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  影の死闘・暁の戦闘〜その1〜



〜アムステラ前線基地・第17号整備ハンガー〜

多数の羅甲が並ぶ格納庫の一角に、その機体は横たわって居た。そして、その羅甲とは明らかに異なる赤茶色の機体の脇に、バンダナを鉢巻の様に
巻いた長髪の女性が居る。どうやら、その重厚な機体の右腕(先端はハンマーになっている)の調整をしている様だ。

「おいアスパラ! やっぱり右腕のバランサーは調整しないと駄目だわ。肘の可動部に負担が来てる」
「そうか? そっちはお前に任せる。俺は今、動力回路の調整中だ」

バンダナ女の呼び掛けに応じて、機体の下から何故か『アスパラ』と呼ばれている男の声が響く。普通、機体の整備は整備兵に任せるものだが、これがカスタム機だからなのか?! 整備も自分の手で行って居るらしい。
しばらくの間、整備ハンガーには機体の駆動音と、作業音のみが響いて居たが、第三の音−若い男の呼び声−が、その雰囲気を打ち破る。

「レンヤ中尉! レンヤ中尉はいらっしゃいますか?!」
「えっ? 『いらっしゃいますか』ぁ?!」ゴトッ! ゴロッッ!
ゴチッ!「ドラムロッ!」

バンダナ女が驚いて取り落としたオイルの缶が転がり、機体の下に居た『アスパラ(=レンヤ中尉)』の頭に当たったらしい。
しかし、今の何でもない呼び掛けに何故、驚いたのか?!

何故なら、アムステラ帝国軍のレンヤ中尉が『傭兵出身』だからである。
卓越した操縦技術を買われて軍属となったレンヤ中尉。だが、戦いを生き甲斐とし、アムステラ帝国の理念などに無関心な彼を生粋の帝国軍人達は
毛嫌いして「野犬」「野良犬」呼ばわりして居たのである。
もっとも、この地球攻略軍の中にはそんな事を気にしない者達も居る。しかし、そういう連中は大体、彼に敬語を使ったりはしない。
・・・従って通常、彼に敬語を使う者はごく限られる。直属の部下ですら「アスパラ」呼ばわりする現状を考えると皆無に近いかもしれない。

「あぁ、こちらでしたか。探しましたよ」
「・・・俺に何の用だ?!」

やや不機嫌そうな声と共に、赤茶色の機体の下からニュッと突き出す黒く尖った棒状の塊・・・?!
だが、すぐにその正体は判明した。レンヤ中尉の髪の毛だった。

「明日未明、我ら影狼隊の作戦行動にレンヤ中尉の『黎明』をお借りしたいのですが。宜しいでしょうか?!」
「断る。俺は、人には愛機を貸さない主義だ」
「・・・おぃお〜い。お前さんはその『雲燿』と、『黎明』の2機を持ってんだろ?! ケチケチしねぇで1機くれぇ貸してくれねぇか?」

突然、軽い口調で割り込む男の声。若い男の後方から来た、長身の無精ひげ男が声を掛けたのである。見た処、レンヤよりもいくらか年上の様だが
その雰囲気は、この場に居る4名の内では一番軽い。

「嫌だ。どっちも俺の愛機だからな!」
「ほぉ〜、そうかい。じゃあ決まりだ。お前さん達も早寝しな」
「はぁっ? どういう事だ?!」「・・・はいっ?!」
「ご安心下さい。レンヤ中尉の上官には、うちの隊長から話を通して居ります」
「と、いう訳だ。明日は早いぜぇ〜。詳しい作戦内容は、後からイェン辺りに届けさせるからよ。それじゃ、準備を頼むぜ!」

半ば呆然とした2人を置いて、さっさと立ち去る長身の男。がっしりした体格の青年が、その後を追う。

「・・・いきなり任務を押し付けた形になりましたが、大丈夫ですかね?」
「まぁ、問題無ぇだろ。レンヤの野郎はあぁ見えても凄腕だからなぁ〜」
「それなら良いんですが。・・・それはそうと、あの髪型はいつ見かけても妙な感じがしますね」
「バカヤロー。あれは『公認虐殺カット』と言って、かなり上級傭兵のヘアスタイルだぞ。あの髪(バシーン!)うぼぁ!」
「兄貴・・・与太話してる暇があるんなら、さっさと戻って来な!」

手に丸めた書類を持った紅毛の娘が、再び腕を振り上げる。たった今、長身の男の後頭部を思いっ切り叩いたのもその書類でらしい。

「おぃおぃ、イェン。な〜に怒ってんのよ?! ・・・あぁ、そうか。今回は大人しくお留守ば(バシッ!)」
「さ・っ・さ・と・戻・れ!」

イェンが低い声で、歯軋りしながら言う。どうやら今回の作戦から外されたのが大いに不満らしい。
その物騒な気配を察知して、それ以上の茶々を入れずに長身の男・バドスはとっととその場を離れた。

「ルカスっ、アンタもよっ!」「りょ、了解!」

丸めた書類で指された青年・ルカスも慌ててその場を離れる。

「・・・ったく。いくら奇襲作戦だからって、とんがり角のオッサンを連れてって、アタシが留守番ってのは無いじゃない?!」

ぶつくさ呟きながら、レンヤ達の居る整備ハンガーの方へ向かうイェン。
作戦行動の打ち合わせをしに行く様だが、程なくしてレンヤ達がほとんど状況を呑み込んで居ない事実に苛立つ羽目となる・・・。

余談だが、その日の夕方。バドスが顔に青あざを残したざんばら髪の姿で「・・・俺、惨状」と言ったとか言わないとか・・・閑話休題。


そして、翌日の夜明け前。まだ朝日も昇らぬ冷えた空気の中を、アムステラ軍の小部隊が静かに侵攻して居た。
闇に溶け込む黒い人間型の機体『影狼』が数機、そして標準機の羅甲が2機。しかし、1機に関しては標準機とはとても言えない。
何故なら、紫とオレンジにカラーリングされた派手な外観、そして右肩に大型ランチャー、手に持つのは巨大な金棒という機体であるから。
これこそが、レンヤ中尉の羅甲カスタム機『黎明』である。

彼らの向かう先は、ドイツ軍の基地。基地に近づいた処で、影狼隊の隊長がレンヤに話しかける。

「それでは、手はず通りに頼む」「・・・判った」

基地に向かって、黎明の右肩にあるランチャーから大型の砲弾が連続で3発、発射された。
基地内に着弾した砲弾から発生する濃い霧状のガス。そのガスを吸った相手を深い眠りに誘う、スリープキャノン・夢魔である。

「・・・襲っ!」

影狼隊の隊長の掛け声と共に、闇の中を数機の影が静かに疾走する・・・。

戻る  TO BE CONTINUED・・・