怪盗ミルット 最終話 『ミルット対偽ミルット!』
(前回までのあらすじ)
政権交代こそが最大の景気回復策と信じたミルットは、ギガン党党首にして
現総理の百文字に勝負を挑み彼のハンドレッドマニフェストを破壊する。
その帰り道、今まで中立の立場だったヘンリーが突如立ちふさがった。
彼の正体はグラップラーポリスの潜入捜査官だったのだ。
今までずっと百文字総理の不正暴露の為に自分が利用されたと知りヘンリーと
最後の勝負をするミルット。ミルットとヘンリー、お互いの全てを知るが為
この勝負は決着がつかないかに思えた。だがわいせつ罪の刑期を全うしシャバに
戻ってきたカーフィル=レイスの援護によりミルットはヘンリーを退ける。
その後怪傑ミルットはいずこかへと姿を消し、サーメットは本人の知らぬ所で
ミルットと同一人物であると勝手に確信されていた。
ここは喫茶店兼ゲームショップチカーロ。閉店後の店内で店長のチカーロと
店員達が一枚のビラを机に広げ眺めていた。
「カラクリシティ・第16回三狩リア(サンガリア)大会。この大会に出て優秀な成績を
納めればこの店も大繁盛間違いないわ」
「俺達で挑めば楽勝ォ!ヒヒヒッ、大会参加者達が俺達の手の上で踊る様ァ、
サイッコウの快感が生まれるだろうぜぇ!」
【三狩リア】
年に一度行われているグラップラー達の戦いの祭典。
グラップラー同士の私闘は現在法律で禁じられており、この大会は彼らにとって
貴重なガス抜きの機会となっている。
(もちろん法律を無視して暴れる奴も、逆に戦いを嫌い大会に参加しないグラップラーも
一部には存在する)
その名の通り三対三での乱戦方式となっているが1チームに付き最大5人まで
登録可能であり、対戦ごとに参戦する3人は自由に入れ替えられるが勝負中の
入れ替えは認められていない。
「あのチカーロ様、やっぱり私も行かなきゃならないですか?ヘブン状態っ」
もじもじしているサーメットの膝に拳銃型ライターがファイアーされる。
「当然よ。アクート君とゲッツアーだけじゃあ対応しきれない所もあるからねえ。
あんたもそろそろ喫茶店の一員として必要なスキルは得ているはずよ」
「わ、わかりまひた。でましゅ〜。というか今回は断る気なかったんですけど」
「じゃあ焼かれたくて戸惑ったフリしてたの?」
「はい!!!!!!」
ライターで炙られた膝をさすりながら恍惚の表情で了承するサーメット。
グラップラー関連ではこれまで大抵ロクな目に会ってこなかったので尻ごみ
していたのだが、思い返してみれば今自分が仕事を続けていられるのもその
グラップラー達のおかげなのである。
特に怪傑ミルットという名のグラップラー、直接会ってはいないのだが
クビの危機の度に彼女の名前が挙がり、そして結果的に彼女に助けられてきた。
怪傑ミルットはイベントとグラップラーに惹かれ出現するという。
この大会に行けば会えるのではないか、そう考えたサーメットはこれに行かないはずは
無かった。
大会当日、カラクリシティの会場は今年も満員。グラップラー同士の戦いを安全な
場所から見たいと言う一般人、三人のメンバーを集められず今年は見学と応援だけの
グラップラー達、なんかブームっぽいので恋人同伴で見に来たリア充ども、
そしてグラップラー発掘の為に目を光らせるグラップラー営利団体のお偉いさん。
「皆さんお待たせ致しました!」
会場中央、マイクを持った青年に老若男女の視線が集まる。
「本年度大会の司会役、ヘンリー=ウィリアム=クレイトンです。これより
全選手の入場式を行いますので拍手お願いしたします」
読者の皆様ご存じヘンリー。怪傑ミルット全話に登場しその度に肩書の変わる謎の
男だったがグラップラーポリスの潜入捜査官だと判明したのは記憶に新しい。
(怪傑ミルット第19話『風を斬る者、その正体』参照)
「全選手入場!」
鳴り響く拍手の音、最初に現れたのは警察官の服を着たグラップラーポリスのチーム。
「まずは我らが正義の集団、グラップラーポリス隊!
