーター3人娘が口々に何か言おうとするのを手で制し、言を継ぐ。

「確かにな。剣王機が到着した処で核爆弾を爆破すりゃ、簡単だ。奴等も相打ちになるだろうが、それ位の事は躊躇わずに出来る連中と、俺も見ている」

暗い顔で再び頷く榊原。だが、岩倉はニヤリと笑う。

「しかしよ、奴等が欲しいのは『剣王機の戦闘データ』で『剣王機の残骸』じゃない。わざわざあんな場所に陣取って、剣王機を呼んだのがその証拠!」
「・・・と、言うと?」
「昨日の戦闘後に動ける位置から、剣王機があそこまで移動するのに時間が掛かるのは奴等も承知の上って事よ。
長時間の移動で疲れさせて対戦する・・・ってのは、『破壊する』気じゃなくて『闘って勝つ』気だからさ」
「司令! ダイアンサスと回線リンクしました。ダイアンサスからの映像、出ます!」

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〜サントスパーダvs妖爪鬼〜

先に仕掛けたのはサントスパーダ。圧倒的な実力差で黒竜角に撃破されて以来、剣技を磨き続けて来た。その磨き抜かれた俊速の剣が妖爪鬼に迫る!
その剣技は速いだけでは無い。下手に手を出すと強烈な返し技を受けるであろう。
それ故に、妖爪鬼は手を出さなかった。踊る様な足捌きで避けつつ、間合いを取る。

「やるなっ! だが、我が爪を受け切れるか?!」

そう言うなり、鞭の様にしならせた右腕を横殴りに振るう妖爪鬼。
腕の軌跡は大振り。懐に飛び込めばサントスパーダが有利と思われ、飛び込みかけたが直後、間合いを離した。正解だった。
右腕が肘から曲がり、より鋭い軌跡を描いたからである。そのまま飛び込んでいたら、サントスパーダの背中が抉られて居ただろう。
しかし、更に腕が曲がった! 手首と肘の間に当たる部分が、腕全体で言えば逆N字型になる様に曲がり、サントスパーダの胸板をかすめる。

「なっ! 何だ、この腕は?!」

続けて妖爪鬼が左腕で突きを繰り出す。剣で打ち払おうとすると、腕自体が弧を描いて真横からの突きへと変化する。
これを左に避けると、同時に左へ動いた妖爪鬼の右腕が襲いかかり、間髪入れず左の踏み込みから、左腕の攻撃が繰り出される。

人体の構造では不可能な位置から攻撃できる長い腕と的確な足捌き。これが、妖爪鬼の強さの秘密であった。
サントスパーダも、その予測不能な攻撃を回避するのが精一杯。反撃する暇は無い。
その一方・・・

〜ダイアンサスvs水鋼獣〜

必殺のアスフォデルが、鈍重に迫る水鋼獣へ繰り出される。水鋼獣は、太い左腕を掲げその穂先を受け止めた!
腕の半ばにまでめり込んでるが、そこで止まったのだ。
良く見ると、アスフォデルが刺さった辺りの装甲に波紋が生じている・・・?!

対して、水鋼獣が反撃の右ストレートを放つ。刺さった槍で決められたこの間合いでは到底、届かない筈のパンチ。しかし・・・
右腕の装甲がゲル状の塊となって伸び、ダイアンサスの左脇腹に叩き込まれた!

「くっ!」

まるで砂袋で殴られたかの様な衝撃に耐え、追撃の拳(?)をアマランサスで受ける。
再度繰り出した槍も、胴体半ばまで突き刺さったものの、同じ様に威力を吸収される。

「・・・液状金属?! 厄介な相手ね・・・」

脇を見ると、サントスパーダも苦戦している。有効打を与える手段を見つけない限り、こちらも手詰まりだろう。と、なれば・・・

「はあぁっ!」

間合いを取ったダイアンサスが、意外な行動に出た。盾を投げたのだ!
唸りをあげて回転するアマランサスが、妖爪鬼を襲う!

「ほほぉ?!」

不意を突かれたとはいえ、軽快な足捌きで避ける妖爪鬼。しかし、アマランサスに搭載されたバーニアが、盾の軌跡を変える。

「・・・ぬぅっ?!」

流石にこれは受け止める羽目になった妖爪鬼。実害こそ無いが、サントスパーダが攻撃する隙を作るには充分であった。
すかさず放たれるサントスパーダの一閃。これを避けるには自ら倒れるしか無かった。

この間、水鋼獣も黙って見ていた訳ではない。例のゲル状拳を繰り出そうとして・・・止めた。
何故ならば、ダイアンサスが相打ち覚悟なのを悟ったからである。ゲル状拳を繰り出すという事は、すなはち腕の装甲が薄くなるという事。
故に、アスフォデルの一撃に対するカウンターでないと拳を放てなかったのである。
そして、水鋼獣が躊躇ってる間にアマランサスはダイアンサスの手元に戻る。

しかし、仰向けに倒れた妖爪鬼の脅威も薄れた訳では無い。2本の長い腕が、さながら毒蛇の様に牽制していたからである。

「ふふ・・・実に見事だ。だが、『青騎士』とも万全な状態で立ち会いたいのでなぁ。遊びは終わりにしようか。そろそろ『青騎士』も来る頃合いだしな」

その言葉と共に、待機していた6機の黒い機体が白銀の2機を包囲。
ホバリングで周囲を回りつつ、まず右腕から鞭状の電撃棍を伸ばして攻撃を仕掛ける。
これは断罪の剣に両断され、アマランサスに食い止められたが、続けて放たれた鉄粉は剣や盾で止められるシロモノでは無かった。

「これは?!・・・まずい! 機体が動かない!」
「・・・どうやら、磁気兵器の一種みたいね。幸い、通信機能はまだ大丈夫みたい。ノイズは入って来てるけど」

6機の左腕から放たれた帯磁鉄粉は、対象の関節部に入り込み、その機能を低下させる効果を持っている。
しかも噴射機の射程の短さと、6機自体の関節には防護措置をしてあるのとが相まって、同士討ちする事無く放てる攻撃なのである。

「さて、こちらも肩慣らしは終わった。後は『青騎士』を待つばかりよ」
「・・・隊長、来ました! これは・・・間違い無く『青騎士』ですっ!」

夕焼けを背にして、マントをなびかせて疾駆する青い機体。
それを見つつ、隊長は不敵な笑みを浮かべる。

「・・来るが良い、『青騎士』よ。貴様の剣技も見せて貰おう」


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