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あーるへナーガ! エピローグ


【エピローグ1:オシリス】

予想外、否、予想通りのアクシデントこそあったが、R5の戦闘実験は無事に終了。
今回のデータを元にR5は新たな武装と新たな名を得て実戦投入される事になっている。

だが、マルーにはそんな事どうでもよかった。
今の彼の心を占めるのは突如発生した莫大な借金をどう返済しようかということのみ。
血肉の腐臭に鼻をつまみ、シミュレーション場に飛び散ったサントレッターの部品を回収しながら
マルーは昨日の事を思い出していた。


◇◇◇


「失礼します、ま、マルー入ります・・・んがっ」
「動くと舌とか健康な歯も持っていくぞ、そのまま」
「      ん が ぇ !!   」
「よし、抜けた。見ての通りブラッククロス製の発信機だ。君がこれを知ってようが知ってまいが
それはどちらでもいい」

あの演習の後、幹部会の一人であるダリップに呼び出された彼は突如口の中に手を
突っ込まれ、ぐらついていた歯ごと中の受信機を引っこ抜かれた。
口の中がふわりと軽くなる様な錯覚の後激痛と共に抜けた場所がら赤い血が噴出す。


「あびゅうもるるぼふぉびしゅばあああああ!!!(訳:マルーに何するよ、あ、えっと幹部会の・・・誰か!)」

そして、何も知らないマルーに無残にも以下の内容が告げられた。

「今回の襲撃は君が原因という事になる。よって、業務上過失傷害と共謀の罪が適用されるだろう。
だが、ここは国家ではなくオシリスだ。今回の件については民事に相当する額に多少上乗せしたのを
減給という処分にしておこう。君もその方がいいだろう?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!(訳:口から機械!?マルーが悪い!?何!?口痛い、すっごい痛い!)」
「それとも法的に訴えて実刑を受けたほうがいいのかね?」
「マ、マルーはお給料から引かれる方を選ぶよっ、そ、それと脱脂綿と氷ください!」


寮の自室に戻り、力ずくの抜歯の痛みがひいた頃にちょうど届いた給料明細を見てマルーは失神しそうになった。
払い込みの部分には数千万もの単位の金額、ただしマイナスが頭に付いていた。
そして、その下に書かれた現在のオシリスへの借金総額。
ここへ来たばかりの頃は数百万だったそれに当然のように今回のマイナスが積み重なって数千数百万なり。
さらに加えて、さっきもらった脱脂綿と氷の料金が1000円ずつ請求されていた。
オシリス、恐るべしである。


◇◇◇


「あ、ありのままに昨日起こった事を話すよ。マルーは初めての仕事を終えたら顔のサイズが2倍に借金が22倍になっていた。
催眠術やトイチとかそういうちゃちなもんじゃないもっと恐ろしいものを味わった気分」
「はいはい、口動かす暇あったら頑張って掃除しようね」

横から声を掛けてきたのはマミマミだった。彼女も今回の戦場となった場所の清掃に参加していたのだ。
この様な後片付けは低ランクのパイロットがやるものであるのだが、彼女も今までの給料の殆どを
サントレッターにつぎ込んでいた為仕事を選べない立場なのである。


「マルーも薬莢や灰になった草木の回収の方がいい。この肉片臭いがきつ過ぎるよ。」
「そうじゃないでしょ、この肉片に私もマルー君も感謝しなきゃならないのよ
これがなければペナルティの過失傷害罪が過失致死罪になってたんだから」

言われてみればそうだ。あの戦いでマミマミが生き延びた理由は二つある。
一つはサントレッターはその舞のごとき戦闘方法を実行するにあたり、操縦席を上下させ
重心の位地をずらして戦う機能が採用されていた事。
これによりマミマミは胴体を完全に刺し貫かれる前に頭部に逃げこんでいたのだ。
そして、もう一つが今マルー達が回収しているこの肉片である。

サントレッターにも他のバイオレッター派生同様に一応の人工筋肉が使われていた。
廉価品ゆえに軽量化以外の性能向上は殆ど見込めないものだったが、
槍で胸部を貫通された時これが血糊のごとく飛び散った事で頭部に隠れたマミマミに
気付かれる事なく決着となったのである。

だが、全てがいい方に動いたわけではなかった。破壊された人工筋肉の一部はコクピットへと逆流し、
すなわち彼女が大量の液状化した筋肉の成れの果てを浴びていた事でありー