今年はリヒャルト警部が率いる精鋭五人が民間のグラップラーに立ち向かう!
プロフェッショナルの威厳を見せつけられるのでしょうか?」
リヒャルト警部は射撃テストでいつもダミーの的ごと撃ってしまうので
未だC級グラップラー待遇の給料であるがその破壊力はS級に匹敵する。
ミルットがあの第14話『グラップルギルティ』における一騎打ちで
彼に勝てたのは単純に運が良かった事と周りの建物のせいでリヒャルトが本気を
出せなかった事にある。
今回の大会では観客席はバリアーに守られておりリヒャルトを阻むものは何も無い。
「続きましてチーム老人会!今大会断トツ最年長平均年齢のグラップラー達、
何やら皆もよく知るあの人もいますが今回は贔屓一切なし!一選手として対応致します!」
シワと加齢臭の目立つ熟練のグラップラー5人が歩を進める。
その先頭を歩く巨漢の男は日本国元総理大臣百文字その人だった。
第18話『ギガン党破壊指令』にて自らの百のマニフェストがミルットによって
完膚なきまでに破壊され政界を去った彼だったがどうやら案外元気だったみたいだ。
元プロレスラーである彼にはやはり背広よりもリングコスチュームが良く似合う。
「カラクリオーチーム、規定人数下限の3名での出場ですが何気に今回の
下馬評では本命との声もあるバランスチームです。
荒沢シン君には僕と立ち位置変わって欲しい」
カラクリオーチームの荒沢シンが入場すると拍手を押しのけ女子の声援が飛ぶ。
第6話『ミルットパワー不発!?最大の危機』でミルットの痴女力を相殺した
彼のラッキースケベパワーは健在。対戦相手は実力勝負以前にまずはこの力に
耐えなければならないだろう。
「ガンダーラ一行、ガンダーラ青年とその愛人たちというそのまんまのチーム!」
第2話『ガンダーラ教の聖女』ではカードゲームが上手いだけのニートだった
ガンダーラがミルットに敗れる事によって得た後天性グラップラーとして蘇った。
第10話『帰って来たデュエルキング』でも全が未知数だった彼の真の力は一体
どの様なものだろうか。
「セクハラ魔王カーフィル率いるチーム爆炎の申し子!大会中も性犯罪は禁止、
カーフィル氏が暴走しだい失格となり得るのがこのチームの問題点ですね」
第3話『砂漠の暴虐王』ラストでミルットに負けじと全裸になって見せて、
なぜか自分だけ逮捕される羽目になったカーフィル。しかしよく考えると
作中唯一ミルットが全く読む事が出来なかった相手でもある。
果たしてこのチーム戦ではどう動くのか、やっぱり女を脱がすのか。
「技巧派5人組サンキスト一家に続いては七組目イケテル怪盗倶楽部!
怪盗ロビン、一体何者なんだ―!?」
第16話『怪傑×怪盗』にてミルットと共闘した義賊ロビン、作中では
正体不明とされているがバレバレだ。でも言わないであげるのが優しさ。
「最後を飾るは今や有名喫茶店!僕も週二で通っているチカーロの面々です、
もちろん看板娘のサーメットさんも参戦しています!」
喫茶店チカーロのカンバンを前後に貼り付けたサンドイッチマン状態で入場して来た
サーメットに一斉に浴びせられるミルットコール。
やっぱり、何か知らない内にミルットの正体が自分と言う事になっていた。
それはまあ予想内なのだが―、
(この大会ミルット絶対出ると思ったけれどそんな事無かった、ショック!)
