人は『感情』が故に生きている。
愛する事。憎む事。優しい言葉を語りかける事。時には厳しい言葉を投げかける事。
それら全ては『感情の起伏』によるモノだ。起伏が故に、良い時もあれば悪い時もある。
ムシの居所が悪い時の判断を、全てにしちゃあいけない。大抵は誤解だ。悪い時に良い判断をするのは難しい。
もっとも、誤解も続けば真実など耳に届かぬ『怨念』へと変貌するだろうが・・・。
怨念。人はそれ故に悲しい。
怨念。それ故に人は『修羅』にならざるを得ない時がある。
『 怨 念 』
人はそれ故に・・・。
コマンタレヴ・ラプソティ
第3話「一方的なチート(ワンサイド)」
・・・・・
甲高い声であった。
積み重ねた年齢。歯に衣を着させぬ抑揚。
心の裏側まで覗き込まれるような、イヤラシイ響きを持ちながら、それで居て『ノーブル』。
上品な声質が嫌味ったらしさを際立たせ、「クソ喰らえ」を「ウンコ召し上がれ」と言い換えるような相手を小馬鹿する耳心地を与える。
耐撃の百文字は・・・。
「・・・・・。」
微動たりしない。
甲高い声は・・・。
「サ ヴァ(ハァーイ)」更に響き渡る。
「お黙りになられているな。テュー(君は)」
心の裏側まで覗き込まれるような、イヤラシイ響きと。
「お小水でもご放水なさいたいのを、おあずけになられているのですか?ヴー(あなたは)」
相手を小馬鹿する耳心地を与えながら。
ー バルルルルル ル ル ル ル ゥルルル ゥゥ ウ ウ ウ
プロペラ音。
ー ・・・・・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ 。
現れぬ実体。
ガァァ ァ ァ アアア ア ア ア ア ア アアアア ン ッ ッッ ッ ! ! ! !! !
銃 声 が響き 渡 っ た ッ ッ ! !
・・・・・
ズゥドォ・・・ゥ!
ギガントの右大腿部に。
メェ・・リィ!
銃弾がめり込んだな。
ギラ・・ッ!
我がモノ顔でもするかのように、黒光りをしている。
ギガント!
だが問題は無い。
グギャォォオオオー!!
その身を包むは『超鋼鉄』。
フ・・ッ!
そうそうとブチ破れるモノでは無い。
バルルルルル ル ル
プロペラ音と
フホホホホホホホホホホホォ〜〜〜〜ゥ!!
あの甲高い声のみが響き渡る。
・・・・。
見えぬ『敵』と言う訳か。
ガガガッ!ピィッッ!!
先から視界がオカシイ。
妨害電波の一種か?どうやら、あらゆる機械の視界を妨害するようだ。
フッ・・・ッ!
面白い・・!
ー 耐撃の百文字は笑みを浮かべた。
・・・・・
耐撃の百文字は笑みを浮かべた。
百文字は感動の無い男だ。
百文字は復讐しか持たぬ男。
ー 故に笑みを浮かべる。
それは不可解な銃弾(ガン)。
それは理不尽な圧倒(プレス)。
それは一方的なチート(ワンサイド)。
ー 利かない視界。
ー 耳も『何かオカシイ。』
まるで『 鎖 』で繋がれてる よ う だ 。
まるで『 檻 の 中 』に閉じ込められて い る よ う だ 。
ー 復 讐 だ ・ ・ ・ ッッ!!!
復讐。
その甘美な思考に笑みが零れるのだ。
ー 解 き 放 つ の だ ・・・・ 本 日 こ の 場 で ッ ッ ッ ! ! !
復讐を望み、復讐を糧とする百文字が『笑み』を浮かべるのは余りにも必然、そして然るべき事なのである。
「レスラーへの賛歌その2・・・・。」
ー そして百文字は、静かに呟いた。
・・・・・
「耳にした事があるハズですよ、テュー(君も)」
ー ズゥドォ・・・ゥ!
ー ギガントの右上腕部に着弾するッ!
「レゼルヴェ国にその人ありと言われた者の名をね、ヴー(あなたは)」
ー ズゥバァ・・・ッ!
ー ギガントの左足爪先に着弾するッ!