「マミマミさん、ちょっといい?」

マルーはマミマミの胸元に顔を近づけて鼻を鳴らす。カビの生えたチーズの様な臭いを感じ取り
吐き気が込みあがってくる。

「マミマミさんめっちゃ臭い、この一帯の肉片の臭いと同じかそれ以上よ!」
「こらっ、女性にそんな事いっちゃダメだぞ、テロ・フィナーレ(物理)」

パーンとビンタの音が響き渡り、抜歯したばかりの部分に痛烈な衝撃が走る。

「ポケラルゴォー!!!(訳:テロは英語でフィナーレはイタリア語な気がするよマミマミさーん!)」

熱湯を注がれたかのごとき痛みに襲われたマルーは拾い集めた腐りかけの人工筋肉に
頭からダイブしそのまま意識を失った。

ちゅどかーんと完


ゼダ:あの後アメリカに帰還。ファイアレッターはエネルギー切れ寸前だったものの故障箇所も無くパイロット共に無事。

マルー:マミマミのビンタがトドメとなり全治2週間の口内裂傷。ともあれ彼のO.M.Sとしての人生はこれからだ。

マミッタ:今回の敗北で降格。育成及び監視役の任を解かれ正真正銘のEランク隊長となった。臭いは半月とれなかった。

オシリス幹部ズ:強敵との実戦データによりR5の完成度が一気に高まりホクホク。『ガルガンチュア』完成のめどが立った。




【エピローグ2:ブラッククロス】

「朴のやろう、練習中の事故で右腕肉離れで今季絶望だってぇ!?モノマネのネタにできねえじゃないの!」
「いつまでも現実逃避してないの、ハイ、二ラーシャもリノアもそこ座って。反省会開くよ」

戦闘しか興味が無く作戦は相方や上司にいつも丸投げしているグーチェ。
だが、今日の反省会においては唯一完全にノルマを果たした彼女が一番立場が強い。
対してリノアたちの顔は暗かった。特に二ラーシャに至っては完全にそっぽを向いている。

「んじゃ、まずは問題の少ない方から解決しよっか。リノア、何で相手倒さずに逃走したの?
私ほどじゃないけど、あんたの本気の槍術ならこの星の奴ら相手なら1対2ぐらいなら倒せたんじゃない?」
「無理。使えなくなったビーム兵器を持ったまま戦わなきゃならなかったし、ラクシュミーってやつはともかく
火炎放射するバイオレッターの方はほとんど未知数だったから」

デッドウェイトと化していたビーム武装を捨てれば片方は倒せていたかも知れない。
だが、アムステラの英知が詰まった量産試作武器をオシリスに放り捨ててくるなんてできるはずもなかった。

「あー、そうだったね。リノアは私みたいに好き勝手戦えないんだった。よし、許す!
ナーガらしき機体発見と破壊してるもんね」
「いやあ、よかったとかった。それじゃあ反省会はこれでお開き」
「待ちなさいニラーシャ」

立ち上がるニラーシャの頭をぐわしとつかむロイヤルナイツクロー。
そのまま腕力で椅子に座らせる。本命の反省タイムスタート。

「勝敗はともかくなんだよあの棒立ちは。私ら残して死ぬ気か!!」
「だ、だって僕ちゃんお腹痛かったんだもーん、てへっ。
それにここでの失敗を取り戻す為のリカバリーの策は既に出来ているぜ」
「まーたそうやってはぐらかそうとする」
「本当だって、パラディン!もう入っていいぜ」

そう言い、ニラーシャがパチンと指を鳴らすと会議室の扉が開き、タイヤ付きのテーブルを押して
灰色覆面のサンキスト、今回の襲撃に参加していなかったパラディンが入ってきた。
彼が押すテーブルの上にはテレビぐらいの大きさ、箱型の機械が乗っている。

「キッスキッスキッス!出来たよニラーシャ。ついに出来ちゃったよぉ〜ん」
「オシリスには気付かれなかったか?」
「モチのロン!気付かれなかったよ。これも君達のおかげだねぇ」

テーブルの上の謎ボックスを指差し二人でキャッキャウフフなチキュウボーイズ。
アムステラガールズは展開についていけず首を傾げていたが、性格からかやはり
リノアが口を開き質問をする。

「ニラーシャ、この機械の完成と私達の敗戦、何の関係あるの?」
「大有りなわけよ、こいつはなあ・・・なんとっ破防鋼製造機!その60000分の1スケール!
まあ、製造できる合金も60000分の1スケールなんだが間違いなく他の機能は同じさ。やったなパラディン!」
「やったよニラーシャ!」

