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影狼隊徒然記【悪魔の贈り物】後編


〜アルの居室〜

シャイラと三羽烏達が非番となる日の前日。
アルの部屋に集まった3人は、険悪な顔を付き合わせていた。

「いくら朋友やと言うても、こればっかりは譲られんったい!」
「僕だって、一歩も退く気はありません!」
「俺も退かん! 残るのはただ1人だ!」

賭けの報酬であるデート(?)の前日になってから、三羽烏が気付いた事実。それは、『デートとは、一組の男女が行うもの』という事である。
普段から3人一組で行動していた彼等。気付くのが少々遅れても不思議は無いが、とはいえ今頃気付く様では、舞い上がりすぎというもの。
さてどうやって幸運な一人を決めようかと睨み合う彼等の耳に、ノックの音が聞こえた。

「・・・あらっ? なーに無愛想な面を付き合わせてんのよ、アンタら?!」そこへ入って来たのはイェン。
「何々・・・あぁ、なぁ〜んだ。そゆこと? どぁ〜いじょうぶ! ま〜かせてっ♪」

事情を聞いたイェンが、そう言うなりポケットから取り出したのは映画のペア券。だがそれが・・・イェンの手の中で扇状に広がる。

「・・・券が3枚あるやと? そやけどシャイラ隊長とわしらやったら、合計4人2組やけどな?!」
「アンタ、まさかむさ苦しい野郎同士で行く気? ちゃんと男女のペアで3組分よ」
「なるほど、それなら話が・・・って、ちょっと待って下さい? 男女ペア3組?!」
「問題無いって、ちゃんとエウも呼んであるから。これで見た目はペア3組でOKよ」
「・・・オィッ?! もしかして、アンタも最初っから便乗する気だったのか?!」
「あらバレた?」「バレるわっ!」

賭けがどっちに転んでもOKな手を打っていたイェンの狡猾さに、さっきまでの諍いも忘れて仲良く呆れ返る三羽烏。
しかし、彼女がここまでお膳立てした内容。考え様によっては、賭けの話がどう転んでもシャイラとデート出来る機会をくれたとも言える。
そう考えれば、イェン達が付いてくる位は許しても良いかな? と寛大な気分になった彼等であった。


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ここで、幾らか時間を巻き戻す。基地の一角にある喫茶コーナーにて・・・

「悪いねステラ、呼び出しちゃって」と言いつつ、両手に持った缶コーヒーの片方を放り投げるイェン。
「いえ、仕事は終わりましたから構いませんよ」パシッ! と小気味良い音と共に缶を受け取ったのは、赤い軍服に身を包んだ眼鏡の女性。
「でも、貴女から相談を持ちかけて来るなんて珍しいですね・・・流星雨でも降らなきゃ良いけど」
「こらこら、人を極楽トンボみたいに言わない」

〜相談中〜・・・〜相談終了〜

「・・・その話、エウさえ良ければ私は構いませんよ。でも、そんな人数合わせの代役みたいな真似、あの子が承知するかしら?」
「大丈夫、大丈夫! 色気より食い気の年頃だし、タダメシ食えると言えばホイホイ付いてくるわよ」
「イェン・・・うちの妹を食欲の権化みたいに言わないで。(まぁ、間違っても無いけど。と言うかそれ、貴女も人の事は言えませんよ)」
「まぁ最初はね、アンタに頼もうかな〜とも思ったんだけどさ」「…ケホッ!」

イェンのトンデモ発言を聞いて、飲みかけたコーヒーでむせるステラ。即座に拒否しようとするが、そう直ぐには咳き込みが止まらない。

「・・・大丈夫?」
「ケホッ・・・ケフッ・・・だ、大丈夫な訳無いでしょ・・・幾ら何でもそれは・・・」
「・・・あのねぇ? いくらアタシだって、亭主持ちにそんな事を頼むほど図々しくはないわよ?!」
「・・・コホッ。(今でも充分、図々しい性格してると思うのは私だけかしらね?)」

咳き込みが治まるのを待って、息を整えたステラが続けて尋ねる。

「そう言えば、メディにも声を掛けてたみたいですが・・・まさか?!」
「?・・・あぁ! 違う、違う。現地の情報調査を頼んだのよ。あの子、そういうの得意でしょ」
「あぁ、それなら良いんですが。恋愛沙汰に関わるのはまだ、あの子には早過ぎますから」
「だよね。メディ向けの役じゃないよ、これ。大体さ、あの子はアタシみたいに図太くは無いから」イェンがしたり顔で補足する。
「・・・なるほど。(・・・あ、自覚はあったんですね)」
「その点、エウなら大丈夫。ホラ、恋愛に関しては『欲しければ喰らう!』ってタイプだからさぁ」
「ッ?!」メキャッ!!