「プロペラ音と共に現れ、プロペラ音と共に去るその男の名をですよ、トワッッ(あなたは!!)」
ー ガァズゥ・・・ン!
ー ギガントの首、中央に着弾するッ!
「 『 ヴァルル
・ボンヴジュターヌ 』だよ。ジュー(私がさ) 」
ー ギィズシュ・・・ン!
ー ギガントの胸部に着弾するも、ぶ厚い装甲に弾かれるッ!
「レゼルヴェ国最強ロボ・『アロンズィS06』を駆る気高き、シュヴァリエ(騎士だよ)」
ー ゴォキィ・・・ン!
ー 卑猥にもギガントの股間に銃撃するも、その装甲が銃弾を弾いたッ!
「ぶ厚い装甲がご自慢のようだね、そのシュヴァル(「『愛馬(=機体)』は)」
ー ギィシャ・・・ン!
ー ギガントの左拳に着弾したが、さして効果は無かったッ!
「しかし設計思想に決定的な過ちがあるようだ、ムッシュ(『ミスター(=パイロッツ)』)」
ー カシャン・・ッ!
ー 姿無き『アロンズィS06』は。
ー 姿無き『ヴァルル・ボンヴジュターヌ』の手によりて、
ー 姿無き『ライフル銃』を、
機体(ギガント)左肩部の『耐撃の百文字』に 照 準 を 定めた ・・・・ ッ ッ ! ! !
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「丸見えじゃあないですか・・・。
あなたには『トランクスを履く』と言う習慣は無いのですか?
いいや・・・。もしやノーパン健康法を旨とすると言うのかね、アタンスィオン!(危険だなァー君はッッ!!)」
「お馬鹿さん・・。何ともお馬鹿さんですなァー、デガァァァアアアアアーーーージュ!!(もう、信じられない最ッッ低ッッッ!!!)」
「お死んで頂きましょう。その黒いコーディネートが気に入りませんしね。
『黒い』って事は、奴隷の歴史じゃあないですか。
股間のソレを慰める事だけを娯楽として、我等に従っていれば良いんだよ、ヌ ム トゥシェ パァァァァアアアアーッッ!!(きっったねぇぇええええええ!!!)」
ド ド ド ド ド ドドドド ドドド ドド ド ド ド ド ド ド ド ド
「そして・・。君が先に何をしたかって思うとねぇ・・・?
英雄気取る気でございますか?
ジャンヌダルクを気取ろうって言うなら、黒いの扇動しているって事実に我々の歴史対する侮辱を感じるよ、メェェェルド!(クソがァァァアアーーーッッ!!)」
「お前の命はあと3秒だよ、デュ ポール・・・ッ!(豚が・・・ッ!)」
ー 3(トロワ)
ー 2(ドゥー)
ー 1(アン)
「 『 オ ・ ル ヴ ォ ワ ー ル ( サ ヨ ナ ラ だ 、 ク ソ が ァァアアアアアーーーーーッ ッ ! ! ! )
』 」
ガァァ ァ ァ アアア ア ア ア ア ア アアア ア ン ッ ッ ッ ッ ! ! ! !
そして、銃 声 が響き 渡 っ た ッ ッ ! !
・・・・・
先から耳が『何かオカシくてな』。
プロペラ音。甲高い声。街のざわめき。
この場にある『ありとあらゆる 音 』に交じって・・・。
『 音 一 つ。 』
ー それは、プロペラと共にする音じゃない。
ー それは、声と共に出る音じゃない。
ー それは、銃音と共に鳴る音じゃない。
「『 白 き 人 よ ッ ! ! ! 』」
「『 貴様も 賛 歌 せよッッ!!
虎仮面との死闘繰り広げたッ! 爆 弾 小 僧 へ と 捧 ぐ る この 技 を ッッ ! ! 』 」
「 『 ギ ガ ン ト ォォォォオオオ オ オ オ オ オ オオオオオオ ー ー ーー ー ー ! ! ! ! 』 」
ー ダ” イ” ナ” マ” イ” ト”
28号は異音にて答えるッ!
ガァァ ァ ァ アアア ア ア ア ア ア アアア ア ン ッ ッ ッ ッ ! ! ! !
鳴り響く『 銃 声 』と同時にッッ!!
