二度目だな。
オッペンハイムは自身を振り返る。
あれは駆け出しの頃だった。敗色濃い戦争に雇われた時の話だ。俺は・・俺達は捨て駒にされた。
自らの知略を品として商売をしてきた少し変わったフリーの傭兵。「ゲン=ドルベル」の知略によるモノだ。
次々と倒れて行く仲間達。1人。また1人と。捨て駒にされた事を無念に恨みつつ死して行く。
残ったのは、俺とレンヤ(アスパラ太郎)。そして俺達は一つの選択を迫られた。
それはどちらかを犠牲にして。どちらかが生き残る事だ。
執拗な追っ手だったが、今なら闇に紛れ、逃げ延びる事が出来るかも知れない。
だから俺は迷う事無く、犠牲になる事を選んだ。銃弾は潰えまともに戦う事が出来なかったからだ。
しかし「自爆」する事は出来た。
俺が追っ手をギリギリまで引き寄せ。追っ手もろとも自爆をする事。
そうすれば全て事が足りたンだったよなあ。
だが俺は自爆する事は無かった。
追っ手にギリギリまで追い詰められたその時。
操兵を走らせハァハァ息を切らしながら、現れた男が居たからだ。
それが『レンヤ(アスパラ太郎)』だった。
レンヤ(アスパラ太郎)がこう言う。
「ふざけんじゃねぇぞ、オッペンハイム(ニッポンハム)!」
「何がどっちも生きる術(すべ)だ。ドカンと爆発してハイ終わりって話じゃねぇだろ!!」
「俺達2人が生き残って初めて意味があるんだよ!!」
そして、レンヤ(アスパラ太郎)がこう言い放つ。
「おーし『あれ』やるぞ、オッペンハイム(ニッポンハム)!!」
「 『 “ 一 死 合 ”ッ ! ! ! 』 」
俺はこう応える。
「 『 “ 完 全 燃 焼 ” ッ ! ! ! 』 」
そうして俺とレンヤ(アスパラ太郎)は生き残った。
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・・・・
○クロガネの賛歌 毘沙門外伝 ー 黒衣の粛清者 D ー
最 終 話 「 傭 兵 達 の 挽 歌 」
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そして今回・・止める者無く、俺は「自爆」を決行した。
ッ
ッ
!
〜”〜 〜 〜 〜”〜” ツ”ッツ ッツ ッ ツ
ッ”ツ”ッ” ツッ ツ ッ” 〜” 〜” 〜 〜 〜 〜” ツ” ッ” ツ ッ ツ
ッ”ツ”ツ”〜〜〜〜”ツ”ツ”ッツッツ ッ ッ ッ ツ ツ 〜〜 〜 〜 ツ ッッッッ”ツ”ツ”ツ”ツ”ツ”
ツ”ッ”ッ”ッ”ッ〜〜〜ッッッッ”〜”〜”〜〜〜〜 ツ ツ ツ ツ ツ” ツ” 〜” 〜”〜〜〜 〜 ッ ッ ! ! !
ッ
ッ
!
ニセ妖爪鬼は自壊を開始する。
爆ぜる。爆ぜる。爆ぜる。
損傷がかさみ、ダルマとなった、ニセ妖爪鬼のあちこちが爆発する・・!!
自壊は確実に順調。
しかし、その『確実に順調な“自壊”』にオッペンハイムは舌を巻いた。
「チッ!大きな爆発がこねぇ!!」
「これじゃ、ただ自壊するだけだぜ!!」
それは!余りにもダメージが大き過ぎたと言う事!!
真っ当に機能をしていないニセ妖爪鬼は、自爆と言う大爆発を起こせず!
緩慢(かんまん)な自壊を繰り返すだけであったのだ!!
このままでは、ニセ妖爪鬼のみ爆発し、ニセ妖爪鬼のみが朽ち果てて行くであろう!!
ッ
ッ
嗚 呼 ! 何 と 言 う 悲 劇 ! !
戦 い ! 戦 い ! !
戦 い 抜 い た 男 の 結 末 が ! !
こ ん な モ ノ で 良 い と 言 う の か ! ! ?
ッ
ッ
オッペンハイムはこう吐き捨てるッ!
「良いもクソもなる様にしかならねぇ!!」
そうだ!一切の手は無い!!
残念無念!最早、死を待つのみである!!
おお、さらばよ、オッペンハイム!
死に様こそ下手こいたが、お前もまた強敵(とも)であった!!
だ
が
!
「・・ッ!!・・・〜〜〜〜ッ!!」
オッペンハイムは耳にする!!
「オッペンハイム殿・・・!」
「・・オッペンハイム様。」
「オッペンハイム様。」
「オッペンハイムさん・・。」
それは!仲間達のその声!!