全8チームどこを見てもミルットはいない。これでは自分とミルットが同時に存在し
同一性を否定するという目的が達成できない。
「ミールット、ミールット!」
「ミールット、ミールット!」
「ほら、あんたに声援送られてるわよ。手ぐらい振っておきなさいな」
「私怪傑ミルットじゃないです。というかミルットがどんな格好かも知らないんです」
「これまでの状況証拠の全部が同一人物だって示してるんだ。諦めなミルちゃん」
「身内にも信じてもらえない!逆に快感かも!」
サーメットは覚悟を決めた。こーなったらサーメット=ミルノートとして
この大会で大活躍してやる。怪傑ミルットがいかなる痴女かは知った事じゃねー。
だが第12話『バーサーカーサーメット』でグラップラーとして目覚めた自分、
そしてやはりグラップラーだったチカーロ達、そしていつも裏口で残飯を漁っていた
腐れ縁のG、皆と一緒に精いっぱいのサーメットを見せつけてやる。
そして、怪傑ミルットの記憶をサーメット=ミルノートで塗りつぶしてやる。
「皆さん電光掲示板をご覧ください!こちらが対戦表です!
メンバー一覧と共にご覧ください!」
『第一試合 グラップラーポリス隊対ビッグボンバーズ』
・グラップラーポリス隊
リヒャルト=クラウス(改造グラップラー・シューター)
レンヤ(グラップラー)
シャルル=ド=サンジェルマン(グラップラー)
ウォルフガング=エイベルシュタイン(グラップラー)
ソニア=アリストン(ランサー)
・ビッグボンバーズ
サンキスト=マスカット(グラップラー)
サンキスト=ハニーレモン(グラップラー)
サンキスト=ストロベリー(グラップラー)
サンキスト=トゥマートゥー(グラップラー)
サンキスト=ピーチアップル(グラップラー)
『第二試合 爆炎の申し子対ガンダーラ一行』
・爆炎の申し子
カーフィル=レイス(マジシャンとグラップラーのハイブリッド)
ガブリエッラ=P=アンジュ(ヒーラー)
フェルディナンド=サルディーニ(セイバー)
ブライアン=バーンズ(シューター)
サンダーボルト=ジョー(グラップラー)
・ガンダーラ一行
ガンダーラ(属性不明)
聖女達(マジシャン×3)
アナンド(デュエリストという名の一般人)
『第三試合イケテル怪盗倶楽部対老人会』
・イケテル怪盗倶楽部
怪盗ロビン(セイバー)
ファントム=オーガ(アサシン)
ブラック小林(グラップラー)
名無しのエリート兵(フミコミスト)
ジークフリート=フォン=ラビット(マスコット)
・老人会
ジ=ハンドレッド(改造グラップラー)
レディ=ミイラ(改造グラップラー?・マシーナリー)
テッシン(校長先生)
美崎歌(体育教師)
アビス=キャベス(グラップラー)
『第4試合カラクリオーチーム対喫茶店チカーロ』
・カラクリオーチーム
荒沢シン(セイバー)
立花槇絵(ギャンブラー)
レオンハルト=ハーディー(シューター)
・喫茶店チカーロ
チカーロ(グラップラー)
アクート(グラップラー)
ゲッツアー(シューター)
ドゥール=ゲバール(ゴキブリ)
サーメット=ミルノート(怪傑ミルット)
組み合わせ決定後の控室、ある者は猛り、ある者は震え、そしてある者というか
主人公は抗議の声を上げていた。
「私だけクラス名が間違ってる!私ミルットじゃないですってば!」
「何を言うか、オヌシが他人だと偽ろうともこのワシの超聴力はごまかせんぞミルットよ」
「このお爺ちゃんボケてるー!カーフィルさん!カーフィルさんは私が
ミルットじゃないって分かりますよね」
「んーむ、ちょっとオマタ開いてくれないとカー兄さんには真偽は分からないなあ」
「コイツに期待した私がバカでした!」
「なあっ、助けてくれよ怪傑ミルット!俺グラップラーでも何でもないんだよ!