ー コーナーポストよりッ!
ー 飛び上がりて、落下ッッ!!
ー その額、地に向け、倒者に打ち据えるが事を『完遂』とすッッ!
額と額。
火花飛び散らんが如くにブチ当てる事にて、『スーパー・ダイビング・ヘッド・バット』と相成るが・・・ッ!
「 『 こ の度 は 特 別 だ ッ ! 』 」
ー ギガントよ!
ー 銃声と共に、『ワシをブン投げるのだ!』
ー その時はヤツは動けない。 狙 い は ッ ッ ! ! !
ー ソ ” コ ” ォ オオオオオ オ オ オ オ オ オ オ ー ー ー ーーーー ッッ ッ ! ! !
28号は 雄 叫 び 投 げ た ッ ッ ! !
・・・・・
ー 解るハズが無かった。
ー 解る訳が無いのだ。
全6機からなる、この『超ステルス銃撃機・アロンズィS06』!!
超ステルス仕様の、この『アロンズィS06』は、
自機の前後の風景を自機のボディに投影する事により、その場に居ないように見せかける事のできる超ステルス機能を持つ銃撃戦闘機だ。
加えるに『プロペラシステム』。
銃撃をしない機体がプロペラ音を出す事により、銃撃する『アロンズィS06をカモフラージュッ!』
そして、それ自体が妨害電波発生機と化し、レーダーからも姿を消す事を可能とする優れモノだ。
極めつけは『リモートコントロール形式』。
妨害電波の中を、リモートコントロール出来るなんて思いもしないだろう。
独自の識別コードを持つ電波と言うヤツだ。それ故にコントロールを可能とする。
付け加えうるに・・・。
市街戦、街中で戦闘する事を旨とする為、操者を攻撃する事は『100%不可能。』
寂しい荒野で、一人操縦するのならまだしも。人と人とが入り混じっている中から、特定した一人を探し出すと言う事は、私は不可能と言いきれる。
ましてや対巨大機体を想定しているのだ。
そう・・・。
この『超ステルス銃撃機・アロンズィS06』を破る事なんて、『絶対に不可能』と言い切れるのだ。
もし・・・。
それを可能と仮説するならば・・。
コントロール機が放つ機械音。携帯電話のマナーモード程度のこの音を手繰り寄せ・・・。
この音がアロンズィS06と『連動している』と判断する事が出来るのならば『 可 能 かも知れない 。 』
だが、それは・・・。
ゴ ォォ ォォオオ オオオオオオオ オ オオ オ オ オオオオオオ オ オ オ オ オ オー ーー ー ー ッッッ!!!!
『 一 体 どれほど の 聴 力 を 必要と すr・・・・・ッッ!!!!! 』
ド ッ ッ ッ パァ アアア アア ア ア
アアア アア ア ア ア ア ア ン ン ン ! ! ! ! !
ー ヴァルル・ボンヴジュターヌ 男 年齢48
愛機 超ステルス銃撃機・アロンズィS06(全6機からなる、ステルス仕様のリモコンメカ)
・・・ ・ ・ ・ ・ 『 死 亡 ッ ッ ! ! ! ! 』
・・・・・
戦いは終わった。
操者が居ない『アロンズィS06』は、機動を停止。
そのまま自由落下を開始したが、ギガント28号の活躍により、これまた『 被 害 が 0 』。
突如現れた、黒づくめの男と鋼鉄の巨人に黒き人々は皆、 英 雄 視 をした。
そしてそのまま『 ク ー デ タ ー 』。
黒づくめの男・・・。
耐撃の百文字に扇動され、スラム街から外。
レゼルヴェ国が首都・『 コ マ ン タ レ ヴ シ テ ィ 』へと 攻 め 進 め る 。
ー いざいざ行かん、黒 き 衆 ッ ッ ! !
ー 今こそ我等が 世 界 を 統 べ よ う ! !
ー 制 す る この 身 、 それで居て、 ブ ラ ッ ク な り ぃぃぃいいいいーーー ー ー ッ ッ ! ! !
それは正しく『 黒 き 大 波 』。
巨人の導きにて、突き進む『 暗黒の大河(ド・ブラック・リバー) 』で あ っ た 。
ーーーーーー
・・・続く。