がっしと抱き合うチキュウボーイズ。
地球の科学事情にちんぷんかんぷんなアムステラガールズは完全についていけない。

「わからない?この偉業?」
「ええ、だから説明しなさい。私だけじゃなくグーチェにも納得いく様に」
「おうよ、まず破防鋼だがこれは軽金属の合金製作時に一定の圧力や高熱を加えていき
各金属を織り込むように重ねていく事で完成する特殊な装甲だ。一言で言えば
早い・安い・簡単・脆い・PG隊専用。
で、この技術を独占していたのがオシリス傘下のガネーシャモーターズなんだが」

ニラーシャは言葉を切り、パラディンが続ける。息ぴったりだチキュウボーイズ。

「製造機械の内部、どういった順序で軽金属を組み合わせていっているのかとか
その情報を得たかったんだよねぇ、ニラーシャと君達がオシリスを騙そうとして逆に
騙されていく過程の裏でひっそりと気づかれる事無く情報ゲットして完成させちゃいましたぁ!
キッスキッスキッス!サーンキースートー!PG隊ぐらいしか使わない技術だから
元々ガードは甘めだったけど、ブラッククロスの精鋭が組織の命運をかけて飛び込んでくるという
格好の状況の中ついに無防備同然となったわけだよぉ!」
「さっすがパラディン!俺たちにできない事をやってくれる!そこに痺れるあこがれるぅ」

両手を上げハイタッチするチキュウボーイズ。自分達が蚊帳の外なのを理解し、
そしてオシリスに侵入がばれていた事自体に薄々気付いていた事を教えてもらえなかった事を知り、
さらに言えばここまでの話聞いてもニラーシャがR5に対し棒立ちになってた言い訳には
なってない事に気付きふつふつと怒りが沸いて来る。
こういう時に先に動くのはグーチェの役割だ。机を叩き、怒りをニラーシャにぶつける。

「つまりこうか!?私達は実戦じゃあ役に立たないクソ技術の為だけに命掛けさせられたって事か。
アッハハアッハハ、おい、ふざけるなよ!!!!(バァン!)」
「ひ・・・!」
「私もリノアもそしてあんたもここで使える駒の中じゃあ一番いいものだ。
虎穴にいらずんばって言うけれど、虎のウンコ拾いにボス格が死地へ行くのはバカのする事だ。
ニラーシャ・・・あんたはもう少し賢い男だと思ってたのに、もう勘弁ならない。
アジアのブラッククロスとは手を結ぶ価値なしって連絡するぞコラ!」
「ス、ストップ、スターップ!まだ、まだ話し終わってないから!
俺だって破防鋼が作りたくて敵も味方も欺いていたわけじゃないのよ。
もうちょい話し聞いてよ。あんたらの支援切られるのはマジヤバイからさ」

冷や汗ダラダラのニラーシャは、パラディンの方を見て叫ぶ。

「アレだ、今すぐアレだせ」
「はいはい、オシリスで何あったか知らないけど皆落ち着いて。じゃじゃ〜ん」

パラディンが懐に手を突っ込むと小さな金属片がいくつも胸元から現れた。
銀色・赤色・青色、そのどれもこれもがカッターの刃ぐらいの均一のサイズに加工してあり、
テーブルの上のミニチュア破防鋼製造機の上部に開けられたスリットにちょうど入るぐらいである。

「で?」

グーチェのリアクションは良くない。これだけのヒントで理解するには彼女のスキルが足りない。
その一方でグーチェに怒り役を任せて黙っていたリノアが意図に気付く。

「パラディンさん、その金属貸してもらえない?」
「キストォ!もちろんいいよぉ」

リノアは金属片を手に取り一つずつ吟味する。そして感じていた違和感に確信を得た。

「これ、全部アムステラ領と同盟地で採れる金属じゃない」
「何ぃ、つまり・・・つまり破防鋼を発明したライブ・ハーゼンって博士は実はアムステラ人だったのか!」
「違うわよグーチェ。PG隊の使っている機体は全部メイドインアース、そうでしょニラーシャ?」

ニラーシャはその通りだと肯定した。
実際の所、ライブはかつて地球外の物質を入手しており、それが原因で彼の人生は大きく変化していったのだが
それは家族と一部の知人以外には知られていない事実であり今回の破防鋼とは何の関係も無い。