第二のトンデモ発言を聞いて、今度は思わず缶を握り潰すステラ。

「ステラ・・・何だかアンタ疲れてるんじゃない? 仕事で根詰めすぎるのは良くないよ」
「大丈夫ですよ・・・えぇ。(というか、疲れさせたのは貴女よ・・・)」
「そうだ! さっきの話で出たペア券ね、まだ何枚か余っててさ。良かったら息抜きに旦那と観に行ってよ」
「有り難う、イェン・・・」
「じゃっ、アタシは打ち合わせに行ってくるから。またね〜♪」

イェンから渡されたペア券を手に、しばし友情の有り難さを噛み締めていたステラであるが、そのチケットを良く見た瞬間、顔が強張る。

「(・・・こ、これはちょっと・・・嫌な予感が・・・)」

チケット中央に仁王立ちした、タイツ一丁のマッチョウサギなどを見つつ、よくよく映画のタイトルなどを読んでみる・・・

『闘映・漢祭り! 豪華二本立て!』
(・・・漢祭りって何ですか?! オトコ祭りって! しかも二本立て?!)

『ジークチャレンジ・ザ・ムービー 〜トナカイ・ザ・グレイトの挑戦状〜』
(どうやら、このウサギ人?がジークみたいですね・・・マッチョなのはちょっと・・・)

『未来探偵コナン・ザ・グレート 〜残され島の秘宝〜』
(全く・・・こっちもどういう内容よ、どういう・・・)

読んでみた事を激しく後悔しつつ、喫茶コーナーに備え付けのテーブルに突っ伏すステラ。

「・・・この券、どうしよ? ライ君こういうのは観るかなぁ・・・?」
「と、言うか・・・どう考えてもコレ、絶対デート向けの映画じゃないですよ、イェン・・・」


・・・脱力してるステラは置いといて、話を戻すとしよう。

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〜(女性陣的に)外食(+α)/(三羽烏的に)デートの当日〜

各々、カジュアルな私服に身を包んで集合したシャイラとアル、サイ、ガッツ、それにイェン、エウリアの6名。
(三羽烏には、イェンが予め「お気軽なデートなんだから普段着で来な。正装なんかで来るんじゃないよ」と釘を刺してたのは言うまでもない)

「さてと。現地の情報についてはメディに調べて貰ったから、アタシが案内しましょ」早速、イェンが仕切り始める。
「今回の注意点としては、現地は地球の非占領地区の一般住民が住む都市だから、無用の騒ぎを起こさない事。まぁこれは当然よね」
「後、シャイラ少佐。今回は便宜上『カップル3組』という建前で行動するので。私達の口調がタメ口でも勘弁して下さいね」
「あぁ、それは構わない」
「だからそこの3人も、いつもの癖で『隊長』とか呼ばないでよね。呼び捨て・・・もしくは『さん』付けとかでOK。判った?」
「・・・(シャイラ、寒くはなかか)(次はこの店へ行きましょうか、シャイラさん)(シャイラ、後は二人っきりで・・・)」
「・・・ちょっとアンタら? ・・・ダメだこりゃ」

シャイラを『呼び捨て』で、と聞いた瞬間。三羽烏の視線が虚空を漂い始める。すぐその原因に気付いたイェンは『この阿呆共め』という顔に。
視線を移し、きょとんとしてるシャイラと、何も気付いて無いエウリアの反応を見て、深〜く溜息をついてこれ以上の説明を諦める。

「あ〜、そこの3人はしばらく放っとこ。それじゃあ注意点は以上で終わり。良いかな?」
「あ! それから、お酒は禁止っ!」エウリアが声を張り上げる。
「えぇ〜っ! 食事のついでに一杯やろうと思ってたのに!」と、抗議するのはイェン。
「酒飲ませたら、イェン姉ちゃんが一番危険なんだってば!」
「・・・酒を飲ませたら、そんなに怖いのか? イェン少尉は?!」
「怖いと言うか・・・一緒に居る仲間を、全員酔い潰さないと気が済まない性質(たち)なんですよね」
「ちょっとエウ、人聞きが悪いよソレ。・・・そりゃまぁ・・・ステラと食事に行って、2人共酔い潰れて帰って来たりもしたけどさ」

