対決!秘剣vs妖拳〜その1〜



〜某日某所・アムステラ軍の前線基地〜

「ガミジンッ! 貴様、また作戦を無視して独走しおったな!」

大佐の記章を付けた軍服姿の男が、中尉の記章を付けた男を怒鳴りつけている。
ところが、その黒髪の中尉は何処吹く風と叱責を聞き流しつつ、こう嘯いた。

「フン・・・俺は強いヤツと戦いたいだけだ。特に、あの『青騎士』は俺の獲物なんでな。俺が居る時に、ヤツを他の有象無象共と遊ばせる気はないのさ」
「・・・ほほぉ?! だが、我等にも『青騎士』と手合わせする機会を頂こうか」

激怒で物も言えぬ大佐の横合いから口を出した中肉中背の男。
その軍服からして、どうやら特殊部隊所属の様だ。

「・・・貴様、どういう風の吹き回しだ?!」
「なに。地球人も思いの外、手強いのでな。我々としても戦闘データを収集したいのだよ。不世出の天才であるお前ですら手こずる敵ならば、尚更な」
俺の獲物に手を出すな!・・・と、言いたい処だが。 構わん、やってみな。貴様らの手に負える相手じゃ無いと痛感するだろうぜ。
そうすりゃ、そこの泡を吹いてる大佐も納得するだろうさ」
「ふふ・・・我等も見くびられたものだ」
「フン、事実を言ったまでだ」


〜翌日の午後・KGF基地〜

「フランス軍より入電! 南部にアムステラ軍が侵攻して来たとの事! 映像出します!」
「・・・んっ? 何故、こんな田園地帯に侵攻する?! 10数機、しかも見覚えの無い 機体が多いな・・・ッ! 後方にあるミサイルのマーク・・・核弾頭なのか?!」
「アムステラ軍より、広域通信が入っています。内容は・・・」

『青騎士と闘いたい。もし日没までに現れぬ時は、この地域は死の焦土と化す』
『又。地上ならば構わんが、空中に敵影を見た時には日没を待たず、コレを爆発させる』

「青騎士?・・・剣王機の事か?!」
「その様です。現在、現地にはダイアンサスとサントスパーダが向かって居ます」
「奴等は、俺を指名なんだ。行ってやらなきゃ悪いってもんだろ!」


〜フランス南部・待機中のアムステラ軍特殊部隊〜

アムステラ軍の標準機とも言える羅甲は数機しか居ない。他に細身の黒い機体が6機、 赤銅色のずんぐりした機体が1機、
やはり黒いが、異様に腕の長い機体が1機。
黒くて腕の長い機体と言えば、幹部専用機の『黒竜角』を連想するが、細身で滑らかな その外見は『黒竜角』とは全く異なる。
共通点は、両腕のクローが武器という処か。
その腕長の黒い機体に、赤銅色の機体が話しかける。

「・・・隊長。奴等、挑戦に応じますかね?!」
「まず来るだろう。その為に奴等が『核』を表す紋章でハッタリを効かせて居る。他に来るかもしれんが、貴様の『水鋼獣』ならば食い止める事は容易かろうよ」
「この近辺でしたら『銀騎士』辺りでしょうか。ガミジン殿相手では勝負にすらなって居ない事ですし。隊長の『妖爪鬼』でならば楽勝でしょう」
「いや・・・甘く見るな。『銀騎士』の剣も、並の腕前では無い。まともに撃ち合えば苦戦するだろうさ・・・まともに撃ち合えば、な」
「・・・むっ?! 隊長、未確認機が接近中・・・1機のみ!」
「ほほぉ?! 『青騎士』ならばまだ、時間が掛かる筈なのだがな。調査不足か?!」

遠くから駆けてくる青い機体を見守るアムステラ軍特殊部隊。
じっと見守って・・・近付くまでじっと待機するが・・・やけに移動が遅い?!

「・・・おい。データを照合しろ」
「・・・隊長、『青騎士』ではありませんでした。該当データ無し、不明機です」

近付いた機を見ると青と言うか青緑色。蛇腹状の腕にバケツ状の頭部を持つ怪異な機体。
何とも言えぬ沈黙に包まれた中。高らかに気炎を上げる謎の機体。

「お主らの様な下賤の輩にまで我輩の勇名が知れ渡って居るとは驚いた! されど改めて聴くが良い!
栄えある我輩とその愛機の名を! そしてその雷名に打ち震えよっ!」

「我輩こそは… ズガシュッ!

「・・・やかましい。失せろ」

抜く手も見せずに振られた妖爪鬼のクローが、謎の機体の首をあっさりと掻き切った。

「卑怯であるぞ! 名乗りの最中に…ガガ…ギギ…

首無しのまま抗議する謎の機体だったが、控えていた黒い6機の内から1機が近付き、左腕を首無し機に向けた。するとその腕から鉄粉らしき物が吹き出し、
首無し機は突然沈黙する。どうやら機能が麻痺した様である。

「隊長! 更に2機、接近中!」
「・・・、・・・今度は、マトモな奴だろうな?! データを照合してみろ」
「・・・大丈夫です! 『銀騎士』と『女神』の2機と判明しました!」
「前菜としては上出来の部類だな。一つ、手合わせしてみるか」

妖爪鬼の視界に入って来たのは、サントスパーダとダイアンサス。
無造作な腕の一振りで他の機に待機を命じつつ、水鋼獣と共に歩を進める。

「むっ?! あの『悪魔』程では無いが。こいつら、出来る!」
「・・・どちらも未確認機ね。それじゃあ、私が装甲の厚そうな赤銅色のを」
「それでは、私が黒いのを」
「行くぞっ!」

一気に間合いを詰める白銀の2機。それに呼応して間を詰める黒と赤銅色の2機。
破邪の剣と魔性の爪が、無敵の槍と奇怪な鉄拳が、眼前の相手を葬らんと交錯する!


参考資料:謎の機体

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