「ニラーシャ、この金属はどうやって入手したの?」
「カンシュタインさんの部下でえっと、『むしゃぶりたいのー』だっけ?
その人の紹介でセンゴク星の武器商人と知り合ってさ、
そいつは自分の星で不採用になった量産機の在庫抱えていて破産寸前だったんだよ。
で、量産機はいらないけど地球に無い原材料があるなら全種類欲しいって言ったらくれたんだ。20%オフでな」
「つまり・・・どういうこと?」

もはや分かってないのはグーチェ一人だけだった。
リノアは彼女の為に誰にでも分かる答えをプレゼントする。

「今、この場で誰も見たことの無い新素材が生まれるかも知れないって事よ」
「そ−ゆーこと、このテーブルのミニ破防鋼機は誰も見向きもしない製造手段だが、
地球外の金属と組み合わせれば化けるかもしれない。R5が手に入らなかったのは残念だが
パワーアップの手段は無いわけじゃない、いや、ひょっとしたらR5入手以上の強化を得られるかもな」
「なーるほど、よし、この実験が上手くいったら床に埋まるまで殴るのはなしにしてやんよニラーシャ!」
「・・・おーこわ、上手くいくといいわねー。よっしゃ、んじゃパラディン準備いい?始めんぞ」

金属片を一つずつ順番に入れボタンを押す。これが地球の軽金属なら破防鋼が出てくるのだが、
今回は全て地球外の物質である。果たしてどのような合金が出きるのか、それはこの場にいる4人が
最初に知る事になる。
結果が出るまでしばし時間が掛かりそうだ。
ニラーシャはガタガタと揺れるマシンをみながら顎に手を当て何やら考え込んでいる。

「地球外物質を使い生まれ出る装甲材か・・・、閃いた、コイツの名は『メテオメタル』だ。
さあ、この世にまだ存在しない新たな物質の誕生を祈るぞ。パラディン、リノア、グーチェ、
パワーをメテオに!」
「「「いいですとも!!!」」」

こういう時は老若男女関係なくノリがよくなるのろうか。否定的だったグーチェも仲良く
新合金の完成を祈り応援しだす。
それに答えるようにマシンもガタンガタンとより大きく揺れ動き、
破防鋼ならばとっくに完成している時間を過ぎても止まる事無く、
やがて表面にいくつものヒビが入り七色の煙を噴出し、

「爆発するぞっ、逃げろー!!!!!!!!!!」

ニラーシャの叫びと共に全員が会議室を飛び出した。
その直後、テーブルの上で大爆発が発生。
ニラーシャはグーチェに床と一体化するまで殴られる事になった。

ちゅどかーんと完

ニラーシャ:その後、結局棒立ちの言い訳を思いつかず全員に土下座。

リノア:熱で使えなくなった兵器を修理に出し、その際の報告で自分のデータが本星で役に立ってると言われ少し報われる。

グーチェ:ニラーシャへの好感度大幅ダウン、でもリノアについていくと決めていたので我慢している。

パラディン:爆発後の掃除中、爆発中心地から未知の合金を発見、これがお宝かゴミかはまだ誰も知らない。

【エピローグ3:PG隊】

プロトタイプはブラッククロスに壊されたが、ガネーシャモーターズとの契約は無事に履行され、
設計データも無事だった為、予定通りの日にナーガ達はPG隊へと届けられた。
オシリスから来た営業マンの一人がPG隊の若い女性たちに囲まれ顔を真っ赤にしながら
自分達が持ってきたマシンの説明をしている。

「えー、こ、これはエジプトのアルヘナを元にした『ナーガシリーズ』よ。
右から順番に『アルヘナーガ』『コンテナーガ』『ピンクナーガ』という名前。
そ、それでえーっと」

営業という仕事自体に慣れていないそのオシリス社員は一緒に来ている先輩社員の方を見て助けを求める。

「おねーさん、マルーは後何言えばいい?」
「落ち着いて、何で3種類あるのか、それぞれの値段やスペックを説明してください」
「う、うん。わかった」

営業に来ていたのは先日の起動テスト(兼ブラッククロスへの罠)の参加者マルー、
そしてサポート役に受付のおねーさんという二人組だった。
新人は外回り営業、それはどんな組織でも基本。このプロジェクト参加者である
マルーそして多少関わった受付のおねーさん(マミマミは臭いので不参加)を使った方が話が早いということで
この二人が契約の場に行く事になったのだ。

