彼の名は


調理場の音が止んだ。

爆音!?追憶は妨げられた。

そして、ただ者ではない気を秘めた何者かが部屋へとやってくる。

期待と、不安と・・・   眼前に現れるのは師匠なのか。それとも・・・?


しかし、そんな疑念は、より疑うべき記憶に払拭された。

テッシンは自分が撃墜された瞬間のことを思い出した。

あの衝撃と、そして何よりも爆音。

爆発に巻き込まれたならば、如何に鍛えていようとそのようなものを意識する筈がない・・・?




鴨居を越え部屋に入ってきたのは白い服を着た青年であった。

「天下第一菜。4千年の歴史が生み出したこの料理、捕虜に出すには少しもったいないアル」

捕虜・・・?  私は生きている・・・?



あんを纏った野菜炒めと、そして、今ならわかる。 干した米を油で揚げた鍋巴。


なんの偶然か。はたまたそこには秘められた悪意があるのか。

あの少年は今、老人に − 疑うことを知る一人の大人であったが、同時に肝も据わった一人の武道家であった。


決心するとテッシンは重い口をあけた。


「頂きます。   ・・・   我が名はテッシン。  そなたは?」



「私の名は白鳳。白華鳳凰拳当主・李白鳳。  アムステラのパイロット、テッシン殿に伺いたいことがある。」


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