「(でもそういう時は、ステラが惚気話を始めたらとても素面で聞いてられないから、仕方なくよね・・・うん)」
イェンは心の中で説得力の薄い自己弁護をするが、身に覚えがあり過ぎて、否定の言葉までは口には出来なかった。

「・・・仕方ないなぁ。じゃあ、お土産で買って帰る位は良い・・・でしょ?!」縋る様な眼をして尋ねるイェン。
「別にそれ位なら構わないだろう。時間が有れば、酒屋にでも寄るか?」と、シャイラは鷹揚に答える。
「良かった〜。それなら大丈夫! ちゃんとメディに酒屋の情報も確認して貰ってるので!」
「・・・って、始めっから酒屋にも寄る気満々だぁ」そしてこのやり取りを聞きながら、イェンの妙な用意周到さに呆れるエウリアであった。


〜地球のとある町にて〜

「・・・ふぅ〜っ、結構冷えるばい。みんな寒うはなかか?」
「大丈夫よ、ねぇ? エウ、シャイラ」「この位、へっちゃらよ!」「あぁ、平気だ」
「でも、結構人が多いですね。休みの日ってだけでは無い様ですが」
「そういや、さっきから妙に赤い服着たヒゲのじいさんを見かけるな・・・」
「へっへ〜っ。数日後に『くりすます』って行事があるから、それで賑わってるのよ」
「へぇ? やけに地球の行事に詳しいわね、エウ」
「そりゃあ、ちょいちょいバイト…おっとっと、何でも無い、何でも無い!」
「・・・イェン、まずは映画館と言ってたが、アレか?」

一同の前には、派手な看板を出した大きな建物が見える。看板は恋愛物や冒険物、サスペンスなどなど、色々な映画の看板だと一目で判る。
その中で特に目を引くのは、どうやらラブロマンスっぽい映画看板。三羽烏の期待が否応無しに膨らんでゆく。

「・・・ん〜、違うなぁ。こっち、こっち」

しかし三羽烏の期待は外れ、その映画館を通り過ぎてイェンが案内したのは、近くにあるビルの中。
そのビル上階のワンフロアーが丸々映画館になってるらしく、エスカレーターでどんどん階を登って行く。
そして問題のワンフロアーに到着すると・・・エスカレーターの先では、タイツ一丁のマッチョウサギがお出迎えしていた。

「・・・こんな場所でセンゴク星の獣人族を見るとは思わなかったな」
「おっ、これってジークの新作だ! 面白そう!!」「エウ、このウサ公を知ってるんだ?!」

意外と映画を楽しむ気になってる女性陣に比べ、男性陣の反応は微妙。引き攣った顔で映画のタイトルとあおり文句を黙読してゆく。


『闘映・漢祭り! 豪華二本立て!』

「(ところで見とくれ、この映画を。お前ら、どう思う?)」

『ジークチャレンジ・ザ・ムービー 〜トナカイ・ザ・グレイトの挑戦状〜』

  卑劣な罠が子供たちを襲う―――
   おねーさんの歌が聖夜に響く時―――
    ジークの怒りが天を切り裂く!!

「(すごく・・・マッチョ臭いです)」

『未来探偵コナン・ザ・グレート 〜残され島の秘宝〜』
 
  どんな悩みも一刀両断―――
   話せばすぐに楽になる―――
    未来探偵コナン・ザ・グレート―――
     全ての謎は、俺が斬る!!

「(それ以前に、だ・・・どう考えても、カップルで観に来る映画じゃNeeee!!!)」


「・・・ほら、これ取りなよ」

そんな男性陣の間にいきなり差し出されたのは、大カップ山盛りのポップコーン。それを思わず受け取ったのはガッツ。
「よし、これで席は決まったわ」「なんやて?」「どういう事です?」「ん? それ、2つあるな」

すかさずイェンは、もう一つの大カップをシャイラに渡す。

「席の関係で、取れたのが前後3人ずつだったのよね。でもさ、野郎3人で座るのも虚しいでしょ?・・・って事で」
「前列にアル、シャイラ、サイ。後列はアタシとガッツ、エウで決定! そのポップコーンは3人で分けて、飲み物は各自お好みで!」
「・・・しもたぁ!」「なるほど・・・」「両手に花だな、ガッツ」
「んっ?・・・私が真ん中なのか?」「そこはホラ、勝者の特権って事で」「特権???」


〜何だかんだで、映画鑑賞中〜

吹雪の吹きすさぶ夜の雪原で、2人の男(?)が対峙している・・・

「大人しく子供達を返せ。さもないと・・・」
「何を言ってんだぁ、ジークよぉ。おめーはここで終わりだ・・・臓物をブチ撒けろおぉぉっ!!」

雪ダルマっぽい外見の怪人が、タイツ一丁のマッチョウサギの腹をナイフで突き刺す・・・が、そのナイフが刺さらない!

