紅の幻影と紺の旋風〜その3〜



〜アイルランド上空〜

「さぁてと・・・そろそろステルスを解除して、いっちょ仕掛けるか! 俺は先行して、あのヒコーキ野郎を誘き出す。イェン、ルカス。おめーらはココでとんがり帽子が来るのを待ちな!」
「ですが、お一人で大丈夫ですか?」
「なぁに、何とかなるさぁ。第一、あのヒコーキ野郎は紫艶蝶よりも速いんだぜ?! その速度に対抗するにゃ、俺の禍風しか無ぇだろうが」
「そりゃそうねぇ。じゃ、アタシはとんがり帽子を料理させて貰うわ。ルカス〜、後詰め宜しくね♪」
「了解、です」


〜アイルランド軍基地〜

「・・・っ! 未確認飛行物体を3機発見しました! 1機はマッハ3に近い速度でイギリス方面へ侵攻中! 残り2機は待機中?! 監視衛星からの映像、出ます!」
「なっ・・・『紫の蝶』の同型機か?! 仕様はやや違う様だが。もう1機は・・・雲の中か? 視認出来んな・・・」
「現在、上空の2機には迎撃部隊を出しました。フェルグスも出撃準備中です。侵攻中の1機に関しては、イギリス空軍のウインドスラッシャーに迎撃を依頼しています」
「良かろう。フェルグスの発進を急がせろ」


〜アイルランド上空〜

「迎撃部隊が来た様ですね・・・戦闘機が5機ずつ、3方向から接近中」
「・・・アタシ、弱い者イジメは嫌いなんだけどなぁ〜」
「自分もですよ。彼らには、早々にお引き取り願いましょうか」


「アンディ隊は12時の方向、ベティ隊は4時の方向、チャーリー隊は8時の方向から目標を包囲せよ! 接近してクラスターミサイルを使う!」
「了か・・・うぁあっ!」
「どうした?!」
「B−1、C−5が後方からの高出力ビーム砲らしきもので撃墜されました!」
「何っ? 二方向からだと?! どちらの方向にも敵影は無いぞ!」
「B−2、C−3も撃墜されました! 雲中の敵機に高熱源体反応有り! そこからの砲撃と思われます!」
「馬鹿な! あの位置からベティ隊やチャーリー隊の後方を撃てる訳が無い!」
「B−4とC−2、撃墜されました! 熱源反応は雲中の敵機から発生しています!」
「クラスターミサイル発射! 奴等を逃がすな!」

残った9機の戦闘機からミサイルが発射され、その弾頭が分離して小爆発の網を張る。だが、紅色の機体はいち早く回避機動を取って全くの無傷。
そして、爆風で雲が千切れた後には・・・脚の無い異形の大型機が陣取っていた。

「あの大型を集中砲火! ホーミングミサイルとレーザーキャノンで仕留める!」

明らかに動きが速い紅色の機体を避け、確実に1機は仕留めようという作戦。しかし・・・

「ミサイルが敵機の手前で離脱・自爆しています!」「レーザーキャノンも命中はして居ますが、威力減退?! 効果が無い様です!」
「敵機の周囲に多数の浮遊物あり! あれが攻撃を妨害している模様です!」
「B−5、C−4が撃墜されました! 敵機は・・・複数の反射板で高出力ビームの攻撃方向を変えている模様!」
「リフレクトビーム、だと・・・」
「ベティ隊、チャーリー隊全滅! ・・・ッ! 紅色が前方より高速接近中!!」

アンディ隊の5機は、紅色の影を曳きつつ接近する機体に向かってレーザーとミサイルを発射する。しかし突然、その機体が視界から消える。
次の瞬間。アンディ隊のパイロット達は共通回線で入って来た若い娘の声を、自機の翼やエンジンが切り裂かれる音と共に聞く羽目になる。

「雑魚に用は無いからさ。気を付けて帰んな」


「これで、おそーじ終わりっと。後は本命を待つだけね」
「・・・んっ、来た様です。高速で上昇中の機体が1機・・・この動きは飛行機じゃあ無いですね」
「よしよしっ! じゃ、アタシが仕掛けるから。ルカス、邪魔はしないでよね」
「ご心配無く。どのみち、高速機動を取られたら危なくて狙えませんよ」


上空の敵機に向かって上昇するフェルグス。そこへ突然、共通回線からの通信が入る。
どうやら今、こちらへ移動している紅色の機体からの通信の様だ。もう一機の大型は、その場で待機したままである。

「こちら、忌影のイェン・マイザー。そこのとんがり帽子、聞こえてるか?!」
「・・・こちら、シンシア。フェルグスのシンシア。聞こえて居る」
「上等。もう、邪魔者は居ないから。安心して全力で来な・・・でないと、死ぬよ?!」
「!!」

そのイェンの言葉が終わった瞬間! 忌影は紅色の残像を曳き、フェルグスの周囲を包囲した!

Shadow Move
残影機動

すかさずフェルグスの両肩から40連装ミサイル・ルシフェルが発射される。全方位をカバー出来る厚い弾幕は、ただ1機を撃墜するのに使うのは大袈裟な攻撃なのだが・・・何事にも例外というものはある。

「『全力で来い』と、言ったはずだぁっ!!」

忌影も迎撃のミサイルを発射。ルシフェルの1/4程度の弾幕しか無いが、ルシフェルの弾幕に突破口を開ける程度ならば充分。
爆煙を突き抜けた紅色の影がフェルグスに肉薄したその時。フェルグスもその切り札を発動させる。

 Air Dance
空中舞踏

紺色の旋風が、紅色の影を迎え撃つ!

魔剣の騎士vs紅の毒蛾の激闘が始まった。この勝負は一体、どうなるのか?!
そして。遙か彼方の禍風と、それを迎撃するウインドスラッシャーの勝敗の行方は?!


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