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   影の死闘・暁の戦闘〜その6〜



〜アムステラ前線基地・第三格納庫〜

頭部を破損した羅甲と黎明が、整備ハンガーに運ばれて行った後。上半身のみになった妖爪鬼を掴んだ禍風も戻って来た。
そして妖爪鬼から降りた隊長が、まっすぐレンヤ達の方にやって来る。

「ご苦労だったな。で、先ほどの戦闘で気付いた事がある。少し付き合って貰おうか」
「・・・んっ? お前、部下に事後の指示とかしなくて良いのか?!」
「それなら戻る途中に済ませて居る。これは、手伝って貰った礼だと思ってくれ」

そう言いながら、影狼隊隊長はレンヤとルルミーを連れて格納庫の一角にある広場−機体の動作確認エリア−に向かう。
そこに待機して居たのは異なる3機。1機は標準機の羅甲。1機は隠密機・影狼。残る1機は赤銅色のずんぐりした機体。
機体を持って来た部下達を下がらせた隊長は、その3機を見やりながら口火を切る。

「持ち帰った情報は解析中だが、少しは解読出来た。お前達が対戦した相手は『エイジアン隊』と言うそうだ。なかなか手強かったが、どうだ?!」
「あの奇策は一度しか使えない手だ。次に対戦する時は、黎明で上手く片付けてみせるぜ。雲燿ならもっと勝率は上がるだろうがな!」
「でも、あたしの直突きを避けるなんてね・・・あいつ、出来る!」
「そう。その理由は2つ」
「2つだぁ?」「・・・2つ?!」
「そうだ。口で説明するよりも、実地に体感した方が早い。だろう?!」

そう言うなり隊長は、ルルミーを羅甲に乗れと促しつつ、自分は赤銅色の機体に搭乗する。

「これは、ルカスの水鋼獣だ。お前達も知っての通り、特殊戦機の中では随一の防御力を誇る。だから、遠慮無く直突きを打ち込んでも構わんぞ」

バチッ!!

その隊長の言葉が終わるか終わらないかのうちに、ルルミーの羅甲が直突きを放つ。
水鋼獣の頭を吹き飛ばす様に放たれた一撃だが、水鋼獣は無造作に掲げた左腕でその一撃を止める。

バチッ!!

間髪入れず追撃の左直突き。だがこれも、水鋼獣が掲げた右腕に半ばめり込んで止まる。流体金属の装甲が、その効果を発揮して居るのだ。
とは言え、ルルミー機の素早い直突きを、鈍重とも言える動きの水鋼獣の腕であっさり受け止めるとは、隊長も只者では無い。
そして隊長の水鋼獣は一歩踏み出してルルミーの羅甲の追撃を封じつつ、機体の乗り換えを提案する。

今度は影狼に搭乗したルルミー。先ほどと同じ様に直突きを放ち、水鋼獣はそれを左腕で受け止め・・・きれなかった!

バシィッ!!

水鋼獣が左腕を掲げるよりも速く突き進んだ直突きは、水鋼獣の頭を直撃! 頭部を保護する流体金属が、飛沫となって飛び散る。
間髪入れず追撃の左直突き。しかし、正面から殴られた反動を利用して身を捻った水鋼獣は、それを右上腕で受け流す。

「・・・どうだ?」
「なるほどな」「直突きが破られた理由の一つは・・・手筋を読まれていた所為か」
「そうだ。既にもう一つの理由も、気付いて居るのだろう? 確かに羅甲は汎用性の高い優れた機体だが、それ故の限界もある」
「パイロットの腕が良すぎた場合、かよ」
「その通り。汎用性が高いという事は、安定した性能に抑えられて居るという事。つまり、無茶がしにくい訳だ。影狼は装甲や出力は羅甲に劣るが、
運動性に限れば断然、上だ。あのエイジアン隊の機体もまぁ、運動性に関しては影狼と互角の性能だと見て良かろう」
「特化型って訳か」
「まぁな。もっとも、毘沙門隊の如光に慣れた身には、羅甲では反応が遅いだろうし、影狼では装甲が薄いだろうがな」
「ふっふっふ・・・そこにぬかりは無いっ! あたしの専用機・武者震がいずれ完成するっ!」
「・・・あ〜。ウィーの奴が何か妙な事言ってたが、それかよ。あんまし人に迷惑を掛けるんじゃ無いぜ」
「では、ちょっと用事が出来たので。お先に失礼します!」