フェミリアさんに騙されて連れてこられただけなんだ。いつもの様にミルッと怪傑して
助けてくれよ、バクシーシバクシーシ!」
「黙れクソガキ、私は違うって言ってるでしょ」
「ミルット、ちょっと静かにしてなさいな。最初の試合が始まるわよ」
身内にもかばわれずミルット扱いされるサーメットも彼女をミルットと断定し
話しかける強敵(とも)達も礼義よくベンチに腰掛け室内のテレビで
『グラップラーポリス隊対ビッグボンバーズ』の戦いの始まりを見る事にする。
「さあ間もなく第一試合開始の予定時刻となりますが…、控室を出たはずの
ビッグボンバーズが到着しません!これはどういう事でしょうか?」
「ひゅーほほほ!ひゅーほほほほ!」
「こ、この声は!」
ヘンリーは知っている、否彼だけではない。百文字がカーフィルがシンが
怪盗ロビンが、サーメット以外の全員がこの声を知っている。
「サンキスト一家の今年の運命はあけお○こで大凶よん!ミルット登場ミルット解決!」
上空から血まみれのサンキストのマスクが舞い落ちてその直後5つの影が
会場に着地する。
「グラップラーポリス達の相手はこのミルット軍団がやってあげるわ!」
「ゲェーつ、これは大ハプニングです。第一試合はグラップラーポリス隊と
ミルット軍団に変更となりました!!」
・ミルット軍団
怪傑ミルット(改造グラップラー・マシーナリー)
狩村宗茂(ライダー)
スコット=ランドー(グラップラー)
ミステリアスパートナー1号
ミステリアスパートナー2号
怪傑ミルット登場&参戦に大いに沸く選手と観客。
が、しばらくして重大な矛盾に全員が気付く。
(あれ?ミルットって喫茶店チカーロのサーメットだよね?)
そう、ミルットは既にこの大会に参加しているではないか。
控室カメラに映るサーメットと目の前のミルットを交互に確認する人々。
「全くわからん!ラーメンマンとラーメンマンランボーのごとく瓜二つだ」
「一体どっちが本物のミルットなんだ!?」
「全然似てないじゃないか!お前らいいかげんにしろっ!」
サーメットの怒りが有頂天だ!!
怪傑ミルット・完!
あとがき
というわけで怪傑ミルットはこれにて全20話で終了。
1峠のイナヅマ
2ガンダーラ教の聖女
3砂漠の暴虐王
4オブジダン・ド・ミテモ・メガドラ
5101匹はいぬれちゃん
6ミルットパワー不発!?最大の危機
7G退治大作戦
8これがボルティ殺法だ!ホワッチャホワッチャホウワッチャー!
9大羅ブレイク工業ミルットカッターDA DA DA!
10帰ってきたデュエルキング
11ゴーリキーの通信進化
12バーサーカーサーメット
13オロチとフジミヤのアホの子大決戦
14グラップルギルティ
15再萌えトーナメント
16怪傑×怪盗
17ファ〜〜 ファ? ファ〜〜〜〜〜〜
18ギガン党破壊指令
19風を斬る者・その正体
20(最終話)ミルット対偽ミルット!
うーみゅ、振り返って見ると3〜19話までがあっという間でどんな内容だったか
イマイチ思い出せない。
でも私の個人的ベスト回は第12話ですね。(皆さんのベスト回は何話目かな?)
今までオープニングとエンティングしか登場していなかったサーメットが
ついにメインを張り文字通り主役の座をゲットした回です。
それ以降ミルットと同等以上に活躍させてきたけれど最終話では結局また
サーメットはミルットに振り回されてますね。うまくいかないものだ。
ではまた次回作がありましたらそれでお会いしましょう〜。