「なっ?! この”切り裂きジャック”フロスト様のナイフが効かないだとぉ〜っ!!」
「そんなモノじゃ、俺の腹筋は貫けねぇ・・・」
「なら、これでどうだぁ!」雪ダルマ怪人がナイフをジークの顔に投げつける。

ガキ、メギッ、ベゴ・・・ペッ。ジークの口で受け止められたナイフが、そのまま噛み砕かれて奇怪なオブジェと化し、吐き捨てられる。

「人間じゃねェ・・・ッッ」余りの事に、思わず立ち竦む”切り裂きジャック”フロスト。
「・・・馬鹿だぜ、アンタッッ!!」ジークは拳を握った両の腕を天空に掲げ、こう宣言した。

「ジャガる」

次の瞬間。振り下ろされた両拳は一対の鉄槌と化し、雪ダルマを血ダルマへと変えた。

「トナカイ・ザ・グレイト・・・次はお前の番だ」そう呟いて、黒タイツのウサギは雪原の奥へと踏み込んで行く・・・。


パク・・・パク「地球人の嗜好は、良く判らんな・・・」「ハ・ハ・ハ・・・」「くそっ・・・やはり恋愛物とは程遠いな・・・」
ひょい、パク、ひょい、パク「うわっ、ホント容赦無いなぁジーク」「やっ、人間辞めてるね。このウサ公」「・・・意外と面白いのぉ」


〜映画終了〜

「うん、面白かった〜っ! また来ようね!」
「・・・面白い・・・ハハハ、そうですか・・・」
「おぅ! まさかこういうアクション物やとは思わんかったばってん、悪くはなか!」
「アタシもなかなか楽しめたよ。アル、さっき何かぶつくさ言ってたけどさ。ちゃんと恋愛要素とかもあったよね?」
「そう・・・かもな?(眼鏡マッチョがヒロインを追って、飛んでる飛行機の上で戦ってるのとかを、『恋愛要素』と言えるならばな)」
「・・・ふむ。地球ではこういうのが流行ってるのか。不思議な星だ」
「さてと、お楽しみの後はランチた〜いむ♪ あ、店のメニューには『なめたけパスタ』ってのもあったからご期待あれ♪」
「『なめたけパスタ』か・・・それは楽しみだな」「あ、イェン姉ちゃん。カレーもあるのかな?」
「ふっ・・・その辺に抜かりは無いわよ。『キーマカレー』ってのもあったから、期待しときなさい」「やったぁ!」


〜レストラン〜

「お客様方は何め…」「6名!」
「お席は喫煙席、禁煙席とありま…」「禁煙席でよろしく!」
「・・・何だか手馴れてますね」
「まっ、チンタラやるの嫌いだしね」「あたしはバイトで経験…やっ、とにかく慣れてるから!」
「テーブル席だな。3人ずつ…」
「…OK、それじゃ野郎共は体重順に詰めて! 身軽な奴がドリンクバー係ね」アルの呟きにイェンが即、反応する。
「うわっ、イェン姉ちゃん仕切る、仕切る」「はいはい、今日の主賓は奥、奥」「・・・私が主賓なのか?」

男性陣は奥からガッツ、アル、サイの順で座り、女性陣はシャイラ、イェン、エウリアの順になる。
その後はしばらく、和気藹々としたランチタイム。ちょいちょいサイとエウリアが飲み物のお代わりを取りに行かされたりはしたが。
そして食後のデザートも終わり、満足した雰囲気の中。イェンがスッ、とレシートの入った台をさりげなく男性陣の方へと滑らせる。

「んじゃ、お会計宜しく〜。さっ、いこいこ」イェンはエウリアとシャイラを促して、先に店を出る。
「そんじゃま、三等分で良かな?」「えぇ、良いです…ぁ?!」「・・・やられたっ!」

そう。賭けでは『シャイラに』外食を奢る、という筈だったのに。気付けばイェンとエウリアの分も一緒に支払う羽目に。
だからと言って後から請求しては男が廃るというもの。特にシャイラの前でそんな真似が出来る筈も無い。
男の哀しいダンディズムは、彼らに黙って食事代を支払わせたのであった。


〜商店街〜

レストランから出た後、イェンの案内で商店街を抜けるルートを取った一同。
途中の店で、シャイラがお目当てのなめたけ瓶詰めを発見して相好を崩したり(それを見た三羽烏の顔は、蕩けんばかりの様相となったが)と
有意義な買い物三昧(もちろん、金の出所は三羽烏の財布だ)を続ける最中。イェンが突然、ある店の前で立ち止まった。

