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神聖アムステラ帝国軍中尉『ガミジン』
軍に籍を置く者、アムステラと敵対する者、はたまた民間人の間に名を轟かす男。
圧倒的な戦果を誇る、帝国軍きってのエース中のエースである。

しかし、それはあくまでも前線での彼の話。
軍上層部としては、彼は軍規違反に命令違反を繰り返す問題児でしかなく、
彼の上官となったがために胃を痛め、精神を病んだ者も多い。
最早これのせいで彼の戦果もプラスマイナスゼロなのではないか、と言う声すらあがっているほどであった。


「……というわけだ。君には、秘書官として彼をサポートしつつ、出来る限り彼の行動を抑止するよう務めてもらいたい」

そしてついに、帝国軍遊撃部隊所属、ステラ・アージェント少尉へと命令が下された。
仮にも士官学校を卒業した者……
それどころか帝国軍でもかなりの技量を持つ特務部隊隊長への任務としては、どうにも奇妙な話であったが、
生半可な能力の者では、そもそも彼についていくことすらできないのだ。
故に、あらゆる仕事をやってのけると評判の彼女が抜擢されたというわけである。

「せめて始末書程度は提出するように教えてやってくれ」
「ハッ。必ずやご期待に応えてみせます」

期待半分程度に彼女を送り出した将官。
例え中尉本人が何も変わらなくとも、
軍務もこなす彼女が秘書官としてつけば、彼の行く先の指揮官がストレスで破壊されることは無いだろう。
……そう、将官は思っていた。
思っていたのだが……。



「……それで、3日でもう耐えられないというのかね。君は……」

3日後、同じ部屋で将官は少尉と顔を会わせていた。
3日。いくらガミジン中尉が破天荒でも、氷の精神を持つと評判の彼女ならばせめて1ヶ月はとの予測を裏切り、3日。
所詮彼女も人間だったのか、それとも中尉がそこまでどうしようもなかったのか。

「まさか、これほどとは……」

呻く将官。自分の見通しの甘さを情けなく思いつつ、彼女の受けた仕打ちに同情する。
しかし、それでも3日というのは納得がいかず、問うてみた。

「たった3日でそこまで辛い事があったとも思えんのだが……。
 そこまで、彼の秘書官の仕事は辛かったか?」
「……そういうわけではありません」

返ってきたのは否定の言葉。意外に思い、質問を続ける。

「ならば、彼の任務自体についていく事が出来ないということか?」
「……それもありません」

よほどのエースでなければ十分ありえると考えたが、これも違うようだ。

「では何故だね? 何か直接的な理由があるのか?」
「それは……」

どうやら、当たりを引いたようだ。

「理由を教えてもらおうか。このままでは君は、不当に任務を放棄することとなる」
「……いえ……それは……」

何故か口ごもる少尉。
まさか、他人に話せないことなのか……?

「なんなら、相談してみなさい。私が力になろう」

妙に発言がセクハラ臭くなる将官。
その言葉に救いを見出したのか、少尉が美貌に涙を浮かべながら呟く。

「だって」

溢れ出す涙を止めもせずに、彼女は言った。

「だってあの人……」

冷静な彼女とは思えぬ、まるで子供のような言動。
『まさか、それほどまでの仕打ちを?』 思わず身構える将官。
少尉の口から出た言葉は――


「だってあの人、私がネットで注文した限定プリン、全部食べちゃったんですよ!
 3日間楽しみにしてたのに!!ひどいです!!!」


「そんな理由か貴様ァァァァァァァッッッッ!!!!」


その日、アムステラ軍ブラックリストに「ステラ・アージェント少尉」の名前が刻まれたのであった。