一礼して立ち去るルルミー。立ち去った先から「今度の機体設定は認めさせる!」だの「脅してでも造らせる!」などと物騒な科白が聞こえた様な気もするが・・・レンヤは脂汗を流しながら、影狼隊隊長は苦笑を浮かべながら・・・あえて聞かなかった事にした。



一方その頃、ドイツ軍基地では。エイジアン隊の3名とウォルフ中尉が話し込んで居た。

「周辺索敵を行った結果、再攻撃の兆候は無いそうですぜ。まぁ今また来られたら、キリイ中尉の機にゃ松葉杖が要りますがねぇ」
「・・・」
「判った。しかし、気になるな・・・」
「何がです? ロルフ少佐」
「奴らの戦法だ。我が軍を壊滅させる気なら、もっと効率的な攻撃が可能だろうに。それが出来る実力もあるのにな・・・」
「それは私も感じてました。ただ、今まで何度か交戦してる内に、何となくその傾向が見えて来た様な気がします」
「そうか。君は奴らとの戦闘経験が多いからな。それで、どういう傾向だ?」
「単純に言えば『戦争では無く、戦闘を仕掛けてる』感じです。あの膨大な戦力を考えると、我々が受ける被害はもっと甚大なものになります。
ですが今回、基地の機能を完全に混乱させられたにも関わらず、奇跡的な事に人的被害はありません」
「あの紫色の機体も、8型に直接挑んで来たな」
「でもおかしいですねぇ、隊長。やっこさん達、高圧的な侵略行動を取っている割に、何だってそんな似合わねぇ騎士道精神を発揮してんだか」
「多分・・・奴らの上部組織の中に、何らかの乱れがあるのだろう」
「確かに、その乱れが無ければ基地の人員は全滅してます。コンピュータ群にウィルスをばら撒かれましたから、機能の復旧は手間取りそうですが」
「・・・交渉可能だろうか?」
「あ〜っ、無理無理。貝よりも寡黙なキリイ中尉殿が相手じゃ、話し合いにならんでしょ」
「彼らの中にも穏健派が居る事は判りましたが、侵略を決めたのは多分、更に上位の組織。それさえ何とかなれば・・・あるいは」
「我々が今、出来る事は奴らの攻撃を撃退しつつ、力を蓄える事だ。『簡単に征服できない』事を認識させつつ、穏健派と連絡を取る手段を探す。
後者の連絡を取る件はまぁ、情報部の仕事だがな。だから我々が、前者の任務を遂行するのだ!」
「「「了解っ!」」」



更にその後、アムステラの前線基地・士官室でも・・・

「・・・2人か。避けられた犠牲かもしれんが、やむを得ないな」
「っつ〜か、作戦の基本で無茶してるんですぜ。手加減しつつ、最大の効果を求めるなんざぁ、虫の良い話で」
「そう言うな・・・我等は、その為にこそ居るのだから」
「まっ、目的は達してますがねぇ。任務を達成しつつ、レンヤ達との繋ぎも取ってみたと。どうです、あいつ等。面白いでしょ?!」
「まぁな。これで次にどう動くかは、多少予測しやすくなった。未だに裏との繋がりはそう強くなさそうだな・・・」
「外から要らん手出しされるのは勘弁して貰いてぇですからねぇ〜。あいつ等だけならまぁ、そう影響は無ぇですがね」
「今後の動きを注意しておかねばな・・・ヒルデガード様の方針を逸脱する様なら・・・密かに対処する。それまでは観察するさ」
「・・・や〜れやれ。面倒臭ぇよな・・・」


双方の思惑を孕みつつ、その日も過ぎてゆく・・・明日以降も続く戦いに備えつつ・・・

The End