「逃げろ、オッペンハイム・・・!!」
「逃げて、オッペンハイム様・・・!!」
「「今ならまだ、間に合うハズだ・・・ッ!!」」
あの日あの時!!
レンヤ(アスパラ太郎)が現れた時のような・・!!
確かなその声が聞こえて来る!!
ッ
ッ
「 『 “ 傭 兵 魂 ” ッ ! ! ! 』 」
そうだ!傭兵魂だ!はした金の為に、恨みもねえ奴を殺して!殺されて!!
そういうどうしようもねえ生業よ!だがな!!
それだけに一瞬が濃く!生きるって事に殊更(ことさら)『しぶとい』ンだよ!!
カチカチッカチィ(オッペンハイムは脱出装置を起動させる!!)
・・・・ッッ!!(しかし!脱出装置は起動しない!!)
ならば!!このまま自壊を続けるのみかァー!!?
否
ァ
!
P@ッ P@ッ (オッペンハイムはコックピットのロックを外す。)
ガ チ ャ ! (そしてコクピットのドアを開く。)
「中に居れば確実に死ぬな。」
「飛び降りても五体満足じゃいられねぇ。動けないトコロを爆発に巻き込まれてお陀仏だろうよ。」
だ
が
!
「うおおおお!死なばもろともぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
ガァン!ガァン!(オッペンハイムは銃でドアの繋ぎ目を破壊する!!)
ガシ!ギギギ!!(そして、ドアを抱えこう言う。)
「 今 年 一 番 の 波 が 来 る ぜ ぇ ー っ ! ! 」
ドゥン!ドゥン!(仰向けに倒れ自壊を続ける、ダルマのニセ妖爪鬼を前に!!)
ゴゴゴゴゴゴゴ!(オッペンハイムはドアをサーフィンボード代わりにし!!)
ドォオオオオン!(来るべき“爆発”を『大波』に見立て『滑空』して脱出する道を選んだのだ!!)
そ し て、 来 る べ く “ 爆 発 ”が 今、 巻 き 起 こ る ! !
「 ぬ お お お お お お お お お お お ! ! ! ! 」
ッ
ッ
!
ズ”ォ オ ン ズ”オ” ズ”オズ オズ オ オ
オ”オ”ッ” ツッ ツ ッ” 〜” 〜” 〜 〜 〜 〜” ド” ッ” ド ッ ド
ザ”ッ”ザ”〜〜〜〜”ド”ド”ドドドド ザ ザ ザ ザ ザ 〜〜 〜 〜 ド ッッッッ”ツ”ツ”ツ”ツ”ツ”
ザ”ッ”ッ”ッ”ッ〜〜〜ッッッッ”〜”〜”〜〜〜〜 ザ ザ ザ ザ ザ” ザ” 〜” 〜”〜〜〜 〜 ッ ッ ! ! !
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そ し て ・ ・ ・ 。
・・・・
Pi・・・。
Pi・・・。
Pi・・・。
Pi・・・。
電子音が鳴り響くこの部屋。
あれから・・・。
どれ位の時が流れただろうか。
俺は医務室と思わしきベッドに横たわっていた。
体のあちこちが痛ぇ。そりゃそうだ。傘でも広げて高層ビルから飛び降りたよう事したからな。
だが、幸運な事に四肢の欠損は無いみてぇだ。
かすかな記憶だが、あの黒づくめのデッカイのが俺を助けた気がする。
抱き抱えて。衝撃を和らげて・・・。
・・・。なんでかな・・・?
考えたトコロで解る訳ねぇか。
ガチャ。
誰か入って来た。
「「オッペンハイム様!!」」
アセトとヘラ。
「心配をしたぞ、オッペンハイム殿。」
オーデッドと。
「ひっく・・・いっぐ・・・。」
泣きべそかいてるロビーだ。
「様付けは・・・イテテ・・・。」
あご痛ぇや、ちくしょう。
喋る事すらままならねぇ。
オマケにわいのわいのと色々聞いてきてウルセェ!!?
「まず落ち付け。喋ろうたって口が追いつかねぇーよ。」
「それよか聞かせろ。あのデッカイのはどうしたンだ?」
俺は一番気になっていたその事を聞いた。
そして話を聞くにこうだ。
半壊及び全壊をした機体群の中。
アイツを太くこう言い放ったんだとさ。
「敵ながらあっぱれな男よ。」
「次会う時はこうは行かぬぞ。」
その二言だ。
その二言だけを残して去って行ったんだとよ。
解るよーな解らねぇような。
・・・だが。
納得は出来た。理屈じゃあねぇんだよなあ。
そして俺は「仲間達」にこう言う。
「成程、よく解った。ってか体のあちこちが痛くて堪らねぇ。」
「来たトコ悪いが、もうしばらく寝させてくれや。」
俺はそう言い、再び寝入った。
ーーーーーー
ー 『 完 』 ー