シーン1「はいぬれジャンケンじゃんけんぴょん」
ここはカラクリパラレルワールドの一つ、地球とアムステラの喧嘩は横に置いといて
萌えヒロインの決定戦を行う世界。
「それではこれより、ハイヌウェレ小隊役割分担の為のじゃんけん勝負を行う!」
ユリウス帝(本編比気さくさ6割増し)の鶴の一声により、手の空いたハイヌウェレ妹軍団にも仕事が与えられる事となった。
彼女らに与えられた使命、それは受け付け、清掃、そして警備とチャモワン。
チャモワンだけは嫌だ―、思考共有をオフにしているにも関わらず姉妹20人の心が一つになった。
『チャモワン』、それはグラップラー用語で噛ませ犬の門番を意味する。
正直負け役と分かっていてそんな役職には誰もつきたくは無いのだが、今回の大会には
システム上必要なのだから仕方ない。
この中の誰がチャモワン係になるのか、本戦出場予定の長女を除いた運命のジャンケンが始まる。
「最初ははいぬれ〜!」
ユリウス帝の掛け声に合わせ、前かがみになって胸の谷間を強調する20人。
ハイヌウェレ姉妹の行動決定権は長女、不在の場合は次女から順に繰り下げになるが、
今回は戦場ではないし末っ子にもチャンスを与えるべくこのはいぬれジャンケンが採用された。
「じゃんけんぴょん!」
20人全員ともスカートをたくしあげ美しい太ももを見せつける。
胸はヘソに勝ち、ヘソは太ももに勝ち、太ももは胸に勝つ。これが、これがはいぬれジャンケンだッッッ!!
「あいこでぴょん!」「ぴょん!」「ぴょん!」「ぴょん!」
例え一卵性双生児の様な存在でも永遠にじゃんけんは終わらない事など無い。ゆえに最初は全く同じポーズを
とり続けていた20人も徐々に数を減らしていく。もちろん、意識を共有すれば永遠に悩殺ポーズを
とり続けながらこの物語に幕を引く事もできるのだが、それでは他のヒロインを見たい人達に申し訳が立たない。
「じゃんけんぴょん!」
200回を越える頃、ついに最後の二人のハイヌウェレが別々のポーズを取った。
八女は胸を強調するポーズ、十七女はシャツのボタンを外しヘソを見せるポーズ。
こうしてアムステラの門番(チャモワン)役が決定した、のだが。
「ふむ、平等に運営するのならば地球側からも誰か採用した方が良いかな」
「我が主、ユリウス様の御心のままに」
生贄はもう一人必要な様だった。
*****
シーン2「マハンさんは割と元気にしてます死んでるけど」
天界、現実にそんなものがあるかどうかわからない。が、このパラレルワールドにはあるとしておこう。
ここでもまた戦争は置いといて地球とアムステラの人(というか霊)達が仲良く暮らしているのだが―、
「ヌオオオオオオ、藤宮流二段蹴りィー!!」
齢70を越えたとは思えぬ高速の蹴りが銀の甲冑に放たれる。
丸みを帯びた銀の甲冑を着た人物が、ウッとうめき声をあげる。
「キエエエエエーッ!」
「待った、降参」
そう短く言い追撃をしようとした老人を手で制する全身鎧の人物、声からして女性の様である。
「なんじゃい、嬢ちゃんもう少しやれんだろ?」
「意味の無い勝負はしない」
「ふん、まあよいわ。まっ、また暇になったら遊びに来るぜワハハハ!」
「来ないで」
豪快な笑いを飛ばし去っていく老人の名はギャラン・ハイドラゴン。
かのルルミー・ハイドランゴンの父であり死後も相変わらずの偉大ではた迷惑な格闘バカだった。
鎧の女性はマハン・ガン、かつてQX団に所属していた寡黙なサイボーグ戦士。
液体金属を身にまとい武装にする戦闘スタイルから柔装甲(ジェルメイル)の二つ名を持ち、それなりの戦闘力はあるが