「『ピンクナーガ』はPG隊の車として購入してもらう商品。荷台は消火液が詰める様に
特殊コーティングされてるよ。もちろん色はピンク。消火液以外に、
コンテナ部分に避難民が乗り込める様にする事もできる。消火用と避難用はコンテナの外観が違うから
間違えて乗らないようになってる。それで『コンテナーガ』と『アルヘナーガ』は、うーん何が違うんだろ」
「もう、仕方ないわね。ここからは私が説明します。えー、部下が失礼しました。
ここからは私が説明させていただきます」

営業センスも経験も不足しているマルーにはピンクナーガ以外の2商品の違いを説明する事は出来なかった。
まあ、この二機は写真を見る限りは色も形も全く同じなのだから初心者には説明するのは難しいだろう。
だが、おねーさんは慣れた口調ででその二つの違いを説明していく。

「『アルヘナーガ』と『コンテナーガ』、この2機はPG隊用にカスタムされた『ピンクナーガ』と違い
民間向け、もちろん色はお客様のご自由に数十種類から選べるようになっています。
『アルヘナーガ』はコンテナ内に貨物用フックや冷凍装置が付けられるトラック寄りの機体。
『コンテナーガ』は2段ベッドやソファを取り付け、振動軽減重視で多人数を快適に輸送する為の機体となっております。
今回PG隊の皆様には感謝の気持ちを込めこの『アルヘナーガ』と『コンテナーガ』を特別価格で販売いたします!」

おねーさんの説明を聞きキャーキャーと黄色い声をあげるPG隊員達。
女子の仲良しグループ毎にお金を出し合って数台買おうかしらなどという会話が始まりおねーさんはにんまりする。
そんな中、冷めた目で話しを聞いている人物がいた。
PG隊の貴重な男子隊員の一人、アナンドである。
彼はゆっくりと手をあげ「はーい」と質問した。

「すんません、質問いいっすか?」
「はいそこのバンダナの男の子、何でも聞いてくださいね?」
「この『ナーガシリーズ』本来必要なスペック部分、一番重要なところの説明は無いんですか?」
「え?」
「ほら、元になったアルヘナやPGと比較しての悪路の走破性、それから耐久力とか」

所詮は半民半軍の若い女性の集まり、フェミリアとスガタはともかくとして部下達は
絶好のカモと思っていたおねーさんの顔が青ざめる。
一見無知そうな青年から飛び出したマトモな質問、サティと一緒にフェミリアの授業を受けてきたのは伊達じゃない。

「う・・・、えーとですね、アルヘナーガもコンテナーガも民間向けとは思えないスペックを誇っています。
走破力も防弾性も従来の物に対して2倍以上!」

おねーさんの言葉に嘘はない。ただし、アルヘナーガは普通の2トン車と、コンテナーガは団体旅行バスとの比較データである。
ヤクザのピストルならいくらでも跳ね返せるし、アムステラの攻撃も流れ弾ぐらいはギリギリ耐えられる。
しかし、直接機銃で狙われたら10秒以内に完全破壊されるしろものである。

まあ、流石に軍用であるピンクナーガはもう少しマシではある。(それでもアルヘナとどっこいどっこいレベルだが)

「そんじゃ、試乗させてよ。デザインとかコンテナ内のエアコンとかみて
ワイワイ言ってるだけじゃ分かんないとこだし」
「分かりました、それじゃあ君」
「アナンドっす」
「アナンド君、どれを運転したいのかしら?」

顧客であるアナンドの要求を断る事など出来なかった。
マルーはこれでこの商品のよさをして貰えて契約成立だイエーイと能天気な事を考えていたが
おねーさんはそうではなかった。受付係になる前にこういった下積み仕事に長く関わっている彼女は知っていた、
オシリスの抱き合わせ商品の中には価格の割りに微妙な出来のものが結構な割合で存在すると。
そして、アルヘナーガとコンテナーガは正直に言って微妙な方に分類される。
安全性は軍用輸送機にかなり劣り、娯楽面では他社民間機に僅かに負ける。
営業トークに惑わされる事無く、冷静に考えたら無理に買う必要のない商品なのである。

「ピンクナーガは隊で購入していずれは使う事確定してるから民間向けの・・・、コンテナーガの方で」

おねーさんから起動キーを借り、アナンドはコンテナーガに乗り込んだ。
間もなくマシンは動き出し、凸凹の多い道のりを選びぐるりと周囲を一回りする。

「ただいま」
「どうでした?」

運転席の振動が大きく乗り心地悪い点や破防鋼のリサイクル使用部分特有の臭い、
運転したアナンドはまず気付いただろうし、恐らく彼はマルーと同タイプ、思った事をずけずけ言うタイプだ。
顔には出さなかったがおねーさんは最悪購入者ゼロになる事を覚悟していた。