「・・・どうした? この店にも何かあるのか?!」土産になめたけ瓶の山などを抱えた、上機嫌のシャイラが尋ねる。
「あっ、イェン姉ちゃんココって・・・」「そういう事♪」

そのまま、カードゲーム屋の中へと入って行くイェンとエウリア。他の面々も、訳が判らぬままゾロゾロと着いて行く。

「今日のコースを色々と調べてくれたメディへのお土産に、カードでも買っていこうかと思ってさ」
「そうか、それは良い考えだな」「おっ、ここの品揃えって中々良いね!」

しばし物色して、買う品々が決まった時。イェンがニマ〜ッと笑いつつ三羽烏の方を向く。
その瞬間、イェンと重なって三羽烏の眼に映ったのは。タイツ一丁のマッチョウサギの幻・・・その筋肉隆々のウサギ人が両腕を掲げて一言。

『・・・タカる』

三羽烏の脳裏には、雪ダルマ怪人やトナカイ怪人、そして数々の傲慢な格闘家達の辿った末路が思い浮かぶ。

『・・・俺達に、逃れる術は無い・・・』

その認識に心が支配された瞬間。彼らの手は既に軽くなりつつある自らの財布を開いていたのであった。


〜帰り道途中の酒屋〜

「・・・さて、と。後は非番の日最後の締めくくりに」イェンがニコニコしながら酒瓶を吟味している。
「おぃおぃ? まだ買うんか?!」瓶ビール入りの箱を持たされたガッツがぼやく。
「そうですよ・・・と、いうか。かなり多くありません?」リキュールの瓶を束で抱え込んだサイが疑問を呈する。
「大体、こんな大荷物で帰りの道を歩かせる気か?!」今までの荷物(但しなめたけの瓶は除く)に加えて、酒瓶も持たされたアルが抗議する。
「そこは任せなさいって。ちゃんと迎えの車も手配してあるわよ」
「それは有難い・・・流石に少々長く歩きすぎた」「・・・シャイラさん、誰も盗らないから。なめたけの瓶、少し持ちましょうか?」

そうこうしてる内に、酒屋の前に止まるワゴン車。運転席から降りてきたのはルカスである。

「かなり酒を買い込んでますね・・・宴会でもするんですか?」ルカスが怪訝な顔をして尋ねる。
「んっ? それも良いね。兄貴とアタシの分だけ買うんじゃ、他の連中に悪いと思ってさ。ちょっと余分に買ったのよ」
「・・・ちょっとぉ? これが、ですか?!」「ん〜っ・・・細かい事は気にしない、気にしない!」

そして三羽烏がほっとした事に。酒屋への支払いは、イェンが済ませたのであった。


〜帰還中〜

「今日はお疲れ様! いや〜っ、悪いね。色々と引っ張り回してさ」
「ふふっ・・・今日は良い気分転換をさせて貰った。たまにはこういう休日も良いだろう」
「そうですたい!」「同感ですね」「まっ、こういうのもありだろ」
「タダメシって話で来たけど。映画も観れたし、お土産も仕入れたし、言うこと無し!」
「・・・うをぃ?!」「やっぱり・・・」「そういう事かよ・・・」
「あは、あはは・・・今度、うちの連中で酒盛りする時は誘うからさ。それで勘弁してよ」
「そうやな・・・」「かなり意表を突かれもしましたが・・・」「・・・まぁ楽しめたから、良しとしようぜ!」
「動機はともあれ、色々と気を遣ってくれたのだから。有り難く感謝しなければな」
「そうだね。イェン姉ちゃん、ありがと!」
「どういたしまして。アタシも充分楽しませて貰ったからね」

意外性をたっぷりと味わった外歩きを終えた三羽烏の心境は、懐の財布と同様、軽やかであった。
イェンの『贈り物』にあそこまで振り回されたのは予想外であるが、それでも『シャイラとデート』という目的は概ね果たされたのだから。
だから今度、影狼隊でやる予定の酒盛りとやらに、シャイラ隊長や隊の連中も誘って行ってみるか? という気持ちが膨らんでいた・・・

・・・しかし、彼等は知らぬとはいえ重大な見落としをしていた。
それは先にエウリアも警告していた事。そして、その実態を知る者は顔を青くして言ったであろう一言・・・

『イェン・マイザーと一緒に酒を飲むな』



THIS EPISODE END