必要外の戦いを求める性格はしておらず、ゆえに今日の様な自分の事を嗅ぎつけて来た故人が勝負を挑んできたり
する事にはちょっと困惑している。
「形態解除」
打たれ続けた体を休める為に液体金属を体内に収納する。鎧の形を取っていた金属が体内へ吸い込まれ、
銀色の鎧から小柄な本体が姿を現す。ギャランによる打撃は全て液体金属が受け流しており
本体は無傷でいたが、防御形態を維持する為のストレスで全身をかなりの疲労が襲っていた。
幽霊同士でも戦えば疲れるし殴られたら痛いのである。あのまま続けていたら彼の持つ技術でいずれは倒されていただろう。
「生身なのになんてジジイ」
よっぽど嫌な相手だったのだろう、彼女にしては珍しく悪態をつきながら戦闘で散らかった庭の後片付けを
していると足音が聞こえて来た。また、どこかの武人が勝負しに来たのかと思ったがそうではなかった。
「マハン・ガンさん郵便でーす」
届いた手紙にはこう書かれてあった。
『任務に忠実で頑丈な体を持つ地球人女性大募集!貴方も短時間でガッポリ稼いでみませんか?』
*****
シーン3「生贄は改造人間二人」
幽霊でも可、サイボーグの神経痛にも効くというセンゴクの隠し湯の優待券もプレゼントという好条件に引かれ、
頭に幽霊である事を示す天使の輪を乗っけて下界へと面接を受けに来たマハン・ガン。
面接官はティカ・ハイヌウェレ、制作者は違うが自分とほぼ同世代に作られた戦闘型改造人間である。
ティカ「特技は、門番とありますが?」
マハン「はい門番です」
ティカ「で、その門番でこの大会にどんなメリットを与える事ができますか?」
マハン「はい、生身相手ならばゲバール程度は絶対に通しません」
ティカ「それは頼もしいですね、ではその捕まえたゲバールが離してくれと言ったらどうします?」
マハン「柔剣斬刃(ジェル・ブレイド)を使います」
ティカ「柔剣斬刃(ジェル・ブレイド)とは?」
マハン「必殺技です。液体金属を右手に纏い刃にして高速で斬りかかります。ギガント破壊指令では
不発でしたが人間なら即死モノです」
ティカ「それは楽しみですね」
マハン「あれ、いいんですか?使いますよ柔剣斬刃(ジェル・ブレイド)」
ティカ「ええ、是非使ってください。それではこの仕事の説明をします」
イオナズンのごとくスラスラと面接が進みどうやら掴みはオッケーな予感。
イケそうだと思っているマハンにティカから文字の書かれたタスキが渡された。
「警備の仕事中はこのタスキを掛けていてください」
「このチャモワンというのは何」
「チャモワンはチャモワンですよ。ムエタイです」
その言葉で大体を察する。
「演出に協力しろと」
「そう、いずれ来るであろう乱入者を止めようと私の妹と二人で頑張って下さい。
ああ、手加減とかわざと負ける必要は要りません。相手は『アレ』ですから。今大会は殺しはタブーですから命『だけ』は保障しますよ」
そういいニッコリと微笑むティカ。対するマハンは無表情のまま言葉を返す。
「報酬さえもらえるなら問題ない、そういう仕事は慣れてる。」
「貴方ならやってくれると思いました。採用です」
受け渡されたチャモワンたすきを肩に掛ける。地球側の生贄誕生の瞬間である。
最後に仕事のパートナーとなるハイヌウェレ十七女と一緒に並び写真を取る事になった。
「こうやって、前かがみになってください」
「こ、こう?」
「ハイ、はいぬれ〜」
「はいぬれ〜」
二人で仲良く並んだ写真、何故か白黒で現像された理由については言うまい。
チャモワン
終わり