「いやあ、運動スペック面の話しが無いからどうにも不安だったんですけど・・・むっちゃイイわこれ。
これで特別価格ならマジでバクシーシものだぜ!!」
「そーかー、アナンドもそう思うか。マルーもセールスの為にこれ乗ったけれど昔の仕事で乗ってたやつより
ずっと運転席の揺れ少なかったぞ!室内の空気もきれいだし」

意外っ!それは褒め言葉!!大羅建機とオーバーボディ装着後の修斗にしか乗った事のないマルーの言葉は
営業関係なく真実なのだろうが、アナンドの方の言葉は真実なのだろうか?
おねーさんはそうではないと思った、アナンドの語り方、表情、それはビジネストークでのそれである。
商品に嘘の価値を高める技巧を使いこなす日々を送ったおねーさんのみアナンドが本当の感想を言ってない事に気付いていた。
だが、この流れを逃す気は無い。おねーさんはお客様の感想を利用し一気にお買い上げに持っていく。

「アナンド君の意見通り!このナーガシリーズは抜群の乗り心地(でももっといい商品は結構ある)
どんな振動もへっちゃら(運転手が熟練したなら)!この商品、ズバリオシリスは(そう、オシリスにしては)
利益を度外視した特別品です!」

身内であるアナンド、機能面への疑念を抱いていた彼から絶賛の声を聞いたPG隊の面々はもう
今回の商品を買わないという選択は完全にふっとんでいた。
彼女らはそしておねーさんも気付きもしない。
このセールスの場にフェミリアとスガタが顔を出さないというその理由を。
二人は仕事があってここにいられないって大変だなー、いやー私達だけ得しちゃったねーと
この場にいる隊員たちは暢気に思い込んでいた。

「私買います!コンテナーガのキッチンとシャワー室オプション付きで!」

PG隊現副隊長、イメルダの言葉を皮切りに次々と購入希望者が手をあげ名乗りをあげていく。

「アルヘナーガ1台、仲間達と共同で使いたいんだけどローンでもいいかしら?」
「うちの夫、運送業やってるんだけど積載量はどれぐらいいけるの?」
「ガラオゲギノーバヅゲラレッガ(カラオケ機能はつけられるか?)」

マルーから契約書を受け取り次々とサインをしていくPG隊。
だが、試乗してナーガをべた褒めしたアナンドだけは「俺、新人なんで貯金も共同で使う相手も無いから」
といってそそくさとその場を離れていった。

熱狂を後にしたアナンドは誰もついて来ないのを確認して携帯を取り出し通話する。
コール音2回、直後相手が通話口に出た。

「もしもし、アナンドです。上手くいきましたよ」
「そう、どれぐらい売れそうなの?」
「イメルダ副隊長にマニのおっちゃん、女子隊員と男子隊員の年長者が買ったから
あの場の全員が何かしらお金を出すと思います」
「そう、それは良かった。皆が自由意志で購入したという結果が得られれば
誰も損しないものね。今回の商品も決して悪いものじゃないし」
「俺が乗った感じ良くもないですけどね」
「そこは購入者の使い方次第よ。アナンド君お疲れ様」
「へへへ、どうも」
「それで、どこでゴハン食べたい?」
「フェミリアさんが飛鮫のリーダーといつも会談に使ってるホテル。
あそこの食べ放題ディナー希望っす」
「おっけ、じゃあ今晩仕事終わったらスガタさんと一緒に三人でいくわよ」


お値段爆発・ちゅどかーんと完


フェミリア:部下を利用しピンクナーガ関連商品である民間向け車両『アルヘナーガ』と『コンテナーガ』の販売に協力。
      オシリスとの関係をより強固にしていく事に成功する。

スガタ:R5の操縦を見たO.M.S.代表から現役復帰して働かないかとスカウトされるがこれを断る。

アナンド:フェミリアとの勉強会を通じ、彼女の手足となり裏方役もこなし始める。だが、本性は変わらずウザバカである。

受付おねーさん:PG隊ほぼ全員と高額の契約を結ぶという快挙を遂げるがどうにも納得できていない。
        が、それはそれとして受け取ったボーナス額には素直に喜んだ。
        マルーへのブロディアパンチは自分がするまでもなく既に顔面パンパンだったのでやめておいてあげた。




R5とナーガの物語はこれにて終了。
皆様それではまたいつか。

『あーるへナーガ!』完